2002.01.05.発行 vol.128 [はつらつはつらいよ 号]

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■■  [本]のメルマガ                             2003.01.05.発行
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■■   mailmagazine of books          [はつらつはつらいよ 号]
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■■     創刊は1999年5月10日、現在の読者数は5536名です。    
■CONTENTS-----------------------------------------------------------
★トピックス
→ 今年から講演会、シンポジウム、書籍にかんする情報に加えて、編集責任
  者が手にしたメディア関連の書籍・雑誌を取り上げて行きます。

★「脱書店員電脳日記2」/aguni(あぐに)
→ 出版業界、誰が一番儲けているのか? 

★「一字千金の記」/グッドスピード
→ 流行語大賞って企画、いかがなものか

★マエストロ鏡玉のメディア・ジャーナル
→ 小遣いが減るかもしれない、八つあたりですか?
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■トピックス
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■『東京地下鉄日和』(トウキョウチカテツビヨリ)完成
著者名:法政大学社会学部加太ゼミ(カブトゼミ) 指導教員 山下大厚
判型・総ページ数:A5版・153ページ、発行部数:400部
日常的・常識的な目では、効率や利便の観点からしか語られない東京の地下
鉄を、観光のまなざしから捉え直し、どのようにしたら地下鉄を都市観光の
主役として演出できるかを考えた本。

詳細・注文・問い合わせは→
http://cat.zero.ad.jp/~zba60551/

■季刊「d/sign」3号 特集 テレビ
責任編集 戸田ツトム、鈴木一誌、入澤美時
発行 筑波出版会 発売 丸善出版事業部
定価:1800円+税
面白い雑誌だと久しぶりに思う。資料的な価値あり。人文書担当者の方、棚
にぜひ置いてみてください。ジュディス・バトラー、中沢新一、長谷正人氏
へのインタビュー。北田暁大、伊藤守、岡真里の小論。など盛りだくさん。
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■オンライン書店bk1に著者・出版社のための入り口が登場。
 書評やコンテンツが多いオンライン書店bk1に、今度は著者・出版社の
ための投稿ページが登場しました。ブックポータルより投稿したコメントは
原則24時間以内にbk1サイトにて確認できるという。直販が面倒な著者・
出版社にとっては便利な機能かもしれない。

出版社の皆さまへ http://www.bk1.co.jp/s/publisher/
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■ 「脱書店員電脳日記2003」/aguni(あぐに)
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本の儲けのカラクリ

 昨年売れた「儲けのカラクリ」(三笠書房)の中に「本」という項目があっ
て、本1冊の値段というものが原価と利益とにどのように分けられるか、とい
うことを説明している。出版業界の問題を扱った本を見ても、なかなかこうい
うことが書いていないので、面白く読んだ。今回はこの本のこのネタをもとに、
本の儲けというのがどうなっているのかみていきたい。

 まずはこの本にある例を使って順に見ていこう。まずは本の製作。普通の文
章中心の単行本で1500円のものを7000部刷ったとして、紙代・写植・製版代、
印刷・製本代が定価の23〜28%。著者への印税が10%。この他に装丁料・イラ
スト・写真の原稿料・撮影料が2%程度かかる。ここまでが原価。そして販売と
いうことでいえば、取次のマージンが約8%程度、書店のマージンが20〜24%程
度。そして残った出版社の取り分が30〜35%程度、となる。

 表にしてみよう。

 原稿料			10%  150円
 装丁・写真・イラスト	 2%   30円
 紙代			 6%   90円
 写植・製版		12%  180円
 印刷・製本		 7%  105円
 編集・営業		33%  495円
 流通			 8%  120円
  + 販売		     22%  330円
――――――――――――――――――――――――――――――――――
		       100% 1500円

 さて、儲かるのはどこだろう?
 1冊あたりの利益でいえば、「出版社」「書店」「印刷会社」「著者」の順
に見える。
 ということで、これに部数をかけてみる。

 原稿料			150円×7000部= 105万円
 装丁・写真・イラスト	 30円×7000部=  21万円
 紙代			 90円×7000部=  63万円
 写植・製版		180円×7000部= 126万円
 印刷・製本		105円×7000部= 73.5万円
 編集・営業		495円×7000部=346.5万円
 流通			120円×7000部=  84万円
  + 販売		     330円×7000部= 231万円
――――――――――――――――――――――――――――――――――
			1500円×7000部=1050万円

 さらにこれを詳しく見ると、以下の場所で線を引くことができる。

 原稿料			105万円
 装丁・写真・イラスト	 21万円
 紙代			 63万円
 写植・製版		126万円
 印刷・製本		 73.5万円
 編集・営業		346.5万円 ↑利益は1社独占
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 流通			 84万円 ↓競合多し。
  + 販売		     231万円
――――――――――――――――――――――――――――――――――
			1050万円

 つまり、取次や書店は割り算をした途端に、利益の順位から脱落してしまう。
無茶苦茶単純化してしまうと、取次が約50社、書店が1万店あるとする。
 このとき1社、1店あたりの利益をかなり乱暴に計算すると、
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 流通	84万円/50社=1万6800円
 販売	231万円/1万店=231円
――――――――――――――――――――――――――――――――――
となってしまう。

 書籍1種類あたりの利益でいえば、「出版社」「印刷会社」「著者」「製紙
会社」の順である。まあ、当たり前といえば当たり前だ。

 もちろんこれまでの計算は作った分がすべて売れた場合、ということだから、
もちろん返品のリスクはある。これは書店・取次・出版社が負う形となる。
(最近では出版不況ゆえに、著者が負う場合があるらしい。つまり売れた分だ
け原稿料を支払う、というような場合だ。)従って、刷った分が売れない「出
版不況」の時代には、一番手堅く利益をあげているのは印刷屋さんだったりす
る。

 本という商材はかねがね多品種少量販売と言われているが、当然、作り手に
近ければ近いほど少品種を大量販売した方が儲かるし、読み手に近ければ近い
ほど、多品種少量販売のモデルにならざるを得ないことがわかる。しかし読者
にも本を読む時間は限られているし、何より本は読まなくても死なない。結局、
売る側も流通させる側も少品種に絞り込んで大量販売したほうが儲かることは
間違いない。

 かつて、同じような本を並べていると言って「金太郎飴書店」が批判された
けれど、これまでの数字を見ると少なくともチェーンの書店は同じ本を売って
いた方がいいように思える。数の売れる本を揃え、独自性をアピールして売っ
て行ける仕掛けを考えられれば、それは書店にとっても出版社にとっても一番
いい形なんではないだろうか。

 そうなると弊害となるのはやはり現在の委託制度と再販制度、ということに
なってしまう。出版社が本を出さない。書店が売ってくれない。そんな相互の
不満はビジネスモデルの違いからくるものなのだろう。思いきって仕入れて、
売れなかったら安くして売る。そんな商売の仕方が一番正しいのだろうな、と
思う。しかし今はそれができない。例えば値引き販売を奨励してドラッグスト
アみたいな書店ができたら、それに対抗するために高級な本(全集とか?)ば
かりを扱う書店ができたりすればいい。そんな書店には出版社も優先的に配本
したり、特別に安くして予約を取ってもらったりできるだろうから、これはこ
れでなかなか楽しい状態なんではないだろうか?

 結局、二大取次が頑張って競い合った結果、どの書店にも書籍が行き渡るよ
うになってしまったのだ。この取次の合併でも起こらない限り、なかなか個性
ある書店が勃興するのは難しいだろう。しかし新年ということもあって初夢と
ばかりに夢想してみてもいいのではないか。

 出版の商売としての面白さはともかく、目的は人間の考えたことを共有化し
ようとするコミュニケーションの役割を担うものだから、私は既得権益に縛ら
れるような構造よりも、もっと自由さがあるべきだと考えている。そしてそれ
は人が望むなら、遅かれ早かれ何らかの方法で実現するだろう。(その萌芽は
すでに見えているような気がします。)

 しかしさて、どこまでがいつごろ、現実の話になるだろうか? この連載で
はこうした21世紀型出版ビジネスの展開を追って行きます。

 今年も[本]のメルマガをよろしくお願いします。

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■「一字千金の記」/グッドスピード
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「誤植の教科書」

 昨年暮、大々的なニュースにもなった教科書の誤植問題。教科書を発行
している出版社・東京書籍が、昨年年2月発行した中学公民教科書『新し
い社会 公民』のなかで、新潟県中里村の「雪国はつらつ条例」を「雪国
はつらいよ条例」と誤って記し、自治体名も「中里町」と記していたのだ。
 あらゆる出版物のなかでも、もっとも誤植がゆるされないのは教科書と聖
典だろう。その教科書が決して小さくはない誤りをおかしていたことがあか
るみに出たのだ。通常の出版物でもなかなか見かけない誤りだ。まさにこれ
以上ないというほどの教科書的な誤植ではないだろうか。

 同社は、村からの抗議を受け、教科書の採用校に訂正を送った次第。
「雪の障害を克服し、雪と共存、雪を資源として積極的に活用する」ことを
通じて「村民がはつらつとした活力ある村づくり」が目的の条例だったのに。
 特定の出版社を非難つもりはさらさらないけれど、出版社にとって教科書の
発行はドル箱。なのにこんな誤植をしているようじゃ話にならない。気合を入
れるべし。
 ところで、もうひとつ腑に落ちない点がある。それは誰がこの誤植に気づい
たかだ。教科書を監修・執筆した人たちは気づかなかったのか? 読者である
中学生は「なんか変だぞ」と思わなかったのだろうか? 教科書は誰も読まな
いという皮肉のような現実があるのだろうか? もしかするとそっちのほうが
問題なのかもしれない。
 誰も読まない教科書ならば、あるいは、たとえ読んでもはかばかしい反応が
ないのならば、検定など気にせずに、それこそ自由に教科書を書いてしまえば
いいのに、と思う。そうすればずいぶんと生産的な誤植になるはずだ。

 こんな感じでことしもよろしくお願いします。

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■「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
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経験の必要性 vol.5

 知り合いが失業給付をうけるために申請に行ったときの話し。彼女は求職中、
出産のために申請に行けなくなり、子どもも2才近くになって動けるようにな
ったので、今回改めて行ったという。そこで求職中であることの証明に、どこ
の会社に行って、どんな担当者と会ったかを記入しろと言われたという。うー
ん、ヤツらの「本当に求職しているんですか?」と、最初っから疑った態度を
本当に憎む。
 また一度行ったことがある人はご存知だろう、あのビデオ。「手当を給付中
 アルバイトなりで金銭を得ることは、法律で罰せられます」とオレが法律っ
て顔をした男が出てくるのですが、失業者を犯罪予備軍みたいに扱う態度は問
題だと思う。ハローワークは求職の部門と失業手当の給付の部門は別々にして
求職の部門は民営化すべきだと思う。

 2004年1月から実施される配偶者特別控除の廃止の件。2002年12月29日付東
京新聞は、廃止に伴う家庭への影響を検証してくれてとても、ありがたかった。
「女性が社会で働く妨げになる」という理由などから見直し議論が続いてきた
問題だが、今回の決定は単なる税収確保の手段にされた色合いが強いと指摘す
る。この記事中、特別控除のあり方が見直されてきた経緯と目的を、「家族の
暮らしと構造改革」をテーマに、2001年度の国民生活白書をまとめた内閣府の
中垣陽子さんへのインタヴューがあり、長いがその一部を引用する。

・・・・・・
新聞「控除とは、税金を払う上で負担になっている要素を取り除く制度ですね」

中垣「『税負担能力の減殺を調整する』という控除の本来の意味からすると、
配偶者特別控除の対象である収入の少ない妻や専業主婦は「経済的な負担」と
いう位置づけです。本当にそうでしょうか?  家事は、もしも妻が行わなけ
れば、お金を払って購入することになるものですよね。例えば、妻が料理を作
らなければ、外食をしますよね。妻の仕事はお金を生まないけれども、それと
同じだけの価値を生み出しているんです。また、夫の稼いでくる給料は妻のサ
ポートがあってのものでしょう。にもかかわらず、税制上の扱いは養っている
子どもと同じ。専業主婦の女性たちはそれで納得するのでしょうか? 私は専
業主婦も堂々とその労働価値、経済的な効果を主張してもいいと思うんです。
家事労働が対価を払って手に入れた場合と同様の、また、家族にはそれ以上の
意味があるとすれば、その働き分には課税する価値があるんです。税金を徴収
するのは事実上困難ですが、税金を課すことができるぐらい経済的価値のある
労働者に、逆に控除が適用されていることが最大の矛盾なんです」
・・・・・・

 家事労働の価値を国に向かって主張して税金を課されたい女性ってのが実際
いるのか。収入の少ない妻や専業主婦で、中垣氏が言うように「税制上の扱い
は養っている子どもと同じなのは許せない、私も税金を払うわ」とか感じる人
っているんでしょうか。財布をひとつに一緒に生活しているなら、税金が増え
るのはとにかく困るというのが普通ではないのでしょうか。
 ともに暮らしていることへの意識の低い、奥さんを「養っている」意識を持
っているダンナってのはいまだに多くいるので、その無理解にムカツイている
女性は多くいるでしょうが、それと税金とは別の話です。つまりバカなダンナ
にたいして教育しなおすか、あるいはいかに復讐するかを考えるという方向に
いくだけだ。

 さらに怖いのはこの部分「家事労働が対価を払って手に入れた場合と同様の、
また、家族にはそれ以上の意味があるとすれば、その働き分には課税する価値
があるんです。税金を徴収するのは事実上困難ですが」。可能ならば、専業主
婦からも徴収したいというこの本音に、戦慄をおぼえる。

「a 皇帝に所属するもの  b ミイラにされたもの  c 飼いならされ
たもの  d 小豚  e 海の精  f 伝説上の動物  g 徘徊する犬 
h 現在の分類に含まれるもの  i 気狂いじみた行動をするもの  
j 無数にいるもの  k らくだ毛の大変すばらしい筆で描かれたもの 
l その他  m 水さしをこわしたばかりのもの n 遠くからきた蝿に似
ているもの」
『脱学校の社会』(東京創元社)のなかで、ボルヘスのテクストにある「想像
上の中国の百科事典の一節」というこの文をひきつつ、イヴァン・イリイチは、
述べた。「このような分類は、誰かがそれは自分の目的に役立ちうると思わな
ければありえないだろう。この場合、その誰かは徴税人であったと思われる。
少なくとも彼にとって、この動物の分類は、意味をもっていたにちがいない」。

 イリイチのこの一節を読んだとき文字通り、はらわたがよじれるほど笑った。
だってボルヘスはこのテキストをエキゾチックなものとして、想像のものとし
て取り上げたのだろうから。それはさておき、現在の日本の徴税人たちも、彼
らだけに意味がある分類表をもって、私たちを分類する。そしてわけのわから
ない論理で私たちを値踏みする権限を与えられている者を見て、私たちは笑う
こともできず、ただ唖然としてしまう。

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編集後記
あけましておめでとうございます。
新年早々、発行遅れましたこと、お詫び申しあげます。
本年も[本]のメルマガをどうぞよろしくお願い申しあげます。(鏡玉)
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