2000.01.25.発行 vol.58 [雪解け新春 号]

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■■  [本]のメルマガ                             2001.01.25.発行
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■■       mailmagazine of books              [雪解け新春 号]
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■CONTENTS----------------------------------------------------------- 
★トピックス
→新創刊雑誌、小沢書店本、人文書復刊、業界提携話など

★「脱・書店員日記」/aguni(あぐに)
→書き手、作り手、売り手、読み手の垣根を越える業界再生の道へ。完結編。

★「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
→優秀な編集者兼大学教授は自著を出さない? ロトランジェの活躍ぶり。
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■トピックス
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■藤原書店が新雑誌『環境ホルモン』を創刊

季刊総合誌「環」やその臨時増刊号を積極的に展開し、人文書業界を瞠目せし
めた藤原書店に再び新しい話題! 「市民の支店で環境ホルモン問題を考える
新雑誌!」と銘打ち、2001年1月から年2回春秋発行で、その名もズバリ『環境
ホルモン』を創刊する。創刊号には、『奪われし未来』の著者J・P・マイヤーズ
氏へのインタビューのほか、特集「性のカオス」、座談会「いま、環境ホルモ
ン問題をどうとらえるか」、「ジャーナリズムから見た環境ホルモン問題」等、
サブタイトルに「文明・社会・生命」とある通り、幅広い議論を喚起している。
A5判320頁、本体価格3600円。http://www.fujiwara-shoten.co.jp/


■サイード自伝および「文化と帝国主義」の完結!

本誌「現代思想の最前線」でも昨年紹介したエドワード・サイードの自伝「ア
ウト・オヴ・プレイス(邦題仮)」がいちはやく、みすず書房から来月刊行!
続けて三月にはサイードの主著『文化と帝国主義』下巻が発売! いち早く手
に入れたい方は、bk1の人文書・現代思想近刊予約コーナーへ! 事前予約
を好評受付中です。http://www.bk1.co.jp/s/jinbun/ 
 

■書物復権第8回スタート、復刊候補78銘柄が出揃う

恒例となった第5回人文8社共同復刊事業「書物復権」が、読者からのリクエ
スト受付を開始した。企画主旨→http://www.kinokuniya.co.jp/fukken.html
岩波書店、紀伊國屋書店、勁草書房、東京大学出版会、白水社、法政大学出版
局、みすず書房、未來社の主宰者側からピックアップされた書目は、以下の通
り。http://www.kinokuniya.co.jp/sho8_list.htm 中には「何で品切れにし
てたんだー!」という基本図書もあるが、本家のサイトも更新状況が悪いとこ
ろを見ると裏舞台の苦労も偲ばれようものだ→ http://www.fukken.com/ リク
エスト受付は2001年2月いっぱいまで、下記のフォームから受付けている。候補
書目以外で「これをぜひ復刊してくれ!」というものがあれば(当然あれもこ
れもありますよねえ)書き込みもできる。4月初旬に復刊書名決定、6月に発売
となる予定。http://www.kinokuniya.co.jp/sho8_form.htm なおリクエスト
希望は「予約注文」ではありませんので、お気軽にご参加を!


■bk1と丸善が提携開始、オンラインで洋書販売にトライ

オンライン書店bk1と、書店の老舗丸善が販売提携を1月22日に発表。bk
1の株式4%を取得して資本参加も行なった丸善は、店舗でbk1の売上上位
書籍や推薦図書を特製の帯をつけて紹介したり、店頭でのbk1利用促進キャ
ンペーンを図る。一方bk1は、ウェブサイトとメールマガジンを利用して、
サイン会やブックフェアなどを共同展開していく、とのこと。丸善店頭でのb
k1注文品の受け渡しや、bk1サイトでの丸善の在庫情報確認や購入などに
も対応していく構えだ。リアル書店とオンライン書店との業界はじめての積極
的協力体制に、注目が集まっている。

更に2月5日からは、bk1サイトの新コーナー「bk1プロ」でビジネス・I
T関連書を中心に洋書を販売開始する予定! 一般書を含めれば約25,000銘柄
に達する丸善お家芸の洋書販売との提携で、ゆくゆくはアマゾンやBOLとも
対決することになる。なお丸善のオンライン書店部門は以後、学術系の専門書
籍中心の販売サイトに生まれ変わる。はたしてTRC=日経連合大拡張の第一
歩となるか?
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■ 「脱書店員電脳日記」/aguni(あぐに)
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第21回「本」にとってのパーミッションマーケティングとは何か? その3

・新しく「許容」を獲得する、という考え方

 業界再生論を考えれば、出版点数を減らし、書店の数を半分にすれば、この
業界は再生する、という見方になるだろう。それはそれで正しい見方だし、今、
現実に向かっている方向であるのだろう。しかしあえてここでは「パイ」を正
しく広げるにはどうすればいいのか、について考えてみる。つまり、より多く
の読者に本を届けるにはどうすればいいのか、ということである。

 先日、お会いした編集者の方が、「編集」「営業」と何でオレタチは今まで
分けて考えていたのだろう?ということをおっしゃっていた。著者から読者ま
での垣根や流れがネットの世界から崩れていきつつあるのにもかかわらず、い
つまでも旧態不全とした体制では、コンテンツパブリッシャーとしては出版社
の生き残りは難しいだろう。

 私はさらに拡張したい。「著者」「編集」「営業」「書店員」「読者」。こ
れが一丸となって本を製作し、オススメし、販売するという流れが発生しない
限り、なかなか難しいのではないだろうか。

 そのときにキーとなるのがパーミッション。つまりは「許容」である。本来
とは違う意味であるが、私はこれを、パイを広げるためのものとして使いたい。
つまりはこれまで得てきたパーミッションだけを意味するのではなく、新しく
獲得可能なパーミッションとは何なのか、ということを、「業界」というもの
を視野に入れて考えたいのである。

・著者による「許容」の広げ方

 読者に対して、最もこの中で「許容」を与えやすいのは「著者」である、と
いうのはわかりやすい発想だ。私が書いた本です。ぜひ、読んでください、と
いうヤツだ。書店店頭でのサイン会、講演会は著者の「許容」能力に期待した
ものだと言えるだろう。

 しかし著者による「許容」には限界がある。以前、たまたま立ち寄った池袋
の芳林堂書店で永六輔さんのサイン会があった。私は知らなかった、あるいは
店頭の看板を興味がないので見過ごしていたのだが、店内放送を聞いてサイン
会を見に行き、本を買ってサインまでしてもらった。その店内放送は永さん自
身がやっており、内容はと言えば、自分に興味があろうとなかろうとゼヒ、参
加して欲しい、と呼びかけたのだった。

 本のように顧客がバラバラにセグメント化されていると、著者という存在だ
けでもはや超えられない壁ができてしまう。これは逆に「好きな作家」にとこ
とんのめり込む、という現象も生んでいるが、これは著者による「許容」の限
界である。私が永さんのサイン会に行ってしまったのは、彼のパフォーマンス
にその限界を打ち破る力があったからなのだが、それはごくごく普通のサイン
会ではもはや一定以上の客に「許容」を与えることはできない、ということを
意味している。

・編集による「許容」の広げ方

 その本のことを客観的な目で見ることのできる人間で、なおかつ思い入れを
込めて語ることのできる人間、それが編集者であろう。不遜な物言いをすれば、
そのどちらかがないと、優秀な編集者であることはできないと思う。この人間
から発する「許容」というのはメディアを動かすことがしばしばであるから、
実は読者の目からは見えないことが多い。

 しかし書籍の一次情報を与えることができるのはこの人達でしかないのだ。
そこには熱い思いや、あるいはいいかげんな本なら後ろめたさがあるだろう。
その思いを何らかの形で表明する、さらには伝えることができるのであれば、
きっとその思いは届くはずである。・・・問題は、その回路は寸断されている
うえに、どうもそれが必要であると理解している編集者が少ないことだ。

・営業による「許容」の広げ方

 営業の強みは中の人間でありながら外に出て行く人間でもある、というその
スタンスにある。あるいは批判的に書籍を見ることができるのだろうし、ある
いは批判的に書店を見ることもできるだろう。

 対書店で言えば、書店をヘンな書店にする能力を付与されているのがこの人
たちである。書店という書店に違う常備を入れてもらう。そしてその反応を見
る。きっと、それぞれの店の個性と言うものが売上に反映してくるはずだ。う
まくすればそこにコミュニティが形成され、読者と書店員の間に「許容」を育
てることに貢献できるのかもしれない。

・読者による「許容」の広げ方

 一方で、様々に越境する形で「許容」を与えていくことができるのがおそら
くこちらの読者の方であろう。簡単な話、人が全く読んでいない本よりは、人
が読んで面白かった本の方が、面白い(あるいが有益である)確率は高いので
ある。

 今までの書店や出版社ではこの仕組みはありながらも、なかなか利用できな
かった。書店で言えば自動発注の仕組みを利用すれば、もちろん買ったお客さ
ん全てが満足しているわけではないだろうから若干はズレが生じるが、ある程
度は顧客満足度に反映した棚ができるだろう。出版社で言えば、読者カードが
ある。これらのシステムや素材を有効に利用することで、ある程度はこの読者
による「許容」を与えることはできる。

 しかしこれをどんどん広げていくと「何万部突破!」とか、劇場を舞台にし
た映画のヤラセCMみたいになってしまうのも事実。

 であるからして、このパターンはそこにサロンやコミュニティを形成するの
が望ましいという発想になる。しかしそれは逆に閉鎖系の空間を作ってしまう
可能性もある。だからこの方法は最終的に、読者主体になっていかざるを得な
いだろう。

・とりあえずのまとめとして・・・。

 出版業界というのは一つの大きな趣味の業界で、支えあって成立しているよ
うなところがある。作者は読者でもあり、読者が作者になることもある。しか
もやたらめったら種類の多い嗜好品だ。

 であるとすると、いかにこの趣味を共有する相手を増やしていけるか、とい
うのが業界生き残りの最後の道である。本好きの一人として、この業界に関わっ
ている人全てがいかに隣の人に本を勧め、売っていくかのモチベーションにか
かっているわけだ。本好きの「トモダチ」を増やすこと。業界再生の秘策はそ
れに尽きる。

頑張りましょう!
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■「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
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第18回 編集者に徹する大学教授ロトランジェの旺盛な活躍ぶり 

シルヴェール・ロトランジェ(あるいはロトリンガー)と言えば、ニューヨー
クを拠点にした前衛的理論誌「セミオテクスト」の名編集者として知られてい
る。ドゥルーズ+ガタリやフーコー、ボードリヤール、ヴィリリオ、ネグリら
の著書やインタビュー集を共同編集者のジム・フレミングとともに数多く手が
けた「フォーリン・エージェント・シリーズ」や「ダブル・エージェント・シ
リーズ」は、セミオテクストの名義で、新左翼系出版社オートノメディア(あ
るいはアウトノメディア)から出版されている。

http://www.autonomedia.org/

例えば「フォーリン〜」の中核となる一冊『純粋戦争』や『メタトロン』、ま
たジム・フレミングがピーター・ランボーン・ウィルソンと共同編集する「ニ
ュー・オートノミー・シリーズ」の『TAZ』はすでに日本語訳が存在する。
『純粋戦争』はロトランジェが1982年にヴィリリオと交わした対談集であり、
細川周平氏による歯切れのいい訳でUPUから1987年にGS叢書の一冊として
刊行された。原書では1997年に「情報戦争」と題された15年ぶりの対談を後書
に加えた新版が刊行されている。ベルリンの壁が崩れ、ソ連が解体した後も、
対談のアクチュアリティは失われておらず、「あれからいろいろなことが起こ
ったけれど事態は良くなってないね」とヴィリリオも開口一番で述べている。

"Pure War" Revised Edition, 1997, Semiotext(e), Autonomedia, 
ISBN:1-57027-078-3

ソル・ユーリックの名著『メタトロン』は晶文社から出ているし、ハキム・ベ
イの戦闘的社会理論書『TAZ』はインパクト出版会から刊行されている。一
方ロトランジェの17歳年下の妻であり、ニュージーランド生まれの映像作家で
あるクリス・クラウス(あるいはクロース)は、同じセミオテクストのブラン
ド内で「ネイティヴ・エージェント・シリーズ」の編集を受け持っており、キ
ャシー・アッカーや自らの小説を刊行している。当初はシルヴェールと共同編
集だったがその後単独で担当するようになった模様である。

クラウスの小説というのは、1997年10月に刊行された問題作『アイ・ラヴ・デ
ィック』であり、夫シルヴェール公認の超妄想的浮気ラブレター集のことだ。
世間からは「ホントにヤバい本」と評された問題作で、一方的に横恋慕され、
理解不能な事態に当惑しつづけた当人であるディック・某氏はどうやら訴訟を
起こしかけたようだが、その数200通を超えるラヴレター執筆にシルヴェール
自らも積極的に荷担したのだから、確信犯というべきだろう。ちなみにこの小
説は1999年の11月に1時間半の舞台としてレズリー・モーンによってニューヨ
ークで演劇化されている。やれやれ。

"I Love Dick" 1997, Semiotext(e), Autonomedia, ISBN:1-57027-046-5
 
さて、そもそもシルヴェール・ロトランジェ(1943?-)はコロンビア大学のフ
ランス語及びロマンス語言語学学部の教授であり、アメリカにフランスのポス
ト構造主義思潮を積極的に紹介してきた張本人である。現在は休暇中のようだ
が、比較文学の講座を担当しており、1980年代におけるフランス現代思想とア
メリカ現代批評の関係性や、フランス現代思想とデュルケームやモースやタル
ドら社会学者たちの言説の関係性、フランス文学におけるファシズムの表象論
やセリーヌ論を大学院生に講じている。同僚には文学理論家ミカエル・リファ
テールや、植民地文化研究者のマリーズ・コンデらがおり、リファテールとは
第二次世界大戦以後のフランス作家について共同で講義したりしている。今月
ラウトレッジから刊行された新刊も『アメリカにおけるフランス現代思想理論』
[サンド・コーエンと共編]というタイトルだった。

"French Theory in America" 2001, Routledge, ISBN: 0-415-92537-1

ロトランジェの動向は大学の学部ニュースで毎年一回は大要がわかるのだが、
1999年11月には妻のクリスとともに「シモーヌ・ヴェイユ:真理への狂気」と
題された国際会議を主催している。これはシモーヌ・ヴェイユの『重力と恩寵』
を扱ったクリスの自称「失敗作」フィルムとも連動しており、クリスはヴェイ
ユについてと、オンライン上のSM友達について(なんでこの二つが一つにな
るのかはお楽しみ)書いた、小説第二作となる『異人たちと食欲不振』を2000
年に発表した。

"Aliens and Anorexia" 2000, Smart Art Press, Semiotext(e), 
Autonomedia, ISBN 1-58435-001-6

ついクリス・クラウスの奇特さに引っ張られてしまうが、本稿で紹介したかっ
たのは基本的にたった二つの情報だ。ひとつは、ロトランジェは編集者として
長いことオートノメディアと付き合ってきたが、オートノメディアの経済状況
によるのかそれとも他の理由からか、「タブル・エージェント・シリーズ」の
みがMITプレスに発売元を移動したということと、毎年それなりの数の論文
を発表しているにもかかわらず、編集者に徹することを信条としているのか、
いまだに単独著は1988年にパンテオン・ブックスから出版した『露出過剰:ア
メリカにおける性的異常について』(現在絶版)だけである、ということだ。

"Overexposed : Treating Sexual Perversion in America" 1988, 
Pantheon Books, ISBN:0-394-75731-9 

まずは第一点目について。転機は1999年に訪れたようだ。ロトランジェはバタ
イユとクリステヴァのアブジェクシオン論を中心に編んだ論文集『モア・アン
ド・レス』をセミオテクストの一冊として刊行したが、どこのシリーズにも所
属させていない。同年にヴィリリオの『最悪なものの政治学』(邦訳『電脳世
界』産業図書1998年)と、リュス・イリガライの『なぜ違うの?』の、ふたつ
のインタビュー本を「フォーリン・エージェント・シリーズ」としてオートノ
メディアから発売した。翌年の2000年、スマート・アート・プレスとセミオテ
クスト「ネイティヴ・エージェント・シリーズ」の共同発行的扱いで、オート
ノメディアを発売元にクリス・クラウスの上述の小説第二作が出る。そして、
長年予告されていたロトランジェ編集によるウィリアム・バロウズのインタビ
ュー集が、1998年当時の320頁予定を大きく上回る675頁の大冊として、スマー
ト・アート・プレスとセミオテクスト「ダブル・エージェント・シリーズ」の
共同発行、MITプレスの発売で、2000年12月に刊行されるのである。

"Burroughs Live" 2000, Semiotext(e), Smart Art Press, MIT Press,
ISBN:1-58435-010-5 

ややこしいがつまり、ロトランジェ夫妻は1999年にオートノメディアという拠
点との関係に区切りをつけて、その後も現存のシリーズで継続的に付き合うこ
とがあるにせよ、MITプレスへの発売元の引越を開始したのだ、と推測でき
る。現品の書籍すべてが手元に揃っているわけではないので、ウェブサイト上
のあらゆる情報源を丸一日以上かけて検索して、錯綜し食い違う書誌データ群
を何度もひっくり返しながらそういう暫定的結論に達した。明け方が迫り、も
はやどうでもいいような気分になってくることにハタと気付くがもう遅い。

ロトランジェは今後、2001年5月以降にクリス・クラウスとの共同編集による
『資本主義への憎悪:セミオテクスト・リーダー』や、ジル・ドゥルーズの19
56年から1992年に至る、単行本未収録論文60本を集めた『マイナー・ワークス』、
訳者としてヴィリリオの『薄明の夜明け』を次々に刊行していく予定だ。アマ
ゾン・コムでは版元が「Unknown」つまり不明となっているが、これは別の情
報源によればMITプレスが発売元になることは間違いないようだ。発行元が
セミオテクストで、それぞれシリーズが『資本主義〜』は「ダブル・エージェ
ント」、『ドゥルーズ』と『薄明の』は「フォーリン・エージェント」とされ
ている。そうなると「ダブル」シリーズだけでなく、「フォーリン」も移動、
つまりオートノメディアからは企画を引き上げるということか?

"Hatred of Capitalism: A Semiotext(e) Reader" ISBN:1-58435-012-1 
"Gilles Deleuze: Minor Works" ISBN:1-58435-003-2 
"Crepuscular Dawn" ISBN:1-58435-013-X 

業界人ならすぐにわかるだろうが、ISBNがすでに13番目の書目まで決定してい
るということは、ここに紹介していない近刊にすでに番号が振り当てられてい
るということだろう。残念ながら今はそれらの企画が何かを確認する気力がな
い。ISBNの「計算方法」を知っている人は、10桁目のディジットを算出して、
オンライン書店などで、書誌データの検索にトライしてみるのもいいでしょう
ね。

最後にロトランジェの単独著書が本当に一冊しかないらしいことに言及してお
く。彼の活躍ぶりはこの二年のことなら英文だが以下のサイトで分かる。
http://www.columbia.edu/cu/french/newsletter9900.htm
http://www.columbia.edu/cu/french/newsletter2000.html
できれば上記の情報を漏らさず紹介したかったが、もはや拙文は長い。アルト
ー論や、デュラス論、ジョン・ケージ論を発表したり、ドゥルーズ+ガタリを
めぐる国際会議を開いたり、彼らの映像資料を編集したり、オランダへ行った
り、イスラエルへ飛んだりの活躍である。

彼の唯一の?著書『露出過剰』はUPUのGS叢書の一冊としてささやかなが
ら1987年当時近刊予告されていた。しかし細川周平氏も目を通したその草稿は、
その後誰が翻訳作業に入ったのか関係者以外には不明だし、雑誌『GS』もや
がて終刊し、都市デザイン研究所発行の季刊『都市』を経て、NTT出版の
『インターコミュニケーション』へ発展的に解消していく過程で、企画自体が
流れてしまったらしい。今となっては原書も絶版で、オンラインの古本屋で探
せばポツポツ見つかるが、この人は一生、編集が達者な大学教授として過ごす
のだろうか。

上記の2000年のニュースレターで、ロトランジェは「1999年、東京のサピオ・
プレスから刊行された『歴史の終わりと黙示録の世界、アサダ・アキラ』に収
録されている「ヴァーティカル・コンティネント」」を、出版された著述の一
つとして紹介しているのだが、これは言うまでもなく、1994年に小学館から刊
行された浅田彰氏の対談集『「歴史の終わり」と世紀末の世界』のことで、こ
れは1999年に『「歴史の終わり」を超えて』と改題されて中公文庫になってい
る。この本の第9章に「アメリカは退屈で死に、日本は虚無をぬくぬくと生き
る」と題されたシルヴェール・ロトランジェと浅田彰氏の対談がある。もとも
と雑誌『サピオ』に掲載されたから、サピオ・プレスとなったのだろうが、そ
れとも小学館の海外ブランドにサピオ・プレスというのがあるのだろうか。関
心が及ばず知らないけれども、いずれにせよ、ロトランジェの声に接するには、
彼同様に一流の編集者教授である浅田彰氏の文庫のほかは、対談にせよ雑誌論
文(例えばGS第2号「特集:ポリセクシュアル」所収の"defunkt sex"。G
Sは第3号までは冬樹社より発行発売)にせよ、日本でも古本屋に当たるしか
ない。[2001年1月24日]

アイラヴディック:新潮社
ディック某:ディック・ヘブディジ
異人たちと食欲不振:エイリアンと拒食症
スマート・アート・プレスURL

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■編集同人備忘録
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成人式の乱痴気騒ぎで、クラッカーを投げつけられた高松市の市長が、市のH
Pでこう述べている、「1月11日付けの産経新聞「産経抄」に「クラッカー騒
ぎを醸成したのは,戦後教育と進歩派マスコミと人権派たちなのだ」とありま
した。私たちは,戦後50数年間にわたって日本と日本人をスポイルしてきたあ
る種の民主主義,正義,人権といったものを,今こそ冷静に見直し,検証しな
ければいけない時期を迎えているのではないかと,切に感じております」と。
またか!と思う。いったい民主主義や正義や人権がこの国をスポイルするほど
に成熟したことがあったか。確かにそれら諸概念は常に再審され、その本義が
どこにあるかを厳しく見守らねばならない。けれども、それら諸概念は、権力
の抽象的オプションではなく、実践的であることを私たちに常に要求している。
スポイルなどと言うのは、この未到達の実践を反故にしてきた人が言う戯言で
はないのか。私は再度、民主主義と正義と人権を政治に要請したい。  五月
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