2001.3.5.発行 vol.62 [眼を瞑れ 号]

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■■  [本]のメルマガ                              2001.3.5.発行
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■CONTENTS----------------------------------------------------------- 
★トピックス
→イベント情報、書店情報など。

★「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
→「イメージ」は敵か味方か。フォトグラフの哲学のために。

★「虚実皮膜の書評」/キウ
→忙しい裁判官もすぐれた小説を読まなければならない。

★「一字千金の記」/グッドスピード
→昌子さんのフロッピーに残された原稿とは?

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■トピックス
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■中沢新一氏講演会+サイン会 
久々の新著『フィロソフィア・ヤポニカ』(集英社)の刊行を記念して、 
東京・青山ブックセンター本店(表参道)のカルチャーサロン青山で、
中沢新一氏の講演会とサイン会が開かれる。3月12日(月)19:00〜21:00。
入場無料・要予約。 定員100名。予約・問い合わせ先は、カルチャーサロン
青山(03-5485-5511、10:00〜22:00)。
青山ブックセンター http://www.aoyamabc.co.jp/ 

■ジュンク堂書店池袋本店が新装オープン
3月1日、売り場面積1000坪から2000坪に増床され、常時在庫約150万冊
と、大阪本店(1500坪)を上回る巨大書店に。レジカウンターを1階に集中
化。また、今月から来月にかけて、姫路駅店、神戸市舞子店、三宮駅前店、
西宮店が新装オープン。サイン会、トークショー、フェアなど関連イベント
も多数開催される。(先日、池袋本店に行きましたが、2000円以上買うとグ
リーンの布の手提げがもらえます)
ジュンク堂書店 http://www.junkudo.co.jp/ 

■現代思潮新社全点フェア
東京神田神保町の東京堂書店(03−3291−5181、AM10時〜PM7時)で、3月
31日まで。トロツキー著作集より10点、大杉栄選集より4点、エートル叢
書第1期10巻など、僅少本をふくむ300余冊を展示即売。
現代思潮新社 http://www.gendaishicho.co.jp/index.htm 

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      ※なぜ私は戦争や性について「語らない」のか……※
  『ためらいの倫理学――戦争・性・物語』内田 樹 著(神戸女学院大教授)
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  46判/並製/272頁/本体2000円/発行:冬弓舎(http://thought.ne.jp/ )
  内田さんの文章は、「爆笑問題」の百倍おもしろい。(鈴木晶氏)
  内田さんは「思想の整体師」である。貴方のコリ、ほぐします。(増田聡氏)
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■「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
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 第22回 フォトグラフの哲学のために その1

 新聞折込のパック旅行広告、「MAX やまびこ号でいく東北春景色29,800
円〜52,800円」という案内に貼り付けられた旅館の料理の写真と弘前城の
写真。これら写真の下に付せられた「イメージ」の文字。「これは広告の
写真とだいぶ違うじゃないか」食事にイメージと但し書きをするのは理解
できる。が、お城にそんな但し書きをするのは、どういうことなのだろう
か。「これは広告にあった弘前城ではない」というクレームをつけるお客
が、いまや偏在する社会なのだろうか。

 F・ジェイムソンの天気予報
 書名にひかれて買った本。『文学=イメージの変容』(F・ジェイムソ
ン著、世織書房)は、そんな本だった。カバーの美しさとあいまって、イ
メージとはどういうことだろうかと考えてみようという気にさせる。

 イメージについてもっとも多く語っているのは、本書はじめの「ポスト
モダンにおけるイメージの変容」という章だろう。一日に1000ものイ
メージに晒されているような、そんな今日の視覚主導社会にいる私たちは、
身体も精神もこのイメージの飽和に対応するために、あらたに器官を発達
させることになり、思想も文化的産物も、この異常な視覚性に満ちた新た
な環境の影響を深奥に受けていると想像されるとして、ジェイムソンはサ
ルトルやファノン、フーコーの見ること=視覚の理論を論じつつ、ポスト
モダンとよばれる段階にあって視覚が陶酔の形態となり始めたのではない
かと提起する。
 このような段階に消費は物資としての商品ではもはやなく、情報テクノ
ロジーが消費物となっているのだという。今や情報テクノロジーの形態を
した後期資本主義が、みずからのテクノロジーを「食べて」、進行しつづ
けているのである。ポストモダンは商品化のさらなる強化、事物がイメー
ジへと変容していくことの普及ととらえられる。

 視覚消費のこのような状況にたいして、イメージを抗するにイメージを
もってする、<同種療法>の可能性を示唆しつつ、現在にあって美あるい
は審美的なものが政治的な申し立てとなりうるのか、ジェイムソンは自問
している。前世紀、審美思想、美は破壊的な効果をもちえたのは、それが
商品形態に未だ侵食されない精神の一部、社会生活の一部である思想に基
づいていたからだと、彼は言う。商品化されていない空間を、今、想像で
きるか? と限りなく否定的な調子を、彼の「文化気象予報」は告げてい
る。

 偶像崇拝の禁止
「巨大仏 破壊開始か タリバン ロケット砲撃ち込む アフガニスタン
からの報道によると、同国の大半を支配するイスラム原理主義勢力タリバ
ンの兵士は2日、世界的に有名な中部の仏教遺跡「バーミヤンの石窟」の
破壊活動をはじめたもようだ」(東京新聞3月3日記事)

「壊すのなら買い取る!! NYの美術館が意向 ニューヨークのメトロ
ポリタン美術館のフィリップ・モンテベルロ館長は1日、アフガニスタン
のイスラム原理主義勢力タリバンに対し、仏教彫像などアフガニスタンの
文化遺産を買い取りたいとの意向を明らかにした」
(東京新聞3月3日記事)

「イスラム教義誤解される アラブからも非難 本来、他宗教・文化に寛
容 【カイロ3日島田佳幸】イスラム教は偶像崇拝を禁じており、開祖マ
ホメットの言葉に従い、住居内に一切の偶像を置かないという教徒もいる
が、本来、他の宗教や文化には寛容であり、アフガニスタンのタリバンの
仏教破壊行為は「イスラム教を誤解させる」として、一般には、苦々しく
とらえられている。・・・・・・エジプトのイスラム法学の最高権威者で
あるムフティのナスル・ファリード・ワセル師も、タリバンが破壊した後、
アラブ紙アルハヤトに「大仏は歴史を伝える記録であり、イスラム教に、
いかなる悪影響も与えるものではない」と語った。イスラム化される以前
に造られたという点では、古代エジプトの偶像も同じで「それを維持する
ことで、観光収入など利益をもたらしてくれるのであり、何らハラム(イ
スラムの禁忌)ではない」としている」(東京新聞3月4日記事)

(この項続く)

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■「虚実皮膜の書評」/キウ
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 『白痴群』 車谷長吉 新潮社 00.11

 柳美里氏の「石に泳ぐ魚」が、控訴棄却、出版差し止め、という控訴審判
決を受けた。小説のモデルにされた原告側が、「プライバシーの侵害」を訴
えたものである。

 作品を読んだわけではないので、その内容に踏み込んでものを言うことは
できないが、判決文については首を傾げた。「現実に題材を求めた場合も、
これを小説的表現に昇華させる過程において、現実との切断を図り、他者に
対する視点から名誉やプライバシー損なわない表現の方法をとることができ
ないはずはない」という。小説世界を現実からきれいに切り離して構築でき
るという発想は、現実を事実のままに表現できると思いこむのと同様に、愚
かしい。文学においては、「事実」とは何か、「虚構」とは何か、というこ
とこそ問われるべきであって、「事実」や「虚構」が、どこかに実体として
転がっているものではない。「現実との切断を図り」というときの「現実」
とは何なのか。そのことを探る作業こそ、文学的営為であり、ことに私小説
作品にとっては「命」とも言える作業だ。「小説的表現に昇華」というとき
の「昇華」には裁判官の文学に対する個人的価値判断さえ含まれている。車
谷長吉も、私小説作家として「つぶされる」と、判決に対してコメントして
いるが、そのような危惧は確かに感じられる。

 その、車谷長吉の最新作は、前回の作品集『金輪際』(文藝春秋)と同じ
ように、古い作品と最近の作品が同居している。作品集の半分のページを占
める表題作は昭和五十年の作品。「贋風土記」というタイトルを「白痴群」
と改題してある。

 作者の少年時代とおぼしき「私」が主人公。田舎に暮らす「私」は、小学
校へ入学する際に、都会に暮らす伯母の家に預けられ、そこから都会の小学
校へ通うことになる。生まれ育った田舎と都会との生活は、まったく状況が
違い、悪戦苦闘しながら、大人たちの都合に自身の生活を左右されつつ、そ
れらの人々を観察する。

 おそらく「白痴群」と呼ぶのは、それらの大人たちのことなのだろう。視
点は子供なのだけれど、その眼差しは完全に大人のもので、だからといって
回想録ふうに書かれているわけでもなく、大人な眼差しを持った子供の視点
という感じ。内容に比してタイトルも仰々しい。

 むしろ「白痴群」なのは、そのあとに続く、近年の作品だろう。

 「狂」は著者とおぼしき「私」が、高校時代に世話になった教師を描いて
いる。今は亡き立花先生は、苦学して東大へ進んだ郷党の俊才だったが、三
菱商事に入社後、上司と対立し、これを殴りつけて会社を辞める。その後、
飾磨高校で教鞭を執ることになる。深いニヒリズムを抱いている立花先生は
哲学の課外授業を設けて、生徒に呼びかけ、「私」は私淑する。

 「私」は立花先生のなにに惹かれるのか。

  この時、立花先生の生は狂うたのである。この狂うたというのが大事で
 ある。先生は「順の人。」から「異の人。」に転じた。異の人とは、この
 世の異者である。(中略)いずれにしても立花先生の生は、天と地が反転
 したのである。恐らくこの時はじめて、先生の中で「精神。」という「物
 の怪。」が息をしはじめた。(P129-130)

 「私」は、この異者に共振する。「私は先生の意に反し、無能者の文士に
なった。文士なんて、人間の屑である。」(P143)という「私」は上司を殴
りつけて狂うた立花先生の、異者としての陰に惹かれる。

 最後に収められている「一番寒い場所」は、日本社会党委員長浅沼稲次郎
を講演中に殺害し獄中で自殺した山口二矢の親友を名乗る逆木氏との交流を
描く。

  誰の心の中にも「一番寒い場所」というものがある。心にこれをやらな
 ければいけないと思い決しながら、ともすればそれが実行できない部分で
 ある。行動できない部分である。(中略)
  併し文学には本質的に反社会性がふくまれており、書くのは疚しいこと
 であった。己れの振る舞いに何か不信に似たものを絶えず感じ続けて来た。
  書かなければ、と思い決しながら、ともすれば行動できないのは、この疚
  しさあるがゆえである。(P202)

 大学を卒業して、くすぶった「一番寒い場所」を抱えながらサラリーマン
となった「私」は、同じく「一番寒い場所」を抱えた逆木氏と、知りあう。
山口二矢は思い決したことを行動に移したが、親友・逆木氏は踏み出せない
まま無為に日を過ごしている。高校時代に山口二矢の事件に強い衝撃を受け
心の傷ともなったという「私」も、サラリーマンとして思い切れない日々に
鬱屈している。

 ある日、逆木氏は「私」の部屋にやってきて、黒い拳銃と五百萬円の札束
を目の前に置き、創価学会の池田大作を殺ってほしいと依頼する。「私」は
受けない。逆木氏は「そうか。あんたも俺みたいに腐れ金玉になりたいのか
。」(P240)と詰め寄る。「私」は「一番寒い場所」を抱えてはいるが(そ
れを見込んで逆木氏は依頼したのだが)、この申し入れを受けない。

 「『精神。』という『物の怪。』」にしろ、「一番寒い場所」にしろ、そ
のような厄介なものを抱え込んでしまった「私」を、寒々とした世界像とし
て提示する。この寒々とした「私」を、著者は、恐らく、社会の中で生き抜
くひとつの有効(?)な方法として表現しているのだろう。そこにはユーモ
アさえある。

 「私」という現実/虚構が、どのように読み手に作用するのか。繰り返し
語られる「車谷長吉」の「私小説世界」は、そのような実験の場なのだ。

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■「一字千金の記」/グッドスピード
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 「150年前の誤植」――昌子のフロッピーより。

 鈴子の家に居候しながら小説を書いていたのは、作家を目指しながらも文
学賞を獲り損ねてあきらめた自分への慰めなんかじゃなくて、鈴子への家賃
がわりだったのだ。いまじゃすっかり「文学賞」なんて言葉を聞いても変に
興奮もしなければ、顔を赤らめたりすることもなくなった。
 でも先日、カバーに使われていた写真(エルヴェ・ギベールの)に惹かれ
て手にした堀江敏幸の『熊の敷石』(講談社)を読んで、「芥川賞」もまん
ざらではないと不覚にも思ってしまった。「芥川賞」など文壇(この熟語、
まだワープロに登録されているなんてチョーびっくり!)と出版界のための
イベントとしか思っていなかったわたしにとって、新鮮な驚きだったことを
告白しなければなりません。もう一度、作家をめざしてみようかしら。

 こんな意地の悪いわたしの性格は天性のもので、いつも鈴子には指摘され
ているのだけれど、小説を書く人間など、みんな意地が悪い、と思う。鈴子
だって、毎月私が書いてる小説を、ケチをつけるばかりで、素直に喜んでく
れたことはないんだから。
 そんなわたしが『熊の敷石』を意地の悪い読み方で読んでしまったのも当
然のこと。他人の小説なんて認めたことなどほとんどないのだから。といっ
てもこの作品には、精興社の美しい活字に満たされたその版面とともに、静
かな感動を覚えたのは確かなのでした。

 でも意地の悪い読み方をしたのは本当で、それが証拠に誤植をひとつ見つ
けてしまった。51ページ。
 19世紀後半、『フランス語辞典』を書き上げたマクシミリアン=ポール=
エミール・リトレの伝記の幼年時代の章に引用されていた文章――150年
前の――を引用した一節のなかに。
 
 「……大天使ミカエルに倒されたサタンの図柄をあしらった銅製品を一式
修理するため、僧院に呼び出された。善良なこの男は、検査が終わると、僧
侶たちにこう言った。「悪魔の方はよろしいのですが、大天使のほうはなん
の値打ちもありませんな」と。不幸にも、彼はユグノーだった。……」

 要するに、「悪魔の方」と「大天使のほう」の違いで、「方」を「ほう」
にすべきなところだとわたしは思うんだけれど。たしかに、文学作品の場合、
なんでもかんでも字句を統一することがいいこととは思えないが、作品全体
を読んでも、ここでは「ほう」を使うべきとわたしは思ったのでした。
 でも、原本そのものが間違っていたとしたら、それこそ150年前の誤植
ということになる。それをたしかめるすべはわたしにはないのであります。

 ところで、ここで正直に告白をしてしまうと、当のわたしも誤植をおかし
ていた。毎月鈴子に書いているわたしの小説は、松浦理英子の『裏ヴァージ
ョン』(筑摩書房)に掲載されているのだけれど、その9「第八話 ジュン
タカ」の中に1箇所誤植がある。108ページの1行目。

 「「ジュンタカのどこが好きなの?」と初代に訊くと「きれいだから」と
いう答。初乃に案内させて……」

 初乃というのは、喜多川初乃ちゃんと言って、わたしや菊子の同級生なん
だけど、初代なんてわたしは知らない。つまり「初代」は「初乃」の誤植な
のよ。恥ずかしいったらありゃしない。
 鈴子も鈴子よ。毎回わたしが書いた小説に数行のコメントをゴシック体で
返してくれるんだけど、誤植の指摘をしてくれなかった。鈴子も見逃してい
たのね。ちゃんとわたしの短編を読んでいてくれたのか、疑わしいわね。
 でも、鈴子にはしばらく会っていない。どうしているのかな、鈴子。
(第18回・了)

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■あとがき
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昨年12月には寒さを忘れ、今月は花粉症を忘れる。でもね、忘れたくなんて
ないのよ。正直言って。体が弱っているときに本を読むのはいいですね。
もっと弱くなりそうで。とくに優れた小説を読んだときなどはなんとも言え
ません。話しは変りますが、どなたか栄養ドリンクに詳しい方いませんでし
ょうか。ドリンクマニアの方、安くて一番利くやつを教えてください。(グ)
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