|
2000.1.5.発行 vol.20 [まだ世紀末なのだ! 号]
|
■■---------------------------------------------------------------
■■ [本]のメルマガ 2000.1.5.発行
■■ vol.20
■■ mailmagazine of books [まだ世紀末なのだ! 号]
■■---------------------------------------------------------------
■CONTENTS---------------------------------------------------------
★トピックス
★「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
→ニューアカ、そして<人文書>の歴史を総括。必読!
★「一字千金の記」/グッドスピード
→悪魔の悪戯のような誤植の数々を紹介
★「求職と読書の日々」/キウ
→『金輪際』の魅力を探ります
★「美人書店員の赤裸々な日常」/あくびちゃん
→<風邪>と<年末ストック>と<新教養主義>の関係は?
---------------------------------------------------------------------
■トピックス
---------------------------------------------------------------------
■今年上半期の書店、大型出店予定
1.旭屋書店近鉄上本町店
2000年2月18日オープン。350坪。日販。
「近鉄大阪線」「近鉄奈良線」上本町駅隣接。
近鉄百貨店11階、ワンフロア。
2.東京旭屋書店志木店
2000年2月25日予定。250坪(書籍220文具30)。
トーハン。
東武東上線志木駅北口駅ビル(仮称)3階。
ペデストリアンデッキにて丸井と接続。
3.三省堂書店名古屋高島屋店
2000年3月15日オープン。560坪。トーハン。
JR名古屋高島屋11階。
既存のテルミナ店と合わせ800坪
4・紀伊國屋書店長崎店
4月1日オープン。
長崎市の大型商業施設「夢彩都」4階
600坪。トーハン
■柳原書店 廃業
関西を中心に活動していた中堅・取次ぎ、柳原書店が昨年末に廃業しまし
た。今後、債権者会議などが開かれるようですが、人文系出版社の中には
数百万から数千万が焦げ付く恐れのある所も、出そうとのこと。
<取次ぎ廃業時代>の先触れにならないことを祈るばかりです。
---------------------------------------------------------------------
■「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
---------------------------------------------------------------------
第8回 現代日本浪漫主義批判序説(その1)
私の中沢新一体験
99年12月4日、青山ブックセンター本店で、中沢新一さんの講演が催さ
ました。『チベットのモーツァルト』(せりか書房)以来のファンである
私は、オウム事件以降、彼がどういった思索を重ねているのか興味があっ
たので参加しました。彼の講演を聞くのは初めてで、醸し出している緊張
感のなさに私は怒りをおぼえました。あとでまわりに不満をいい、当たり
散らしたりして、いまようやく落ちついてきました。
彼の本を学生時代(10年以上前)、私はどういう風に読んできただろう
か。まわりに読んでいる人はあまりいなかった。中沢氏の文に初めてふれ
たのは雑誌『スコラ』(笑)。エロティックな紙面・記事の免罪として知
的なものを入れたその雑誌に氏は連載していた。確か西武グループの隆盛
を記号論的に読みといたエッセイで、正直そんなふうに世界を語ることが
できるのかぁとおどろいた、ヌード写真の合間に(笑)。そして中沢氏の
処女作『虹の階梯』(平河出版)を手に取るが、興味をもてなかった。読
書経験として、時代状況として、オウムに走った人たちとそこにいっしょ
にいて、すれ違ったのだと私は思っている。
オウム事件のあと、中沢新一さんの責任を問う声があり、それを擁護し
たかたちで、浅田彰氏の次のような発言があった。「(中沢さんの『チベ
ットのモーツァルト』を読んで)、本当に幽体離脱みたいなことが起こる
と百パーセント信じ込んで、自分も同じことをやってみたいと思ってオウ
ム真理教に入信した馬鹿がいたとして、それは中沢さんの責任だという人
もあるけれど、僕は書き手はそんな愚かな読者のことまで責任をとれない
と思う」。確かにある事件の原因を、あるテキストにもとめることはでき
ない。その事件をいたずらに矮小化してしまうことにもなるから。
これから私がやっていきたいと思うのは、「中沢新一」というテキスト
の発生根拠に立ち入った批判である。言いかえれば1980年前後の時期に、
日本に反知性主義の形をとった知性主義(すなわちニューアカデミズム)
の浸潤が見られ、この事情の思想史的な究明である。(余談ですが、この
時期、今はもういない私の友人がよく読んでいたのは橋本治さんだった。
読めと言われて読んでいて、いま本当によかったと思っている。もつべき
ものは友人です。この時期(いや今でも)、日本の唯一のカウンターカル
チャーは橋本治さんであり、「知性主義」とは異なる、強靭な知性だった
のだなぁと思う。橋本治論は高橋源一郎さんの「橋本治は吉本隆明である」
が秀逸。)
ニュー・アカデミズムの発生 1
「『逃走論』(筑摩書房)の搬入日がやってきた。浅田ブームが一挙に
頂点に達する日である。こういう出る前から騒がれる本は、一年に四、五
点ぐらいしかない」と始まるのは井狩春男さん『返品のない月曜日 ボク
の取次日記』(ちくま文庫)の「浅田彰、ホームランを打つ」の項。以下
引用。(同書「中沢新一登場」の項では『チベットのモーツァルト』の頃
の中沢氏と本が売れた背景の説明が書かれている)「浅田ブームのキッカ
ケは、たった活字一字の間違いで、始まった。浅田彰さんは、本を出す前
から、京大ナン十年に一度の秀才であるとか、天才だとかで、学生はじめ
関西の版元に知られていた。昨年(1983)の九月末に『構造と力』(勁草
書房)が出たときは、そういった学生の間で、カタイ本にしてはよく動い
ていた。
ちょうどそのころ朝日新聞の書評で小さく紹介された勁草書房の本があ
ったのだが、版元名が間違っていた。「勁」が「頸」になっていたのだ。
名前と同様、版元名の間違いは許されない。勁草書房は抗議の電話を入れ
た。朝日新聞はおわびに何か記事を書くことを約束し、それが11月30
日(水)の「若者*わかもの」の欄で、顔写真入りで「浅田彰さんに聞く」
という大きな記事となって現れた。ラカン、ドゥルーズ、ガタリ、デリダ
などのフランス思想と共に、浅田彰さんが一般の読者に知られるようにな
ったのは、それから二か月後だったと思う。朝日新聞に載らなかったら、
我々はいまだに浅田彰の名前を知らなかったかも知れない」
「一字の間違えで」「我々はいまだに浅田彰の名前を知らなかったかも
しれない」はレトリックの問題として若干差し引いて、浅田彰氏を受け入
れる状況はこの時点ですでにあったと理解すべきであろう。
そして同書「日刊まるすニュース407号」(昭和59年12月28日)
には、昭和59年(1984年)の人文書の総括がなされ、当時の出版流
通における「思想」状況を見ることができる。以下引用。
「59年は、久しぶりに人文書が売れて活気づいた一年でした。まず、
ナンタッテ浅田彰氏の活躍を高く評価する(浅田さんの出現はひとつの事
件デシタ)。昨年からの『構造と力』(勁草書房)が春にかけて頂点、『
朝日ジャーナル』刷新第一号は浅田彰特集、つづいて『逃走論』(筑摩書
房)。もうこのころになると新聞、雑誌に『浅田彰』の名の出ない日はな
いと言っても大ゲサでなかった。
そのころ中沢新一、伊藤俊治、四方田犬彦、岩井克人、平山朝治ら若い
知性を持った人達の名が、一般に知られるようになった。春に出た『GS
たのしい知識』(冬樹社)は、それらの結晶のような美しさを持ってい
た。浅田彰氏によってドゥルーズ、ガタリ、フーコー、ジャック・ラカン、
ボードリヤール、クリステヴァ等々が知られるようになり、フランス思想
は大モテ」
(80年代出版業界、とくに人文書出版社への批判をはらみつつ次回に続く、
と思います)
---------------------------------------------------------------------
■広告
---------------------------------------------------------------------
三月書房販売速報(仮題)
出版業界向けメルマガです。無料。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/sangatu/
----------------------------------------------------------------------
■「一字千金の記」/グッドスピード
----------------------------------------------------------------------
「活字は魔物」
洋の東西を問わず、書式の蟹行と縦走とを論ぜず、活字は実に気まぐれな
いたずらものである。校了のときにはすっかりよかったはずなのに、刷りあ
がったのを見ると、コンマやピリオドが姿を消して資本家に大損をさせたり
、"God is nowhere"が"God is now here"となっていて、著者の無神論者を
唖然たらしめるごとき辛辣な皮肉もあえてする。たしかに魔物だ。
これは、英文学者で書誌学者の寿岳文章の「誤植異聞」という短い文章にあ
る一節である。この「誤植異聞」という随筆には、とくに欧文の誤植にまつわ
るエピソードがいくつか紹介されている。上記の引用箇所もその一つ。
今回は、そのなかの傑作を紹介したいと思う。
ドイツ語の'Machten(aの上に¨が付く)'(=powers)が'Madchen(aの
上に¨が付く)'(=girls)と誤植されたために、宰相ビスマルクの声明が
「余はすべての少女に対し正直にして単刀直入なる関係を保持せんと欲す」と
なったのは有名な逸話であるが……
とまえふりしつつ、
フランス語の'soi'(=oneself)の語尾に'r'が一つ忍びこんで'soir'
(=night)となり、フランスのある女流作家の書いた小説中の、「ほんとの恋
を味わおうと思えば、われわれみずから出かけなくてはならない」というく
だりが、「ほんとの恋を味わおうと思えば、われわれは夜に出かけなくては
ならない」と変っていた……。
ほとんどこれはいたずら好きな(でもユーモア感覚のある)植字工か校正
者がわざと仕組んだに違いない。
それから、もう一つ。
かつてPillow将軍がメキシコ戦争に武勲を立てて帰ったとき、合衆国南部
の一新聞はかれに'battle-scarred veteran'(「名誉の負傷歴々たる老将軍」)
の敬称をあたえて歓迎した。しかるに実際紙上に印刷されたのを見ると、
'battle-scared veteran'(「腰抜け老将軍」)となっていたので、将軍は主
筆を訪ねて訂正を乞うた。主筆はもとより周章狼狽し、早速翌日の新聞に陳
謝の言葉を掲げ、穏やかならぬくだんの語句を訂正したのであるが、さてそ
れが印刷されてくるとどうだろう、わが親愛なる将軍は'bottle-scarred'と
いう珍無類のepithet(形容詞)を頂戴しているではないか!
ほとんど、四コマまんがのギャグの域に達している。
しかし、これらの誤植談義は、その道(英文学・書誌学)ではとても偉い
先生によるもので、ほとんど嬉々としてこうしたエピソードを披瀝している
のである。寿岳先生も相当好きものである(でもこの随筆の眼目はいたって
まじめな書誌論になっているのだが)。
みずから「活字餓鬼」と語る寿岳先生にあやかるべく、日本語での究極の誤
植を探すグッドスピードでありました。
【なお、「誤植異聞」は、寿岳文章著/布川角左衛門編『書物とともに』(冨
山房百科文庫)に収められています】
●活字版「VOW」のネタを募集しています。本や雑誌などで見つけた面白い「誤
植(誤字)」がありましたら下記のアドレスまでお知らせ下さい(謝礼はでま
せん)。
E-mail:ryuz@cf6.so-net.ne.jp(グッドスピード)
(第5回・了)
---------------------------------------------------------------------
■「虚実皮膜の書評」(「私小説的書店員」改題)/キウ
---------------------------------------------------------------------
「金輪際」 車谷長吉 文藝春秋
車谷長吉の作品を読んでいると「業」という言葉が思い浮かぶ。様々な人
間の逃れがたい情念。時空を超えてうごめく情慾。因業。
最新短編集「金輪際」には七編の作品が収まっている。
最初に収められている「静かな家」について取り上げてみる。
高所恐怖症で精神科医の友だちが小学生のころの食べかけたチョコレート
を机の引出しに何十年も仕舞ったままでいたという小話からはじまる。「高
所恐怖症の精神科医」という因業めいた人物の、何十年も前に齧られた、そ
の齧りあとも生々しいチョコレートが、机の引出しから出てくるという出だ
しから、もう車谷長吉の世界である。その友だちの家を訪れたときに庭の草
むらからガマが飛び出す。そのいぼいぼな姿を見て、「私」は小学生のころ
いぼだらけだった同級生の女の子を思い出す。裕福そうな男友達の井地君の
家を訪ねると、そこは葦原に建てられたトタン屋根の小屋だった。その隣り
合わせに全身いぼだらけで魯鈍な雅子ちゃんが住んでいた。いつも虐められ
ている雅子ちゃんと裕福そうな井地君がトタン屋根の小屋に隣り合わせで住
んでいることに驚く。雅子ちゃんが虐められる話が続くが、そのまま卒業し
て別の中学校へ進む。「私」は東京で職を失い古里へ戻って来ている。二人
が住んでいた葦原のあばら家を訪れる。小屋はあるが、もう誰も住んでいな
い。そして、こんな言葉で閉められる。
「いまでは、私はすでに四十九歳である。井地君も、雅子ちゃんも、まだこ
の世にいるとしたら、同じである。けれども、もう無関係になってしまった
人だ。この世で出逢った人の過半は、実はこのような縁の人だった。が、あ
の青葦原の中の小屋の前は、私にとっては一番寒い場所である。(中略)私
の記憶の中に蘇った井地君も、雅子ちゃんも、また過ぎし日の私も、生きな
がらにして、すでに亡者となった人の霊である。私たちはその日その日、死
を生きているのだった。」(P33)
物静かな作品であるが、その底に秘められた、記憶という情念を引き摺り
ながら日々「死を生きている」人間の有り様が、読み手に突きつけられる。
そのあと「金輪際」「白黒忌」「花椿」と短編が続き、随分古い中編「あ
る平凡」(昭和57年)「児玉まで」(昭和58年)が収められている。この二
編は「鹽壺の匙」以前の作品であり、割と普通の読み物になっているが、こ
の作者の抱え込んでしまっているニヒリズムは歴然と現れている。
圧巻は最後の短編「変」。私小説作家の面目躍如たる作品だ。
「平成七年は、私の身には凶事(まがごと)の連続だった」とはじまる。
平成七年といえば阪神大震災がありオウムの地下鉄サリン事件があった年で
ある。
まず高島易断の占いでは今年は底命運。そして四十九歳にして会社をリス
トラで解雇。突然の心臓発作。入院。カテーテル検査。胃カメラの検査。心
因性の心臓発作につき小説など書くなと言われる。
その後「私」の作品「漂流物」が芥川賞の候補作にあがるというよい知ら
せ。しかし不吉な予兆が重なる。最有力といわれながら、落ちた、と思う。
案の定落選し「保坂和志氏の毒にも薬にもならない平穏な日常を描いた『こ
の人の域』」が入選。阪神大震災やオウム地下鉄サリン事件などで暗くなっ
ている世の中で、「『漂流物』の如き妖刀のような殺人小説は」「芥川賞に
ふさわしくない」という。「糞ッ」「おのれッ」と思う。ここからが凄い。
「私」は金物屋で五寸釘九本を買い、銓衡委員の名前を書いた九枚の人形(
ひとがた)の紙を持ち、天祖神社へ丑の刻参りへ行くのである。
「私は公孫樹の巨木に人形を当てると、その心臓に五寸釘を突き立て、金槌
で打ち込んだ。金槌が釘の頭を打つ音が、深夜の森に木霊した。一枚終ると
、また次と、『死ねッ。』『天誅ッ。』と心を念じながら、打ち込んで行っ
た。打ち終ると、全身にじっとり冷たい汗を書いていた。全身に憎悪の血が
逆流した。」(P263)
この件り、恐ろしくも笑いがこらえられない箇所である。諧謔すれすれ、
もしくは諧謔そのものになってしまう。この反転が私小説の醍醐味であるだ
ろう。
受賞の賞金を当て込んでいたため、いよいよ家賃が払えなくなる。安い家
賃の家を探さなければならない。しかしその心労で心臓発作を繰り返す。露
地突き当たりの安い部屋に引っ越す。こうしてその年は暮れてゆく。・・・・・・
まだ話は続くが、この当たりでやめておく。ストーリーなど追っていても
車谷長吉の作品はつまらない。その文章をこそ堪能すべきである。
「虚実皮膜の間」とは近松門左衛門の言葉だろうが、車谷長吉が自作を語
るときによく使う。言い得て妙であろう。「反時代的毒虫としての私小説」
を標榜しながら、ありのままに描かれる「自分」も「事実」もあり得ないこ
とをよく知っている。
世を捨てつつ情慾から逃れられない人間を描き、世捨ての「虚」と情慾の
「実」との間をさまよいながら、実のところ、なにが「虚」でなにが「実」
なのか、そんな世界を著者は「私小説」と言ってのける。いまもって、この
小説の一方法論は有効である。
----------------------------------------------------------------------
■「美人書店員の赤裸々な日常」/あくびちゃん
----------------------------------------------------------------------
『教養』ってなんだ?
年末の忙しい時期に、風邪を引いて寝込んでしまいました。
店は年末は31日まで、年始は3日から営業しているというのに、肝心な取り
次ぎや版元がみんなお休み。
年末年始やお盆休み、ゴールデンウィークは、地方で手に入りにくい商品を
お買い求めにいらっしゃるお客様の数が増えることもあり、現在は在庫を一
冊で回転させている商品でも、お問い合わせに答えるために多少余分に在庫
を持つようにしている。そのために棚下の在庫は増え、また、裏のストック
には今売れ戦の商品が、多いものでは100冊単位で待機している。しかし
、ここまでしても最後に単品商品が足りなくなってしまうと、3冊で平積み
などの悪あがきに走る。苦肉の策が功を奏して、今まで動きの悪かった商品
が売れてくれることがあり、こんな時に改めて、商品の陳列が如何に大切か
と思わされるのです。
この業界も不況の嵐が吹き荒れていますが、この書き入れ時に、出版社も取
り次ぎもしっかり営業して欲しいなあと勝手なことを思ったりします。
いずれにせよ、連休前ぎりぎりの新刊の配本は止めてくれい。事前にわかっ
ている分は良いのだけれど、パターンできた商品は完全アウト。売りたくっ
ても商品がないのです。
と、修羅場の12月、休んでもいられないのだが、無理して拗らせて長く寝込
んでしまうよりはと、久しぶりにごろごろゆっくり本を読みました。
薬と熱で頭が朦朧としているにもかかわらず、あまりの面白さに1日で読破
。その名も『新教養主義宣言』。普段だったら恥ずかしくってこんなタイト
ルの本は読めないんだけど、著者があの山形浩生さんなんですもの。この本
はいろいろなところ(とか言って、ほとんどが『CUT』なんだけど)で彼
が書いてきたものを一冊にまとめて、前書きと後書きを付け加えたもの。
前回乾季さんが書いていらっしゃったこと重複してしまうんだけど、『90分
でわかる〜』などの、この手の商品は売れるんです。国際情勢だとか、日本
経済だとか、世界の歴史だとか。でも本当にこれ読んで解かったとしても、
実は90分じゃ済まないのだ。みんなあれこれ絡み合って社会が成立している
んだから、一生かかってこの手の本を読みつづけなければいけなくなってし
まうってことに気づいてないのかしら。
何かを知ろう、理解しようという姿勢は大切だと思うけれど、与えられた情
報を鵜呑みにして、その真偽の判断を自分で行うことを放棄して知ったつも
りになってしまうのは如何なものでしょうか。
この本の中でも山形氏は「アレじゃございません!」と叱責しておられます
「〜知ってる?」「ああ、アレね」のアレです。思わず我が身を振り返って
しまいました。
そんなこと言ったって、こんなに情報があふれすぎて、自分で判断したり、
何を選んだらいいかわからないと思っている、そんなあなたにお勧めです。
ただし、答えは書いてありませんから。自分で関心を持ったことをどうやっ
て身の回りの事象と関連させていくのか、という方法の一つを提示しておら
れます。
山形浩生氏は、ウィリアム・バロウズの翻訳者、プロジェクト杉田玄白、大
手シンクタンクの研究員、『クルーグマン教授の経済入門』の翻訳…、など
様々な顔を持つ。
本書は氏の博識ぶりをギュっと凝縮したものなので、どこかのページを開け
ば、自分の関心事とクロスするはずです。
例えば、京極夏彦の『鉄鼠の檻』(講談社)は禅を一般向けにきちんと解か
るように説明したという点において、鈴木大拙以上の仕事をしているのでは
なかろうか!とか、人間の意思決定速度が倍になったときの経済インパクト
の大きさとか。
つまり、本を買うのに5分考えていたところが、2分に短縮されるようになっ
たとしたら、すべてがこの速度で変化していったらオウムの麻原も、逮捕翌
日には即死刑とかね(笑)。この話にはオチがあるんだけど、それは読んで
からのお楽しみ。ただ、このアイデアをはっきりした形で提起したのはSF
作家R・A・ラファティの「スロー・チューズデー・ナイト」(ハヤカワ文
庫『900人のお祖母さん』収録)であると、しっかり読書ガイドがついてい
る。
ただ、遠まわしに言うとちょっとくせのある文章です。チャラ化ているよう
でいて、意外と真剣に語っているので、しばし堪えてくださればあとは楽勝
。山形ワールドへズルズル引き込まれるのは間違いなし。
本のメルマガの購読者には、本嫌いはいないと思うけど、あなたの周りにい
ませんか?「本なんて全然読まないし〜」とかおっしゃっている方。あなた
がどんなにいい本を奨めても読んでくれないですよね。そんな痴人、じゃな
くて知人に読ませてみてください。最初の1ページ目から面白いから。次に
何か読もうかなあって思うのは請け合い!おまけに考える力もついて一石二
鳥。
どうぞ、この業界を救うためにも一つご協力を!!
山形浩生のホームページ(メチャクチャ面白いので見て!!)
http://www.post1.com/home/hiyori13/jindex.html
プロジェクト杉田玄白 http://www.genpaku.org/
晶文社 http://shobunsha.co.jp
----------------------------------------------------------------------
■あとがき
----------------------------------------------------------------------
>2000年問題、たいしたことなかったですね
>いやいや、実は対策の進んでいない中小企業は、それを隠していて、影響
はこれから現れる、という説もありますね。
>そういえば、マスコミで話題になってたの、電気とか原発とかの大所だけ
ですもんね・・・・
>しかし、結局これによってコンピューター関連の会社って結構儲けたので
はないでしょうか? 保証期限とかとっくに過ぎてるころ見計らって、こん
な時限爆弾みたいな事故起こるようにして、その対策で潤うなんて、考えて
みればすごく巧い商売。
>出版界だったら、乱丁とかあれば期限無関係に取替えなのにねえ・・・
>「10年前の百科事典に乱丁があって、使いつづければ、大変なことにな
るかもしれない。だから対策費の計上を」とかユーザーに言ってるようなも
のなのかなあ。まあ、羨ましい商売ですな。儲かってるわけだ(笑)
---------------------------------------------------------------------
■広告募集のお知らせ
当メルマガでは広告を募集しています。一回につき、購読者数(現在1700人)
×1円×3行以内の予定です。詳しくはメールでお問い合わせ下さい。
======================================================================
■ 電子メールマガジン「[本]のメルマガ 」(毎月5・15・25日発行)
■ 発行:[本]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ ご意見・御質問はこちらまで anjienji@mcn.ne.jp
■ HPアドレス http://www.freepage.total.co.jp/anjienji/index.html
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================
|