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2000.10.25.発行 vol.49 [ミクロコスモス 号]
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■■ [本]のメルマガ 2000.10.25.発行
■■ vol.49
■■ mailmagazine of books [ミクロコスモス 号]
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■CONTENTS-----------------------------------------------------------
★トピックス
★「脱・書店員日記」/aguni(あぐに)
→ジャンルとか分類にその書店の個性が出る。比較してみると……
★「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
→自画像とは何か? ノルウェイの画家Nerdrumと日本の画家鴨居玲
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■トピックス
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■『サイアス』休刊を立花隆氏が痛烈分析
朝日新聞社発行の科学雑誌『サイアス』が赤字続きにより2000年12月号をもっ
て休刊、事実上の廃刊へと追い込まれた。前身である『科学朝日』(1941年11
月創刊)からのスイッチ以来四年、リニューアルも空しく年間1億6000万円に
及ぶ赤字となっていた。出版局側による「不採算部門の一掃・切り捨て」の一
環となった今回の休刊に対し、連載者の一人であるジャーナリストの立花隆氏
が猛烈に反発、12項目にわたる論説を展開し、学術出版界の現状に一石を投じ
ている。半世紀以上続いた啓蒙の灯し火は経営陣の「一息」で消えるのか。
立花氏論説 http://www.asahi-net.or.jp/~ka4j-mti/bfact8/bfact8-0.html
■中村元博士一周忌《中村元と仏教の世界》ブックフェア
日本を代表する高名な仏教学者・思想家の中村元博士一周忌(1999年10月10日
逝去)にあたり、全著作をはじめとする仏教書約四百点を集めたブックフェア
が豊島区池袋のリブロで開催される。古来、日本人の精神形成に深い影響を及
ぼしてきているにもかかわらず、現代人からは葬式と法事と墓の宗教としか大
概に捉えられていない仏教を再学習する、絶好の機会だ。無料配布予定のフェ
ア特製リーフレット(ブックリストほか)にも期待したい。
・場所:リブロ池袋館書籍館3階人文書コーナー
・期間:10/28(土)〜11/27(月) 11/7(火)は定休
・電話:03−5992−6993
■特選「業界の息吹フーフー」なメルマガ(無料)をご紹介!
数あるメルマガの中から、業界関連の優良メルマガを順次ご紹介いたします。
網羅的にではなく、ゲリラ的に(死語)、DTP・印刷・製版技術系/編集者
系/新刊書店系/古書店系/IT系/著者系/気合?系の中から少しずつ載せ
ていきます。
『香山ココロ週報』週刊、ノーマルテキスト
著者系。精神分析家香山リカ氏がつづる素朴で悩み多き日常。本職を生かした
時評のほか、誤字を懼れぬスピーディーな日記と、端々に見受けられる弁当へ
の執着を堪能できて、親しみやすい。この前、御茶ノ水丸善で本を抱えている
ところをお見かけしました。まぐまぐマガジンID:0000025550
関連Webページ: http://www.so-net.ne.jp/stress/kayama/
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■ 「脱書店員電脳日記」/aguni(あぐに)
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第18回 棚とポータルサイトとミクロコスモスと
本屋の棚というものはひとつ世界の表現である、と私は思っている。
それはひとつのミスロコスモスであるべきだ。
ということは、人々が「世界の姿」というものがある程度、共通認識として確
かに存在していると信じていた間にはそれは有効だった、ということだろう。
しかし現在、そんな世界観を持っている人なんてどこにもいない。
さて、こんな世の中では本屋の棚はどうやって作ればいいのだろうか?
少なくとも旧態不然としたジャンル分けで本当にいいのだろうか? という気
がしてならない。
以下のキーワードが何のものだかおわかりだろうか?
芸術と人文 / ビジネスと経済
コンピュータとインターネット / 教育
エンターテインメント / 政治 / 健康と医学
メディアとニュース / 趣味とスポーツ
各種資料と情報源 / 地域情報 / 自然科学と技術
社会科学 / 生活と文化
これだけならべると、とある書店の棚かと思うかもしれない。
それにしてもずいぶん偏った書店だと。
住まい / 仕事 / 結婚・新生活 / 赤ちゃん・育児
お金・保険 / 投資 / 学び / 旅・レジャー
クルマ / コンピュータ / グルメ / スポーツ
本 / 音楽 / 映画 / ゲーム / 占い
本があると本屋ではない? いや、そんなことはない。本の本というのは本好
きによく売れるのだ。
では今度は間違いなく本屋だ。スティーブン・キングで有名な外資系の本屋。
アート・デザイン / コミック・エンターテイメント
コンピュータ・インターネット / スポーツ・趣味・ペット
ビジネス・マネー / ライフスタイル・占い
人文・科学・医学 / 文学・小説・エッセイ
文庫・新書・ノベルズ / 旅行・マップ
絵本・児童書 / 語学・辞典
中には想像を絶する組み合わせもあるが、さすが本屋。
ジャンルがガチガチで項目にあまり魅力がない。
以下は図書館のジャンルコードが元であろう本屋さん。
文芸・小説 / コンピュータ
アート・エンタテインメント / サイエンス・テクノロジー
家庭・実用・女性 / 児童書・絵本
人文・社会・ノンフィクション / マンガ
学習・教育・福祉 / 文庫・新書
ビジネス・経済・法律・資格 / 選書・叢書・ブックレット
次は本部仕入がしっかりしている郊外型本屋さん。
一般文芸書 / 文庫 / 新書(ノベルズ)
コミック / 児童書 / ゲーム攻略本
趣味・実用書 / スポーツ関連書 / 旅行ガイド
占い / ビジネス書 / 財テク・金融
新書(HOW-TO) / 医学関連書 / ホームページ作成関連書
コンピュータ・理工書 / 料理 / グルメ・食べ歩き
写真集(アイドル) / アダルト
あまり棚の数が多いと今度は当惑してしまう。
さて、あなたが行きたいと思う本屋さんはどこだろうか?
ほとんどクイズにもならない展開だけれども、タネを明かすと、これは上から
順に、以下のアドレスのディレクトリ名である。
http://www.yahoo.co.jp/
http://www.isize.com/
http://www.jp.bol.com/
http://www.bk1.co.jp/
http://www.jbook.co.jp/
この中でアクセス数NO.1は誰がどう考えても Yahoo! であろう。それは即
ち、人の求める世界観がそのジャンル分けに反映されている、もしくは刷り込
まれつつある、ということを意味するように思うのだけれども、いかがだろう
か?
さて、あなたの好きな本屋の棚は、ポータルサイト以上にあなたのミクロコス
モスの役を果たしていますか?
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■「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
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第15回 崩壊する自画像:鴨居玲とOdd Nerdrum
1982年作「ミスターXの来た日1982,2,17」、同年作「1982年 私」、同年作
「自画像」。鴨居玲が描いたこの三種類の自画像をどのように語れるだろうか。
ミスターXとは彼の死神なのだろうか。
瞳は暗がりに没し、口は半開き、蓬髪に白いもみあげ。「ミスターX」での彼
は眉をひそめ、首から下はほとんど描かれていない。がっくりと肩を落とし、
両腕を前に垂れているようにも見える。
「1982年 私」の横長の圧倒的な大画面に描かれているのは、真っ白いキャン
バスを前に筆を持つこともなくただ座り込み、こちらにその呆けた顔を向けて
いる。キャンバスの周囲には彼が今まで描きつづけた人物群がほとんど勢ぞろ
いしている。ある者は心配そうにキャンバスを覗き込み、ある者は背を向け、
ある者は床に転がったサイコロを拾おうとしている。
「自画像」においては、彼はすでに暗がりに没しようとしている。やはり似た
ような表情だが、すでに眉はひそみから解かれているように隠れている。
1983年作「1983年2月3日 私」、彼は赤みがかった黄昏の微光の中にぼんやり
としたシルエットを残す。もはや髪は背景に溶け込み、白いもみあげ、やや苦
痛を訴えているような半開きの口、伏せがちの目、眉のひそみ。続く上半身は
赤茶色に淀んでいる。
画家が、自画像を描くために脇にしつらえた鏡を見る時のようなしぐさ?
1985年作「勲章」。かつてスペインの寒村で何度も描写した町のよっぱらいに
似て、ジャケットの胸元にはビールか何かのへこんだ栓が四つ飾られている。
この上着のポケットに手を突っ込み、よれよれな衣服の感触が強調される。白
いシャツはすすけている。着古したズボンの膝までが描かれている。そして、
あの表情。今度は眉は下がり、今にも泣きそうに見える。泣きつかれたように
も見える。
1977年、雑誌の取材に彼はこう答えている「たとえば浮浪者を描くとする。し
かし、その浮浪者を写生したことは一度もない。またそんなことはできないし
……。かたちを借りるだけで私の中でつくりあげた人間なんですよ。つまり、
私の自画像のようなものですね。だから、実在のモデルなんていやしない……。
あのねえ、そう何というのかなあ、どうにもならない時があるでしょう。助け
てほしい時、よくありますね。自分の人生の中で……。どうしようもない時が
ね。そういう瞬間を浮浪者の姿を借りて描いている」。
そして彼の最後の作品、1985年作「肖像」。くだんのジャケットとズボン姿の
彼は横向きに背をそらしている。右手はズボンのポケット、胸元の左手には、
彼自身の「顔」を仮面のように持っている。彼の上半身は上にのぼるにしたがっ
て白くなり、首の上には真っ白いのっぺらぼうが載っている。
鴨居玲(かもい・れい)は1928年長崎に生まれ1985年に57歳で死去した画家で
ある。父は新聞記者だった。父の転勤に伴い、金沢で育つ。金沢美術工芸専門
学校予科で洋画を専攻している。20歳の頃には地元の現代美術展で入選・受賞
を繰り返し、24歳から兵庫県西宮市に移り、途中スランプに苦しみながら画業
を更に深めた。1958年、30歳から逝去するまではおおかた神戸市内に居を構え
た。31歳、渡仏。パリで2年程過ごす。その後南米やイタリアにも放浪。1971
年43歳の折、スペインへ。マドリードを経て南下すること二百キロ、小村バル
デペーニャスに住まう。当地での村民とのふれあいは、彼の絵の主題に深い影
響を及ぼしている。一時帰国を挟みつつ、1976年48歳でスペインから再度パリ
に移る。すでにこの頃までにはフランスをはじめ日本やアメリカでも個展が開
催され、二紀展で文部大臣賞も受賞している。翌年帰国。1982年頃から時折入
院するようになり、数年後に狭心症で死去。受賞多数。
日動画廊などから画集や素描集が出版されているが、すでに手に入らないもの
も多い。随筆集『踊り候え』が風来舎から刊行されており、改訂版が入手しや
すいだろう。また、石川県立美術館のホームページで作品を見ることができる。
日動画廊 http://www.nichido-garo.co.jp/index.html
石川県立美術館 http://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/
Odd Olav Nerdrumは1944年ノルウェイに生まれた画家である。彼の父母は六
歳の頃離婚している。父は法律家であると同時にスカンジナビア・エアライン
ズ・システムのノルウェイ責任者だったが、実の父親ではなかった。父の葬儀
への参列を後年拒否されている。彼の実父は当地の著名な建築家David Sandved
であるらしい。オスロのルドルフ・シュタイナー学校で学び、その頃から卓抜
な才能を発揮し始める。ムンクやゴヤに親しみ、離婚した父が進めるスポーツ
よりも芸術や古い妖精物語などを好んだ。彼は18歳の若さでオスロの国立芸術
アカデミーに入る。当時はダダ、シュルレアリスム、キュビズムの影響力が大
きかったが、彼に大きな影響を与えたのはレンブラントだった。その後、ヨー
ゼフ・ボイスやアンディ・ウォーホルとも出会うが、彼の関心を寄せるところ
とはならず、むしろ「私たちの時代は、断片化の時代だ……<統合/融合>の精神
は潰えたのだ」と語るようになる。1972年のことだった。
http://www.nerdrum.com/
英語で意味を取ろうとすると奇妙な名前だが、彼もまた年を経るにつれ自画像
を描くことが多くなっている。はじめは、それらは自画像というより、別の主
題に準じる一形象だった。しかし次第に自画像こそが主題ならざる主題をなし
ていくように思える。
1979年作「帽子をかぶった自画像」
1977-79年作「午後の陽光の中の自画像」
1984-1994年作「ヘッドバンドをした男」
1985-1995年作「皮の航空帽をかぶった男」
1992年「イースター時の自画像」
1991年「目をつむった自画像」
1991-93年「目を半分つむった自画像」
1994-95年「正面から見た自画像」
1995-96年「甲具を着けた自画像」
1997年「青い自画像」
1997年「黄金のガウンをまとった自画像」
1998年「自画像」
1998年「横顔の自画像」
1998年「灰色の自画像」
1998年「絵画の預言者としての自画像」
1999年「鼻血を流す自画像」
次回はこの自画像群について書き、答えのない問いの光源を探ろうと思う。
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■編集同人備忘録
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複数の雑誌が「なぜ人を殺してはいけないのか」というテーマで特集記事を組
んだ。平和は尊いが、平和ボケは困る。メディア側がそもそもなぜこうした題
目を選んだのか、を批評しうる書き手も少ないようだ。殺すことの罪を再審問
するという、伝統や価値の旧体系から離脱した主体性の回復は見られる。では
「なぜ人に殺されてはいけないのか」とは問わないのだろうか。受苦の視点は
かりそめに持ち上げられた主体の背後へと蝕を蒙っている。平和への「途上ボ
ケ」である現代人には、古来の賢哲の戒めや教訓や「真説」も届かないわけだ。
歴史から学ばざる罪。人間というよりは、生態系-生命観の問題である。 五月
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