1999.6.1.発行 vol.2  [『黒い雨』って何? 号]

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■■  [本]のメルマガ                                1999.6.1.発行  
■■                                                      vol.2  
■■       mailmagazine of books        [『黒い雨』って何? 号]  
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■CONTENTS--------------------------------------------------------- 
「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉(きょうぎょく)
→日本人は日本を愛すべきだ! アメリカ人はアメリカを愛すべきだ! 
でも、利害が対立したらどうするの? 戦争しちゃえば、それでいいの?

「本の周りをうろついて・・」/湯川新一
→本を探したいなら図書館に行ったほうがお利口? 新刊なんて買わなくて
OK? 巨大メディアとしての図書館にせまります。

「美人書店員の赤裸々な日常」/あくびちゃん
→岩波のスーザン・ストレンジの新刊の紹介など。美人書店員は知的な男が
お好き?

「私小説的書店員」/キウ
→書店のアルバイト面接で、「最近読んだ本は?」と聞かれた相手が答えた
意外なモノとは。書店の実態に、笑えて背筋が凍る連載です。
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■トピックス
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■哲学・思想書最新刊/近刊速報

!は最新刊、#は近刊です。価格はすべて本体価格です。

*印のついた記事は、更にくわしい情報が[本]のメルマガのホームページに
近くアップロード予定です。興味のある方はぜひご覧になってください。

!アントニオ・ネグリ『構成的権力』(松籟社)ついに刊行。来たるべき世代
のための鮮烈でしなやかな政治哲学のバイブル初登場。必読。4800円*

#エリック・アリエズ『ブックマップ・現代フランス哲学』(松籟社)6月中
旬刊行予定。ポスト構造主義以後の新世代思想家118名と未邦訳書約600
冊を一挙紹介。浅田彰氏推薦文あり。必携。予価2900円*

#ジャック・アタリ『21世紀事典』(産業図書)6月刊行予定。傑出した思
想家=政治家である著者が300のキーワードで新世紀を読み解く、ヨーロッ
パ最新の未来学。予価2600円

#ロジェ・ラポルト『プルースト・バタイユ・ブランショ』(水声社)6月刊
行予定。ブランショ、ソレルスと並び「書くこと」について執拗に「書き」続
けてきた著者待望の本邦初単行本。エクリチュールの倫理。予価3500円*

#ミシェル・レリス『オランピアの頸のリボン』(人文書院)6月中旬刊行予
定。著者晩年の代表作。マネの裸婦像を手掛かりに、著者の過去の記憶や哲学
的思索が断章形式で描かれるエロス論。予価3900円

#レイ・チョウ『プリミティヴへの情熱』(青土社)6月刊行予定。『ディア
スポラの知識人』に続く待望の邦訳第二弾。香港出身、アメリカ最先端の女流
批評家による、中国映画論を軸にしたポストコロニアル研究。予価2800円

#イヴ・コソフスキー・セジウィック『クローゼットの認識論』(青土社)6
月刊行予定。著者本邦初の単行本。フーコー以後のセクシャリティ論の騎手に
よる、著名な現代社会=同性愛社会の構造研究。絶対必読。予価2800円

!イアン・ハッキング『偶然を飼いならす』(木鐸社)刊行。統計学と行政的
コントロールの理想を歴史的に精査し、現代社会の淵源を仮説する冒険的研究
の書。4500円

!Ian Hacking『The Social Construction
of What?』(Harvard Univ.Pr.)刊行。上記同著者によ
る、できたてホヤホヤの現地最新刊。ISBN0−674−81200−X。
http://www.press.jhu.edu/

!アンリ・グイエ『メーヌ・ド・ビラン』(サイエンティスト社)刊行。近年
ようやく原典邦訳や研究書が揃い始めた、フランス革命以後の動乱期を生きた
哲学者の生涯と思想の、細密な研究。基本文献。碩学渾身の書。3000円

#ハインリヒ・ハイネ『ルテーチア』(松籟社)6月上旬刊行予定。フランス
七月王政から二月革命にいたるパリの政治、芸術、国民生活を綿密にレポート
した古典。予価3600円

#ミルチャ・エリアーデ『ルネサンス哲学』(未来社)6月下旬刊行予定。今
世紀最大の宗教学者による若き日の出発点。修士論文。奨学生時代のイタリア
見聞記を併録。予価1800円

#ミルチャ・エリアーデ『マイトレイ』(作品社)6月中旬刊行予定。神秘小
説家としても高名な著者の小説デビュー作。自己の体験をもとに描いた悲恋物
語。芥川賞作家平野啓一郎氏の書き下ろし解説を付す。予価2800円

#オーシプ・マンデリシターム『言葉と文化』(水声社)6月刊行予定。20
世紀ロシアを代表する、ラーゲリで獄死した幻の詩人による、文学・政治・言
語・音楽論など代表的評論14編を本邦初訳で紹介。必読。予価3500円

■日比谷図書館存続
都の財政悪化のあおりを受け、老朽化や2000年問題対策ができずに日比谷図
書館は閉館する可能性が高い、と昨年一部メディアが報じましたが、無事存
続が決まりました。ただし12月18日から2月20日まで「工事」のため
閉鎖となります。
しかし、この2000年問題、本の管理をパソコンで行っている図書館はどこも
抱えている問題のはず。今年の年末年始は行き付けの図書館の休みを早めに
チェックしておいた方がよさそうです。

■京都書院
一部書店で、さよなら京都書院フェアが行われています。これは、営業を停
止するという連絡を、京都書院から受けた取次ぎが、書店に情報を流したた
めに起こったものです。しかしその後、各書店に「営業を続けている」旨の
FAXが入るなど情勢は流動的なようです。読者としては存続を願うばかり
です。
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■「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
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第一回 今後の展開について

 えー、マエストロ鏡玉です。本名です。こんな名前をつけた両親を恨んで
グレたこともありますが、今は出版社で営業の仕事を元気にやっています。
一度で覚えてもらえるこの名前に、今は感謝しています。出版社の営業とい
う職業がどんなものか知らない人が多いと思うので、そんな話もしていこう
と思っています。
 
 出版関係の人が読む新聞って朝日新聞が圧倒的に多いのかしら。書評、新
刊書籍の情報、業界求人広告が豊富という理由からそう思うのですが、ウチ
の会社をみても7割弱が朝日ですな。私は生まれてこのかたずっと東京新聞。
ずっと少数派。私の思想形成にこの新聞がはたした影響ははかりしれないの
ではないか。その最近の二つの記事に私の意見を付して今後の「メディア・
ジャーナル」の方向をうちだせれば、と思います。では本番。

 ちなみに東京新聞のホームページはhttp://www.tokyo-np.co.jp/
とりあげた記事がここで読めるかは確認していません、ごめんね。

 99年5月16日(日)東京新聞書評欄「著者に聞く」
 『歴史の消息について』(洋泉社、1800円)がとりあげられ、著者で
ある民俗学者の大月隆寛氏に自著を語ってもらうという構成の記事。そのイ
ンタヴューにこたえて、氏は、小林よしのり氏の『戦争論』についてこうコ
メントしている。「『戦争論』に知識人はビビリすぎ、あれはコミックです
よ」。

 短いインタヴュー(しかも記者による再構成)を断片的にとりあげ、著者
にイチャモンをつけるのは的外れだろう。この発言がどういう展開のなかで
なされたものか分からないし。ただ次のようなことを私に考えさせるきっか
けになったので、あえてその発言に異をとなえたい。すなわち、これほど話
題になった『戦争論』を「コミック」であると裁断することで、等閑視でき
るものなのかどうか。コミック=とるにたらないものだから、『戦争論』も
同じくくだらないということなのか。そうした批判で『戦争論』を否定でき
るのかどうか。
 
 こうした疑問を次号以降「メディアとしてのコミック論」「『戦争論』に
おける公共性概念の検討」として発展させていきます。
 
 99年5月7日〜9日東京新聞連載、
「歴史に病めるバルカン」熊田 亨氏
 日本の教育事情から意識的にか無意識的にか授業されることのない「近現
代史」(なんで縄文式土器が近現代より重要なのだろうか)を、熊田氏ほど
系統立てて話してくれる人を、私はほかに知らない。どっかの出版社で論考
をまとめて本にしてくれないかしら。もうでてるのかな。
 
 この上中下の連載は、現在のユーゴ空爆を、コソボにおける国家と民族の
関係から歴史的に考察したもので、きわめて秀逸なものだと思います。歴史
的事情として私が無知だったところを引用しつつまとめます

 −今から610年前の1389年。バルカンのコソボ・ポーリエ(ツグミ
の野の意)というところで、オスマン・トルコのイスラム軍が、キリスト教
(セルビア正教)のセルビア王国に攻め込む。コソボの敗北は、バルカンに
おけるキリスト教世界の瓦解を告げる最初の出来事だった−

 −17世紀、この地でオーストリアとトルコの合戦があって、キリスト教
軍はふたたび敗北、セルビア正教の大主教は数十万のセルビア人をともなっ
てコソボを立ち去る。そのあとにこの地に流入してきたのが、イスラムに改
宗したアルバニア人だった−

 −バルカンの国々と諸民族はそれぞれの建国神話をもっているが、それが
みな悲運の記憶につながっている。
 ハンガリー人の民族史の重要な記念日はモハチの敗戦(1526年、ハン
ガリーはこの地の合戦でトルコ軍に敗れた)であるし、クロアチア人にとっ
ては1102年、彼らの小王国の滅亡が国民意識を結晶させる悲劇的な記憶
となっている。古代イリリア民族を自分たちの先祖と信じるアルバニア人に
ついても、ヨーロッパ文明発祥の地でありながら400年間もイスラムのト
ルコ支配に甘んじなければならなかったギリシア人についても、いえること
だ−

 −コソボの合戦がたたかわれた610年目の6月28日、セルビア民族の
大喪と愛国の記念日が間近にせまりつつある。それは第一次世界大戦の口火
をきったセルビアの一青年によるオーストリア皇太子暗殺事件のおこった日
でもある−

 アメリカの建国記念日って7月4日でしたっけ。軍事的大勝利の記憶が国
民を結集させる国と敗北と悲劇の記憶が国民を結集させる国との戦いが、現
在のユーゴ空爆である。この戦いはそれぞれの「神話」をまたも再生産する。
これについては次号以降、ナショナリズム論として展開していきたいと思っ
ています。第一回はこれで終わり。ではまた。
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■「本の周りをうろついて・・」/湯川新一
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 第1回 図書館はスゴイかもしれない

  ここのところ時間が自由であることと、金銭的に不自由であることで、図
書館に通うことが多くなった。

  ある日、私が通う図書館を意識的に隅々まで時間をかけてなめるように見
てまわった。疲れた。「どのくらいの本があるのかなぁ」と思っていると、
運の悪い図書館員が通りかかったので色々聞いてみた。
  あまりに色々聞くので終いには「概要」という面白くも何とも無いタイト
ルのA4・100ページの冊子を渡された。
  「タイトルの付け方を草思社に学べ」と言いかけたが言わなかった。

  この冊子とても良くできてる。タイトルどおり「概要」が良くわかる。

  私の通うその中央図書館の総蔵書数67万冊、市内に分館が6館、車の移
動図書館1台。総冊数は92万冊になる。先日開店した日本一の大型店堂島
ジュンク堂が1,500坪で40万アイテム80万冊というから、アイテム
数を考えず総蔵書でジュンク堂に置き換えると約1,700坪になる。
  中央図書館だけでも1,300坪クラスの書店に相当する蔵書量である。
  また、蔵書量だけでなくその他サービスも良く考えられている。
 (サービス、システム、ネットワークその他詳細は次回以降書く予定)

  この図書館(最近は私の図書館)は全国的にも有名で、この図書館に学べ
というということで他の図書館が研修・見学などでそのノウ・ハウを取り入
れ始めている。

  ついでに全国の図書館はどうなっているのだろうと思い調べた結果が以下
の数字の羅列である。何冊かの本を調べましたが表記軸が不徹底で何かある
のではないかと少し疑っています(笑い)。私たちの税金ですからね。

  図書館は大別して国会図書館・公共図書館・大学図書館の3種類である。
  98年8月1日現在、
  国会図書館(本館、国会分館、支部上野図書館、支部東洋文庫)
  蔵書769万6624冊 前比103.9%。年間受入冊数29万457
  4冊 前比142.5%。館内閲覧冊数1,815,152冊 前比97.5%。
  各省庁35ヶ所。 蔵書417万6669冊 前比100.4%。
  館内閲覧冊数3,138,392冊 前比103.5%

  公共図書館(都道府県立・市区町村立・広域市町村圏・私立)2,524
  館
  前年+74館(97年2,450館、96年2,363館、95年2,2
  97館)
  蔵書2億6312万冊 前比105.4%。貸出し登録者数3,309万
  人 
  前比108.1%。個人貸出し総点数4億5337万3千点 前比104
  .7%。
  予約件数13,457,035件 前比118.4%。前々年比146.3%。
  97年度資料費(図書・雑誌・新聞・視聴覚資料費)実績369億697
 2万円。
  前比101.7%。98年度予算350億7383万円 97年実績比9
 4.9%。

 大学図書館(国立・公立・私立・短大・高専)1,638館 前年+16
 館
   蔵書2億5531万2千冊 前比103.6%。館外個人貸出者数10,75
 6,886人前比99.8%。館外個人貸出数2749万5千点 
  前比100.2% 資料費1千36億2907万 前比103.2%

  上記合計 図書館数・4,198館(国会1、各省庁35とする) 
  蔵書合計5億3030万5293冊

  上記の前比を単純に見ただけでも、書店なら「伸び盛り」ということにな
る。
  流対協の活動のひとつに、「公共図書館の予算縮小に歯止めをかける運動」
とあるが納得せざるを得ない。

  前のように蔵書合計で計算すると、662×堂島ジュンク堂になる。
  あるところにはあるもんだ。

  これら図書館も次世代に入り始め、ネットワーク化が急激に進んでいる。
  また、2003年に予定されている国会図書館関西会館開館に向けて、今
は目に見えない作業が行なわれている。(計画書その他わかり次第お知らせ
します)
  知事選挙で一躍有名になった東京都の通称「箱モノ」への批判を真摯に受
けとめて作れば、目も眩むばかりの「本の場」ができるであろう。
  読者としてうれしいやら、書店経験者としては恐ろしいやらでボーッとす
るばかりである。

  そんなある日の図書館で、いつものようにリファレンスでつまらない事を
聞こうと並んでいた時のこと(最近は平日でも並ばないと聞けない。椅子も
たくさん置いてあるが午後は座れない。)
  私の前の若い女性が「スプートニクの恋人ありますか?」と聞いていた。
  「おととい発売であるわけないだろ」と思ったが言わなかった。
  図書館員が「未入荷で予約が多くて、今ですと2ヵ月程待って頂くことに
なりますが・・・」
  女性「何冊くらい入ってくるのですか?」
  私、無言で「鋭い、いいこと聞くじゃん」
  図書館員「30冊です」・・この1アイテム30冊を図書館では「複本」
という。
  女性、しばらく考えた後「待ちます」。
  私、無言で「買え、買え、本屋で買ってくれー」

  30冊、2ヵ月待ち。図書館は貸出し期間が2週間だから120人のリク
エスト予約が2日で集まったことになる。スゴイ。

  質問ついでに「2ヵ月待ちだとキャンセルって多いですよね」と聞くと
 「最近の方は待たれます」という答え。

  帰り道、駅近くの80坪ぐらいの老舗の新刊本屋に行ってみた。
  新刊台を見た瞬間に「スプートニクの恋人」が無いのはわかったが、とり
あえずカウンターにいる人に在庫を聞いてみた。
  少し困った様子で「出てるだけです」と言われた。
  たぶん配本が無くて新聞その他の情報も入ってなくて、存在そのものを知
らないのだと感じた。

  新刊・既刊本にかかわらずこれが多くの書店の現実で・・・。
  これは今に始まったことではなく、ますますその傾向は強くなって・・・。

  過日の出版業界研究会の講師が言っていた事を思い出し、ぞっとした。
 「約20,000軒ある日本の書店もこのままだと約5,000軒になるだ
ろう・・・」

  出版社・取次・新刊本屋・図書館・古本屋・ネット上の「本の場」らが物
流、再販問題、経済等々と絡み合いながら、うねるように大きく動かざるを
得ないのを感じる。

    次回以降に続く
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■「美人書店員の赤裸々な日常」/あくびちゃん
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「見えざる手」は本当に見えないの?果たして世界経済は崩壊の一途をたど
るのか。StrangeのMad論。

あなたのお部屋には何冊本がありますか?
どこの出版社の本が一番多いですか?

最近よく売れている、サンマーク出版の「小さいことにクヨクヨするな」、
それから草思社のフランチェスコ・アルベローニの著作はお持ちですか? 
ビジネス書をよく読まれる方でしたら東洋経済新報社、ダイヤモンド社の本
をお持ちでしょうか?

こういったベストセラーとは程遠いけれども、もっと売れてもいい!と思わ
れる本を独断と偏見から選んでご紹介します。上記の本のように、ニュース
や新聞の書評等のメディアに取り上げられて、売れたものもありますが、や
はりそうした本は限られた数しか存在しません。

たとえば、発行部数が2000部(専門書の世界では当たり前の数字だったりし
ます)、こういった本は、なかなか小規模の書店には並びにくく、大型書店
の取り扱いが主になります。すると、その本が多くの人の目に触れる機会が
少なくなるわけです。ただ、こういった慎ましやかな数で作られている本の
中にこそ、良書が眠っている場合も多いのです。実際、企画から数十年もか
かって、やっと出版される本があるって、信じられますか? これらは、た
った一冊で読む人の人生観を変えてしまう力を十分に持っています。

また、書籍だけでなく、小人数で頑張っている出版社さんのお仕事もご紹介
できればと思っています。直接生計のためには役立たないかもしれませんが
、店頭でご覧になる機会がありましたら、お手にとって見てください。

そんなわけで、今回は社名がメジャーなわりには意外と購読した人が少ない
かも(でも、「日本語練習帳」がヒットしたか)と思われる岩波書店の新刊
のご案内です。

岩波書店社長の故安江良介氏が自社の出版物の中でもずば抜けて面白いとい
っていた、国際政治経済学の先駆者の1人と目されるスーザン・ストレンジ
の著作が、1998年11月の『国家の退場』に続いて、今年の9月に出版されま
す。その名も『マッド・マネー  ―世紀末のカジノ資本主義』。原著は1998
年12月に『Mad money:when markets outgrow governments 』というタイ
トルで、ミシガン大学出版局より出版されたものです。原著の出版から翻訳
まで9ヶ月というスピード出版。今回も前作と同様、櫻井公人氏による翻訳
です。

新聞の紙面を現在飾るのは「破綻」「不況」「倒産」「混乱」等、おおよそ
、明るい未来を彷彿させるものではありません。また、特別減税や規制緩和
などの政策も効果があるとは言えないほど、日本経済はどん底のようです。
日本に限らず、一部を除いて世界的に経済は混乱しています。「一体、政府
は何をやっているのか?」とだれしもが思うでしょう。ストレンジは、これ
を「国家」の権威が弱体化していると分析し、なぜこうなったのかを説明し
ています。それでは「国家」の衰退に代わる「権威」とはなんでしょうか。

ストレンジは「パワー」というキーワードをよく使っています。「パワー」
とは、個人やその集まりが自分の好みを他者の好みより優先させるよう、結
果に影響を及ぼす力を言います。もし、そのパワーが国家に集中していれば
国際関係において生じた問題は、国家あるいは国家間システムによって解決
できるはずです。しかし、現状は問題は解決されていません。そもそも、な
ぜ「国家」がパワーの唯一の源泉だと考えなければならないのでしょうか。
「国家」を唯一の分析単位として捉えるのではなく、「国家」以外の権威に
よって行使されているその他のケース(ある人のビジネスが他に対して及ぼ
す政治的、経済的影響もそのうちです)を理解し、だれが政治に関わってい
るかということを問題にしながら、世界経済を分析しなければならないと主
張します。

今回の新刊は世界的にストレンジの名を知らしめた『カジノ資本主義』の続
編です。1980年代半ばの世界的マネーゲームと投機を、政治的、社会的状況
を無視した密室のカジノ化現象ととらえ、戦後の世界経済政策の失敗を克明
に論じてから、はや10年。現在の世界経済の状況、なかでも、世界金融シス
テムはさらに狂い、コントロールがきかなくなってしまいました。本作は近
年の金融ビジネスの変化と革新の本質を分析し、政府以上に力を持ってしま
った市場によって動かされている政治経済システムの弱点を、「市場とは権
力の意思に従わざるを得ない」という、ともすると見落とされがちな権力作
用のあり方を十分に踏まえた上で議論します。

『国家の退場』は、渋い装丁と3500円というお値段に、購入を躊躇されるか
もしれませんが、今度の新作は3000円以内に収まるだろうとのことです。経
済の知識がない私でも大変興味深く読むことが出来る本です。すでに読んだ
方も、これから読まれる方も、感想を聞かせてくださいね。お返事お待ちし
ております。

本コーナーへのお返事、ご意見は anjienji@mcn.ne.jp までお願いします。

<スーザン・ストレンジの本>
・『カジノ資本主義―国際金融恐慌の政治経済学』
岩波書店 ISBN 4000003208 小島 襄司訳 出版年月1988.1
定価2330円 品切
・『国際通貨没落過程の政治学―ポンドとイギリスの政策』
三嶺書房 ISBN 4914906899 本山美彦他訳 出版年月1989.3
定価 4429円  品切
・『国際政治経済学入門』東洋経済新報社 ISBN 4492441654 
  西川潤・佐藤元彦訳 出版年月1994.1 定価3900円
・『ライバル国家、ライバル企業―世界市場競争の新展開』 
  ジョン・ストッポード共著
  文真堂 ISBN 4830942207 出版年月 1996.2 定価3689円 品切

・『The International Politics of Surplus Capacity
:Competition for Market Shares in the World Recession』
  Strange, Susan/ Tooze, Roger
出版社Unwin Hyman  ISBN 0043820344   出版年月1982.03
・『The Retreat of the State :The Diffusion of Power in the World E
conomy』
  (Cambridge Studies in International Relations, No 49) 
  出版社Cambridge Univ.Pr. ISBN 0521564298 出版年月1996.11
・『Power Diffused : State and Non-State Authority in the World Eco
nomy』
  (Cambridge Studies in International Relations,No 49) 
   出版社:Cambridge Univ.Pr. ISBN 0521564409 出版年月1996.09 
・『Casino Capitalisme』 
  出版社Manchester Univ.Pr. ISBN 0719052351 出版年月1997.11
・『States and Markets』2nd Edition 
出版社Pinter Pub.Ltd.ISBN:1855672367 出版年月1994.06
・『Mad Money : When Markets Outgrow Governments』 
出版社Univ.of Michigan Pr. ISBN:0472066935 出版年月1998.09 

『カジノ資本主義』は『マッドマネー』刊行にあわせて今年9月に復刊予定。  
 
 ホームページ アドレス 
 岩波書店  http://www.iwanami.co.jp/
 ミシガン大学出版局  http://www.press.umich.edu/
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■「私小説的書店員」/キウ 
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「本への愛を語るとき我々が語るべきこと」  

 書店に勤めはじめて、もう7年が経過した。アルバイトをしていた時期も
ある。何度も辞めようと思った。本が読めないからだ。それに書店の形態も
ここ数年で大分様変わりし、その変わり方を私は個人的に肯定できないでき
た。しかし辞めないでここまできている。
 経済的な事情もあるが、不満をいくつも抱えながら、やはりこの仕事が好
きなのだと思う。いまどき恥ずかしい表現なのかもしれないが、本を愛して
いるのだと思う。
 本への愛について語ろうと思うのだが、むしろその逆に、本を愛していな
い人たちについて語った方が、より私の感じていることを明確に示すことが
できるだろう。
 書店を運営していく上で欠かせないのは、アルバイトの存在である。冒頭
にも書いたように、私もアルバイトをしていた時期がある。薄利多売な書店
業において、アルバイトへの依存度はどうしても高くなる。よいアルバイト
を採用することは、その店において生命線であるとさえ、個人的には思って
いる。(しかし最近のこの業界はそのように思っていない節がある)。しか
しこのアルバイト採用というもの、なかなか難しい。
 アルバイト採用の面接をしていて思うのだけれど、なぜ書店で働きたいと
思ったのか、分からない人たちがときどきいる。事務所で差し向いに座り、
差し出された履歴書に目を通す。応募理由に本が好きだからと書いてある。
まず大抵そう書いてある。そこで質問する。
 「そうですか、最近は、どんな本を読まれましたか?」
 「そうですねえ、アンアンとか」
 「アンアン」は本なのか? 「最近、読んだ本は?」と訊かれ、なぜわざ
わざ「アンアン」と言わなければならないのか。私は戸惑い「そうですか」
と答えてしばらく沈黙する。
 こんな答えが返ってくることもある。
 「最近は活字の本はあまり読んでいないですね」
 活字のない本とはなんなのか。漫画だって活字がある。雑誌にだって活字
はある。もしかして写真集のことを言っているのか。私は絶望し「そうです
か」と答えて沈黙する。
 なぜ彼等は本屋(書店とは呼ばずにおこう)に応募してくるのか。個人的
には(会社としては知らない)本を愛していない人に本屋で働いてほしいと
は思わない。たかが本屋、されど本屋、と思っている。本屋など、本のこと
を知っていてなんぼの世界じゃないのか。「書店員」などとしゃれている場
合ではない。もちろんそう言ったところでしゃれてもいないが。
 先日、私とレジに入っていたアルバイトが「『黒い雨』はありますか?」
という問い合わせを受けた。「それはどのような内容の本ですか?」とその
アルバイトは訊く。お客様は戸惑いながら「小説です」と答える。そのアル
バイトは検索機(最近の書店経営者はこれさえあれば本のことなど知らなく
てもいいぐらいに考えているようだ)に向かい調べ始める。誰が書いている
のか、どこから出ているのか。私は自分の受けていた接客を終えると、新潮
文庫の棚へ行き、一冊持ってきた。そのアルバイトは文学の新刊コーナーを
探していたのでお客様に渡した。私は不安になって、その二十歳そこそこの
女性アルバイトに訊いてみた。
 「『黒い雨』ってどんな小説か知ってる?」
 そのアルバイトは首をかしげている。私の不安はつのり、こう質問したく
なる。
 「日本に原爆が落とされたことがあるって知ってる?」
 質問はしなかった。答えを聞くのが恐かったから。
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■お詫びと訂正
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前回の「脱書店員電脳日記」の中で、大日本印刷「専門書の社」とありまし
のは、「専門書の杜」の誤りでした。お詫びして訂正致します。
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■あとがき
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>実はやってみたい企画あるんだけど
>なに?
>「全国いい書店、やな書店」! この書店は名前有名だけど内部ボロボロ
で全然面白くないとか・・・もう、内部情報たっぷりだし。
>・・・止めなさいって、刺されるから。
>じゃあね、「日本いい出版社、やな出版社」。この出版社だけは許さんと
か・・
>なんか、恨み持ってるとこ、あるの?
>あるある、電注すると、取次ぎにあるだろうとか居丈高に言いくさる某・・
・(自主規制)
>あのね、裏[本]のメルマガでも作ってやれば?
>グフフ、なんか勘違いして購読者増えそう、ソレ。
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■「デジタルクリエーターになる!」メタローグより刊行!
「ポストペット」や「I・Q」を生み出した、現在第一線で活躍するクリエイタ
ー8人をインタヴュー。ツールとしてのパソコンとクリエイターとしての自
分のいい関係を楽しむ達人の話は興味深い。スクール情報、用語集も充実。

■西友町田店7階リブロ町田店にて「表徴の世紀末/世紀末の表徴」フェア
開催:期間 5月26日(水)〜6月30日(水)  6/10(木)、
6/17(木)は店休日
『イメージ・フォーラム』新創刊の特集にちなんで、編集長・服部滋氏の選
ぶ「世紀末を読むための100冊の本」。世紀末における視覚文化のありよ
うを検証しつつ、来るべき世紀の動向を占う。ご来店の方には、フェアリス
ト差し上げます。042−726−0570フェア問い合せは藤沼、小島迄
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