2000.11.15.発行 vol.51 [本を買う仕事 号]

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■■  [本]のメルマガ                             2000.11.15.発行  
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■■       mailmagazine of books         [本を買う仕事 号] 
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■CONTENTS--------------------------------------------------------- 
★トピックス 

★「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)
→義父が勘違いするんです・・(笑)

★「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
→映画監督・増村保造の業績を取り上げます

★「本の周りをうろついて・・」/湯川新一
→残念ながら、またも休載です。ゴメンナサイ・・

★「中国古典で浅学菲才が直る?」/掩耳(えんじ)
→中間管理職や、中小企業の社長に必要な思想とは何か?
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■トピックス
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■掲示板に情報いろいろございますです、ハイ
弊メルマガHPの掲示板に、さまざまな方から、講演会等の情報をお寄せ頂
いております。ぜひ一度ご覧下さいませ。情報を頂いた皆々様には、心より
御礼申し上げます。
http://www66.tcup.com/6629/anjienji.html
また、本に関する講演会・読書会・その他情報などお持ちの方がいらっしゃ
いましたら、お書き込み頂ければ幸いに存じます。

■ロニー・ブローマン来日講演! 本日!

ロニー・ブローマン講演会「人道援助のジレンマ」

日時:2000年11月15日(水)18:30-20:00
会場:日仏会館(東京都渋谷区恵比寿3-9-25)
主催:国境なき医師団日本、日仏会館 協力:産業図書
参加費:無料

解説:1999年にノーベル平和賞を受賞した世界的なNGO「国境なき医師団」
の会長を1982年から1994年にかけて務めたロニー・ブローマンの来日講演。産
業図書から対談集『人道援助、そのジレンマ』も刊行されたばかり(必読!)。
共有しうる「ミニマルな道徳」から出発して共感共苦(コンパッション)の政
治へと向かう実践の足跡が、彼自身によって語られる貴重な機会です。ブロー
マンは今年二月にも来日して、自ら制作したドキュメンタリー映画『スペシャ
リスト:自覚なき殺人者』(ナチスの戦犯アイヒマンの国際裁判映像を再編集
したもの)について語ってくれたことは記憶に新しいところですね。

あまり知られていないかもしれませんが、日本有数の「寄せ場」として知られ
る山谷地区にも国境なき医師団はかかわりを持っています。日雇労務者や路上
生活者などの人々に対し、保健・医療面での支援を行っているボランティア団
体「山友会」に、1997年以来、資金援助や看護婦の派遣などを行っているので
す。1985年にクリニックが創設されてから、すでにのべ64,780人の来院があっ
たといいます。ブローマン氏自身が山谷についてどれくらいのことを知ってい
るか興味深いところですが、質問するチャンスがあれば今日のイベントで聞い
てみたいものです。山谷における日常と労使闘争をドキュメントした名作『山
谷(やま)――やられたらやりかえせ』(佐藤満夫・山岡強一監督、1986年)
が12月に小劇場で一般公開されますが(続報はまた後日)、映像の圧倒的な証
言力とでもいうべき作用はブローマンも武器にしてきたところです。
[記:五月]
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◆  中山元 編  A5判/並製/296頁/本体2400円  発行:冬弓舎  ◆
◆ 【小特集1】メディオロジー  【小特集2】アントナン・アルトー ◆
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■「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁
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全点報告 この店で買った本
第7回 本を買うためのさまざまな理由

 こないだヨメが実家に帰ったとき判明したのだが、義父は「うちのムコは
いろんなところで本を買うコトを仕事にしているらしい」と認識しているら
しい。それだったらまァ、ウチの本が増えても仕方ないと認めてくれている
ようだ。アリガタイ。だけどお義父さん、それでカネもらえると思ってるん
だろうなァ。そんな「仕事」だったら天職なんだけどね。

十月二日
◎bk1(オンライン書店)
ジョージ・オーウェル『オーウェル評論集2 水晶の精神』平凡社ライブラ
リー、1165円+税(以下同じ)
『オーウェル評論集3 鯨の腹のなかで』平凡社ライブラリー、1165円
『オーウェル評論集4 ライオンと一角獣』平凡社ライブラリー、1165円
【ひとこと】参照することが多い本なので揃えておきたいと思い、だいぶ探
したが書店の店頭ではついに目にすることがなかった。オンライン書店だと
時間はかかっても在庫があるものは一応届く。ただし、小沢書店の本のよう
に倒産した直後の版元の本は、受付したのが倒産前でも「扱ってません」と
無情な返事が戻ってくるから注意。

十月三日
◎八重洲ブックセンター(恵比寿三越店)
浜井幸子『韓国まんぷくスクラップ』情報センター出版局、1400円
いしかわじゅん『鉄槌!』角川書店、1600円
【ひとこと】仕事で恵比寿ガーデンプレイスに行くが、見事にぼくの興味の
対象外の店ばかり並んでる。本屋の一つもないのかと暗澹たる思いだったが、
三越のなかでやっと発見。
◎有隣堂(アトレ恵比寿店)
サッポロビール博物館編著『ビールのポスター』クレオ、1000円
石子順造『ガラクタ百科 身辺のことばとそのイメージ』平凡社、1800円
荒俣宏『アジアまぼろし画報 「ASIA」で見るニッポン』平凡社、1900円
【ひとこと】同じ恵比寿の店でも、書店としての魅力はコッチの方が数段上。
ビジュアル本のコーナーが広く取ってあったので、ドコでも買えそうな本を
思わずまとめ買い。しかし、ここ数カ月の平凡社は、安易なビジュアル本や
そのまんまの復刻本に走ってるなァ。ま、そのおかげで名著『ガラクタ百科』
が余計な改変ナシに再び世に出たのは皮肉だが。

十月五日
◎インプレスダイレクト(オンライン通販)
『THE BEATLES アンソロジー』リットーミュージック、6800円
【ひとこと】ビートルズ初の公式ヒストリー・ブックであり、世界同時発売
された。「インプレスダイレクト」(リットーの親会社)のサイトで申し込
むと、予約特典としてポスター、バッグ付き。しかも送料無料。届いてみる
とB4というデカさで、置く場所に困る。

十月十日
◎丸善(お茶の水店)
『噂の真相』11月号、448円

十月十二日
◎書肆アクセス
山田稔『北園町九十三番地 天野忠さんのこと』編集工房ノア、1900円
『新・匿名座談会』本の雑誌社、1600円
『本の雑誌』11月号、505円
『LB中洲通信』11月号、477円
【ひとこと】『北園町……』は、版元の雑誌『海鳴(うみなり)』連載中に
読んで、単行本化を待ってた本。こういう地味な版元の本はまずアクセスへ。
狙いたがわず、手に入れるコトができた。この店には天野忠の本もかなり揃
っている。
◎岩波ブックセンター
牧陽一ほか『中国のプロパガンダ芸術 毛沢東様式に見る革命の記憶』岩波
書店、3600円

鶴見俊輔監修『林達夫セレクション1 反語的精神』平凡社ライブラリー、
1300円
中嶋繁雄『明治犯科帳 激情と暗黒の事件簿』平凡社新書、720円
【ひとこと】今月創刊した「新潮OH文庫」ってどう思う? 時事ネタのタ
イトルを並べたり、ビジュアルを増やしたりと、まるまる小学館文庫のマネ
じゃん。マネするのはいいけど、売れない文庫のマネしてどうする。どこで
も全点並べていてウンザリするが、この店には置いてなかった。

十月十五日
◎ATINUS(ソウル)
El Lissitzky&Hans Arp『Die Kunstismen』Verlag Lars Muller(Reprint)、
?円
セルゲイ・トレチャコフ&アレクサンドル・ロトチェンコ『みんな動物にな
った』婦人生活社、?円(定価1650円)
【ひとこと】またもソウルへ。この一年で三回だ。今回は、ある展覧会の準
備のために、教保文庫、BANDI&LUNI'S(ソウルブックセンター)といった巨
大書店で、グラフィックデザインやタイポグラフィの本を買いまくる。ATIN
US は美術書の専門店で、高い天井とゆったりした棚の配置が魅力的。韓国
の本よりも、欧米・日本の美術書が多い。婦人生活社の本は、いま日本の新
刊書店では手に入らないだろう。定価より多少値段は高いが、買う。

十月十九日
◎ブックマート市ヶ谷
山本夏彦『百年分を一時間で』文春新書、690円
『文学界』11月号、905円
【ひとこと】『文学界』は、坪内祐三「インターネット書評誌の私物化を『
ぶっ叩く』」を読みたくて買った。相変わらず、ほかには読むところがない。

十月二十日
◎紀伊國屋書店(新宿本店)
片岡義男『本を読む人(片岡義男エッセイ・コレクション) 』太田出版、
2136円
片岡義男『日本語で生きるとは 』筑摩書房、2200円
片岡義男『半分は表紙が目的だった』晶文社、1204円
『片岡義男「本読み」術・私生活の充実 』晶文社(シリ?ズ「日常術」)、
2400円
鶴見俊輔『限界芸術論』ちくま学芸文庫、1300円狩撫麻礼(作)・いましろ
たかし(画)
『平成地獄ブラザーズ ハード・コア』上・下、エンターブレイン、
各1800円
【ひとこと】資料を早急に手に入れる必要があり、ハイブリッドウェブ・サ
ービスに頼って手に入れる。新刊を眺めていたら、「さきほど◎階で、ロン
グセラーズの『だからおまえは落ちるんだ、やれ!』(吉野敬介)をお買い
あげのお客様、売場までお越しください」とのアナウンスが(しかも二回)。
こんなタイトルの本を買うだけでかなり恥ずかしいのに、放送で呼び出しさ
れてしまったら、ぼくなら恥ずかしくて逃げるかも。ちなみにこの本の副題
は「暴走族から予備校講師になったオレの爆言」。どんな学生が買ったのか?

十月二十一日
◎東京堂書店
『サイゾー』11月号、657円
多岐川恭『変人島風物誌』創元推理文庫、880円
◎往来堂書店(千駄木)
小田嶋隆『人はなぜ学歴にこだわるのか。』メディアワークス、1500円
荒俣宏『プロレタリア文学はものすごい』平凡社新書、680円
ねこぢる『ぢるぢる日記』二見書房、648円
【ひとこと】サイト(http://www.ohraido.com/)がリニューアルされ、ぼく
の連載「コレが売りたい」も更新された。今回は冨田均『東京映画名所図鑑
』(平凡社、2800円)なので、ヨロシク。本を見ていたら、笈入店長と会う。
店内でヒトと話すのは、ハナシをしていてもつい棚に目が行ってしまうせい
か、なんだか落ち着かない。

十月二十三日
◎ブックファースト(渋谷店)
村山茂代『明治期ダンスの史的研究 大正2年学校体操教授要目成立に至る
ダンスの導入と展開』不昧堂出版、2600円
【ひとこと】棚の並べ方にある種の風格や余裕まで出てきて、ますます好調
なブックファースト。とっくに品切れと信じ込んでいた、室謙二『旅行のし
かた』(晶文社)を二カ所に置くあたり、常連の読者に新鮮味を与えてくれ
る。温泉本のフェアも、一味違うぞ。『明治期ダンス……』はTRCサイト
(http://www.trc.co.jp/)で出たコトを知り、変わった本が出るなあと思
っていたが、書店で見かけるのははじめて。博士論文をまとめた本で、もの
すごく少部数なんだろうな。「桃太郎のお遊戯」の図が載ってたりするヘン
さに惹かれて買う。そのあと近くの台湾料理店「麗郷」で知人とメシ喰った
ときに見せると、「そんな理由でこんな高い本を買うヤツはあんたぐらいだ
」と云われる。

十月二十四日
◎文鳥堂書店(飯田橋店)
『ダークサイドJAPAN』12月号、648円
◎BOL(オンライン書店)
堀内ぶりる『横浜徘徊』東洋出版、1200円×2冊
【ひとこと】この本の版元もよほどマイナーな出版社らしく、書店で見かけ
たことがない。ヨコハマの裏通りを念入りに紹介したイイ本なんだが。知人
にもあげたいので、二冊注文。

十月二十五日
◎旭屋書店(銀座店)
浅羽通明『教養論ノート』幻冬舎、1400円
海野弘『ロシア・アヴァンギャルドのデザイン アートは世界を変えうるか』
新曜社、
2200円
荒俣宏『奇想の20世紀』NHK出版、2200円
◎近藤書店(銀座)
鈴木明『日本畸人伝 明治・七人の侍』光人社、1900円
『ユリイカ』1991年8月号(特集「本の博物誌」)、951円
【ひとこと】前回、『ユリイカ』のバックナンバーを置く店が減ったと書い
たが、ココにはなんと十年近く前の号が置いてあった。

十月二十六日
◎日動画廊
瀧悌三『一期は夢よ 鴨居玲』日動出版、1800円
【ひとこと】銀座を歩いていたら、鴨居玲の展覧会をやっていた。下着デザ
イナー・鴨居羊子の弟として知っていたが、まとめて絵を見るのははじめて。
鴨居玲のエッセイ集『踊り候え』(風来舎、1650円)も読まなきゃなあ。

十月二十七日
◎書肆アクセス
『貸本マンガ史研究』第2号、500円

十月二十八日
◎本の学校・神保町シンポジウム
あんばいこう『田んぼの隣で本づくり』日本エディタースクール出版部、
1600円
【ひとこと】お茶の水スクエアで開かれたシンポに裏方として参加。あんば
いさんは今回、地方出版についての分科会を主催。この本には、去年の「本
の学校シンポ」であんばいさんやぼくが分科会に出たコトも書いてある。自
分の名前が書いてある本は無条件に嬉しい。

十月二十九日
◎新宿歴史博物館
『琥珀色の記憶 新宿の喫茶店』図録、1000円
『新宿盛り場地図』500円
【ひとこと】同名の展覧会を見に行く。画家が経営していたという「茶房青
蛾」(店内の再現もある)を軸にしながら、戦前から戦後まで、「ヒトが出
会う場」として機能していた喫茶店のすがたを明らかにしている。十二月十
日までやってるので、ゼヒ行ってほしい(03-3359-2131)。見終わって外に
出ると、近くに建築書出版の「彰国社」があった。

十月三十日
◎創文堂書店(本駒込)
ロブ・ライアン『アンダードッグス』文春文庫、733円
芦原すなお『ミミズクとオリーブ』創元推理文庫、520円
『地域雑誌 谷中・根津・千駄木』第63号、500円
【ひとこと】ぼくがこの店を好きなのは、大書店と違って本を選んで置いて
いること。ミステリーが読みたいときは、ココでじっくり選べばイイ作品に
当たる。あと、カバーの掛け方が年季が入っていてウマイ。この店のおじさ
んの手つきを見てると、ほれぼれするよ。

十月三十一日
◎文庫ボックス 大地屋書店(池袋)
都筑道夫『なめくじに聞いてみろ』扶桑社文庫、743円
山之口洋『0番目の男』祥伝社文庫、381円
【ひとこと】文庫専門の新刊書店。小説などは版元別に並べず、作家で並べ
ているので、捜しやすい。いつ行っても客は少ないが、この店の使いやすさ
を知っている常連で持っているのだろう。
◎芳林堂書店(池袋店)
北尾トロ『銀座八丁目探偵社 本好きにささげるこだわり調査録』メディア
ファクトリー、1300円
『東宝/映画ポスターギャラリー』東宝株式会社、5340円

今月の購入本 計54冊(行き当たりばったりで買いすぎ。反省)

訂正 『[本]のメルマガ』vol.48の「全店報告 この店で買った本」に間違
いがありました。九月十二日の記述、「あおい書店チェーンは、早稲田店、
志木店などに行っているが」とありますが、早稲田、志木にあるのは「あゆ
みブックス」です(代々木店もあり)。あおい書店は本店が名古屋にあり、
東京都内では六本木のほか、五反田、高田馬場、四谷、新宿などにあるそう
です。完全にぼくの勘違いでして、記憶だけで書く恐ろしさを痛感しており
ます。すみません。ご指摘くださった読者のTさんには心から感謝します。
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■「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
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大衆性・採算性・芸術性
                 −「増村保造レトロスペクティブ」

  並木座や大井武蔵野館などの歴史ある名画座が閉じて久しくなるが、日本
映画の名作の上映の機会はむしろ 増えているのではないかと思える。銀座
シネパトスはレイトショーで田宮二郎と梶芽衣子の特集を組んだばかりだし、
阿佐ケ谷ラピュタは本業のアニメ映画以上に古い名画の上映に熱心である。
これらの映画館は必ずしも年配の観客やマニアックな映画ファンだけを相手
にするのでなく、面白そうな作品なら古いものでも新作同様に、一般の観客
に広く提供していこうという姿勢を持っているように見受けられる(書店で
言えば「既刊の掘り起こし」ですね)。「これ知ってなきゃ映画ファンじゃ
ないよ」といった名画座特有の気負いがなく、初めて見にくる人にも無理な
く作品の面白さがわかるように気を遣っているのだ。だから若い人も大勢詰
め掛けてくる。
  今回取り上げる「増村保造レトロスペクティブ」(渋谷ユーロスペース。
11/4から来年の1/12まで)もそんな頼もしい企画の一つだ。

  増村保造(1924〜1986年)は戦後を代表する映画監督。イタリアで本格的
に映画を学び、溝口健二らの助監督を努めた経験もある。1957年に「くちづ
け」でデビュー。監督作品は全部で57本を数えるが、今回の企画ではそのう
ちの大半、50本を上映する。ぼくは昨日で10本目を見終わったところだが、
いやあ面白かったです。10本見た中でハズレが一本もない。全部見てやろう
と考えております。
  ちなみに「レトロスペクティブ」のオフィシャル・ホームページもありま
す。http://www.daiei.tokuma.com/masumura/


  増村保造の映画を見る誰もが感ずるのは登場人物たちの「濃密さ 」だろ
う。この「濃密さ 」は、主人公たちが自由な生命体とみなして、課せられ
てくる様々な制約と力の限りに戦う姿勢を見せるところから生まれてくるも
のだ。
  「兵隊やくざ」では、その制約は軍隊の上下関係である。少しでも上位に
ある者がほとんど気晴らしのように下位にある者をいじめぬく。勝新太郎扮
するところの二等兵はそれに腕力でもって徹底的に立ち向かい、彼に理解を
寄せるインテリの上等兵は理屈でもって二等兵をサポートする。風呂場での
喧嘩のシーンは見物で、少年兵に叩きのめされた男たちが裸のまま何人も折
り重なって倒れている様子は迫力満点だ。折り重なった男たちの裸体は、軍
隊内の序列から解放された、男たちの生命の本質のようにも見えてくる。

  また「清作の妻」では、それは徴兵システムと村民の視線である。妾あが
りの美しい女性お峯(若尾文子)は生まれた村に帰ってくるが、村民から白
い眼で見られる。模範兵として尊敬される若者清作は彼女を見初め、周囲の
反対を押しきってお峯と結婚する。清作は日露戦争に出征し、傷ついて一時
帰宅するが、お峯は彼を再び戦場に出したくないばかりに、彼の眼を五寸釘
で刺してしまう。国家主義への敵対といった観念を持たないお峯にとって、
徴兵制は夫を奪おうとする余りにも具体的な暴力装置に他ならない。お峯は
それに対し、徹底した自己中心の考えで臨んだのだ。模範兵としての名誉を
失った清作は始めはお峯を深く憎むが、やがて国家や村落の共同体意識に絡
めとられていた自己の不自由さに気づき、再びお峯を愛するようになる。

  谷崎潤一郎原作の「卍 」や江戸川乱歩原作の「盲獣 」では、それは性を
取り囲む家族主義的な規範である。「卍 」では、一人の美しい令嬢( 若尾
文子 )と彼女を観音であるかのように崇め、愛する弁護士夫妻との倒錯的
な関係が描かれる。性愛を、家族という経済単位を形成していく手段として
扱うことを否認し、夫妻の生きる理由そのものにまで高めていく。夫妻を演
ずる岸田今日子と船越英二の憑かれたような表情が印象的だ。「盲獣」は更
に過激で、盲目の男に「彫刻のモデルになってくれ」と監禁された女(緑魔
子)が、次第に男の欲望に応え始め、更には先導するまでになり、マゾヒス
ティックな性愛関係を結んだ挙げ句両者とも破滅していく物語。下等生物の
ような触覚中心の生(知性によらない)に対する賛歌。

  増村保造の映画は、社会的規範vs個人の自由、という図式を基軸にし、
人間の生命力の豊かさを誰はばかることなく「濃密 」に賛美するものだ。
個人の個別の生の問題が、国家や軍隊、企業などの大小の組織の横暴や、家
族や性などの社会規範に対する「異議申立て」という形で追求されるのだ。
その結果、二項が対立し攻めぎあう「劇的な物語」が生まれることとなる。
増村保造は実に様々な局面における人間の生の問題を考えていくのだが、二
項対立の図式の応用が明らかであるために、その作品の構造は単純でわかり
やすいものとなる。人生のどんな複雑なシチュエイションからも、勝ち負け
を争うゲームのような構造を取り出してくるのである。だからどんな作品で
も、過激になりすぎることがなく、安心して見ていられる。恐らく、現在よ
りも「反社会性」や「反権威主義」というものに対する力強い支持が、大衆
の側にあったのではないだろうか。

   ここで増村映画の面白さと物足りなさが浮かび上がってくる。つまり、
「アンチ」に対する大衆の要請を鋭敏に感じ取った芸術家が、実に様々な問
題に気がつきそれを可視化する才能に恵まれながら、大衆の期待を裏切るこ
とができず、個別の生の不気味さを晒すことよりそれらを二項対立の形式に
まとめあげることを優先してしまう。ただ、それによって、それまでタブー
視されていたような諸問題を採算の取れる商業映画のテーマとして定着させ
た功績は極めて大きいと言わなければならないだろう。映画の娯楽としての
価値が現在よりずっと高かった時代ならではのジレンマだったのかもしれな
い。

  しかしいずれにせよ、制度に対立する個々人の「生命」を至上のものとし
て謳い上げた増村映画を、現在の大半の日本映画は乗り越えていないように
見受けられる。自己の意識そのものが「生命」と対立することもあるのであ
って、だからこそ拒食症などという障害が起きたりするのだろうが、増村保
造以後の作家は様々な力の対立を二項でなく多項の対立として描いてほしい
ものだと思う。そして、採算が取れるかどうかは別として、そうした複雑な
対立概念を大衆化する方法を何とか考え出してほしいものだと思うのである。
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■中国古典で浅学菲才が直る!?/掩耳
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中間管理職、ないし中小企業の社長が道具とする思想

老子って、「この世はへこへこしてうまく生きていこうジャン(横浜弁)」
という考え方であり、例えるなら下請け中小企業の社長(企業の中間管理
職でもいいけど)の思想だっていうのが、前回までの主旨でしたが、今回
はその有力な傍証をあげたいと思います。

それはですねー、一部で大人気の「韓非子」という古典の中にあるのです。

「韓非子」――法家思想ってやつの代表作で、要は組織における部下や臣
下って奴は、すぐにサボりたがるし、徒党組んで利益享受したがるから、
君主は、恩賞と刑罰という二つの武器をつかって、部下をよくよくコント
ローせにゃあかんよ、という考え方なのですが・・

これの、どこが老子と結び付くのか??
実は、韓非子の中に、老子との折衷のような考え方が埋め込まれているの
です。以下、『韓非子』(金谷治、訳注 岩波文庫)から引用します。

≪1973年に長沙の馬王堆(まおうたい)で発見された古文書によって、
道家と法家の折衷思想が韓非のころに存在したことがほぼ確認され、それ
によって、これら四篇の思想を韓非とは無関係だと疑ってきた学説がくつ
がえされ、むしろそれこそが韓非の法術思想の母体にも当たるとする学説
が有力になってきたからである≫(第一冊、金谷先生の解説より)

韓非子の折衷していると言われる章を見てみますと、確かに、道(タオで
すな)とか、空っぽにするから充ちられるとかの思想が満載で、老子じゃ
ん!? と見まがうような内容になっています。しかし、部下をこきつか
えビシバシという思想と、無為自然とか言ってノホホンとしている思想が
何故結び付くのか――これらの章を韓非子とは無関係としていた学説も、
この点に重きをおいていたのだと思われます。

しかし、老子=下請け中小企業の社長向け思想という点に、目を向ければ、
答えはあっさりでます。『老子』と『韓非子』の両方こそが、下請け社長
(または中間管理職、嗚呼花の係長など)には必要な思想なのです。

それらの人々にとって『老子』は上を向いたときに必要なものだと言えま
す。自分の上には、上司やその上司(大企業や、その上の大企業・・)と
連なっています。自分がどこまで登れるなんて、まったくわからない。い
や、下手をすればうだつのあがらないまま終るかもしれない・・そ、そん
な現世の価値観なんてくそくらえだー、無為自然だー、価値なんてすぐ変
転するぞー、小さいことだぞー――――かくして、上への無力感にさいな
まれたとき、競争社会の虚しさに包まれたとき、老子は必要とされます。

一方、『韓非子』は、おもに下(上にも使えますが)向けの思想です。組
織や部下を抱えている以上、いつまでも、無為自然とか言ってられません
(笑)。それどころか、すぐサボル部下とか、虎視眈々こちらの地位を狙
う奴、すぐ反抗する馬鹿とかいて気がやすまりません。そいつらのけつ叩
いて、何とか業績あげなきゃいけないし・・さて、どうするか――いいノ
ウハウがありますぜ、旦那、ということで『韓非子』が登場します。

つまり、この二冊、組織の中間あたりでさまざまな鬱屈を抱えている中間
管理職的な人物には、ぜひとも必要なノウハウなのです。

ということで、次回、韓非子を見てみましょう。いや、これがもう、邪悪
の極みなんですぜ、旦那(笑)
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■あとがき
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>「流星号応答せよ」で始まる、NTTのコマーシャルがありますよね。
>ああ、009とかモロボシダンとかのヒーローたちが、携帯みたいので
話すシーンが続く奴ね。
>なんか、感慨ブカイですよねー。子供の頃、夢みたいに思ってたことが、
確かに現実になっちゃったわけですから・・
>確かにねー。しかし、あの009の携帯みたいのいいですよね、三角錐の
上に球体のっけたみたいなアンテナの形とか(笑)
>あ、そうそう、確かにあれいい。どこかであの形の出してくれないかなー
もう、絶対勝っちゃう(笑)、で「こちら009」とか言ってでるの(笑)
>それじゃあ、子供の頃やったトランシーバーごっこじゃ・・
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