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2000.7.5.発行 vol.38 [暑いけど紫陽花がきれいだ 号]
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■■ [本]のメルマガ 2000.7.5.発行
■■ vol.38
■■ mailmagazine of books [暑いけど紫陽花がきれいだ 号]
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■CONTENTS---------------------------------------------------------
★トピックス
★「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
→衆院選からジャンボ鶴田まで、怒涛の6月批評!
★「虚実皮膜の書評」/キウ
→川端賞受賞の名品。優れた作品とは常に時代を反映しているのだ!
★「一字千金の記」/グッドスピード
→最近すっかり見かけなった「正誤表」に感激。
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■トピックス
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■待望のクンデラ論、水声社より刊行
気鋭の文芸評論家であり文学研究者である赤塚若樹氏の待望のクンデラ
論『ミラン・クンデラと小説』が水声社より刊行された。クンデラの作
品と思想を「小説の歴史」という大きな文脈のなかで総合的に論じた世
界的にも貴重で質の高い論考である。クンデラの作品と本書を読まずし
て、今後クンデラは語れない。とくに大学生諸君! 本体6,000円。
■姜尚中氏+宮崎学氏ライブトーク
緊急出版『ぼくたちが石原都知事を買わない四つの理由』(朝日新聞社)
の刊行記念イヴェント。東大社会情報研究所の姜尚中氏と、『突破者』
の宮崎学氏の対談。朝鮮半島の状況など、タイムリーでホットな話が聞
けそうだ。
日時:2000年7月15日(土)14:00〜16:00
会場:青山ブックセンター本店カルチャーサロン青山
お問い合わせ・申込先は、03-5485-5513
要電話予約。入場無料、定員150名。
青山ブックセンターのURL
http://www.aoyamabc.co.jp/
■ノーマ・フィールド氏講演会+サイン会
こちらも青山ブックセンター本店のイヴェント。『祖母のくに』(みす
ず書房、大島かおり訳、本体2,000円)刊行記念。講演テーマは「個人
に注目すること、政治が必要とするもの」。前著『天皇の逝く国で』
(みすず書房)も必読。みすず書房のURLは、http:www.msz.co.jp/
日時:2000年7月14日(金)19:00〜20:30
会場:青山ブックセンター本店 カルチャーサロン青山
お問い合わせ・申込先は、03-5485-5513
要電話予約。入場無料、定員120名。
青山ブックセンターのURL
http://www.aoyamabc.co.jp/
■おとなり韓国の電子メディア事情を徹底紹介
2002年ワールドカップ、映画「シュリ」の大ヒット、日本文化解禁、
南北対話の進展等々、なにかと話題の東アジア地域だが、韓国の出版・
メディアの世界における電子化は日本より進んでいるといえる。日本で
はまだあまり知られていない韓国の電子メディア事情を、日韓の執筆者
によって詳しく紹介した本が刊行される。『コリアン・ドリーム! 韓
国電子メディア探訪』(責任編集/水越伸・河上進)がそれ。『本とコ
ンピュータ』の別冊としてトランスアートから7月10日発売。本体1,300
円。オンライン書店、電子図書館、インターネット新聞、オンライン・
マガジン等々、第一線の現場からの最新レポート。
http://www.honco.net/ondemand/shop-j.cgi
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■「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
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第14回 神話と非神話のあいだ
衆議院選挙
あーん?、衆議院選挙だからってせっかく来てみりゃ、ねぇじゃねぇか、
スポーツ平和党。今度こそ、新間寿に一票投じてやろうと思ったのに。猪
木はどうした、猪木は? 江本はどうした、江本は? それにしても、こ
んな党は二度と出現しないだろうな。
金大中北朝鮮訪問
「思想」2000年6月号・和田春樹「思想の言葉 北朝鮮を読み解くには・
満州の金日成をめぐって」は、北朝鮮にたいするステレオタイプ的な見方
を捨て去り、過去にかんする新しい資料を発掘して、現在に光をあて、同
時に現在の中のに現れてくる新事実を見落とさず、それを含めて不断に新
しい認識仮説を発展させようという提言であった。「北朝鮮は長年国家神
話をインフレートしてきた。しかし、いまは(それも北朝鮮の歴史家たち
の努力によって)金日成神話の修正、縮小に向かっているとすれば、これ
をどのように解読するか、考えなければならない」。
北朝鮮は金日成の満州抗日遊撃戦争を国家神話の基礎としてきたが、こ
れにたいする反神話として、金日成にせ者説、金日成複数説が押し出され
てきた、と和田氏は述べる。
和田氏が萩原遼氏や「大航海」の三浦雅士氏の発言を引用しながら、ま
た私の手元にある宮崎学氏の『不逞者』(角川春樹事務所、1998)にも、
1957年からの「総点検運動」から、金日成の経歴や抗日パルチザン闘争の
歴史が大幅に書き替えられていって、金日成の「唯一革命運動」と仕立て
上げられていったと書かれているのをみると、こうした反神話が「定説」
に近いものなのだろう。だが、今日の中国の研究・資料をもとにした研究
水準からいうと、金日成が中国共産党員として、中共の指導する東北抗日
聯軍の一人として実在したことが明らかであり、この反神話は完全に否定
されていると和田氏はつづける。
になった、と。
金日成神話の縮小の方向は、金正日総書記の体制づくりという側面もあ
るだろうと単純に思った。今回の南北共同宣言以降、どういった体制をつ
くっていくのか、とても興味深い。8月15日は離散家族の交換が約され
ている。
ジャンボ鶴田、追悼
村松友視さんが『私、プロレスの味方です』(現在『合本 私、プロレ
スの味方です』所収、ちくま文庫)を書いたのは1979年である。この本は
プロレスというジャンルを、観客席にいる、いちファンが「過激に」観て
語るというものだった。この「私、」という部分に世間に思い切って自分
の趣味をさらけだす、カミングアウトの感じがでている。
村松氏はあらゆるジャンルに貴賎ないが、一つのジャンルの中には厳然
と貴賎(超一流から五流まで)があるといい、膨大なプロレスにかんする
エピソード(それは日本プロレス史である)から、超一流のプロレスラー
とそうでないプロレスラーとの差を「凄み」の有無で判断していくのであ
る。本書がなしたのは審美的なまなざしの民主化(あるいは大衆化)であ
ったと私は思う。
またプロレスをたんなる勝ち負けではなくプロセスとしてみること、そ
れも対戦するプロレスラー同士と観客との関係からみるという指摘も、今
なお新鮮である。そしてその文体はエネルギッシュなパワーに満ち溢れて
いる。それは氏自身のエスタブリッシュメントとの闘いを表しているのだ。
氏がロラン・バルトの「レッスルする世界」(『神話作用』所収)のレス
リング(プロレス)礼賛への違和感を述べていることからもうかがえる。
本書の解説に山下洋輔氏が村松氏のこの「見方」はあらゆるジャンルに適
応できると述べており、ジャズ(評論)との比較を試みている。そしてジ
ャズは、プロレスと異なり、今や市民権を得たように見えると複雑な思い
を吐露している。
本書所収のエッセイに、「「もの忘れの能力」はプロレスの明日を決め
る」というジャンボ鶴田論がある。藤波辰巳とジャンボ鶴田を比較し、前
者を「もの忘れの天才」、後者を「もの忘れの能力に欠けた者」と指摘す
る。ジャイアント馬場の庇護のもとで、過去の楽しかった修業時代に固執
していて、現在そのものを直視する覚悟がない。そこであと一枚の壁を突
き破ることができないのだ、と鶴田に対するもどかしさを述べたものだ。
ジャンボ鶴田がオリンピック代表選手・鶴田友美として死んでいった今、
このエッセイのもつ厳正なまなざしに、ただただ驚いてしまうのである。
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■「虚実皮膜の書評」/キウ
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時代を映す短篇――岩阪恵子『雨のち雨?』(新潮社 00.6)
文学賞というものの意味・意義ということは、種々にあるのかもしれない
が、今の純文学の世界において、賞の受賞ということが読者の獲得にもなる
し、そのようにしてしか、なかなか読者と作品を結びつける契機も見出せな
いというのが現状かと思われる。それでも、どのようなかたちであれ、よい
作品と出会えることは、やはり嬉しい。
短編集『雨のち雨?』は表題作が川端康成文学賞受賞作。他八編が収まっ
ている。
はじめて読む作家で、まず他にどのような作品を書いているのか本書の奥
付にある著者略歴を見てみる。「木山さん、捷平さん」を書いている。タイ
トルに惹かれて買おうかどうか迷って、結局買わなかった本だ。木山捷平に
惹かれる作家なら、という気持ちも働いて購入した。
表題作が先頭に納められている。読み始めて、期待を裏切らない。文章が
端正に切りつめれらていて、それでいてさっと情景が浮かんでくるほどに的
確。日常を描きつつ、そこに人生の深みを見出していく。木山捷平などに連
なる、日本の伝統的な良質の短編小説に見える。
優れた小説は、しかしそのような伝統の中にも、常に時代を反映する。
表題作は、ある朝、夫が出勤したまま家に戻らなくなる話。妻はしばらく
様子をうかがう。離れて住む夫の母や息子に電話で探りを入れてみるが、そ
ちらには現れていない。会社に電話を入れてみると、夫は職場から昼食を取
りに出たまま、戻っていないという。四日経っても戻らない。一人で抱え込
んでいた妻は、ようやく義母に話をする。すると、一人で暮らしていた義母
は、やはり一人になってしまった嫁ところへ転がり込む。そして二人で暮ら
し始める。
それだけの、なんとも奇妙な話だが、読んでいて、どきっとさせられる場
面が何度もある。
失踪した夫の行方を探るために地方の大学に通う一人暮らしの息子に電話
をする場面。
「もしもし」
受話器の向うで、声を出すのをためらっている気配が伝ってくる。
「悟、お母さんだけど、元気にしてる?」
数秒間の沈黙のあと、ようやく重い口が開いた。
「なんか用?」
「うん、あの、ちょっと言いにくいことなんだけど、最近お父さんから
なにか連絡なかった?」
「ないよ」
「電話がかかってくるとか、会いにくるとか・・・・・・」
「ないって言ってんじゃねえか」(P19〜20)
このような会話になってしまうことになんの説明もない。この主人公にと
っては日常的なことなのだろう。この雰囲気は、ほぼ、どの短編にも漂って
いる。文章のいたるところに現れる。
この短編集全体に流れる齟齬感、寂寥感は、ディスコミュニケーションと
いうことなのだろう。木山捷平のような、齟齬があってもそれがユーモアに
転じてしまうとか、そういうことはない。永井龍男の「青梅雨」など、一家
心中の話だけれど、その一家にこのような断絶はない。伝統的で良質な短編
小説の系列に連なりながら、あきらかに時代が映し出され、それ故に読む者
を息詰まらせるような、切迫した気持ちに追い込む。
はじめから順に読んでいくと、この息詰まるような空気は「子の闇」でピ
ークに達する。自分の子供が自閉気味になってゆく様が描かれてる。心理描
写のない子供の視点から始まり、母、父などの視点・心理など織り交ぜなが
ら、不安を高めてゆき、いたたまれなくなった母が、嫌々学校へ行った子供
の帰りを迎えに家を飛び出す。
短編としてどれも優れているが、この作家が本当に優れているのは、時代
の空気をしっかりと自分の胸に吸い込み、そして簡素で的確な文章で表現し
得ているところだろう。
最後に収録されている「日が傾いて」は年老いた夫婦の夢うつつの生活が
描かれていて、ほっとさせられる。
「また一日暮れてしまいましたなァ。こうして、わたしら、いつまで生
きてるんでっしゃろなァ」(P222)
という最後の老妻の台詞は、それはそれで、時代を反映しているのだろう
けれど、このような感慨を語り合える夫婦は、むしろ喜ばしい存在であるの
だろう。
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■「一字千金の記」/グッドスピード
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「正誤表のたのしみ」
精神的な師と仰ぐ、というかこのコーナーの生みの親というか、とにかく
作家の倉阪鬼一郎氏が新著『夢の断片、悪夢の破片―倉阪鬼一郎のブックガ
イド』(同文書院、本体1,800円)を上梓した。副題のとおり、倉阪氏が「幻
想文学」誌などで書いてきた、過去20年にわたる書評やエッセイ、評論を集
めた本である。
正直な話、私、この手の本(つまり書評集といった類)はあまり買わない
のだが、今回は、ジューン・ブライドおよびお中元の季節にもかかわらず、
買ってしまったのである。
そのわけは、この本に「正誤表」が挟み込まれていたからだ。しかも情報
満載のが(つまり訂正箇所が多いということ)。この本を本屋で立ち読みし
ているとき、本文を眺める前に、この「正誤表」をしっかりと読んでしまっ
た。さすがは元校正者(倉阪氏は『活字狂想曲』〔時事通信社〕の著者)と
しばし感慨にふけってしまったのである。
しかしながら、この「正誤表」はさすがに本文の訂正ではない。本書の巻
末に詳細な書名・人名索引が付されているのだが、その部分の訂正なのであ
る。つまり、索引のノンブル(ページ)や書名の誤り、さらに文字のゴシッ
クやボールド指定の誤りを正している。おそらくこの索引の校正は倉阪氏本
人がしたのではないかと思われるほどだ。訂正箇所は40にものぼる。
いやはや、倉阪氏はさぞ担当編集者にご立腹だったのではと想像する。逆
に担当編集者はそれこそ悪夢にうなされたことだろう。
この「正誤表」には、「『夢の断片、悪夢の破片』をお買い上げ頂き誠に
有り難うございました。本書に以下の誤りがございます。深くお詫び申し上
げるとともに、訂正させて頂きます。」という一文が添えられている。いえ
いえとんでもございません。
いまやすっかり見かけなくなった「正誤表」だが、もちろん誤植は無いに
こしたことはないのだが、逆に「正誤表」があると、信用できる本に思えて
しまうのはなぜだろうか。その“誠意”が伝わるからかもしれない。
さて、この「正誤表」、何軒かの本屋を回ってチェックしたのだが、ほと
んどの本屋では本書に「正誤表」が入っていなかったのである。これはちと
問題ではないか。もし、この本を買われた人がいて、「正誤表」が入ってい
なかったら、版元(出版社)に堂々と請求しましょう。
「正誤表」は友を呼ぶ、というのか、もう一冊見つけた。堀江敏幸氏の評
論・エッセイ集『書かれる手』(平凡社、本体2000円)である。こちらは可
愛い「正誤表」だ。表というよりもメモ。訂正は1箇所。「みゆき」を「ま
ゆみ」に訂正すべし、というもの。これ1箇所の訂正のために「正誤表」を
差し挟むなんて相当大事なことなのだ(ろう)! これが誤植ではなく、実
際の呼び間違いだったら修羅場と化すことだってあるから大事なのである。
なんだか「正誤表」があることで、その本の表情がよく見えてくるから不思
議だ。
どちらの本も「正誤表」がいらなくなる(つまり重版)ことを祈ります。
最後に『夢の断片、悪夢の破片』から誤植にまつわるエピソードをご紹介
させていただきます。
「自動車関係の印刷物で、「世界初の4WD……」という大きな見出しを
「世男初」で刷ってしまった。納期が押しつまっていて、刷り直したのでは
間に合わない。営業担当者は、窮余の一策、「世男(せおとこ)初ではなく、
世男(セダン)初と読ませてみては?」と得意先におうかがいを立てた。大
喜利なら座蒲団一枚出るところだが、当然のごとく一笑に付され、休日返上
・工場総出の手仕事で「世界」というシールを貼ったと聞く。」(「世紀末
校正暗黒日記」より)
いやはや、とんだ世界である。
(第11回・了)
●活字版VOWのネタを募集しています。本や雑誌などで見つけた面白い
誤植(誤字)を下記のアドレスまでお知らせ下さい。
ryuz@cf6.so-net.ne.jp(グッドスピード)
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■あとがき
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bk1やDOLなど日本でもオンライン書店が本格化しそうな状況だが、韓国では
出版社330社が連合してオンライン書店を運営している。ポーランドでは、
主要出版社8社が共同して読者アンケートによる「20世紀の文学作品」25冊
を統一装丁で刊行している。さまざまな国で取り組まれていることを知ると、
まだまだこの国でできることはたくさんあると思う。いたずらに焦る必要は
ないけれど、誰かがいつかやらなきゃならない。
先日、激しい雷雨の後で虹を見ました。 グッドスピード
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