1999.11.5.発行 vol.14  [カリスマ書店員とお呼び! 号]

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■CONTENTS--------------------------------------------------------- 
★トピックス

★「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
→無理に付けられる結末とは……今回はちょと内省的?

★「私小説的書店員」/キウ
→自分に<様>をつける人たちの生態を描きます

★「美人書店員の赤裸々な日常」/あくびちゃん
→あーん、ズルーイ、書店員だって……

★「一字千金の記」/グッドスピード
→辞書編纂作業から見える世界とは?
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■トピックス
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■今週の「古本大好き」

*『芸術と聖なるもの』1980年5月、せりか書房。
世界的に著名なオランダの宗教史家であるヘラルデュス・ファン・デル・
レーウ(1890-1950)の主著。舞踊、演劇、詩、絵画、建築、音楽におけ
る聖なるものの表現を論じ、神学的美学の枠組みを探求した名著である。
著者のこだわりが一番見えるのはやはり舞踊を論じた章。神も世界も人間
もすべては「躍動する」という生命の本源的様式によって結ばれている、
と彼は直観する。原典はオランダ語で1932年に刊行され、55年に改訂され
たが、本書はそのドイツ語訳の英訳の日本語訳。度重なる他言語への移し
替えにより、原著のニュアンスがどのような変容を被ったかはわからない
が、論旨がより研ぎ澄まされた部分もあったのではなかろうか。重訳を避
けていたら、日本人は本書を出会うことすらなかったかもしれない。英訳
版に付されたエリアーデの序文も訳出されているが、賛辞を惜しまぬ厭味
のない姿勢がすがすがしい。小倉重夫=訳。
[データ]神保町小宮山書店にて、83年6月刊の初版第二刷(当時は3500
円)を確か3800円程で購入。まあまあ美本。カバーの日焼けはやむを得ま
い。

※著者の本はアマゾンで検索しても(Leeuw,Geraldus van der)今や一冊の
英訳もヒットしないばかりか、和書で入手できるタイトルももうないのだ
が、上記以外の訳書には次のものがある。

『宗教現象学入門』1979年10月、東京大学出版会。田丸徳善・大竹みよ子
=訳。ドイツ語訳からの重訳。東大よ、基本図書だぞ。エリアーデばかり
何回も選んでないで、これを復刊してくれー。

『時の現象学U』1991年6月、平凡社。本書に論文「根源の時と終末の
時」森哲郎=訳が収録されている。今や幻になってしまったエラノス叢
書、その第二巻。非常に水準の高いシリーズだったにもかかわらず、読者
も含めた市場の冷遇と高定価の影響で、途中から規模縮小を余儀なくさ
れ、欠番を重ねて終息。そればかりか今年になってB本として在庫処分さ
れた悲劇の叢書である。私はこの機会に購入していなかった巻を正価の半
値でジュンク堂にてゲットしたのだが、嬉しかった反面、なんともやりき
れない気分だった。今世紀の思想的財産と言うべきエラノス会議はこう
やって忘れられていくのだろうか。市場からの消滅が文明からの消滅にス
ライドしないことを強く願いたい。

*『ヘボン書簡集』1959年10月、岩波書店。
日本語のローマ字表記のルールをつくった功労者。ヘボン式と言えば誰し
も聞いたことぐらいはあるのではなかろうか。ヘボンは百年前の日本語な
まりで、今ならジェイムズ・カーティス・ヘップバーンと書かれるだろ
う。そう、ヘボンはヘップバーンさん(1815-1911)というアメリカから
来た宣教師なのである。1859年に来日後、聖書の翻訳事業のほか、医師で
もあった彼は無料診療所を開設。老中から乞食まで分け隔て無く診察した
という。さらに和英辞典を編纂、国語史上大きな節目となった。明治学院
の原型をつくったのもこの人。本書簡集では渡来直後から死去の一年前ま
でにアメリカの友人、知人に書き送った手紙を読むことができる。「ほと
んど裸体に近い状態で料理をしたり、洗いものをしたりしている召使いた
ち」に服を与えた、なんていうくだりに出くわすと、日本人の自分も驚い
ちゃうよね。高谷道男=編訳。
[データ]神保町小宮山書店にて初版第一刷を1500円で購入(59年当時
450円)。まあまあ美本。函の日焼けはやむなし。

*『無限の逆説』1978年1月、みすず書房。
著者ベルナルト・ボルツァーノ(1781-1848)はチェコスロヴァキアの論
理学者。フッサールによる再評価がよく知られているが、本書は著者の遺
作にして、本邦で唯一の訳書。集合論の古典である。無限は単なる抽象的
概念なのではなく、現実の至るところにも「実在」すると彼は説く。日本
でも近年、数理哲学による神の存在証明を紹介した新書が売れたりした
が、もっとも美しい証明はここにある。碩学下村寅太郎による序は短文な
がらボルツァーノの生涯と功績を手際よく要約。藤田伊吉=訳。
[データ]神保町明倫館書店にて初版第一刷を6500円で購入(78年当時
2200円)。まあまあ美本。以前もこの古本屋の話が出たが、得意分野はや
はり高値。得意であればこそ仕入を積極的にして安くしてほしいところ。
だって復刊されたら6500円より絶対安いはずだもの。

※今週の余談。邦訳書は最新刷を買うのがベストだ。というのも、初刷の
ヒドイ誤植もたいていは訂正されているから。版が改まるわけでもないの
に刷を重ねるたび、結構な量もしくは質的に決定的な直しを入れる訳者も
いる。初版にこだわる読者が、文芸書とは性質が違うと気づいていらっ
しゃればいいのだけれど。

■文庫化
さる出版社の人の発言。「うちが・・を文庫化したときは、かなり危ない
状況になったと思ってくれ……」。そう、売れている単行本の文庫化は短
期収入を得る手軽な道、でも結局、自分の首をじわじわ締める行為でもあ
る。要は禁断の麻薬。最近、話題の文庫化を見ると――

@『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キース 早川書房
これはロングセラー中のロングセラー。ついでにダニエル・キイス文庫な
るものを、どーんと立ち上げた早川書房。さすがにもう、単行本では売れ
なくなってきたのか、苦し紛れの一手なのか、ちょっと気になる所。頑張
れ、推理とSFの雄・早川書房さん。

@『ブエノスアイレス午前零時』藤沢周 河出書房新社
近来希な評価を受けた芥川賞受賞作の文庫化。しかし、こりゃ早過ぎませ
んか? まだ出て1年ちょっとでしょう。頑張ってね、若手作家の守護神
・河出書房さん。(そういえば、売れなくなった若手作家をポイポイ捨て
去る他の文芸出版社が、J文学を批判するのは笑止千万。育児拒否の馬
鹿ッ母が他人の子育て批判するようなものでしょ。恥ずかしくないの?)

@『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ 集英社
コミックのヒット一発で10億円の純益と言われるこの出版社に微塵の危
機もないだろうが、その利益でジョイス・プルースト・クンデラといった
読書人垂涎の良書を出し、さらに日本の若手作家の育成を地味に続けると
いう、言わばステイタスとしてのサイクルが、どこまでもつかはちょっと
気がかり。すべての読書人が応援してまっせ、集英社さん。もし滞ったら
神保町から所払いや!

■酒井直樹氏 講演会
来る11月15日午後7時より、青山ブックセンター本店において、あの
ベネディクト・アンダーソンと同窓で、主著に「日本思想という問題」な
どのある酒井直樹氏の講演会が開かれます。無料。お申し込みは以下まで。
03−5485−5513
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■「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
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第6回 ジャーナリストの使命、その他

○ジャーナリストの使命
 いやぁ、文章をまとめるってのはすごい力業ですな。何がすごいって結
論があること。だいたい生活のなかで起承転結とか、序破急と展開を認識
することはありません。人生における起は誕生、結が死で、まんなかの部
分は承と転、という風にはなっていません。ほとんどが承と転の世界で、
どれが承か転かも分からないのが現実かなと思います。転々ばかりの人っ
てのもよくいますが、起と結は実際は闇の中で、他人の人生のようです。
これを自分のものにするために、勝手につくっちゃうのが起であり結の部
分。

 前回の私の文章を「オルタナ系」と称してくれた人がいます。レッテル
を貼るという行為は、貼る人間にとっての結論づけなわけで、貼られる側
としては「おいおい勝手に結論づけるなよ」という思いも多分にあるわけ
です。レッテルをつけて終わりだとすると、それはそれ以上「思考しない」
ことと同じ。それは偏見がおこる現場であると思う。レッテルをつけると
いう行為はとても暴力的なもので、レッテルづけをするなら、その論理的
な根拠をしめすこと、勝手にレッテルづけされたほうは、その根拠に内在
する偏見を是正する義務を負っているんだとぼくは思います。ところで「
オルタナ系」ってなーに?

 文章を書くということ、人と話すということは、無意識にあるおのれの
偏見、暴力性、論理性の不備を露呈させる非常におそろしい行為なのです。
いのちのやりとりなのです。ぼくは非暴力主義者だから、書く文章に結論
がない。だからオルタナ系といわれるのかしら? 次回からマハトマ・ガ
ンジーの日本周遊記というコーナーにしよう。


○しつこく原発
事故直後、NHKの子ども番組で「原発事故を考える」をやっていました。
男の子が「やっぱこんな危ないのやめた方がいい」と言うと、横のホスト
のお兄さんが「でも日本の消費電力の何%は原発でつくられていて、これ
がないと君たちの生活はとても困っちゃうんだよ」と答えるというやりと
りがありました。原子力について語られるとき、どこにでもありそうな会
話ですが、やめた方がいいという言葉がテレビにでるということはほとん
どないことを考えると、この番組は画期的でした。
 
 「こわいから、危ないからやめた方がいい」という発言はもっともなこ
とで、その実感は、生活の必要性をいくら強調しても。本来はなくすこと
はできないと思います。しかしそういった恐怖を感じる対象にもいつか慣
れてしまう。男の子もいつか「やっぱあったほうがいい」とか言うかもし
れない。ここで問われるのは、慣れるということ、忘れるということ自体、
罪があるんだと言えるかどうか、ではないでしょうか。原発の問題に限ら
ずこれをいうことができれば、それが現代の新たな倫理になるとぼくは思
っています。

○「それはエノキダ!」(週刊モーニング)風に
週刊の少年マンガ誌って1年間に52号までと決まってると思うんですが、
最近新年号、1号が12月の初旬にくるようになってます。これだけなら
まだいいのですが、1号は正月号ということで、マンガ家の人たちが羽織
袴で羽子板なんかもって表紙に登場するという少年Jのお約束が、とても
許せないのです。私の計算でいくとこのままでは40年後、8月下旬に新
年号が出ることになります。夏にモチつきする前に、少年マンガ誌を発行
している大手出版社は、至急53号・54号を出すとか、合併号をなくす
とかで調整して、1号を年末にくるようにしてください。難しいのかな。


○おすすめの月刊誌(もう売ってないかな?)
朝日新聞社の月刊誌『論座』1999年10月号はとても面白かったです。特集
「子供の学力低下」に始まり、東浩紀さんと宮崎哲弥さんの対談、宗教を
めぐる別役実さんと宮崎学さんの対談、法輪功をめぐるモーパンフさんの
考察、『もてない男』(ちくま新書)の小谷野敦さんの小論など、とても
盛りだくさん、お買い得です。ちなみに小谷野敦さんが、出版社(多分新
曜社あたりか?)は分かりませんが、江戸についての本を年内に出される
ということをお聞きしました。田中優子さん他の江戸学を批判する内容と
聞きました。


○「算数・数学」本
『数の悪魔』(晶文社)が1998年暮れから売れつづけて、その後算数・
数学の本があまた話題になっています。『数学者が新聞を読むとき』(J
・バウロス著・飛鳥新社)という本が昨年出ましたが、このブームには乗
れたのだろうか。本のはじめから最大多数の最大幸福という倫理学−政治
学の重要課題を、ケーキを公平に数学的に配分することから考えたり、あ
らゆる新聞記事にでそうな話題を数学的に読み解く非常に面白い本です。
こういうのが売れて欲しい本です。数学の本で思い出すのは『オイラーの
法則』(海鳴社)。8年ぐらい前でしょうか出版されたとき、その内容の
高度さ・専門性を越えてすごく売れたのを記憶しています。僕らの「数学
・算数ができたい症候群」は、このすべてが専門化され、複雑さに満ち満
ちてしまったこの世界を、一つの公式で切り取ることのできる明解さを求
めることに由来しているのでしょうか。

 おわりに
ようやく自分の文章を「ぼく」で書けるようになりました。自分をどうい
う言葉であらわすかって、けっこう迷いませんか。オレじゃないし、私じ
ゃないし、という具合に。
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■「私小説的書店員」/キウ
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「金返せ」

 ちょうど、会社を辞めることに決め手から数日経って、あと一ト月だとい
う思いの中で、どうにか自分を支えていた頃、立て続けに金を返して欲しい
というお客様にあたった。どうにか返さずに済んだのだが、かなり参った。
退職を決意するところまで心身ともに衰弱していた私には大分応えた。

 まず一日目。女性のお客様が語学のCD2本とMD1本を持ってきて取り替え
て欲しいと言う。取り替えて欲しい商品名が小さな紙切れに書いてある。い
ずれも語学教材でなんとなくそれらしい。
 「レシートはお持ちですか?」
 当然私はそう訊く。レシートがなければうちで買ったことは証明できない
からだ。お客様は持っていないと言う。でも、事前に電話をしたらうちの人
間が取り替えてくれると言ったらしい。まずここで疑わしく思う。うちの店
はそのような電話を受けたら必ず専用の用紙に起票して事務所の所定の位置
にためておく。そこを確認してみたが用紙はない。その日残っていた社員に
訊いてみたが誰も受けていない。しかし、しつこくそのお客さまはきょう電
話で受けてくれたのだと言う。とりあえずその紙切れに書かれている商品を
さがしてみたが在庫がない。それなら取り寄せて交換してくれと言う。あや
しいと思いながらそれでは注文の伝票を作りましょうということになって、
レジ・カウンターへ。同額かそれ以上の商品でしたら交換しますということ
で、検索機で交換したいという商品を調べ値段を出す。その3本の教材の合
計金額に満たない。じゃあ2本分でいいと言う。大体その2本があやしすぎる
のだ。同じ商品のCDとMD。普通そんな買い方をするだろうか。しかしスリッ
プは抜けている。もうその頃になるとこちらもかなり露骨に疑わしそうな目
でお客さまを睨んでいる。注文の伝票を書きつつ、お金は注文品の代金に充
当しますと言うと、その日に返してくれると電話で受けてくれたと言いはじ
める。そこまで来たらもうこちらは譲らない。どうせ嘘の名前や電話番号を
書いて取りに来ないつもりだ。あくまで御交換なのですからお金をお返しす
るわけには参りません。なぜきょうお金を返してもらわなければいけないの
ですか。なにかお困りになるのですか。と問いつめると、じゃあいい、その
かわり名刺をくれと言って私が差し出す名刺をふんだくって走り去ってしま
った。きっとあの3本の教材もうちの商品だったに違いない。持っていかれ
てしまった。

 数分後、文具売り場からアルバイトが私のところまで来た。ちょうど文具
の社員がいない時間帯だった。そしてお金を返して欲しいと言うお客さまが
来ていると言う。きっとさっきの人に違いないと思い、文具売り場に駆けつ
けながら、容貌などを確認してみるとますますその様子。少し怒りを含んで
文具売り場に駆けつけたときは逃げ去ったあとだった。「私は妊娠してるの
よ」と言いながら交換してくれと言ってきたシステム手帳をレジに残しトイ
レの方へ行ってしまったとのこと。一応女性アルバイトに女性トイレを見て
もらったが、誰もいなかった。教材のスリップがゴミ箱に捨ててなかったか
も見てもらったがなかった。

 ともかくまず間違いなく詐欺であろうということで、私の名刺を持って行
っているので、それを悪用されることを防ぐために周辺のチェーン店に連絡
を入れた。幸いその後そのお客さまは現れなかった。

 まあ、その人の手口にはかなり隙があり、滑稽感すらただよっているけれ
ど、翌日も、お金を返して欲しいという人にあたったときは、かなり閉口し
た。

 その事件があった翌日の夜。男性のお客さま。買った本がページが抜け落
ちていて乱丁だから取り替えて欲しいと言う。かなりの高額書。5万近くす
る。在庫はない。あきらかにうちで仕入れたことがない商品だった。しかし
そのお客さまは、うちで一度買い、乱丁だったので取り寄せなおしてもらっ
たら、またその本が乱丁だったと言う。だから当然レシートはもうない、と
いうのだ。それなら取り寄せなおしたときに注文伝票を起こしているはずだ
から、お客様が取り寄せてもらったという月を中心に、数カ月分調べてみた
がその形跡はない。同じ商品がないなら、お金を返して欲しいと言いはじめ
る。かなりの専門書なので、本店になければないだろうと確認してみたが、
本店にもない。もう夜だったが、出版社に電話で確認したところまだ人がい
て在庫があることを確認してくれた。ただし倉庫が離れたところにあり、も
う閉めてしまっていると言う。金曜日の夜。月曜になるまで開かない。取次
ももう終わっている。お客様はあした出張先に持って行く必要があるので、
こちらで今日中に手にはいらないならお金を返してもらって他の店に買いに
行くと言う。手の打ちようがない。途方に暮れていたところ、電話で出版社
と話していた社員が乱丁で抜け落ちているページを出版社からお客様の出張
先にファックスしてくれるとのこと。後日ちゃんとした商品は取り寄せてお
くと言うことで、納得して帰っていただいた。

 買った店を勘違いしているのではないかと思うが、前日にあのような詐欺
と思われる行為があったので、もしかしてかなり巧妙な詐欺なのでは、と心
も動いてしまう。もしそうだとしたら、前日の事件など子供騙しだ。

 すごく世相が悪くなってきているように感じた。いずれはそのような社会
の現場に戻っていかなければならないと感じながら、しばらく休ませて、と
いう気持ちで会社を去った。
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■「美人書店員の赤裸々な日常」/あくびちゃん
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羨望・カリスマ書店員と呼ばれたい?!

人は自分にはどうにも真似の出来ない人間のことを、カリスマと呼ぶ。呼ぶ
といっても面と向かって言われるわけではなく、なんとなく思われるのが普
通だ。もし、会話の中で「カリスマ、今日の合コンどうする?」と言われて
いるなら、間違いなくカリスマ扱いされていない。その合コンは行かない方
が無難だ。(一部抜粋)
                    『STUDIO VOICE』(1999・7)
                     特集:ライフ・イン・ア・ノーザン・タウン
                     VO!CE[of voice]より 
そう、世の中にはカリスマなるものがここ最近溢れており、どこもかしこも
カリスマだらけ。326のイラストで表紙を飾る『an・an』1999.11.5号で
は「あたなの本当にやりたい"仕事"は、何ですか?」と題し、デザイナー、
雑貨屋さん、ミュージシャン、美容師etc…と、今をときめくカリスマ達に
インタビュー。誌上をにぎわすカリスマもどき達を見て「カッコイイわぁ。
私もああなりたい」と漠然と思っているバカ者、もとい、若者は多いはず。
そんな迷える子羊のカリスマになりたい願望を煽った特集だ。
本来カリスマとは
* charisma (神の賜物の意)
             超人間的・非日常的な資質。
             英雄・預言者などに見られる。(またまた広辞苑の豆知識 )
という意味だ。だから世界中を見渡しても数えるほどしかいない。
いや、数えるほどもいないのだ。ましてや、『an・an』の読者がカリス
マになれる可能性は限りなくゼロである。第一、「美容師ならその人の探し
ている自分をみつける手助けができる。」なわけないでしょう。自分のやり
たい事が見つけられない者に、他人を見つけることなどできますか?
と、熱くなりすぎたところで本題というか結論。
だって、ずるいじゃない?自分がどんな事をしたいのか考えることはとても
大切なことだけれど、カメラマンだとかお花屋さんだとか、見てくれや響き
がいい職業ばっかりで、なんで書店員がないの?
出版業界の中でも人気の編集だって、取り扱う書店員の知識が足りなければ
せっかく作った本もそのままお蔵入りというケースも珍しくないし、棚のレ
イアウト次第で本の売れ行きも変わっていく。常に時代に敏感でなければ、
お客様の問い合わせにも受け答えができないし、逆に読者が何を求めている
かを掴むことができれば、編集者に「何が売れるかな?」と聞いてもらえる
かもしれない。
制服ダサいし、なんか陰気そうな人が多いし、決して華やかな仕事ではない
けれど、書店員の担う責任は大きいのである。

最近のメルマガが、シリアスな話をしているのも未来の書店員に、そして読
者に、より良い環境を提供できないだろうかという魂の叫び故なのだ。です
から、やる気のある、情熱を持った人材を切に求む!!!!!次第であります。

でも、そうは言ってもちょっとだけカリスマ扱いされてみたいよね。
ヘアスタイルや着ているものを真似るように、棚も真似されてみたい…。
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■「一字千金の記」/グッドスピード
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まずは前回の休載を読者の皆さん並びに関係者の皆さんにお詫びいたしま
す。

さて、この間、某辞典の編集の仕事をしました。編集といっても極めて実
務的な仕事で、入稿・初校・再校という基本的な作業です。しかしながら
、辞典の編集というのは、逆にいえばそうした実務的な作業に重要な意味
があるともいえます。というか、辞典の編集とはそうした校正の積み重ね
こそが、辞典を作るということでもあるように思います。
文字通り大変な作業でしたが、極めつけは「用語索引」の作成でした。
「用語索引」には「アイウエオ順」「ABC順」「キーワード索引」とい
う3種類の索引があり、いずれの索引もその作成には大変な労力を要しま
した。

当然のことながら、索引とは中身(本文)ができてからでないと作れない
ものですし、本文に載っている用語と索引を間違いのないように一語一語
チェックしていかなければなりません。それだけでも気の遠くなるような
作業なのに、編集スタッフの手を煩わせ、悩ませたのは「キーワード索引
」の作成でした。
「キーワード索引」というのは、たとえば「〜委員会」「〜学」「〜運動
」「〜主義」といったキーワードにそった索引のことです。用語を引く側
にとってはとても便利な索引なのですが、これを作るのは簡単ではありま
せん。なぜなら、この索引の作り方に編集センスが問われるからです。
たとえば「権」というキーワードです。まず、索引のベーシックなデータ
は機械的に本文に載っている用語から抽出されてきます。著作権、自衛権、
肖像権、知的所有権といった用語のなかに「〜世界選手権」「〜日本選手
権」という用語が混じってきます。後者の「〜選手権」は削除です。なぜ
なら「権」の意味するレベルが違うからです。
もっとやっかいなのは「法」です。法律の「法」と方法の「法」がごちゃ
混ぜになって抽出されてくるからです。さすがにまだコンピュータもそこ
までの力を発揮できません。議員立法、外為法、独禁法、風営法、破防法
といった用語にマルチ商法、遠近法、ラマーズ法といった用語がなんのて
らいもなく肩を並べているのです。面白いし、楽しいといえばそうなので
すが、一目瞭然の用語もあれば、法律書をひもときながら一語一語確認し
ていかなければならない微妙な用語もあり、これらの確認作業は判断力を
つかさどる理性を溶解させるほどです。しかしながら、今回「問題」とい
うキーワードにはスタッフによる確信犯的見識が織り込まれています。二
〇〇〇年問題、クルド人問題、東ティモール問題、人口問題、北方領土問
題、環境問題といった用語に爆笑問題が並んでいます。この事態を「大問
題」だという方、その言葉も飲みこんでしまうほど、辞典には包容力が存
在することも事実なのです。たしか大学時代、必修の英語のはじめての授
業で教師が「辞書など信用するな」と話していたことを記憶しています。
その真意は、辞書に収まらないほど言葉はどうしようもなく豊かでわがま
まであるということだと思います。
(第3回・了)
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■あとがき
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>書店や書店員って結構、毀誉褒貶にさらされているんだよね。
>え、例えば?
>有名な話では、名古屋に紀伊国屋が出来たときに、今福龍太という文化人
類学者がそこを見に行って朝日新聞に書いた「これは知の廃墟だ」という文
句・・・
>ひえーそれは凄いこと書きますな。
>勿論、それはその人なりの感想・批評だからいいんだけど、問題は、なぜ
書店がそうなってしまったのか、全く考えようともしないこと。単に表面を
なぞっての罵倒が書いてあるだけなんだよね。
>なぜ、を問うのが学者なのにね、その人ってもしかしてエセ?
>これと対照的なのが吉田秀和先生。これはかなり昔に八重洲ブックセンタ
ーがオープンしたときのことをエッセイに書いているんだけど、そのとき意
外に店の人の商品知識がないことを綴りながら、そう言えば店員が若い人ば
かりだ、これは給料が安いとかそんな原因じゃないか・・と書いてるんだ。
>どひぇーッ鋭いね。ずばり核心突いちゃってる。
>そう、これが一流と二流の違いなんだけど、それにしてもこの書店員の待
遇の悪さ、今の出版不況の根本原因のひとつだよね。
>草思社の社長も言ってたけど、構造的に書店の取り分異様に低く抑えちゃ
ったから、本を売るのに最も肝心な書店に人材が行かず、読者離れが加速し
たってやつだね。
>そう。しかも某大手出版社は、その莫大な利益を、書店全体の取り分を増
やして健全な業界を育成する方向ではなく、書店や流通支配の道具に使って
この業界ますますおかしくしちゃったんだ。その筆頭がG−10という奴な
んだけど。でもこれウインダムういきょうネタだな。
>(ういきょう)う、なんだなんだ、また何か悪事か。フフフ俺の出番か?
>起こさない方がよかったんじゃあ……
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