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1999.2.15.発行 vol.24 [あれ君、エ、エコノミー席?号]
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■■ [本]のメルマガ 1999.2.15.発行
■■ vol.24
■■ mailmagazine of books [あれ君、エ、エコノミー席?号]
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■CONTENTS---------------------------------------------------------
★トピックス
→堀 潤之さんの、映画『スペシャリスト』に関する評論を堂々掲載!
★「本の周りをうろついて・・」/湯川新一
→戦争と紛争の20世紀、そして現代を語ります
★「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
→著者急病につき休載
★「中国古典で浅学菲才が直る?」/掩耳(えんじ)
→「言語不信」というパラドックスと実用思想の関係は?
★読者からの投稿/朝日山さん
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■トピックス
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■神保町新聞 復活!
三省堂書店神田本店が発行していた神保町新聞が1年半ぶりに復活します。
2月15日より配布開始です。第一回の特集は広がりを見せるカルチュラル
・スタディーズ。人文書を中心に読者と出版社を繋ぐパイプ役を目指すフリ
ーぺパーです。配布は三省堂書店神田本店四階にて。
■映画『スペシャリスト』をめぐって(堀 潤之)
専ら法廷という息苦しい閉所だけに舞台を限定したドキュメンタリー作品
『スペシャリスト』(ロニー・ブローマン、エイアル・シヴァン監督)は、
地味な見かけとは裏腹に、それぞれに射程の広い諸問題が複雑に絡み合う刺
激的な場を構成している。
この映画の主役アドルフ・アイヒマンは、ナチスによるユダヤ人大虐殺
(ホロコースト)で、収容所へのユダヤ人の強制移送を担当していた「移送
の専門家」である。戦後、南米に潜伏していたこの戦犯は、一九六一年に
(国際法廷ではなく)エルサレムの法廷で裁かれ、死刑に処された(アーレ
ントはこの死刑を容認したが、少なくともシヴァンは死刑制度に反対してい
ることを確認した)。この映画は、その裁判の記録映像から、厳密な問題意
識に従って、二時間を抽出したものである。
この裁判の一部を傍聴していたユダヤ系の哲学者ハンナ・アーレントは、
すぐさま『イェルサレムのアイヒマン』(みすず書房)を発表し、主に二つ
の論点を提出する。彼女はまず、アイヒマンが残忍な怪物じみた相貌をいさ
さかも持っておらず、むしろ逆に規律・命令に盲従する小役人でしかないこ
とに注目して、「悪の凡庸さ」というテーゼを打ち出す。
個人が思慮と良心と想像力を欠いたまま「歯車」として組織に組み入れら
れることで、巨悪に加担してしまうことが問題だ、というわけである(だ
からこの論争的なテーゼは、悪が凡庸だという意味ではなく、悪への通路が
至る所にあるという事態を指す)。このことは映画では、滑稽なまでに自ら
の責任を否定するアイヒマンの姿に容易に見て取ることができる。
もう一つの論点は、第二次世界大戦時に各地のゲットーの自治組織だった
「ユダヤ人評議会」に関わる。アーレントは、この組織が結果的に、ナチス
による強制移送を円滑に進行させるための「道具」と化してしまった、つま
りユダヤ人は自らの絶滅に手を貸したのだ、という残酷な指摘をし、世界中
のユダヤ人に衝撃を与えた。こちらの論点も、映画の中で繰り返し取り上げ
られている。特に、ユダヤ人評議会の元メンバーだったピンハス・フォン・
フロイディガーの証言時に、傍聴人の一人が告発の声をあげるシーンが印象
的である。
こうした問題は、ナチズムという歴史的現象に固有のものではなく、いわ
ば普遍的な拡がりを持っている。映画『スペシャリスト』及び、それをめぐ
る書籍『不服従を讃えて』(産業図書)の作者たち二人も、それぞれの問題
意識から「アイヒマン」に遭遇した。やや図式的に整理すれば、「国境なき
医師団」の総裁を一二年間務めたロニー・ブローマンは、中立を保つべき人
道援助組織が、紛争当事者の「道具」として非人道的な目的のために利用さ
れてしまうという事態に、「ユダヤ人評議会」と同型の困難を見出した。
他方、フランス在住の反体制イスラエル人映画作家エイアル・シヴァンは
、「普通」の個人が、武器を持たないパレスチナ人に発砲するほどまでに、
軍隊組織における「歯車」と化してしまう状況への批判的考察を続けてきた
、と言えよう。
(ちなみに、ドキュメンタリー映画作家のシヴァンがかつて扱った題材は、
パレスチナ難民キャンプ(『アカバット・ジャベル』)、イスラエルのナシ
ョナリスティックな教育システム(『イズコール:記憶の奴隷たち』)、「
市民的不服従」を標榜する興味深い神学者・哲学者イェシャヤフ・レイボヴ
ィッチのインタヴュー(『イットガベル:己に打ち勝つ』)などきわめてア
クチュアルなテーマである。)
ところで、裁判はなぜ戦後一五年も経た一九六一年に行われたか?
アイヒマンがうまく身を隠していたからではない。実は、イスラエル国家
はアイヒマン裁判を、五〇年代に増加した東洋系ユダヤ人(ミズラヒームと
かセファルディーとも呼ばれる彼らはヨーロッパのユダヤ人大虐殺とは直接
のつながりがない)によって分断された国民を、アウシュヴィッツの犠牲者
の記憶を喚起させつつ再統合する機会として企図していたのである。
そうしたシオニスト的な政治的意図のために、それまでむしろ隅に追いや
られていた多数の生還者が、証言台に立たせられた。だから、裁判の記録映
像は、いわば「国策映画」なのである。
こうしたコンテクストを考慮に入れるなら、加害者に焦点を当てた『スペ
シャリスト』は、かつての権力の映像を逆方向に用いているわけで、とりわ
け、当局が最も力を入れたはずの生還者の証言を、パッチワーク的に繋ぎ合
わせた場面は、当局の意図をアイロニカルに相対化していると言えよう(む
ろん、このことは、ブローマンとシヴァンが生還者の証言を軽視しているこ
とをいささかも意味しない)。
裁判において、国家の意を体するハウスナー検事長に対して、ランダウ裁
判長は原告の行き過ぎを抑えて、公正な裁判を心がけているかに見える。し
かし彼は、九〇年にパレスチナ人に対する拷問の合法化に繋がるレポートを
発表する。これを変節と断じ切れないところに、この裁判の恐さが潜む。
筆者紹介 堀 潤之さん
1976年生まれ。映画研究。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学
専攻(表象文化論)在学中。訳書に『不服従を讃えてー「スペシャリスト」
アイヒマンと現代』2000年1月、産業図書、高橋哲哉との共訳がある。
氏によるシヴァンの来日インタビューは、『現代思想』に近く掲載される予
定。
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■「本の周りをうろついて・・」/湯川新一
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「人間、線さえ引けば相当なことができるぜ」その2
過日、つけっぱなしで音を消してあるテレビに12〜13才の男の子と少し
年長と思われる男の子が写し出された。「ジハード=聖戦」とテロップが流
れたので、おやっと思い音を出そうとしたが、その画面は終わってしまった。
その間数秒でどんよりした私の目が見たものは2人少年の高揚感に満ちた疑
いのまったく無い澄んでキラキラした目だった。しかし、その少年たちの服
は迷彩服で、その左肩には古びた小銃がごく自然にかけられていた。
2月3日、オーストリアで移民排斥を打ち出し、ナチス容認の発言の多い巧
みな話術の極右・ハイダー党首率いる自由党と保守・国民党の連立政権が発
足した。それに対しEU加盟国は自由党が政権に就くことに圧倒的多数で非
難決議(賛成406票、反対53票、棄権60票)を採択した。
一部の報道では内外の批判が広がるに連れてオーストリア国民の自由党への
支持率が上昇し、51%の国民が連立政権を支持しているとある。
『朝日新聞』2/5付そのオーストリアに対しEU(欧州連合)の14ヶ国
は、それぞれオーストリアとの実質的に外交関係を凍結する外交制裁に踏み
切った。
主な制裁内容は、@閣僚会議などの政治的接触の中止、A各国駐在の大使と
の接触を事務レベルに制限、B国際機関のポスト選びでオーストリア人を推
さないなど。『朝日新聞』2/8「ハイダー氏、大統領クレスティルと前首
相クリマを反逆罪で追求へ」
『朝日新聞』2/5付「憎しみを説く人たちでつくられている政府の国に行
くことはできない」とノーベル平和賞作家エリ・ヴィーセル氏ウィーン訪問
を中止。2/8「政治と芸術は切り離せぬ」とハンガリー出身のピアニスト、
アンドラーシュ・シフ氏、右翼参加政権の発足に抗議してワシントン在米オ
ーストリア大使館で開かれるコンサートの出演をキャンセルした。
その他、芸術・文化の分野にもその影響は広まりつつある。
『産経新聞』2/5「オーストリア連立政権反対デモ、首都で激化。新政府
批判の記者、解雇」
内外の評価の<差>がはっきりと現れている。国益の対立ではなく、人権感覚
や歴史認識といった深い理念が元になっているようだ。
99年末にはセルビア人抜きのコソボ暫定評議会が成立している。
最近の『朝日新聞』をペラペラめくるだけでも2/8「イスラエル、レバノ
ンに大規模空爆・イスラエルが報復」、2/8「人権団体HRWは昨年のN
ATOのユーゴスラビア空爆の死亡した民間人は約500人と発表」、
2/7「ロシア軍、チェチェンの首都制圧」、2/4「国連報道官はアフリカ
・シエラレオネで反政府ゲリラに連れ去られ兵士などにされていた6歳〜
12歳の子供37人を救出。昨年7月以降約800人の子供を保護」、2/1
「国連調査委、人権法廷設置を勧告、東ティモール国軍の責任を指摘」、
2/1「イスラエル・シリア和平交渉の前途多難。楽観視一転、早くも中断」
、1/31「北アイルランド再び緊張、武装解除進展せず」、1/28「スペ
イン、武装組織バスク祖国と自由・テロ再開」、1/25「キリスト教徒・
イスラム教徒、宗教抗争で死体の山、復讐の連鎖やまず」、1/22「エク
アドルで政変、軍と先住民インディオのデモ隊が国会を占拠、新政府の樹立
を宣言」
『産経新聞』2/8「チェチェン大統領、首都奪還へ決意表明、今後はゲリ
ラ戦」、2/7「チェチェン攻撃は虐殺とした米国系反戦記者消息不明」、
2/2「EU15ヶ国、中国の人権弾圧非難の決議採決。中国、不当な反中
と反論」、1/20「インドネシア・マルク諸島、宗教抗争周囲に波紋」、
1/19「ウイグル自治区、宗教テロ非難、中国に表明」「インドネシア・
ロンボク島で教会焼き討ち」、1/18「国連のイラク新査察機関、委員長
の人選難航」、1/18「パキスタン・カラチ移民間の派閥抗争、爆発で8
人死亡」、1/15「中国、北朝鮮移民を送還」・・・
1/13「日本・大阪、平和博物館での南京大虐殺ウソ集会、中国が残念と
申し入れ」
(そういえば少なくとも一年半以上前、深夜テレビの映画紹介のコーナーで
南京大虐殺と思われる当時のフィルムを編集した映画の制作発表の模様が
伝えられた。たぶん中国人監督だと思うのだが、彼の憔悴しきった沈鬱な
表情といくつか紹介された悲惨極まりない映像が強く印象に残っている。
監督のその表情と言葉は明らかに「政治」の関与を感じさせるものだった
。両国を明らかに傷つける作品だけに、その困難さは容易に想像できる。
その後、何の報道も無いのでどうなったのであろうか。
現状およびハッカー等々のことを考え、その映画が公開された時のことを
想像するだけで・・・。
私が見たと思っている制作発表は南京大虐殺とは何の関係も無いものだっ
たのかもしれない。しかし、どこで行なわれようとも人道に反する罪とい
う問題は消えるものではない。)
『産経新聞』2/3「IRA声明、自治停止なら武装続行」、2/3「中国、
チベット仏教カギュー派の最高位活仏カルパマ17世の密出国についてダ
ライ・ラマが深く関与していたと指摘」
等々、<この種>の記事は枚挙にいとまがない。
冷戦体制の終結(89年ブッシュ、ゴルバチョフのマルタ会議で冷戦終結
を宣言、91年6、7月コメコンとワルシャワ条約機構を相次いで解散し
冷戦は終結した)後、抑圧や差別を覆い隠してきたイデオロギーのタテマ
エが外れるなかで個人や集団の生・自由と自治への要求が解き放たれた。
世界紛争地図『イミダス』より
アジア
南シナ海領海問題、ミンダナオ紛争、東ティモール独立運動、台湾独立問
題と中国、チベット独立運動、新疆紛争、チベット独立運動、カシミール
紛争、パンジャブ紛争、スリランカ民族紛争・・・。
中東
パレスチナ自治交渉、中東紛争、キプロス紛争、クルド問題・・・。
アフリカ
西サハラ紛争、アルジェリア原理運動主義紛争、ソマリア紛争、エチオピ
ア・エリトリア紛争、ルワンダ内戦、ブルンジ内戦、コンゴ(旧ザイール)
紛争、スーダン南部問題、アンゴラ内戦・・・。
旧ソ連・東欧
チェチェン紛争、タジキスタン紛争、ナゴルノ・カラバフ紛争、ボスニア
・ヘルツェゴビナ紛争、コソボ問題、マケドニア問題、アフガン内戦・・
・。
ヨーロッパ・その他
バスク分離運動、ペルー・エクアドル国境紛争、メキシコ先住民問題・・
・。
一方、過去の清算と今のこの問題をなんとか解きほぐそうとする動きも出
はじめている。
『産経済新聞』2/4「パリ3日:北への沈黙打破を:仏の知識人18人が
新聞に表明」とある。この声明文はフランスの新哲学派の旗手アンドレ・
グリュックスマンや「共産主義黒書」で共産主義の罪を糾弾した歴史家の
ステファン・クルトワ、ピエール・リグロ、ジャーナリストのオリビエ・
トッド等18人で、1/27ストックホルムで開催された「ホロコーストに
関する国際フォーラム」に出席の46ヶ国の政府首脳に「ナチの収容所やホ
ロコーストの思い出を永久に持続させようというあなた方の会合には全面的
に同意するが、こうした民主国家の首脳が北朝鮮で起きていることには沈黙
しているように見える」と批判し、さらに「北朝鮮は死の恐怖が支配する十
数ヶ所の強制収容所を隠蔽しており、全体主義国家の狂気はこれら収容所の
みならず数年来の飢餓によって百〜三百万人の国民をも襲っている。生存者
も食うや食わずの状態である。」「北朝鮮が国家として人道に反する罪を構
成している」と指摘した。その上で民主国家を標榜する世界の政府首脳に対
し「許し難い行為を繰り返さないために、沈黙を破って強制収容所を解放す
るためにどんな方策を取るのか世論に公表して欲しい」と訴え、国際社会に
北朝鮮問題を座視しないよう要請した。『朝日新聞』2/3「北朝鮮の改良
型弾道ミサイル・テポドン2号、核搭載可能とCIAが発表」2/3「北朝
鮮副首相、核開発凍結解除を示唆」
『朝日新聞』1/20「ベルギー人道違反法、大量虐殺や戦争犯罪などをベ
ルギー国内で裁く<人道違反法>に基づいた提訴が相次いでいる。被害者と容
疑者の国籍を問わずベルギーと無関係な国の市民でも自国の指導者等を訴え
られる世界ではじめての法律。」象徴的意味合いが急速に広がりつつある
「国家主権に対する人道の優先」を具現化する試みとして注目されている。
『朝日新聞』1/15「カンボジア内閣は1970年代後半にポル・ポト政
権下で起きた大虐殺を裁く法廷の設置に関する特別法案を一部修正し、閣議
決定した。国連は判事の選任方法、意思決定の手続き、検事の起訴権限など
があいまいで、裁判をマヒ状態に陥れる可能性があると指摘した」
『朝日新聞』1/25上の1/15の記事について「妥協の連続、にぶる矛先」
前回の原稿・人口爆発との関わりは、
将来の人口動向は1996年国連推計によると世界人口は2010年に68
億9078万人、2030年に83億7160万人、2050年に93億6
672万人と推測されている。また、その増加の90%以上は現在の開発途
上国にあらわれるとされている。
開発途上国とは国連の定義によれば、日本を除くアジア・アフリカ・ラテン
アメリカ、オーストラリア・ニュージーランドを除くオセアニアである。そ
の人口は現在世界の80パーセントを占める。1900年には68%であっ
たので急増していることがわかる。
上記、紛争地図と重ね合わせると、多くの子供たちがその地域に生を受け、
冒頭に書いたような子供たちに育つ可能性が高いということである。
つづく。
紙面が尽きました。「人間、線さえ引けば相当なことができるぜ」その3で
はいくつかの資料をあたり、これら紛争の類型化を書こうと思います。
それでは、また。
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■ 中国古典で浅学菲才が直る?/掩耳(えんじ)
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実用思想と知識不信
中国古典思想とは真の哲学ではなく、結局、実用思想でしかないと言われる
ことがあります。
つまり、世界とは何か、人間とは何かをとことん突き詰めて考えていこうと
いう立場を取らず、現実の世界をより良くするにはどうしたらよいか、そこ
でより良く生きるにはどうしたらよいか、を問いていく思想だというのです。
このことは、前回取り上げた、「言葉への不信感」にも実はまったく当ては
まります。
この「言葉への不信感」、本来は全く立場を異にするはずの孔子にも見られ
るので、今回はそれを引きつつご説明しましょう。
孔子の高弟の一人に子貢という人物がいます。ある意味、高度資本主義的人
間の走りのような人で、商才に長け、孔子教団の実質上のパトロンの役割も
果たしていたようです。
その子貢、他人を批評するのが大好きだったらしく、孔子がそれに対して厭
味をいう話が『論語』に残されています。
――子貢、人を方ぶ。賜や、賢なるかな。それ我は即ち暇あらず(憲問篇)
(子貢が他人を批評していた。孔子は「子貢は賢いね、私にはそんなヒマは
ないよ」と言った)
この話の肝は、子貢に厭味を言った孔子の言葉、それも「そんなヒマはない」
と一蹴したはずの、他人を批評した言葉ではないのか? ということです。
同じことは、荘子の言語批判にも当てはまります。
――それ形色名声、果たしてもって彼の情を得るに足らざれば、すなわち知
る者は言わず、言うものは知らず
(形や色、名前や音声だけではものごとの本質がわからない。本質を知る者
は語らないし、語る者は本質を理解していない)
つまり、これだけぐだぐだ語るってことは、要はお前も本質わかってないじ
ゃん、と思わず横浜弁で突っ込みたくなる文章ですねー。
これらは、そこまで突っ込んだことを何も考えずに書かれているのでしょう
か? それはたぶん、否です。
この問題、突っ込んで行けば「嘘吐きのパラドックス」や「ゲーデルの不完
全性定理」にも行きつくような、ひたすら裏の裏が出てくるような世界に突
入します。
中国の古典思想とは、つまりこれを意図的にある段階まででぶっちぎり、回
避しているのです。西洋思想とは、ここを突き進むことで壮大な知の伽藍を
築き上げた――とも言えると思うのですが、中国人にとって、それはよりよ
く生きるためには不要なものに映ったのではないでしょうか。
その意味で、荘子の次の言葉は大変、示唆的なのです。
――我が生や涯あり。しかるに知や涯なし。涯あるをもって涯無きを追うは
殆きのみ。
(人の生には限りがある。だが知識には限りがない。限りあるものが限りな
いものを追い求めるのは、危険なことだ
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■ 読者の方からの投稿/朝日山さん
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なぜこれが売れない?読者の怨念4
「斎藤家の核弾頭」篠田節子 朝日文庫
2000年最初の直木賞は、なかにし礼だそうで……直木賞の審査委員は「この
ミス」でまたバカにされるのが目に見えていますが、黒岩重吾の言う通り、
確かに最近はアダルトチルドレンがらみの作品が目立つのは事実ですね。な
かにし礼が受賞したというのも、脱アダルトチルドレンと言う意味では妥当
だと言えるでしょう。もっとも個人的には「亡国のイージス」が落ちたのは
納得できませんが。
朝日山が直木賞の審査に納得できないことは、これが初めてではありません
。篠田節子の「女たちのジハード」も、そのひとつです。ただ現代のOLの
生き方をオムニバスに見せるだけで直木賞とは……読んで面白かったのは事
実ですが、直木賞を与えるほどの作品とはね。何かで読んだけど、これはも
ともと最初の部分を短編で発表すると好評で、長編に変更した作品だとか。
本人もまさかこれで直木賞が取れるとは思ってなかったんでしょうな。しか
し、篠田節子は足腰の強い作家です。「斎藤家の核弾頭」は、篠田節子の、
たぶん初のお笑い小説にして、彼女の真価を見せつけられる作品です。
本の裏表紙の惹句をそのまま引用します。
「『国家主義カースト制』によって超管理社会となった2075年の東京。政府
の謀略により長年住み慣れた家からの立ち退きを強制された斎藤家は、理不
尽な転居命令に抵抗し、近隣住民とともに手製の核爆弾を武器に日本国に宣
戦布告する!」どうです、かつてこれほどせこい動機で国会議事堂に核ミサ
イルの照準を合わせた者はいたでしょうか(笑)。
もちろん、ただの荒唐無稽ではおもしろい小説にはなりません。下手な国際
謀略小説顔負けの強固なプロットは、間違いなくオーウェルの「1984」を越
えようとする野心をもって書かれたものでしょうし、同時に東野圭吾の「超
たぬき理論」(怪笑小説収録)に匹敵する荒唐無稽なストーリーを読者にす
んなり信じ込ませる力になっています。その上、あっちこっちにちりばめて
ある毒の味わいと言ったら……今、日本でこの分野に力を入れているのは、
東野圭吾と京極夏彦らしいのですが。「毒笑小説」の巻末にこの二人の対談
があります。これによると、お笑い小説を書くのは大変で、短編ひとつで長
編ミステリ二作分消耗するものだそうです。そのせいか二人とも短編しか発
表してません。そこに篠田節子は何の前触れもなく長編(本の厚さから察す
るに七百から八百枚)をぶつけてきたわけです。この本を読んで一番びっく
りしているのは、おそらく東野&京極の二作家でしょう。日本のお笑い小説
史上に残る、まがうことなき傑作です。にしても心配なのは、この本を読者
は本屋で見つけだせるだろうかということ。出したのが朝日新聞社で、朝日
文庫に入ってるんです。モノは絶対にいいんですけど、普通本屋で客が小説
を探すのに朝日文庫なんて見ないでしょう。そもそも朝日がお笑いを出すな
んて思っている人はいないだろうし、朝日もそんなに力を入れて売ってると
は思えないし……
お笑いは格が低いとでも思ってるんでしょうかねぇ→朝日新聞社殿。
本屋が推さないと、客がこの本を探し出す前に返品されるんじゃないかと不
安になってしまいます。横山えいじの手による可愛らしい表紙もいいし、ぜ
ひとも各店のお勧めの一つに入れていただきたいものです。
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■あとがき
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>某出版社の招待海外旅行の話なんですが・・・
>はあはあ・・・
>某社が書店チェーンのお偉いさんを数十人集めて海外に連れて行ったんだ
けど、そのときこっそり飛行機をファースト・クラス組(またはビジネス?)
とエコノミーに分けたんだって。
>ははーん、大書店さまはファースト、中小はエコノミーなわけね。
>そうそう。で、そう言う場合、普通は出発日別けたりして当然ばれないよ
うにするんだけど、なんとその出版社同じ日の、結構時間が近い便に設定し
たんだって。
>げ、それってまさか・・
>そうそう、二つのグループが一緒になっちゃって、もうバレバレ、大騒ぎ
になったとか・・・
>招待で海外連れてって顰蹙かってるなんて、アホの極みですな・・
>いや、株価と実力は一致しないいい見本のような(笑)
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