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1999.7.15.発行 vol.5 [編集長が一番小物? 号]
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■■ [本]のメルマガ 1999.7.15.発行
■■ vol.5
■■ mailmagazine of books [編集長が一番小物? 号]
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■CONTENTS-----------------------------------------------------------
★トピックス
★「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
→難解と言われる英米哲学の巨匠ロールズを紹介! こんなにオモシロく
てかつ鋭く紹介できるのは日本にこの筆者だけ!?
★「脱・書店員日記」/aguni(あぐに)
→注文した本をコンビニで受け取れる「イー・ショッピング・ブックス」
人材募集開始!
★「中国古典で浅学菲才が直る?」/掩耳(えんじ)
→派閥って無能な人間でも成り上がれるからチョーラッキー!?
★「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
→若い詩人の世界を、それをたぶん唯一まともに紹介できる筆者が案内し
ます。
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■トピックス
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■「新刊・近刊速報」
☆ 99年下半期「要チェック」全集
1) キケロー選集(岩波書店)刊行中
やっぱり岩波さんはすごいです。無比の弁論家にして波瀾の政治家トゥリ
ウスの遺産が甦る。カタログをみているだけでじわーっと感動してきま
す。お宝度100%。彼が直面した大ローマ帝国の崩壊は、こんにちのグ
ローバル化した先進各国の黄昏のアナロジーだ。
2) カント全集(岩波書店)11月より刊行開始
世界中でいまもっとも旬な古典思想家。全22巻。お飾りでもいいから全巻
購入! 特に第18巻に収録予定の、論争の的『オプス・ポストムム』(い
わゆる遺稿集。転向したのかボケたのか、と様々に解釈されてます)に注
目、絶対逃せません。翻訳はこんどこそ日本語としてわかりやすいもので
ありますように。理想社版が随分歯抜けになっており、待ってましたとい
う感じだが、岩波さん、読者の目はキビシイぞ。
3) ミハイル・バフチン著作集(水声社)刊行中
水声社は他にもサド全集に挑戦するなど、好感度高いです。かつて新時代
社が著作集を出していたが、ロシアで新訂版全集が刊行されたのに呼応し
て、こうした小さめの(失礼!)出版社が頑張るのは、ほとんど手放しで
応援したい。
4) 白川静著作集(平凡社)11月より刊行開始
これはオドロキ! 全12巻を本屋に予約すると今なら特価八万円(税別)
で購入できます。申込〆切は九月末日。『字通』『字統』『字訓』をもの
した一学者の世界というより、もはやこれは「宇宙」そのものの開示の如
く、です。
5) 現代日本文学大系(筑摩書房)2000年1月重版出来予定
『世界文学大系』復刊に引き続き、世の読書子の懐具合を悩ます第二弾
がついに。全97巻、限定500セット、近代100年の文学遺産の集大成。セッ
ト本体価485,000円。買うべきか買わざるべきか、それが問題だ。欲しい
けど買えない、とお嘆きの方は、重版出来前後に古書店に流れる旧セット
を狙うべし。
■「新 票田のトラクター1〜13」(ケニー鍋島作 前川つかさ絵 小学
館)が完結。
週間ポストというおやじ雑誌に連載されていたため、ごく一部の熱狂的支持
者に支えられていた大作がついに完結。<政治>という殺し合い以外なら何
でもありの世界を描き切ったこの漫画、どう考えても「美味しんぼ」の三万
六千倍(推定)は面白く、政治学専門書の八億五千万倍(当社比)は実用的
だ。嘘だと思うなら読んでみるべし。
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■ 現代思想の最前線/五月(ごがつ)
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「ロールズの生い先短し?! 怒涛の新刊ラッシュ」
寡作の作家が晩年に新作を次々出したとなれば、誰もが「そろそろお迎え
の影が見えたか」と思うだろう。いわんや大思想家においても。
ジョン・ロールズは1921年生まれ、アメリカを、否、世界を代表する
政治哲学者、倫理学者であり、現在ハーヴァード大学名誉教授である。長
年にわたって、社会的公正の源泉としての「正義」の根源的省察と、その
実現可能性を追求し続けてきた第一人者だ。著書に『正義論』(71
年)、『ポリティカル・リベラリズム』(93年)がある。このたった2
冊が世界の論壇にどれほど大きな波紋を投げかけてきたかは、計り知れな
い。
ぽつりぽつりと発表され、積み重ねられた論文が、1冊の書物にまとまる
時には途方もない大著に成長し、その1冊1冊が絶大な影響力をもつ。ご
うごうたる賛否両論も含め、およそ世間の学者をして「現代において道徳
論のもっとも広範な議論の地平を拓いた」あるいは「英語圏に政治哲学を
復権させた」と言わしめる者は、ロールズその人をおいて他にいまい。
さる6月25日、寡作の人ロールズの、およそ50年の歩みを総覧する待
望の『論文集』が、ハーヴァード大学出版局よりついに発売された。サ
ミュエル・フリーマン編集。51年発表の「倫理上の決定手続きの概要」
から98年の「『コモンウィール』誌インタビュー」まで27本を収録、
上記インタビューと『正義論』フランス語版序文の2本を除き、すべて
折々に発表されてきた論文である。
収録されていない数篇の例外(論文の初稿や書評、特別な機会に書かれた
短文)はあるものの、本文622頁を数える一大集成であり、二大著書を
補足するという以上に、ロールズの思想的変遷と考察領域の全貌を余すと
ころなく伝える、「大全」であると言って差し支えない。
27本の内、5、60年代の重要作8本はロールズ本人の認可を得て、す
でに本邦でも『公正としての正義』として1冊にまとめられ、79年3
月、木鐸社から刊行されている。大著『正義論』は、著者による大幅な加
筆修正を経たいわば「訂正版」が、同79年の8月に紀伊國屋書店から刊
行されたが、現在は品切。川本隆史氏による改訳が目下進行中である。そ
して、93年に刊行後、96年にペーパーバックの増補版が出た『ポリ
ティカル・リベラリズム』は、岩倉正博氏の邦訳で、やはり紀伊國屋書店
から刊行される予定だ。
また『論文集』に再録されている「万民の法」は、93年のオックス
フォードにおけるアムネスティ・インターナショナル主催の講演会で発表
されたもので、邦訳が存在する。ロールズのほかR・ローティ、S・ルー
クス、C・マッキノン、J=F・リオタールなどあわせて7人の思想家た
ちがそれぞれ発表したこの講演会の全体が、同93年に『人権について』
という書物にまとめられ、98年11月にみすず書房から邦訳出版された
ばかりだ。
講談社の好シリーズ「現代思想の冒険者たち」に収められた川本隆史氏の
『ロールズ−−正義の原理』(97年刊)は、講談社側がシリーズ中もっ
とも力を入れて販売し、同時にもっとも売れた巻のひとつでもあったと聞
く。時代とともにロールズがますます注目されてきたのは確実である。そ
れは、ロールズ自身の思想構築がけして孤高で独善に終始せず、多くの学
者や学生たちとのたえまない討論に自らを開いていったことの賜物であっ
たろう。
『論文集』巻末の「謝辞」に頻出するトマス・ネーゲルやロバート・ノー
ジックをはじめ、アマルティア・セン、ケネス・アロー、デレク・パー
フィット、ロナルド・ドゥウォーキン等々、宝石どうしが互いに練磨する
様はロールズの社交性を伺わせるし、「題辞」にある以下の言葉は、頂点
を極めた大学者にとってはまさに堂々たる境地だと言えようか。いわく、
私の思考の発展にたいへん重要な役割を果たしてくれた、たくさんの大学
院生や同僚に本書を捧げる、と。
「原爆投下は本当に最低最悪な出来事だったと確信している」と書き出
す、本書25番目の論文「ヒロシマから50年経って」は我々日本人の目
にもとまりやすいだろう。95年夏に発表された本稿は岩波の『世界』9
6年2月号に川本氏によって邦訳されているし、先に挙げた氏のロールズ
論の第7章第3節でも要約的に取り上げられている。
「ヒロシマから50年経って」はロールズの戦争論でもあるわけだが、彼
の言い回しは、他の論文に見られるようにここでも非常に明確であり、難
解な含みをもたせるようなレトリックはない。ないのだが、それでもハタ
と立ち止まらざるをえないような決定的な契機も、そこかしこに潜在して
いる。
その核心と言えるのが、彼の言う「まともな民主社会」や「民主的な民衆
は互いに戦争を起こさない」「民主的でない国はまともな民主的社会と敵
対する(趣意)」等のくだりである。ロールズの理想とする公正な社会を
わかったつもりでいても、彼の「民主的な」社会や民衆を基礎づける理性
のなにがしかが、本当に誰にとっても説得的であるのか、わからなくなっ
てくる時がある。少なからぬ読者の理性は揺らいでいるはずだ。
つまり、ロールズのいうデモクラティック(民主的)な状態を実現する諸
条件でなく、それらの条件を支える見えざる基盤は何なのか、という疑問
がつい沸いてくる。これは涯てのない問いである。「ただしさ」はキリス
ト教世界においては、神に支えられていることによって根源をもつが、
ロールズは「神」とは言わないし、言うまい。超越的なものを名指す手前
でせきとめられたロールズの理性の見かけの静けさは、正面では荒れ狂う
現実の嵐と向かい合い、一方で背後に、容易に解消しきれない「信条」の
深淵を抱えているように見える。
公正な社会は実現可能だ、という理性的信条を強く抱いているロールズの
政治的立場は、必ずしも誰の目にも公平に映っているわけではない。対極
にある代表例として、アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの共著
『ディオニュソスの労働』(人文書院近刊)第6章で、『正義論』や「公
正としての正義:形而上学的ではなく政治的に」(『論文集』第18番)
や『ポリティカル・リベラリズム』に批判的検討が加えられていることを
想起されたい。
諸論文にもよく出てくる「秩序ある社会」という概念や「民主社会」とい
う言説は、国家主義や資本権力に悪用される可能性に常にさらされてい
る。それらが監視社会や衆愚政治に転化する危険性とどう戦うか。ロール
ズ理論の限界を乗り越える視点が、『論文集』の中に萌芽として示されて
いる、とは言いがたいのかもしれない。それでもやはり、彼の拓いた問題
群の領野の内に、私たちは無意識に立っているのだろう。
ハーヴァード大学出版局のホームページのプレスリリースと、フリーマン
による「編者序文」を読んで、びっくりすることがある。ロールズは現在
『正義論』の改訂版を用意しており、本年9月に刊行を予定しているう
え、更に2冊の新著をも準備しているというのだ。
その2冊のうちの1冊は、『論文集』に収録されている二論文、「万民の
法」とその応用版である「ヒロシマから50年経って」に、加筆し修正を
加え発展させたもので、これは総題を『万民の法』として、本年11月の
刊行が予告されている。
そしてもう一方は、ロールズのハーヴァード講義を基調とした書物であ
り、カント、ライプニッツ、ヒューム、ヘーゲルが扱われている。その核
は、『論文集』23番目の「カント道徳哲学の主題」(89年)にも現れ
ている。この書物はまだタイトルや刊行年月が明示されていない。
たたみかけるように矢継ぎ早に繰り出される新刊には、日本の学者も出版
社も容易についていけまい。巨人の歩みはたとえ一歩であろうとも長遠の
進展である。原著改訂版が刊行される以上、『正義論』の改訳作業はまだ
時間を要するだろうし、世界中の読者にしてもやっと『ポリティカル・リ
ベラリズム』を読んだかまだ読み終えていないか、というところかと思わ
れる。そこへ立て続けに、『論文集』、『万民の法』、「講義録」とくる
わけだ。
つまり有り体に言えば、今年はロールズの膨大な論考を全行程にわたっ
て、最初から読み直すことを余儀なくされるわけで、これはうれしい悲鳴
といっていいかどうか、苦笑するしかない。
このことは、政治的混迷が深まりつつあるこんにち、私たち日本人が自由
主義をもし謳うにせよ、コミュニズムを掲げるにせよ、その知性の何たる
かが試される絶好の契機となろうことは間違いない。アメリカと日本との
今後の対話的関係もロールズ理論の争点をぬきにしては、考えられないだ
ろう。
ロールズの本
『公正としての正義』木鐸社、79年3月刊。編訳=田中成明。
本体価2500円。ISBN:4-8332-0064-3
『正義論』紀伊國屋書店、79年8月刊。監訳=矢島鈞次。
本体価6505円、現在品切。ISBN:4-314-00263-8
http://www.kinokuniya.co.jp/
『人権について』ロールズほか=著、みすず書房、98年11月刊。
訳=中島吉弘、松田まゆみ。本体価2900円
ISBN:4-622-03667-3
http://www.msz.co.jp/
“A theory of justice” Belknap Press (Harvard Univ. Press), 1971
$19.95, ISBN:0-674-88014-5
http://www.hup.harvard.edu/
“Political liberalism” Columbia Univ. Press, 1993, 1996
$46.50, ISBN:0-231-05249-9
http://www.cc.columbia.edu/cu/cup/
“Collected papers” Harvard Univ. Press,1999
$39.95, ISBN:0-674-13739-6
“The law of peoples” Harvard Univ. Press, November 1999
$22.50, ISBN:0-674-00079-X
『ロールズ−−正義の原理』川本隆史=著、講談社「現代思想の冒険者た
ち 第23巻」、97年4月刊。本体価2524円
ISBN:4-06-265923-9
http://www.bookclub.kodansha.co.jp/
ちなみにアマゾンによれば、ロールズを購入する読者は、次のような思想
家の本も買う、という傾向にあるようだ。ロナルド・ドゥウォーキン、マ
イケル・サンデル、ロバート・ノージック、トマス・スキャンロンなど。
スキャンロンはロールズとも大変親しい学者で、『論文集』の謝辞にも名
前がよく出てくる。
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■ 「脱書店員電脳日記」/aguni(あぐに)
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第3回 ネットで本の中身だけ買う?
さて。いよいよ本格始動の「イー・ショッピング・ブックス」が人材募集を
開始した。35歳位までで書店販売業務又は出版流通業界での経験者であれば
尚可、とのこと。履歴書は7月19日まで。詳しくはソフトバンク人事担当、
0120-015-809まで。現在の書店に絶望している書店員にこそ、未来の理想の
書店を作って欲しい。間違いなく、今より給料も高いだろうしね。
それはさておき、今回はネットで本の中身だけ買う、というお話だ。
人は何のために本を買うのか。簡単だ。二つの理由しかない。本箱を飾る
ためか、暇つぶしのためである。あなたがプロバイダーと定額契約し、テレ
ホーダイに入っているのであれば、私は本の中身だけ買う、ことをおすすめ
する。本箱を飾ることはできないが、もしあなたが本を他人に話したり貸し
たり、人から知的と思われるために読んでいるのでなければ、暇つぶしとい
うのはインターネットの最も得意とする分野だ。
「青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)」には著作者の死後50年以上を
経て著作権が消滅した作品と、著作権者が公開に同意した作品を収録してい
る。中には文庫本でもなかなか手に入らない作品もあり、貴重だ。ここは無
料で提供してくれているが、ビジネスとしても充分成り立つだろう。
特に品切れの本が多い人文や文芸の分野では、DTP化した出版物であれ
ば、データのみを販売することなど簡単だろうから、データのみの販売によ
って売り逃しを防ぐことになるだろう。このシステムに対する投資は重版の
コストよりも間違いなく安い。
もちろん出版社単独では料金回収までのシステム構築ができないだろうか
ら、専門の事業体が出現することになるだろう。しかしこれはまだどこも実
験段階らしく、現時点では面白いページを見つけることはできなかった。
「電子書籍コンソーシアム(http://www.ebj.gr.jp/index.html)」は電子
書籍の規格づくりを進める出版社、取次、書店、IT事業者らの団体で、国か
らの資金援助を得て、この秋からいよいよいくつかの書店でサービスを開始
する。電子書籍を通信衛星経由で,書店やコンビニエンスストアなどに置か
れた電子書籍販売端末に送り込む。読者は,販売端末から好きな本を選んで
購入、新書サイズ大の読書専用端末に読み込んでそれを読むという形態だ。
将来的には個人ユーザーが自宅のパソコンで直接コンテンツを受信する形態
も考えられている。もちろんコンテンツの価格は紙媒体の本よりも安めに設
定されている。 もしこれが事実上の標準企画となってしまうのなら、おそ
らく出版社は紙代や印刷代を払うかわりにこのシステムの使用料を払うこと
になる。もちろんそれにはこのサービスが標準化しなくてはならないが、や
がて読者用の専用端末は無くなり、専用ブラウザとダウンロード用ホームペ
ージだけが残るのでないか、と私は思っている。
だったら衛星など使わなくてもいい。専用の形式なんかなくてもいい。自
前のホームページだけあればいい。
というわけで今回最後に紹介するのはネットの世界ではかなり有名な「ひ
つじ書房(http://www.hituzi.co.jp/index.html)」と、私もよく利用させ
てもらっているオンライン小説のサイト、「Novel Station[ノベルステーシ
ョン](http://www2.ohba.co.jp/novel/)」である。もしどちらも訪問した
ことがないのならご覧いただくと、未来の出版の一つのあり方を見ることが
できると言っておこう。それぞれ形は違うにせよ。
「ひつじ書房」の方は小出版社が未来の書店としての生き残るための、いろ
いろな思考的実験の場として面白い。「書評」や「投げ銭システム」など、
中には出版社の枠を超える考えも提示されている。
一方の「Novel Station」は未来の文芸出版社である。素人作家のメール投
稿によって成り立っていて、全ての作品は画面で読むことも、ダウンロード
して読むこともできる。現在は無料だが、やがてこの形式で有料コンテンツ化
するサイトも出てくるだろう。
もちろん管理者に無断でマネしようとか、アイデアだけををいただこうとす
る関係者の方は見ないで欲しい。いくらモノマネや二番煎じは今の出版業界の
得意技とはいっても、それはネチケットとしては最低だから。
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■ 中国古典で浅学菲才が直る?/掩耳(えんじ)
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限定的な心理探究ツールとしての「兵法書」
その3 派閥とは無能な人間の互助組合である
みなさん、今日も元気に派閥活動にいそしんでますか? 仲間同士の昼飯や
飲み会は勿論のこと、新年の挨拶やら盆暮れの付け届け、領袖への舌もとろ
けるような甘いお世辞まで‥‥
兵法書においては、もし真に<優秀な人材>を手に入れたいと願うなら、こ
のような派閥を絶対に認めてはならないと、固く戒めています。
・徒党を組んで親しい者だけを昇進させ、立派な人間を押さえ付けて腹黒い
人間を推挙し、私利私欲ばかり追い求めて同僚の足を引っ張っている。これ
を<乱の源>という(三略)
そもそも、派閥とはなんでしょうか? その人の能力とは無関係に、<親し
さ><忠誠>などをキーワードに助け合うことです。会社なりの組織全体を
見た場合プラスになる要素はほとんどありません。例えば戦争などの切迫し
た状況下で派閥活動にうつつを抜かしていれば、それは即、負けや死を意味
します。
つまりこれにうつつを抜かしていられるということは、実は真に状況が切迫
していないことを意味します。または真の状況を理解できないほどボンクラ
な人間の集団である可能性も‥‥あるのですが。そして、これを招く要因は
すべて君主――会社なら社長に帰せられています。組織とはトップによって
どのようにも変わる、というのが兵法の原則なのです。
先ほど、<切迫>という言葉を使いましたが、この<切迫>、つまり追いつ
めるということは、兵法において非常に重要なタームになっています。いか
にして味方の兵士を追い詰めて、死に物狂いにさせるか――有名な<背水の
陣>などもそうですし、次のような例を挙げた兵法書もあります。
・死に物狂いの賊が一人、広野にのがれたとします。これに千人の追手をさ
しむけたとしても、ビクビクするのは追手の方です。賊が突然襲い掛かって
くるかもしれないからです(呉子)
命を投げ出す覚悟をしたものが一人でもいれば、覚悟のないもの千人を脅か
すことが出来る――つまり、味方を死に物狂いにさせ、敵は決して死に物狂
いの状況に追いこまない、これが兵法の要諦の一つなのです。そして、ここ
から有名な「敵を包囲、殲滅してはならない」というテーゼが出てきます。
(続)
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■プレジデント社より武経七書全集第一巻、『孫子・呉子』絶賛発売中。
読み比べてみればわかりますが、他のものと比べて読みやすさ、訳の正確さ
が雲泥の差です。戦略理論における最古最善の書の全貌が明らかになります。
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■ 「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
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詩は今を呼吸するA−川本真知子詩集「勾配のきつい坂」
前回紹介した奥野雅子の詩が、傷ついた自己を補償するために想像力を駆使
して虚構の空間を切り開く、そのために現実離れしたイメージを出現させる
こともしばしばだったのに対し、同年齢(1973年生まれ)の川本真知子
の詩(詩集「勾配のきつい坂」ふらんす堂刊行)はより平常心に近い所で立
ち上がる。彼女の詩は決して日常生活から遊離せず、自分の歩いてきた道を
注意深く見つめ直すことに終始する。若い川本の歩んできた道は当然、まだ
長さも短く、幅も狭い。しかしながら、彼女はその小さな世界で起こった出
来事ことごとくを掌握し、独自な見解の基に整理する。アルバムに写真を貼
るように自分の人生のエッセンスを詩集のページに貼り付けようとするかの
ようである。
地下鉄の駅は
おならの匂いがするでしょう
雨のはじまりの数滴の匂いは好きですか
一生洗ってもらえぬ犬の顔は
樽に寝かせた土色に匂うのです
女の鼻先の埋まる
男の腋の下はくぐもった匂いで
精液は糊づけされたリネンのように
つーんと匂い
そうして
ゆっくり思い出して
匂いを
いつか嗅いだことがあるのだから
私の匂いは懐かしいですか
(「匂い」全編)
「匂い」というキーワードを基に自分の人生を手早く検索してみたらこうな
りました、さあどうぞ、という感じ。地下鉄の独特な空間性、どこかの道端
で出会ったらしき犬の顔、性愛の心地よさ。普段は決して一緒に語られるこ
とのない事柄同士がわずか14行の中に違和感なく同居し、対話しあう。そ
して作者自身を同じ「匂い」という観点から好ましく位置づけてくれるかも
しれない他者の存在への淡い希望を示して詩はさりげなく閉じられる。この
詩は決して単純に体験を羅列したものではない。目に見えない「匂い」にま
つわる記憶を辿ることによって、普段意識に上らないような生活の様々な局
面を自分がどう定義づけているかをいちいち他人に知らしめていきたいとい
う強固な意志を表わした詩なのではないだろうか。言い換えると、どんなに
平凡に思える風景でも、自分の人生において自分に出くわしたものであるな
らば、それは自分のものの見方と折り合いをつけることによって独自な価値
を誇るものとなるのでなければならない、そう、川本真知子は考えているの
ではないだろうか、ということである。この詩における、読者に対する呼び
の語法は意図的なものであるように思える。彼女の心に引っかかった記憶の
位置づけを、読者が共有することを積極的に薦めているのである。彼女が空
間を統御していくやり方は、一見控えめそうに見えて実はかなり強引なもの
だ(つまりずーずーしいのである)。
「ミモザの雪」という詩は、思いがけなく昔の男から便りを貰ったという設
定だ。その便りの字は「下敷きの罫線に/やけに忠実になろうと努力したあ
とがあって/ところどころふにゃふにゃしてしまっている」。そしてその「
暖かい手紙は/もう今は私を/突き離しも/しないかわりに/手繰り寄せる
こともしない」。昔は恋のいざこざがそれなりにあったけれど、月日がたっ
ていいお友達になれる距離ができてきた、ということだろう。「私」はその
手紙をしのばせて外出しようとする。その時の描写。
昨晩一晩で
寝ててちっとも気付かなかった
雪が
十センチも積もっている
結晶が音を吸っている
なんてちっとも気付かなかった
<中略>
今夜も粉雪がすこし降るといい
雪も
むごいことも
いつしか溶かされ
なだらかになるから
この部分で詩句は次のようなことを表わしているのだろう。つまり、朝戸外
で出ようとすると一面雪だった。積もった雪が周りの騒音を吸い込んで辺り
は静か。まるで、月日が様々な過剰な想い出を吸い込んで、恋人だった男の
心を静かに成熟させているように−。
「雪」は「私と男との距離」の比喩として使われ、美しい都会の雪景色はそ
のまま作者にとっての恋愛の円満な清算を意味するものとして輝く。こうし
て空間は、作者の個人的体験によって限定された意味合いを持たされ、人生
のアルバムの1ページを満たすことになるわけである。
川本真知子の詩は、現実における自己の位置を冷静に把握し、決して高望み
することなくそれを受け入れる人の詩だ。だが、決して引っ込み思案だった
り消極的だったりすることはない。その逆だ。めまぐるしく変化する社会の
中で自分を保って生きるために、自分が体験したことはそれがどんなに些細
で小さな事柄でも必ず省察し、彼女独自の意味合いを与える。川本真知子が
幼少から培ってきた物の見方を意識的に貫くことが、彼女を、彼女自身の体
験の主人にする。これは当たり前のことではない。価値の変動の激しい社会
を生き抜くために、川本は個々の体験を言葉によっていちいち空間化し、そ
の強固な空間の中に再び自己を見出すことにより、外部の価値の変動から自
分を守ろうとしているようかのようである。現実の外の観念的な世界の中に
「逃避」する奥野雅子とは違った、今生きている現実の中にまさに自分の感
じたい現実性を実感する手段としての、詩を書く根拠がここにあると言える
のではないだろうか。
ここでぼくの好きな、若い世代の詩集を数冊スイセンしておきます。
●野村尚志「ビオラ」(七月堂)
びっくりする程素朴で無防備な心情吐露と、体験が詩に書かれ「虚構」
として成立してしまうことへの疑問が同居する複雑な味わいの詩集。
●坂輪綾子「かんぺきな椅子」(東京美術)
その時々の感性の傾きによってイメージもストーリーもしなやかに揺れる
絵本のような少女マンガのような世界。
●今井義行「永遠」(ふらんす堂)
固有名がカタカナ書きされ、現実の意味を失ってふらふら「僕」の周りを漂
い出す。都市に生きる者の不安がそのままコトバになった!
●関口涼子「com(position)」(書肆山田)
語り尽くせない感性の体験に記号はどこまで追いすがれるか。スリリングな
ことこの上ない思考実験。
他にもいっぱいありますが、またおいおい紹介していきます。
それじゃ、また!
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■ あとがき
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>えー次号から新しい筆者が加わる予定です。
>だれだれ?
>もと、某出版社の編集者で、いまはフリーで活躍されている方です。ペン
ネームは<グッドスピード>、タイトルは「一字千金の記」です。
>うーん、これは渋そうですな。
>さらに、某書店の超大物も登場予定です。
>もしかして、このメルマガ、編集者が一番小物じゃないの?
>うう・・・そ、それは言わない約束でしょ、げほげほ。
>お楽しみにー。
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