1999.12.5.発行 vol.17  [でも説得力はある 号]

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■■  [本]のメルマガ                              1999.12.5.発行  
■■                                                     vol.17  
■■       mailmagazine of books        [でも説得力はある 号]  
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■CONTENTS--------------------------------------------------------- 
★トピックス

★「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
→躁状態のマエストロ、何故かもつれる国どうしの関係を解きほぐします。

★「一字千金の記」/グッドスピード
→活字に見られるトホホな間違いを取り上げます。

★「求職と読書の日々」/キウ
→書店員廃業のため、「私小説的書店員」が改題。[本]のメルマガとか言っ
ときながら今まで連載では無かった「普通の書評」をつづります。

★「美人書店員の赤裸々な日常」/あくびちゃん
→今回は、人と人との<危険な関係>に迫ります。
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■トピックス
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■話題の新刊、期待の近刊[99年12月4日現在]

!=新刊、#=近刊。誤記誤報ござしましたらお許しください。

#ゲーテ『色彩論[完訳版]』工作舎、12月10日発売
生誕250周年記念出版。池内紀による『ファウスト』の新訳も集英社か
ら全2巻で刊行されはじめた(@2200円、A2000年1月下旬刊)
が、一番のニュースといえば工作舎から刊行される『色彩論』の完訳版が
とどめをさすことは間違いない。邦訳では潮出版社の全集版と岩波文庫版
(品切)しかなかったが、今回の完訳版はさすが工作舎と言おうか、新た
な訳出で、科学史の古典である原著の壮大にして芳醇な魅力を最大限に引
き出し、別冊にカラー図版集を配置する堂々のA5判本文2分冊の豪華函
入本として演出、マーケットに媚びない個性ある版元のプライドと自信に
あふれた会心の出来栄えとなった。本年の出版界における読者への最大の
プレゼントになったことは確実だ。ゲーテ自身がもっとも将来的に重要だ
と自負していた最大の遺産がついによみがえる。
高橋義人、前田富士男ほか=訳。本体予価25000円。高額だが納得で
きる愛蔵版である。ISBN4-87502-320-0
http://www.kousakusha.co.jp

#『ハンムラビ法典』リトン、12月中旬発売
目には目を、という一節があまりにも有名な、約4000年を溯る世界最
古の法典として知られる古代メソポタミアの法典の新訳。1901年にイ
ランで発見された楔形文字のアッカド語で刻まれた石碑の原文からの邦
訳。古代オリエント資料集成の第1巻として刊行された。中田一郎=訳・
注解・解説。A5判、本体3000円。ISBN4-947668-41-5

!『新約聖書・詩編』DHC、発売中
オックスフォード大学出版局による大胆な改訂版聖書が登場。こんにちで
は差別的ニュアンスがこもっているジェンダーや人種などをめぐる表現を
改め、新たな聖書像を提出する。A5判、本体7800円。
ISBN4-88724-170-4

#『ユダヤ学のすべて』新書館、12月中旬発売
おなじみ「ハンドブックシリーズ」の最新刊。プルースト、マーラー、サ
リンジャー、ウィトゲンシュタイン、デリダ、スピルバーグなど、多数の
異才を輩出し続ける流浪の民の実像に迫る。沼野充義=編。A5変型判、
本体2000円。ISBN4-403-25042-4

!E・ヴィーゼル『しかし海は落ちることなく』上下、朝日新聞社、発売中
ユダヤ人強制収容所の生存者であり、著名な人道的作家の自伝第二部。平
和活動に奔走する足跡が語られる。村上光彦ほか=訳。
46判、本体各3800円。上巻ISBN4-02-257369-4、
下巻4-02-257370-8

!臼杵陽『中東和平のゆくえ』山川出版社、発売中
パレスチナをめぐるアラブとユダヤ・イスラエルとの対立の歴史的背景を
探り、政治抗争の構図を明らかにしつつ、今後の和平を展望するコンパク
トな1冊。「世界史リブレット」シリーズの52番。A5変型判、本体729円。
ISBN4-63434520-X

#ジャック・デリダ『歓待について』産業図書、12月中旬
不寛容な民族的対立が緊迫化するこんにち、他者を迎え入れることはいか
に可能か。96年に行われたゼミナールの講義に、聴講者のアンヌ・デュ
フールマンテルによる解説を付した本書は小著ながら、近年のデリダの法
と正義を巡る議論への絶好の導入。廣瀬浩司=訳。
46判、本体2300円。ISBN4-7828-0127-0

!I・ウォーラーステイン『ユートピスティクス』藤原書店、発売中
現代社会科学における世界システム論の雄が展望する21世紀の社会像。
環境、民族、ジェンダー等の近代資本主義の諸問題を探求。
松岡利道=訳。B6判、本体1800円。ISBN4-89434-153-0

!E・トッド『移民の運命』藤原書店、発売中
米英独仏における国ごとに異なる移民政策と国民感情を分析し、同化と排
除の構造を多角的な視野で論証する大著。石崎晴己ほか=訳。A5判、本
体5800円。ISBN4-89434-154-9

!『Anybody』NTT出版、発売中
哲学と建築を結ぶAny国際会議シリーズの第6弾。96年にブエノスア
イレスで開催された「建築と身体」をめぐる発表と討議の模様を収録。磯
崎新、浅田彰=監修。A5判、本体3800円。ISBN4-7571-0025-6

#レム・コールハース『錯乱のニューヨーク』ちくま学芸文庫、12月9
日発売
なんと現代建築の名著がもう文庫で読めるんですねえ。この手はあまりチ
マチマした小さい本になっても雰囲気がない気もするけれど、やっぱり
「買い」の一品でしょう。鈴木圭介=訳。本体1500円。
ISBN4-480-08526-2

#『ギボン自伝』ちくま学芸文庫、12月9日発売
『ローマ帝国衰亡史』で知られる、18世紀を代表するイギリスの大歴史
家の自伝もなんと文庫化されるんですねえ。いやはや。中野好之=訳。本
体1350円。ISBN4-480-08503-3

!E・ゴンブリッチ『規範と形式』中央公論美術出版、発売中
ヴァールブルク学派最高峰の美術史家による、イタリア・ルネサンス美術
研究のつとに知られた名著の、待望の邦訳。岡田温司ほか=訳。
B5判、本体25000円。ISBN4-8055-0347-5

#A・アメンドラ=写真『サン・ピエトロ』岩波書店、12月10日発売
ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂の天使的造形の美をあますところなく
とらえた絶景写真集。A3変型判、本体8600円、ISBN4-00-008200-0

!『デューラーの手紙』中央公論美術出版、発売中
北方ドイツルネッサンス美術を代表する巨匠の書簡集。交友、芸術論、商
取引、詩など。家譜、覚書付き。前川誠郎=編訳。A5判、本体6000円。
ISBN4-8055-0376-9

!『ドビュッシー書簡集』音楽之友社、発売中
音楽家や文化人、ゆかりの女性など80人あまりへあてた手紙、約300編
を集めた大冊。フォーレ、ショーソン、マラルメ、ジッド、リリー・テク
シエ、エンマ・バルダック宛など。フランソワ・ルシュール=編、
笠羽映子=訳。A5判、本体7500円。ISBN4-276-13164-2

#J-P・シャンジュー『理性と美的快楽』産業図書、12月中旬
絵を描いている最中の画家の脳はどのような働きをしているのか。フラン
スの生理学の第一人者が、芸術創造のしくみ、芸術と理性の関係を神経科
学と認知心理学から解明。岩田誠=監訳。
46判、本体2300円。ISBN4-7828-0129-0

!C・P・スノー『二つの文化と科学革命』みすず書房、発売中
月刊『新潮』に連載中の立花隆の東大講義「人間の現在」でもたびたび触
れられてきた高著の新装版。科学的文化と人文的文化の隔絶と対立が、文
化および正常な社会の進歩を阻害していると論じ、教育制度改革を提起し
た。松井巻之助=訳。46判、本体2800円。
ISBN4-622-04970-8

!J・L・ハーマン『心的外傷と回復[増補版]』みすず書房、発売中
近年とみに注目が集まっているトラウマ論の名著の増補版。原著新版に追
加された「外傷の弁証法は続いている」を新たに訳出。高額にもかかわら
ず日本でも2万人に読まれてきたという本書、リピーターともども広く読
み継がれることだろう。中井久夫=訳。A5判、本体6800円。
ISBN4-622-04113-8

#藤原和博+宮台真司『人生の教科書〔ルール〕』筑摩書房、12月上旬
発売
ヒット作『よのなか』の続編。世間のさまざまな決まり事、ルールがいか
にあやふやであるかを説き明かす。あまりにもあけすけに大人社会を暴く
から、かえって大人が読んでも笑えるんだよね。A5判、本体1500円。
ISBN4-480-87723-1

!三木清『パスカルと親鸞』燈影舎、発売中
『西田幾多郎選集』を刊行した京都の出版社がまた頑張ってくれた。日本
近現代思想の最高峰をなす「京都学派」の全貌を紹介していく意欲的なシ
リーズ『京都哲学撰書』第1期全15巻の刊行開始である。現在第1回配
本の三木の上記書目と高坂正顕『明治思想史』が発売中。誰が買うので
しょうか、などと野暮なことは言わず、この機会に1冊ずつ挑戦してみた
い。私たちの思惟のルーツがここにある。A5判、本体3400円。
ISBN4-924520-46-2

!竹内好『日本イデオロギイ』こぶし書房、発売中
上記同様こちらもシブい日本近現代思想の古典シリーズ「こぶし文庫」の
第23巻。日本の文化と思想を「陰影のない観念性」と特徴づけ、その奴隷
的性格からの脱却を模索する古典。46判、本体3000円。
ISBN4-87559-139-X

#O・ワイルドほか『ゲイ短篇小説集』平凡社ライブラリー、12月中旬発売
同性愛に焦点を絞り、近現代ヨーロッパの短篇小説を集めた。ワイルド、
ロレンス、フォースターなど大作家の古典を読みなおす絶好の1冊。大橋
洋一=監訳。本体1400円。ISBN4-582-76315-4

!P・ヴィリリオ『情報化爆弾』産業図書、発売中
科学技術批判の第一人者による昨年刊行されたばかりの最新著の邦訳。こ
れくらい早く刊行されると実にうれしい。グローバルな高度情報化時代に
おける、ネットワーク上の無限連鎖的な破局を回避するべく繰り返される
彼の警告を一番読むべきなのはいまの日本の政治家やビジネスマンだろ
う。46判、本体2100円。ISBN4-7828-0128-9

!レジス・ドブレ『メディオロジー宣言』NTT出版、発売中
西垣通=監修による著作選の第1巻。フランスのニューレフトである著者
の新境地を示す記念碑的論考。イデオロギー、宗教、芸術等をその「伝達
作用」から分析し、メディア論を超える全く新しい学問「メディオロ
ジー」を展開する。第2巻『トランスメッテー:伝達作用の諸相』の近刊
が予告されている。A5判、本体2800円。ISBN4-7571-0023-X

!N・ボルツ『グーテンベルクの銀河系の終焉』法政大学出版局、発売中
マクルーハンのメディア論で描かれた世界から更に進化しつづけてやまな
い現代社会を鋭利に分析・批判する、現代ドイツの哲学者の好著。識名章
嘉ほか=訳。46判、2200円。ISBN4-588-00657-6

#E・Y・ブルーエル『ハンナ・アーレント伝』晶文社、12月中旬発売
現在欧米で熱狂的な再評価を受けており、日本でも研究会が出来上がった
ばかりのアーレント。その伝記決定版の邦訳。荒川幾男ほか=訳。
A5判、本体6600円。ISBN4-7949-6424-2

!K・テーヴェライト『男たちの妄想 T』法政大学出版局、発売中
ファシズムのメンタリティの起源を精神分析的手法で男性一般の心理の深
層に探る、現代ドイツにおける最重要書の待望の邦訳。全2巻。田村和彦
=訳。46判、本体8000円。ISBN4-588-00625-5

#M・スターケン『からみあう記憶』未来社、12月下旬発売
ベトナム戦争やエイズの流行はアメリカにおいていかに表象され記憶され
てきたか。記念碑や映画にみる想起の政治学。A5判、予価3800円。
ISBN4-624-11177-X
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■ ナチス戦犯アイヒマンの裁判映画「スペシャリスト」が日本上陸!
アドルフ・アイヒマンといえば、ユダヤ人移送計画の専門家であり、61年
にイェルサレムで開かれた裁判により、死刑に処せられたナチスの士官で
ある。裁判を傍聴したユダヤ人思想家アーレントは、彼の悪辣というより
はあまりにも平凡なたたずまいを見て、「悪の凡庸さ」をテーマにアイヒ
マン論を出版している(大久保和郎=訳『イェルサレムのアイヒマン:悪
の陳腐さについての報告』みすず書房 http://www.msz.co.jp )。

91年、本映画の製作を勤めたドキュメンタリー映像作家のエイアル・シ
ヴァンは、イスラエルのフィルム保管所で、アイヒマン裁判を撮影した
350時間分のフィルムが残存しているのを発見。もともとは500時間もあっ
たものだが、この350時間のフィルムを再編集、デジタル処理し、2時間に
まとめた。それが、2000年2月BOX東中野で公開される。

「スペシャリスト:自覚なき殺戮者」と題されたこのドキュメンタリー
フィルムを再編集したのは、イスラエル国籍を持つ先のシヴァンと、本年
ノーベル平和賞を受賞した「国境なき医師団」の元団長である、イスラエ
ル系フランス人のロニー・ブローマンだ。フランス、ドイツ、ベルギー、
オーストリア、イスラエルの合作として本年発表。ベルリン国際映画祭の
招待作品でもある。

アイヒマンはユダヤ人にとっては、冷血な嘘つきであり卑劣漢であり悪魔
に等しい存在だが、裁判フィルムに写っている彼は、アーレントが指摘し
た通り、ひどく凡庸で事務的な中間管理職にすぎなかった。悪が同居し内
在するこの恐るべき凡庸さをこの映画は如実に映し出している。まさに彼
は「自覚なき殺戮者」であったのだ。

クロード・ランズマンの映画『ショアー』(85年)が10年遅れで日本で公
開され、テキストが出版されて
(作品社http://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha)以来の、
セカンド・インパクトが訪れることになろう。来年1月には製作・監督の
シヴァンとブローマンが来日する予定であり、映画の姉妹編とも言える共
著『不服従を讃えて:「スペシャリスト」アイヒマンと現代』がやはり1
月に、高橋哲哉+堀潤之の訳で産業図書から刊行されることになってい
る。高橋氏は日本語字幕の監修も勤めている。来春一番の話題になること
は間違いないだろう。関係者に敬意を表したい。

BOX東中野は、JR中央線東中野駅下車西口北側ホーム正面ポレポレ座ビル
地下。電話03-5389-6780。現在、特別鑑賞券税込1400円絶賛発売中。

■ベケット最晩年の傑作
「ゴドーを待ちながら」で知られる不条理の劇作家サミュエル・ベケット
の最晩年の散文集(散文詩ともアフォリズムとも呼べない)の翻訳が11月
末に刊行されました。
 サミュエル・ベケット(長島確訳)「いざ最悪の方へ」書肆山田200
0円極度に省略された言葉による断片的な思索が、時にはっとする程美し
い。書肆山田からは他に既刊としてベケット晩年の作品集が3冊出ていま
す。
「伴侶」「見ちがい言いちがい」(以上宇野邦一訳)
「また終わるために」(宇野邦一・高橋康成訳)

■柄谷行人の新刊
この冬、柄谷行人の著作が久々に(しかし2点も!)刊行される予定です。
12/15刊行予定
柄谷行人「可能なるコミュニズム」太田出版2000円
ホームグラウンドである「批評空間」での論考・座談会等を基に編集され
た一冊。
2月刊行予定
柄谷行人「倫理21(仮題)」平凡社
講演を基に作られた本で、中身は柄谷氏にしては珍しく社会問題を例に取
った責任論が中心だそうです。
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■「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
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第7回 中国行きのスロウボード
  
 マイブーム
 えー、今回は躁状態なので楽しくいきたいなぁ。まずマイブーム。UH
F14チャンネル、石原慎太郎がウォッチングできる、通称MXテレビ。と
くに毎週土曜日・夜10時15分に放映の「葉千栄のアジア電視台」という番
組。このメルマガ発行数以下の視聴者かもしれない。東京近郊以外にお住
まいの方、ご容赦なのですが、これとてもおすすめです。MXテレビのH
Pをあげときます。
http://www.mxtv.co.jp
 今回のオープニングは2005年、香港ディズニーランド完成についてが話
題でした。
 ディズニーランド建設によって香港の地位が低くなるという意見があっ
て、それなら上海人の私(葉)としてはうれしいとか、子どもたちが今か
ら貯金し始めているという話のあとに、ある有名な香港文化人の建設反対
意見として「ミッキーマウスの笑顔はニセの笑顔である。あれはディズニ
ーの世界にしかない微笑みである。ニセの微笑みを広めるディズニーを私
は憎む。私は日本人のマニュアル化した微笑みが私は嫌いだ。よって日本
人を憎む」という発言を引用していました。すごいめちゃくちゃな論理。
でも説得力はある(笑)。
 
 今回はゲストにモーリー・ロバートソンさん。ご存じの方も多いでしょ
うが、お父さんがアメリカ人、お母さんが日本人。小学校から高校まで日
本の公立学校で、大学は東大を半年で中退、ハーヴァード大にいったとい
う人。現在は主に音楽活動を中心に生計を立てているようです。葉さんが
自分の子どもを日本の公立学校か、インターナショナルスクールのどちら
に入れようか迷っていて、「そもそもインターナショナルスクールは本当
にインターナショナル」かという会話がとくにおもしろかった。
 日本に来ている外国人のほとんどが日本人になるか、あるいは外国人の
ままでいるかというモノカルチャーでしか生きていない。バイ・カルチャ
ーで生きるということは本当に困難で、本人の努力が相当いるということ。
自分は小学校4年生のときにインターナショナルスクールをやめて公立学
校に行き、漢字を書けて日本語でものを考えられるようになってよかった
と思うとモーリーさんは言う(最近は日本の公立学校言っても日本語がで
きるようになるかは怪しいというオチあり)。

 アメリカは今、ローマ帝国状態、あるいは中華思想にあって、他国を理
解しようとは思っていない。おまえらが理解しろと。日本と中国、朝鮮半
島の違いを知る人はほとんどいず、日本研究者でも「さんずい」と「にす
い」の違いは本当に難しい(笑)。こうしたアメリカの傲慢さと、子ども
をインターナショナルスクールにウラ金を払ってまで入学させようという、
日本の親の卑屈さとは同じ根にあるのではないか、というのがモーリーさ
んの意見でした。
 他人を知りたいという健全な好奇心を養うため、国境を越えていろいろ
な議論が飛び交う場がつくれればと、来年始めにはインターネットの24時
間の放送局をつくるということでしたが、まだできていないようです。 
morley(モーリー)で検索できるようにするとのことです。
 
 友よ、中国はあまりに遠い
 「中国文学研究会」を設立し、司馬遷などの研究で知られた小説家の武
田泰淳氏は、みずからが心から愛した中国に兵士として赴きました。好き
だったものと闘わざるをえなかったこの経験からか、日中間国交回復のこ
ろになって、賠償問題など両国間に起こりうるさまざまな摩擦、軋轢に深
い危惧を抱きつつ、「日本人は中国人をはたして好きなのだろうか、中国
人は日本人をはたして好きなのだろうか」という問いを発します。
 「同文同種」という言葉があります。日本人と中国人との関係をあらわ
す、お互いの親しみの情を表現した語です。「中国文学研究会」のメンバ
ーたちは、こうした語が日本と中国の相互理解の妨げになったのといいま
す。こうした不確実な心情的合い言葉では決して中国を理解できない。な
ぜなら同文同種であるから当然両者両国は親善に赴くという「観念論」に
陥りがちだから。まったくその通りだと思います。しかしさきの武田氏の
「好きか嫌いか」という問いも、一個の観念論におちいる危険がありはし
ないかと私には思われます。

 個人同士の場合を考えてみます。好きか嫌いかはっきりさせることによ
って、相手とのつきあいかたもはっきりしたものになります。好きな人に
はやさしく、嫌いなヤツにはつれなく。しかし好悪をはっきり表明する場
面が、じっさいどれだけあるでしょうか。初めて会ったとき、なんとなく
イヤだったけど話してみるとすごくウマがあった。つきあっていくうちだ
んだんマイナスの部分が見えてきてちょっと敬遠する、とかいろいろなケ
ースがあるはずです。重要なのはあなたとわたしのあいだにある利害、関
心、興味、英語でいうところのインタレスト(interestあいだにあるもの)
であり、それを明確にすることではないでしょうか。他者と利害が一致し
ない場合、一致させるような努力、すなわち相手に自分を説明する必要が
でてきます。これこそ相互理解にむけたプロセスというものでしょう。

 愛し合うこと、友達になることが目的になる男女関係・友人関係とは異
なり(だから人間関係は難しい)、国同士は経済的・政治的なインタレス
トがすべてです。これは他国とのつきあいかたで、日本がいまだに見損ね
てしまうところだと思います。男女関係・人間関係において「わたしがこ
んなに好きなのにあなたは分かってくれない」「君のことをこんなにも考
えているのに、なんだその態度は!」といって、ときには暴力的・破壊的
な行為におよんで、関係が破綻にいたることがままあります。一方的な思
いこみで向かってこられても、相手としては困るわけです。日中の不幸な
関係は、そんなケースを想起させ、インタレストを明確にしえず、相手に
自分を説明する努力を怠った日本のひとりよがりにその一因があったので
はないでしょうか。

 現在の南京大虐殺、従軍慰安婦、台湾をめぐる現在の日中の立場・解釈
の違いをみるかぎり、日中はかつての不幸な関係の延長線上にいまだあり
ます。しかし私がなによりもおそれるのは、中国残留孤児の問題にあらわ
れている無関心です。この関心のなさが、日中関係に新しい局面を産んで
いると思うのです。願わくば自暴自棄な決断で関係を破壊することのない
ことを。

(参考文献「日中問題とは何かということ」(橋川文三著『順逆の思想』
所収、1973年、勁草書房))。
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『THE YEAR OF 2000 BOOK〜20世紀カルチャー・アンソロジー〜』メタローグ
ジョン・レノン、サリンジャーからチェ・ゲバラまで20世紀のカルチャー
を作った人物の“21世紀に残したいことば”集。2000年ダイアリー付。
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■「一字千金の記」/グッドスピード
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「トホホな間違い」

 活字版「VOW」というこのコーナーを位置付けておきながら、これまで
随分と寄り道をしてしまったが、今回は、数少ない貴重な読者から寄せてい
もらった活字版「VOW」ネタをひとつ紹介したいと思う。
読者のKさんからこういうネタが届いた。

「グッドスピード さんへ
最近読んだ『村上龍対談集/存在の耐えがたきサルサ』(発行:文藝春秋)
の17頁2行目の「(前略)シカゴは聴くけどブラックセタン・ティアーズは
聴かないとか(後略)」という記述に頭を抱えてしまいました。1967年に結
成され、ホーン・セクションを導入したユニークなスタイルで世界的に人気
を博したアメリカのロック・グループにブラッド・スウェット・アンド・テ
ィアーズ(BLOOD,SWEAT&TEARS)というのがありました。「ブラックセタン
・ティアーズ」とは間違いなくそのグループのことを言っていると思われま
す。シカゴというのもホーン・セクションを導入したロック・グループで、
彼らの後輩格であり、ライバル視されていた存在でした。察するに対談のテ
ープ起こしの段階で聞き取り間違いをしたまま、ここまで来てしまったとい
う誤りなんでしょう。本書にはほかにもそれらしき誤りがいくつもあります
。それにしても初出誌の『國文學』の編集者(校正者)、本書の編集者(校
正者)、村上龍本人と何度もチェック・ポイントがありながら、一体これは
どうしたことでしょう? それとも何のチェックもしていないのでしょうか
ね? かなりトホホな間違いでした。」

Kさん、ありがとう。そのとおり。とくに固有名詞の間違いはままあること
だが、その固有名のファンにとってはむかつく間違いである。しかし、これ
は本人(この場合、村上龍)を責めるべきではなく、編集者あるいは校正者
が責められるミスである。なぜなら、村上龍の面白さは誤字によって貶めら
れるようなしろものではないからだ。ある知り合いの編集者によると、村上
龍は対談やインタビューの原稿は一切チェックをしないそうだ。その分担当
編集者の責任(読者と著者に対する)は重い。

 もうひとつ。、明らかなミスと思われるものがある。
それは、斎藤美奈子の『妊娠小説』(筑摩書房)の単行本(文庫も出ている
が)。この本のノンブル(ページ)で、目次の見開きに2、3とノンブルが
あるのに、そのあとの「はじめに」が3ページから始まっているのだ。これは
おかしいんじゃないか? ごく普通の本のつくりとしては、ノンブルは本文
紙の第1ページからはじまる。たまに、本によって、目次や「はしがき」に、
本文の文章があるページと区別するために、ローマ数字を用いたノンブルを
付けるときがあるが、上記の仕方は少なくとも私にとっては初めてのケース
である。
しかも、その本は当時(1994年)話題となり、手元にあるこの本は4刷であ
る。想像力を豊かにすると、これは多分、このノンブルの付けかたをミスと
認めて直すとなると、全ページ直すことになるから無視していたのではない
だろうか。あるいはこれで本当にOKなのか。でも4刷もいっているんだから
、直してももとはとれるだろうにと思いつつ、次ぎのネタを探すべく新しい
本の扉を開くグッドスピードでありました。
●活字版「VOW」のネタを募集しています。面白いネタがありましたら下記の
アドレスまでお知らせ下さい(謝礼はでませんが)。
E-mail:ryuz@cf6.so-net.ne.jp
(第4回・了)
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■「求職と読書の日々」(「私小説的書店員」改題)/キウ
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「地図のない道」  須賀敦子著  新潮社

 全編にただよう、この暗さはなんだろう。ときに激しいほどの暗さを、こ
の作品集は垣間見せる。これまでの須賀敦子の作品に、この激しさは親しい
ものではないはずだ。

 須賀敦子の生前中に「新潮」に連載されていた連作「地図のない道」を三
編、それと、とんぼの本「ヴェネツィア案内」に寄せられた小品「ザッテレ
の河岸で」一編、収録。前者の「地図のない道」は著者が加筆・訂正中にこ
の世を去っている。四編ともにヴェネツィアをめぐっての文章である。

 須賀敦子の作品において、ヴェネツィアはあまり親しい姿を持って読者に
はあらわれない。著者の生活の中心であったミラノ、そこでの夫や仲間たち
のことを描いた作品から感じられるような親しさ、そういうものが抜け落ち
てしまう。あくまで著者は来訪者としてその街に向かい合う。ヴェネツィア
という街のよそよそしさと格闘するように筆をすすめる。特に今回の作品集
ではヴェネツィアの歴史が抱える、その暗部に視線が注がれる。

 まず「地図のない道」ではヴェネツィア内のユダヤ人強制居住地区「ゲッ
ト」が描かれる。中世からの長いあいだ、監視され迫害をされてきた貧しい
階層のユダヤ人居住地。ナチにより多くのユダヤ人が連れさらわれた地区。
ヴェネツィアをたびたび訪れる著者はしだいにその存在に引き寄せられてゆ
く。友達とゲット内のレストランで食事をしつつ、まわりの楽しそうに食事
をしている若者たちを見て、著者の脳裏にこのような思いがわき上がる。

 「それは家畜のように追いたてられ、列車に乗せられて行ったユダヤ人た
ちの群れだった。あの悲劇の主人公たちも、かつてはこの若者たちと同じよ
うに満ち足りた愉しい時間を、人生のどこかで持ったのだったろうか。そう
考えると、いくつかのせまい部屋にわかれたこのレストランの白い壁を爪で
掘ってでも、あの日、ここで起こったことどもを、尋ねたかった」(P20)

 「地図のない道」三編とも、ユダヤ人のことがテーマとなっている。二編
目の後半に祖母のことが語られているが、前半はやはりゲットのことを語っ
ており、その流れで抑圧された存在として祖母を見る視点が描かれている。

 「ザッテレの河岸で」では、中世のヴェネツィアで隆盛した高級娼婦・コ
ルティジャーネについて語られる。娼婦といっても宮廷に従えた、美貌と教
養を兼ね備えた女性たちのことで、貴族や高位聖職者のあいだでもてはやさ
れた。しかし著者の視線は、むしろ「高級」でない娼婦の側へと向かう。コ
ルティジャーネのようには自由の利かない、組織によって管理され、翻弄さ
せられた女性たちへ。その末路は梅毒による隔離であり、著者はその病院跡
と向き合う。

 この作品集での著者の視線は、常に抑圧された側、歴史の流れの中で翻弄
され迫害された側へ向かう。「地図のない道」の三編を読んでいると、その
視線のよって立つ場所には、著者の夫を失った悲しみが横たわっているよう
に思えてならない。結婚して五年でイタリア人の夫と死に別れた著者が、こ
れまでの作品の中でその悲しみを直接的に語ることはほとんどない。ただ、
例外的にこの作品ではそこに直に触れている文章がある。

 「あのころの私は、ふつうに笑ったり、人と話したりすることができなく
なっていたように思う。顔や声が笑っていても、もうひとりの自分がそれを
じっと見つめているのに気づく」(P89)

 この視点が、この著者独特の、静謐で瑞々しい、陰影のくっきりとした描
写に満ちあふれている文章を、可能にしているのではないだろうか。

 そして、そのような心の救済として、著者は神を見い出しはじめている。
「地図のない道」三編において、その全編にただよう暗さを、小さな島で見
出した聖母像によって救済の側へと転じようとしている。また「ザッテレの
河岸で」においては、もっとはっきりしたかたちで、キリストによる救いを
全面に押し出している。こういう展開は今までの須賀作品にはなかったはず
だ。

 これまでに見ない激しい暗さの流出と、神による救いという展開は、著者
が書き手として新しい段階に入りつつあったことを感じさせる。「文学と宗
教」というテーマで本を書きたいと語っていたという著者が、その途上でこ
の世を去らなければならなかったことは、この残された作品を読みつつ、残
念でならない。
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■「美人書店員の赤裸々な日常」/あくびちゃん
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危険な関係

季刊雑誌『談』No62号「特集 パフォーマティヴィティの言語へ」の中に、
浜田寿美男氏の「自白の言語学  私はなぜウソをつくのか」という興味深い
インタビューが掲載されている。

誰しも、大なり小なりウソをついたことがあるはずだ。けれどもそのウソ
は、その時の情況を自分に有利にするように、あるいは相手を楽しませた
り、安心させたりするためのウソで、自己の利益を追求するための自発的な
ウソである場合がほとんどだろう。

しかしここで分析の対象とされているのは、狭山事件や甲山事件などの冤罪
事件で、容疑者として捕らえられた者が、自らを犯罪者という不利な立場に
追い込むようなウソの供述である。

氏によると、容疑者として捕らえられた者が取り調べを受ける苦痛というの
は、想像は出来ても、実際に体験した者にしかその辛さは分からないそう
だ。

一般的に警察は悪を取り締まる機関である。つまり我々を保護してくれる立
場であるはずであるから、身に覚えのない容疑を掛けられた者は、警察を敵
だとは思っていないし、なんとかして無実を証明しようとする。
方や警察は、こいつが犯人であるというある種の確信があって尋問するのだ
から、無実を証明しようとする者に向かって、本当のことを言えと罵倒す
る。

ここには両者のコミュニケーションは成り立たない。裁判で有罪判決を下す
には、どうしても自白に頼るところが大きい。
そこで警察は余計躍起になって、自白を取ろうとする。このディスコミュニ
ケーションに耐えきれずに「私がやりました」と言ってしまうと、そこから
事件の現実の出来事を知らない者同士がストーリーを作っていくというウソ
のスタイルが成り立つのだ。
このように、先程挙げた自己利益のためのウソとは違って、供述は一人の力
で形成されるのではなく、複数の他者、そして情況によって作り出され
る。言葉の使用がコンテキストに依存しているということを、端的に示して
いる。

本書は『日本語練習帳』に始まる言語学への関心は「言語」という大きな枠
組みではなく、それが使用される場面や効果、スキルなどの現場への関心で
あるとして、オースティンのパフォーマティブの概念を手がかりに、言葉に
ついて考えたものである。

この浜田氏の研究は、そういった観点から、パフォーマティヴィティのメカ
ニズムを考えることに役立つであろうと、提示されている。その他にも
・ 加賀野井秀一 
「20世紀言語学からみたパフォーマティヴィティ  言語使用と身体」
・ 田中克彦
 「言語は変わるから言語なのだ  イデオロギーとの拮抗」
・ 落合仁司
 「神の言葉の言語学  宗教の言語はなぜ人を打つのか」
・ 東浩紀
 「初速と暗号、マルチメディアとしてのデリダ」
という、それぞれに異なった分野の研究者のインタビューを掲載している。

この『談』という雑誌は、バックナンバーの一覧を見ていただければお解か
りかと思うが、その時の時流に合ったテーマながら、その切り口は独自のス
タイルで、特に今回の特集は、『日本語練習帳』以降、二番、三番煎じの類
書が多く出回っている中で、新鮮な特集である。
巻末の「書物のフィールド・ワーク」もフェアのネタに泣いている書店に
は、救いの手であろう。これも季刊がゆえになせる業なのか。地方小のみの
取り扱いだが、多くの書店に置かれることを期待したい。

『談』ホームページ
http://www.jtnet.ad.jp/WWW/TASC/
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■あとがき
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>児童ポルノ法の影響で、大手書店がアダルトコミックの扱い見直しを始め
ているようですね。
>コミックは児童ポルノ法に触れないのはわかったけど、良い機会だから置
くの辞めちゃえって奴? なんだか便乗犯みたい・・・
>いや、日本国民たるもの法律は遵守すべきである! どうせなら断固徹底
すべし!! 「何があっても法律に触れない書店」を目指すべし!!!
>何それ?
>まず、人権問題を起こしている作家の本はすべて返品。肖像権問題起こし
てるコミック作家も駄目。川端康成を手始めに、少しでも児童ポルノに引っ
掛りそうなものはコミック以外もすべて返品。当然ドラえもんにおける<し
ずかちゃんのヌード>はバツ。差別用語が一つでもあったら即返品。いや、
すばらしい。これぞ日本国民が通うべき書店の姿である!
>そ、それ言論の自由はどうなっちゃうの・・・
>大日本帝国臣民にそんなものは必要無し!
>ああ、そういう突っ込みようのないボケは止めて・・・
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