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2000.1.25.発行 vol.22 [虐殺のさまざまなかたち 号]
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■■ [本]のメルマガ 2000.1.25.発行
■■ vol.22
■■ mailmagazine of books [虐殺のさまざまなかたち 号]
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■CONTENTS-----------------------------------------------------------
★トピックス
★出版業界センチメンタリズム/夢憶
→謎の出版人からの投稿! 取次ぎ倒産という始めての事態を報告します
★「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
→焚書と虐殺、時代の暗部を抉ります。
★「脱・書店員日記」/aguni(あぐに)
→ブック・オン・デマンドの未来を探ります
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■トピックス
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■岸啓介さんの受賞と個展
Vol.9でご紹介しました『愉快な機械』(ソフトバンク刊)の岸啓介
さん、《平成11年度文化庁メディア芸術祭ノンインタラクティブ部門大
賞受賞!!!》
岸さんにコメントと今後の主な活動予定をお知らせ頂きました。
「思い入れの強い本だったので、評価されて大変嬉しいです。
今後とも精進いたしますので、ご声援の程よろしくお願い致します。
本も買っていただけると、さらに嬉しいです…。」
文化庁メディア芸術祭ホームページ
http://www.cgarts.or.jp/festival/top-j.html
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●個展「岸 啓介の愉快な機械」展のお知らせ
会期:2000年1月18日〜2月6日,10:00〜20:30(最終日は18:00まで)
会場:ロゴスギャラリー(渋谷パルコ パート1 B1)
東京都渋谷区宇田川町15-1 Tel. 03-3496-1287
●一日公開講座のお知らせ
タイトル:紙でつくる覗きからくり箱
日時:2000年2月5日,18:30〜20:30
受講料:2500円(予定)
(詳細は,パルコへお問い合わせください)
■話題の新刊[2000年1月24日、文責:五月]
"All about love : New visions" by bell hooks,
2000,William Morrow & Co.,isbn:0688168442,$22.00-
現代アメリカにおけるブラック・フェミニズムの旗手として名高いベル・
フックス(1952-)の最新著が本年1月、つまり今月にリリースされた。
多作で知られる彼女だが、持続的にかなりの人気を集めており、アマゾン
で検索するとどのページにも読者による熱烈な書評がにぎわっている。本
書のセールス・ランクも1月19日付けで173位という人文社会系では
滅多に見ない高順位。実用書ならともかく、アマゾンで専門書を買ってい
る読者であれば、このランクがいかに上位であるかはご存知かと思う。
ナルシシズムではないかたちでの自己愛の再考をめぐる簡潔な11章はす
でに多くの読者を得ているようだ。本書の一部はアマゾンで閲覧すること
ができる。論調は極めて明快。しかし日本人には極めて現代アメリカ的と
も映るかもしれない。日本では主著のひとつが『ブラック・フェミニスト
の主張』(原題『フェミニスト理論』84年)として勁草書房から刊行され
ているほか、『現代思想』誌上で論文を散見するが、まだまだ認知度は低
いようだ。
今年もフックスの勢いは止まりそうにない。5月刊行の2点の新刊がすで
に予告されている。ひとつは『フェミニスト理論:周辺から中央へ』の第
二版でサウス・エンド社から。もうひとつは『ある女の哀悼歌』でライ
ターズ&リーダーズ社から刊行される。いずれもアマゾンから予約可能。
何やら宣伝めくが、アマゾンの使い勝手の良さとプレオーダー受付開始の
早さは評価したい。
http://www.amazon.com/
『ブラック・フェミニストの主張 : 周縁から中心へ』清水久美=訳
1997年、勁草書房、isbn:4-326-65195-4、本体2600円
"Feminist theory : From margin to center" 2nd edition
May 2000,South End Press,isbn:0896086143,$40.00-
"A woman's mourning song"
May 2000,Writers & Readers,isbn:0863163173,$18.00-
なお、ベル・フックスのひととなりは95年4月の以下のインタビュー記
事でも窺える。プロフィールについては2番目のサイトで。
http://www.twics.com/~max/J/bell.htm
http://www.altculture.com/aentries/b/bxhooks.html
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■出版業界センチメンタリズム/夢憶
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第一回 柳原書店廃業について
戦後初の販売会社(取次)倒産ということで、柳原さんのケースを、今
後のテストケースとして(あえてこう言わせてもらいます)、この廃業後
の処理について、実作業のレベルで出版社の人間がなにをして、何を考え
ているのか書くのはムダではないと思うので、とくに業界紙等の記事にな
らない部分を急きょ書かせてもらいます。
99年12月27日の月曜日・お昼前に、柳原書店廃業のニュースがはいった。
寝耳に水、というわけでもなかった。担当の集品の人から、彼が28日いっ
ぱいで契約切れ、辞めるということを聞いていたからだ。毎年一年ごとの
契約で、来年次は半分のお金しか提示されなかったので、ということだっ
た。彼のあとだれが集品に来るか何の連絡もなく、どうするんだろうと思
っていた矢先の、このニュースだったから。
さて、どうしよう。何もしようがない。一般に取引相手が倒産なり辞め
ちゃった場合、売掛代金分をどんなかたちでもいいからとってくるのが定
石ですが、この場合整理だし。柳原さんの店売に在庫があるが、東京から
だと動きようないし。とにかく年あけて、1月14日の債権者会議の決議を
まってから動こうと思う。緑色の短冊のはさまった、引き取り手のない5
冊の書籍があるのを確認し、27日付納品伝票を廃棄した。ニュースが本当
であることを実感しつつ、売掛金の総額を算出した。
年明ける。注文品・延勘品、店売に常備としておいてあるものは仕方が
ないとして(お前はすぐあきらめる、甘いと上司に罵倒されるところであ
る)、書店へ常備出荷しているものについてどうなるか、であった。債権
者会議では柳原書店側は、他取次店への伝票切り替えを(他取次・出版社・
書店それぞれに)お願いする方向ということだった。小社の場合、取次か
ら正式に連絡があったのは、同じ関西ということもあるのか、大阪屋さん
で(1月21日現在)、こうした迅速な対応は出版社として本当に助かるし、
安心する。他販売会社(取次)からは情報はなく、いまだ不安が残って
いる。
この会議で、柳原書店側からなされた、書店常備品も自社買掛品として
処理しているとの説明は、出版社側に今後の常備品出荷を慎重にさせるに
は十分すぎるものだったのではないかそういえば、販売会社(取次)の店
売在庫が常備から長期扱いになったのは98年ごろからだったなぁ。業界全
体で、より厳しく取引相手の選別が行われるようになるのでは。新刊を大
量に売るという委託制が、既刊書を売る方法として常備が、おもいっきり
リスキーな部分になっていることを、あらためて気づかされる。
やはり書籍という商品特性、興味のないものには何の価値もない、を十
分ふまえるときに来たなぁ。いろんなタテマエをぬきにして、買切品とし
て「取引」するものとして構築すべきだと、私個人としては思う。そのさ
い出版社は出し正味を現在より1割落とす。出し正味は公開する。現状で
は書店、販売会社(取次)に書籍を「商売として」扱うに足る楽しさがな
いのではないか。これならさきの常備についても出版社と書店との契約と
いう、「本来の」姿にもどれるのではないだろうか。「本が好きだからや
っている」とか個人の気概でもっているようなシステムはシステムとして
は破綻をきたしているのではなかろうか。個人の意地とか気概だけでもっ
ているから、「好きなのに辞めなければいけない」という状況をつくって
いるんだ。意地とか根性とか気概なんてのはギリギリの部分で出てくれば
いいんじゃない?
「あの出版社より2分、3分少ない以上、下げられない」というのが現
状である。総論賛成、各論反対が現状ではあるが、理想は理想として語っ
ていいと私は思う。でもこれ、出版社としてさきにやったほうが勝ちだと
思うのですが、やれる体力があるということにもなるし。読者諸兄の意見
を求めるところです。あっ、再販を忘れていた夢想でした。
切り替え手続きに柳原書店さんの東京店売に行った。25日で完全にひき
はらうとのことでした。Fさん、Iさんにあいさつできたのがうれしかっ
た。お元気で、また会えることを願って。
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■ 現代思想の最前線 /五月
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第8回:許されざる虐殺、『スペシャリスト』と『共産主義黒書』
「焚書」は有史以来どの文明においてももっともイデオロギー的な蹂躙の
形態のひとつであった。しかし数量的に限定して言えば、すべての焚書の
罪をはるかに凌駕する「書物の廃棄」がこんにちの資本主義社会において
は実現されている。出版社にとって売行の芳しくない書物は、課税の対象
としてカウントされないように、つまり「決算」のために断裁され、文字
通り抹消されていく。さまざまな情報を担って誕生しつづけるこれらの書
物たちは、いったい何のために生まれたのか。
戦争と爆発的人口増加と科学技術の急激な進歩の時代、としての20世紀
を見直すために、今回はその一断面である「大虐殺」問題について再考を
促す、いくつかの書物と映画を取り上げたい。そして虐殺をめぐる問い
が、暴力的に無数の書物を蕩尽するという現代の、意外に真相を見極めに
くい文明病、おぞましき終わりなき消費への欲望を考え直すヒントにでき
ればと、個人的に考えているのだが。
当メルマガでも複数の書き手が何度か取り上げた、映画『スペシャリスト
:自覚なき殺戮者』の監督エイアル・シヴァンと脚本担当のロニー・ブ
ローマンが今月18日に来日した。19日に赤坂東急ホテルでひらかれた
記者会見では用意された50席がたちまち満席になったという。翌20日
には東京日仏学院で『スペシャリスト』の上映と、両氏によるティーチ・
インが行われた。ここでも100席を越える場内は満席。マスコミだけで
なく一般からも寄せられつつある関心の高さが窺えた。
ティーチ・インでは、映画作成にあたってのいくつかの技術的課題につい
ての質問があったほか、映画『ショアー』との対比、「悪の凡庸さ」、官
僚主義、68年5月革命と不服従などをめぐるやり取りがあった。終始に
こやかにコメントするシヴァンとブローマンは、来日してしばしば『ショ
アー』について意見を求められることが多いらしく、やや食傷気味とも聞
いた。日本での『ショアー』公開(95年)がやはり当時大きな関心を呼
んだことから、それは避けがたい事態だったろう。
なお、『ショアー』のテキスト版は作品社から、映画のビデオは図書館流
通センターからそれぞれ発売されている。ビデオ全4巻本体価格88,000円
は図書館向けに販売されており、今後一般向けに販売されることもあるか
もしれないとのこと。問い合わせは図書館流通センターのAV推進室が応
対してくれている(電話:代表03‐3943‐2221)。
作品社 http://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/
図書館流通センター http://www.trc.co.jp/
シヴァン、ブローマン両氏が滞在中に受けたいくつかの取材は『世界』
(岩波書店)や『週刊金曜日』等に掲載されるとのこと。NHKもテレビ
で取り上げるようだ。イスラエル反体制派のシヴァンは死刑反対派でもあ
る等々、興味深いエピソードが公開されるだろう。さらに、映画『スペ
シャリスト』が提起した問題の背景と深化を凝縮した1冊『不服従を讃え
て:「スペシャリスト」アイヒマンと現代』が産業図書から本日25日に
刊行発売された。
本書ではアイヒマン裁判が示唆するさまざまな難問がさらに追究されてい
るだけでなく、映画のスクリプトも収録されており、必携必読の1冊であ
る。映画および本書の出発点となったアーレントの『イェルサレムのアイ
ヒマン』(みすず書房)もタイミング良く重版されているので、この機会
にぜひ併読したい。また、東京駅前の八重洲ブックセンター本店4階では
『スペシャリスト』と証言をめぐるブックフェア「沈黙を超えて:ユダヤ
人絶滅の証言」が開催されており、類書を一望できる。会期は定休日2月6
日を除く2月12日(土)まで。
産業図書 http://www.san-to.co.jp/
みすず書房 http://www.msz.co.jp/
八重洲BC http://www.yaesu-book.co.jp/
映画『スペシャリスト』の一般公開は2月から東京中野区のBOX東中野
(電話03−5389−6780)にてスタートする。JR中央線の東中
野駅西口前。11:30、2:00、4:30、7:00の一日四回上映
で、前売券1400円税込が絶賛発売中である。何度でも見直したい、見
直すべき映画だ。配給会社であるセテラ・インターナショナルの皆さんの
奔走にも心からの賛同の拍手を送りたい。
さらに、3月3日(金)19:00〜21:00には青山ブックセンター
本店カルチャーサロンで、映画の監修者であり『不服従を讃えて』の翻訳
者でもある高橋哲哉さんが講演「『スペシャリスト』解読」を予定してい
る。参加無料、要予約(電話03−5485−5513)。氏が昨年末刊
行した『戦後責任論』(講談社)を予習しておけば、いっそう興味深いも
のになるだろう。なお、関係者の粋な計らいで、講演会に参加希望の先着
20組40名に映画『スペシャリスト』のチケットがプレゼントされるこ
とになっている。
青山BC http://www.aoyamabc.co.jp/
講談社 http://www.kodansha.co.jp/
映画でも重要な場面で取り上げられているものに、イスラエル国家警察が
アイヒマンを取り調べた折の膨大な「尋問調書」がある。この調書の抄訳
は『アイヒマンの告白:裁きの日の前に』として72年に番町書房から刊
行されていたが、現在は残念ながら品切。大久保和郎氏訳の本書は、ピ
エール・ジョッフロワとカリン・ケーニヒゼーダーの編集でフランスのグ
ラッセ社から刊行されたもの。現在入手可能な「調書」編集本には、最新
のものではヨッヘン・フォン・ランクとクラウス・シビルによる以下のタ
イトルがある。
"Eichman Interrogated : Transcripts from the Archives of the
Israel Police" 1999,Da Capo Press,ISBN:0306809168,$15.95-
ファシズムによるユダヤ人虐殺ほどには知られていないようだが、共産主
義諸国家による人民虐殺の問題はある種いっそう暗い影を投げかける事実
である。97年11月にフランスで刊行された800頁を越える大著『共
産主義黒書』はコミュニズム政権がいかに数多くの人々を隔離しあるいは
「処理」してきたかを追究した、血も凍る詳細なレポートである。すでに
17万部以上を本国で売り上げ、各国語訳も続々登場している。昨年ハー
ヴァード大学出版局から英訳版が刊行され、日本では恵雅堂出版から邦訳
刊行される予定。
すでに海外では論争の渦が巻き起こっているのだが、日本ではどのように
受け止められるだろうか。昨年4月に新創刊された『アステイオン』誌
(TBSブリタニカ)51号の特集「共産主義はファシズムか」では、
『黒書』論争を中心にレビューしており、大変興味深い。収録されている
のは、フランス国立科学研究センターと共産主義社会歴史研究所の両方の
所長を務める歴史学者ステファン・クルトワによる『黒書』の序文、英国
のマルクス主義歴史家ホブズボームとフランスの近代史家フランソワ・
フュレの間でかわされた論争、そしてイタリアの政治哲学者ノルベルト
ボッビオの周辺で沸き起こった論争の記事などである。
TBSブリタニカ http://www.tbsb.co.jp/
ナチズムとコミュニズムについて論じている興味深い書籍には次のような
タイトルもある。『20世紀を問う:革命と情念のエクリール』慶応義塾
大学出版会、96年刊。フランソワ・フュレによる「20世紀における革
命の情念」のほか、ピエール・アスネル、ハンス=クリストフ・クラウ
ス、アラン・ブザンソン、アルバート・ハーシュマンらの論文が収録され
ている。
日本でマルクスの再読解を試みている高名な知識人の中には、スターリニ
ズムやマオイズム、ポル・ポト政権等を「真の共産主義」ではないと発言
して諸問題を短絡させかねない人々がいる。常に来たるべきものとして前
方にあるコミュニズム。よろしい、確かにその通り。問題は真実や理想と
いったものが虚実や悪とほどよくまぎらわしくブレンドされていること
だ。すれすれのモラル。
ありとあらゆる混同とはぐらかしの巣窟から決別し、耐え難い知識人階級
主義の結界を突破すること、しかしその道しるべを大焚書時代のこんに
ち、情報の星雲の内に見いだすことは難しい。それでも大衆自身が自らの
知性を「洗い直す」ことなしには、道が伸びていくことはないのである。
[2000年1月23日 文責:五月]
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■ 「脱書店員電脳日記」/aguni(あぐに)
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第9回「文庫・オン・デマンド構想」
最近書店に行くと、新しい文庫・新書を眼にする機会が多い。といっても
新刊ではない。創刊である。集英社新書、王様文庫、岩波現代文庫。もうこ
うなってくると全貌がわからない。いったい今、文庫・新書は何冊刊行され
ているのだろう?
そもそも「文庫」は岩波書店が円本ブームに乗れなかったとき、状況の打
開を図って作ったものだという。そのとき構想を聞いた阿部次郎や小宮豊隆
らは、
@この計画には体系がない。
A廉価で経済的に成り立たない。
B著者の印税も激減してしまう。
と反対したという。これに対して岩波は、
@’点数が揃えば体系はおのずから整ってくる。
A’古典的な叢書なので息長く版を重ねることができる。
B’版を重ねる自信がある。
と説得したという。(参考:塩澤実信「出版その世界」恒文社)
ま、ともかく、岩波文庫は成功。各社は真似していき、現状があるわけで
ある。しかしもともとのコンセプトが重版を前提としているような経済基盤
あいまいなものなのだ。現状では一発当たれば大きい、みたいな幻想のせい
か、それとも一冊が売れないから少品種多量販売を目指しているのか、泡の
ように生まれては消えていくというのが現状だ。まさに文庫バブルである。
しかし近未来的にはこのような状況が続くとも思えない。
前回はプリントオンデマンドの話をした。今回は「文庫オンデマンド」構
想の話だ。
渋谷に新しくできたTSUTAYAの地下2階には音楽がMDにダウンロ
ードできる端末が設置されている。考えてみれば今までなかったのが不思議
なくらいだ。例えばCDレンタルでCDを借りる。それを家に帰ってMDに
ダビングして返却する。だったら初めからお店でダビングまでできたらこれ
はいちいち返す手間が省けていい。この機械、歌詞カードやラベルまで出て
くるというのだから、自分でダビングするよりずっといい。今までこういう
ものがなかったのが不思議だ。
これを応用してみよう。と言っても以下は私の妄想だから、実際のことで
はない。しかし実現すると思っている。
文庫オンデマンドは専用の機械を用いる。中には各社さまざまな文庫のデ
ータが入っている。データ形式はPDFかクオークか。つまり、DTP印刷
のためのデータである。画面で立ち読みすることもできる。CDでいうとこ
ろの視聴だ。
お客はタッチパネル式の画面を操作し、文庫本の体裁を選ぶ。カバーのデ
ザインを選んだり、文字の大きさを選択できる。短編集であれば入れる内容
を選択したり、順番を入れ替えたりもできる。しかしまあ、ここは「標準」
にしておこう。確認の画面が出る。OK。
縄跳びの縄が回っているような音がし始める。高速のプリンタが印刷して
いる音だ。印刷が終わると自動で乾燥・製本し、裁断し、カバーを巻いて出
てくる。その間、3分。これ以上は待ちたくない時間だが、まあ、このくら
いなら待ってもいいか。
このシステムの利点は品切というものがない、という点だ。データがある
限り原理的に品切はない。ついでにこれを置いている側から見れば、このシ
ステムには返品が生じない。返品がないから経営も安定する。
そしてまた、物体としての書籍にしてしまうわけだから、テキストデータ
やネットを介したコンテンツのみの販売のようなデータ増殖の心配がない。
データだけを取り出すことはできないから、解析されることもない。
「物体としての書籍」と言った。しかしこの素材は紙である必要はない。
この辺は素材屋さんと共同開発する必要があるだろうが、紙のような感じで
なおかつ再利用が簡単にできるような素材とする。溶かして再利用できるプ
ラスチック、みたいなものになるのかもしれない。
または電子インク(E Ink 社)や電子ペーパー(XEROX社)のようなもの
を使う、という手もある。
これはどちらも同じようなもので、つまりは紙の形状をした液晶画面みたい
なもので、データを与えることで文字や絵を表示してくれるという。まだプ
ラスチック板みたいな感じみたいだがそのうち紙のように薄くめくることの
できるようなものになるだろう。
これを使えばダウンロードにも時間がかからないし、リサイクルの必要も
ない。
どちらの素材にしても、メディアを持ってくればコンテンツだけを買う、
という形を取ることができる。経済的だし環境にも優しい。だいたい出版業
界なんて絶対にISO14000を取得できない業界だ。これに比べてしま
えば「買ってはいけない」も紙とインクを使っている以上、環境に悪すぎて
「買ってはいけない」ものになってしまう。
現在の文庫・新書ブームは、再販制が産んだ書籍のインフレの傾向がかな
りあるだろう。とりあえず作っておけ、という感じだ。
書籍は今は読み捨て使い捨てされる不遇の時代にある。しかし近い将来、
書籍のダウンロード販売が現実化すれば、今、作っている書籍はコンテンツ
として財産となる。どうせ作るならば、使い捨てのコンテンツを作らない努
力を怠って欲しくないものである。
TSUTAYA ONLINE
http://www.tsutaya.co.jp/
E Ink 社
http://www.eink.com/
XEROX社
http://www.parc.xerox.com/
電子ペーパーについての記事(HOTWIRED)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2401.html
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■あとがき
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>前号ですごいポカやっちゃいました。
>え、なになに?
>いや、日付を1999年と・・・こ、これは2000年問題に違いないん
だ、僕は誰かに陥れられたんだ、きっとビル・ゲイツのせいだ・・・ああ・・
>なんか、取り乱して誤魔化してますな。
>はあ、ハズカシ・・・
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