2001.4.15.発行 vol.66 [君子は豹変す 号]

■■----------------------------------------------------------------
■■  [本]のメルマガ                             2001.4.15.発行  
■■                                                    vol.66
■■       mailmagazine of books            [君子は豹変す 号] 
■■----------------------------------------------------------------
 
■CONTENTS----------------------------------------------------------
★トピックス 

★「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)
→おお、こ、今回30万のあの本を……

★「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
→筆者の独壇場、現代における詩と写真のレポートをお送りします。

★「中国古典で浅学菲才が直る?」/掩耳(えんじ)
→変節ってなんで悪いの? 日中の思考を対比します。

★「本の周りをうろついて・・」/湯川新一
→しばらく休載になりまーす。
--------------------------------------------------------------------
■トピックス
--------------------------------------------------------------------
■光文社が週刊誌『ディアス』創刊
三十代のビジネスマンを対象とした、新週刊誌『ディアス』が6月の18日に
創刊するそうです。団塊ジュニアが、ついに三十の大台に突入し、第二の
『文藝春秋』を狙うべく、各社が参入し始めている証しなのでしょう。この
世代がどれくらい活字にもどるか、の動静いかんで、今後の出版界の浮沈も
決まってくるのかもしれません。毎週月曜発売。
そういえば、プレジデントも結構売れ行き好調とのことですし、団塊ジュニ
アの新中間管理職も、いろいろお悩みなのかもしれません(笑)

■これは面白い、マッチのレッテルの本がでます。
マッチラベル(レッテル)の収集では、日本でも有数の加藤豊さんが、ご自
分のコレクションの逸品を公開した『マッチレッテル万華鏡』(白石書店)
四月末ごろに発売だそうです。2,500円(予価)デザイン的にも傑作なマッチ
ラベルの世界、一度のぞいてみてはいかがでしょう。
--------------------------------------------------------------------
■「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁
--------------------------------------------------------------------
全点報告 この店で買った本
第12回 緊縮財政につき……

三月二日
◎三省堂書店(神保町本店)
小谷野敦『軟弱者の言い分』晶文社、1600円+税(以下同じ)
舟崎克彦『これでいいのか、子どもの本!!』風涛社、1500円
『Title』4月号、530円
◎宇都宮美術館
『版画をつづる夢 宇都宮に刻まれた創作版画運動の軌跡』2500円

三月四日
◎ナディッフ(表参道) http://www.nadiff.com/
『アールヴィヴァン』1989年33号(特集「マヴォの時代」)、西部美術館、
1200円
東京都現代美術館編『デヴィッド・ホックニー版画 1954-1995』淡交社、
2913円
井出孫六『ねじ釘の如く 画家・柳瀬正夢の軌跡』岩波書店、2400円
谷川晃一『今日の美術とサブカルチャー』国文社(ポリロゴス叢書)、2300円
『etc』2月号、200円
【ひとこと】いわゆる「アートショップ」のオシャレさが苦手で、この店も
数年ぶり。しかし、一般書店に置いてない美術雑誌やカタログがあるのはあ
りがたい。願わくば、全国の展覧会のカタログを数部ずつでイイから置いて
ほしいなァ。
◎青山ブックセンター(表参道本店)
『田中一光自伝 われらデザインの時代』白水社、2200円
八束はじめ『ロシア・アヴァンギャルド建築』INAX出版、4000円
ヴァレリー・ラルボー『罰せられざる悪徳・読書』みすず書房、1500円
Johannes Vennekamp『PAPIER OBJEKTE』4800円
『小沢剛世界の歩き方。』イッシ・プレス、オオタ・ファインアーツ、2800円
【ひとこと】リニューアルから約一年近く経って、広さを活かした見せ方が、
どうやら定着してきたみたいだ。河野鷹思の初期作品展、「ゼンマイカムパ
ニー」の展覧会が行なわれ、「堀江敏幸とその周辺(『罰せられざる悪徳・
読書』はそこに並んでいた)」、「作家の書簡」、「ニューヨーク」などな
どのフェアも数箇所で展開されている。こういう試みがじっさいに売り上げ
に貢献してくれば、店にとっても客にとってもイイのだが。

三月五日
◎定有堂書店(通販)
江戸川乱歩『貼雑年譜』二分冊、東京創元社、30万円
【ひとこと】昨年から買おうかどうしようか迷っていた、乱歩手製のスクラ
ップブックの完全複製版。ううーっ、ついに買っちまったよ。コレで今月は
もう本が買えないよ。なお、東京創元社のサイト(http://www.tsogen.co.jp/
)によれば、三月十三日の時点で、限定200部が完売してしまった。知り合
いの推理小説史研究家は、誰と誰が買ったか、十人ぐらいの名前はたちどこ
ろに挙げられるそうだ。コワイ世界だねェ。

三月六日
◎岩波ブックセンター
姜尚中・吉見俊哉『グローバル化の遠近法 新しい公共空間を求めて』岩波
書店、2300円
『ダ・ヴィンチ』429円

三月七日
◎クローバー・ブックス http://www.ifnet.or.jp/~kyoko.hi/
竹内正実『テルミン エーテル音楽と20世紀ロシアを生きた男』岳陽舎、
2000円
ジェン・バンブリィ『ガール・クレイジー』河出書房新社、1800円
原マスミ『ふたコマ絵本』白泉社、1456円
【ひとこと】美術系のライター・編集者である平林享子さん(「書評のメル
マガ」でも好評連載中)が、自分の好きな新刊・古書だけを仕入れるオンラ
イン書店。点数は少ないのだけど、「オススメ」のオーラが強く漂っていて
、買ってみたくなる。

三月八日
◎bk1(オンライン)
山形浩生『山形道場』イースト・プレス、1500円

三月九日
◎金港堂書店(代々木)
越澤明『東京都市計画物語』ちくま学芸文庫、1300円
児玉隆也『淋しき越山会の女王 他六編』岩波現代文庫、900円
『噂の真相』4月号、448円
【ひとこと】うなぎの寝床みたいに細長い店。文庫やマンガ中心で、立ち読
み客でゴッタがえしている。通り抜けて、反対側から出ると、道を挟んでも
う一軒、同じ「金港堂」が。同じ文庫でも岩波や講談社学術文庫、ちくま学
芸文庫など、少しかための本が置いてある。ブランドによって置く店が違う
ので、探すのがメンドくさいことはメンドくさいが、でも、コッチの店はう
って変わって静かで落ち着くんだよなあ。品揃えによって、うるさい店と静
かな店が並んでしまうところがオモシロイ。先月行った仙台の金港堂とはナ
ニか関係があるのだろうか?
◎ギャラリー千空間(代々木)
花川戸菖蒲『一緒にいたねをたくさん』二見シャレード文庫、552円
【ひとこと】高野ひろしさんの展覧会「銀の輔 町を行く」の会場で、某大
書店勤務の「舎弟」より「やおい」小説を受け取る。「尤書堂」という書店
に勤める青山くん(男)と、その同僚で大学時代からの後輩の関谷望(男)
の恋を描くシリーズで、一作目は『キスよりもその唇で』。今回はPOSレ
ジ導入のハナシで、書店員なら涙ナシには読めないぜ!

三月十日
◎往来堂書店
『ラパン』春号、905円

三月十一日
◎パルコブックセンター(調布)
野中英次『魁!! クロマティ高校』第1巻、講談社、390円
【ひとこと】調布には初めて行くので、まず「真光書店」に行くが、ホーム
ページ(http://www.shinkosyoten.co.jp/)がけっこう充実してるワリには、
店舗はオモシロくない。しかし、地元の本屋は必ずしもオモシロイ棚をつく
る必要はないのかもしれない。ぼくみたいに、一回来てグダグダ云う客より
も、週に何回か来てくれる地元のお客さんの注文や問い合わせに対応するほ
うが本筋だろう。ただ、ないものねだりかもしれんが、初めての街でイイ本
屋にぶつかるほど嬉しいコトはない、というのもあるんだよなあ。

三月十四日
◎bk1
I・コジェーヴニコワ『ブブノワさんという人 日本に住んだロシア人画家』
群像社、2800円

三月十五日
◎アマゾン・ジャパン
Michael Putnam『Silent Screens』The John Hopkins University Press、
4180円
中野不二男『マレーの虎ハリマオ伝説』文春文庫、437円
【ひとこと】『Silent Screens』は、映画を上映しなくなった映画館の写真
集。『みすず』一月号の読書アンケートで、加藤幹郎氏が挙げていたのを読
んで、即注文した。

三月十七日
◎bk1
小田光雄・河野高孝・田村和典『古本屋サバイバル 超激震鼎談出版に未来
はあるか3』編書房、1700円
◎三省堂書店(神保町本店)
『装丁/南伸坊』フレーベル館、2300円
『eとらんす』4月号、495円
『本の雑誌』4月号、505円

三月二十二日
◎ブックファースト(渋谷店)
山口文憲『読ませる技術 コラム・エッセイの王道』マガジンハウス、1300円
坪内祐三『慶応三年生まれ七人の旋毛曲がり 漱石・外骨・熊楠・露伴・子
規・紅葉・緑雨とその時代』マガジンハウス、2900円
『明治の文学』第11巻(内田魯庵)、筑摩書房、2400円
カレル・チャペック・エッセイ選集1『チェコスロヴァキアめぐり』恒文社、
1845円
町田忍『痛快「捨てない!」技術』岳陽舎、952円
川成洋編『世界の古書店』1・2、丸善ライブラリー、680円・660円
殿山泰司『バカな役者め!!』ちくま文庫、620円
土屋隆夫推理小説集成1『天狗の面・天国は遠すぎる』創元推理文庫、
1100円
朝倉世界一『アポロ』イースト・プレス、897円

三月二十三日
◎書泉ブックマート
森高夕次・あきやまひでき『おさなづま』第7巻、双葉社、552円
伊藤理佐『やっちまったよ一戸建て!!』第1、2巻、双葉社、各714円
みなもと太郎『風雲児たち』第21、22、23、24、25巻、潮出版社、各388円
【ひとこと】久しぶりにマンガをドカ買い。『風雲児たち』は二十巻までを
古本で、この数日前にネットオークションで手に入れている。再読だが、ま
た一気に読んでしまいそうなので、続きを買っておく。レジで店員が「タヌ
キノカワザンヨウ」はないのか、大洋社には在庫があるみたい、じゃあ十五
冊発注だ! などと騒いでいる。そんなヘンなタイトルのマンガが売れてい
るのか。あとで調べたら、山崎一夫・西原理恵子『たぬきの皮算用 当世高
田馬場雀荘事情』(竹書房)の第二巻のコトだった。
◎書肆アクセス
関口一郎『銀座で珈琲50年 カフェ・ド・ランブル』いなほ書房、3000円
浅田修一『神戸 最後の名画館』幻堂出版、1500円
◎書泉グランデ
唐沢俊一・鶴岡法斎『ブンカザツロン』エンターブレイン、1500円
天藤真推理小説全集14『われら殺人者』創元推理文庫、820円
光原百合『遠い約束』創元推理文庫、560円
◎岩波ブックセンター
千野栄一『プラハの古本屋』大修館書店、1400円
山口昌男『はみ出し(ステップ・アウト)の文法 敗者学をめぐって』平凡
社、1800円
近藤雅樹編『図説大正昭和くらしの博物誌 民族学の父・渋沢敬三とアチッ
ク・ミューゼアム』河出書房新社(ふくろうの本)、1800円
南條竹則『ドリトル先生の英国』文春文庫、710円
【ひとこと】今月は「緊縮財政」だなどと云いつつ、この二日間で恐ろしい
冊数を買っているではないか。現金がナイとカードで買ってしまうので、そ
れらは翌月払いとなる。かくして、毎月引き落とされる本代が「月賦」並み
になってしまうのだ。本代でカード破産したら、ひょっとして中村うさぎに
も勝てるかもしれん。

三月二十四日
◎福家書店(銀座店)
『キムチと韓国家庭料理』オーイズミ、1300円
『レタスクラブ・クッキング パスタと麺』SSコミュニケーションズ、
905円
【ひとこと】散歩したい気分だったので、新橋駅で降りて昭和通りをブラブ
ラ歩く。福家書店は銀座の端にあるので、初めて入った。一階は雑誌と実用
書で、とくに料理本が充実している。二階は文庫や単行本だが、特徴的なの
はアイドル写真集のコーナーのスペースが驚くほど広くとってあることだ。
この場所で、毎週のようにアイドルの握手会やサイン会が行なわれるためら
しい。今日は三時から「酒井彩名」(知らない)の握手会があるので、一般
人は午後から二階には上がれない。踊り場の辺りには、すでに握手会への一
番乗りが待っている。明日は『先どり娘』という写真集に出てるアイドルた
ちらしいぞ。

◎INAXブックギャラリー
白川昌生編『日本のダダ 1920-1970』書肆風の薔薇、7000円
ヴラスタ・チハーコヴァー『プラハ幻景 東欧古都物語』新宿書房、3107円
田中充子『プラハ建築の森』学芸出版社、2300円
馬場伸彦『周縁のモダニズム モダン都市名古屋のコラージュ』人間社、
2400円
マイク・デイヴィス『要塞都市LA』青土社、3400円
飯田かずな『富子と君作』ACIプレス、1200円
【ひとこと】戦前のデザインや建築の本をまとめて読みたいと思ってる時期
なので、この店に入って手ブラでは出られない。プラハに行きたいこともあ
って、都市に関する本をカード買いしてしまう。『富子と君作』は1970年生
まれの写真家が、自分の祖父母に学生服を着せたり、遊園地で遊ばせたりし
て撮った写真集。かなり突き抜けた格好とそれに見合ったデザインがイイ。

三月二十六日
◎文鳥堂書店(飯田橋店)
伊藤理佐『えみちゃんでポン』集英社、780円
伊藤理佐『あたって砕けろ!! りさのドキドキ取材日記』イーストプレス、
951円
◎書泉グランデ
宮部みゆき『模倣犯』上・下、小学館、各1900円
みなもと太郎『風雲児たち』第26、28、29巻、潮出版社、各388円

三月二十八日
◎紀伊國屋書店(新宿本店)
みなもと太郎『風雲児たち』第27巻、潮出版社、各388円
パヴェル・コホウト『プラハの深い夜』早川書房、2800円
井上健『翻訳街裏通り わが青春のB級翻訳』研究社出版、2000円
【ひとこと】ハイブリッドウェブ・サービスで注文した本を受け取りに行っ
たら、いままで雑誌と新刊売場だった一階が文学書の売場になっていてビッ
クリ。待ち合わせるときに人が多くて辛かったので、こちらとしてはヒトが
少ない売場の方がアリガタイのだが。
◎ディスクユニオン(新宿店)
『ロック画報』第4号、1200円

三月三十日
◎ビレッジ・プレス(通販) http://homepage1.nifty.com/vpress/
中村よお『バー70'sで乾杯 失われた夢スポットの記録』ビレッジ・プレス、
1437円
【ひとこと】烏書房のサイト(http://homepage2.nifty.com/hon-karasu/)
で連載されている歌手の中村よおの文章を読んで、本が読みたくなった。そ
ういう場合には、版元のサイトを探して、即注文。新刊以外は、コレがいち
ばん速い入手法ではないか?

三月三十一日
◎青山ブックセンター(新宿ルミネ2店)
戸川昌士『おまた!! 猟盤日記』太田出版、1500円
チチ松村『盲目の音楽家を捜して』メディア・ファクトリー、1500円
吉田戦車『学活!! つやつや担任』A、B巻、小学館、各800円
横田順彌『ヨコジュンのハチャハチャ青春記』東京書籍、1600円
山中茉莉『新・生活情報紙 フリーペーパーのすべて』電通、2800円
【ひとこと】チチ松村と吉田戦車の新刊は、両方ともこの店でサイン会が開
かれるらしい。思わず参加券を受け取ってしまったが、サイン会のために並
ぶのはどうも苦手だなあ。

今月の購入本 計87冊(一カ月経ってみると前月より多い……なぜ?)
---------------------------------------------------------------------
■「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
---------------------------------------------------------------------
詩人の写真と写真家の詩
  −北爪満喜・蓑田貴子「くつがえされた鏡匣」展

  詩人北爪満喜と写真家蓑田貴子によるジョイントの「くつがえされた鏡匣
(かがみばこ)」(CASA 03−5685−1170 4/10〜4/24)は変わったコン
セプトの展覧会だ。
 『暁:少女』(書肆山田)『虹で濁った水』(思潮社)などの詩集を持つ北
爪満喜は、デジカメで撮った写真を日録風な文章をつけて発表し、東川賞新
人作家賞を受賞したこともある蓑田貴子は、写真作品とともに、それに合せ
て書きおろした詩を収めた冊子を展示する。「詩人はデジタルカメラで詩を
書くように写真を  写真家はシャッターを切るように言葉で  歩き出す」と
いうコピーの通り、専門領域を交換しあうことで(つまり互いの専門領域に
おけるアマチュア≠ノなることで)、二人の間で共有された美意識とそれ
ぞれの個性の違いを確認し、披露しようというのだ。
  北爪満喜のホームページでこの展覧会の案内が見られます。
→http://www1.nisiq.net/~kz-maki/event/ev1.html

  北爪満喜は、きらめくような、ゆらめくような、美しくも奇抜なイメージ
の乱舞によって独特の夢見るような少女的世界を造り続けてきた人。イメー
ジの交錯から生まれてくる物語(その逆ではない)は、通常の起承転結に抗
う魅力的な歪みを持つ。彼女は数年前から写真に興味を持ち、自分のホーム
ページを開設してからはデジカメで頻繁に写真を撮るようになり、日録のコ
ーナーで文章とともに画像を発表するようになった。今回の作品群はその延
長線上にあるものと言える。
  写真に付された文章は、散文とは言え、極めて詩的要素の多いもの。例え
ばこうだ。
 −「ひとりで暮らしている母の家からの帰り、、上越新幹線に乗る。<中略
>新しい新幹線には記憶が付着していない。それがいい。運ばれている瞬間
だけがある軽さ。窓の外を平らな風景が飛び去ってゆく」
「つよい陽射しに透けてくるプラスティック。波形のうしろには、くねくね
と絡まる草の蔓の影。/いま書きかけの詩は、エレベーターで屋上に登ると
みずうみが広がっていた・・・という詩。こんな青のイメージかもしれない」
「木でできた魚。私のコートのポケットには指でさぐると、木でできた魚が
入っている。指先でふれると魚は葉になる」−
意識が現実から浮遊しだそうとする丁度その瞬間に、シャッターが押され、
見慣れた風景が童話のように舞い、瞬時に映像として固定される。風景と目
が合った瞬間の写真、とでも言えばいいか。小さな十字架の影だったり、寝
転んだ猫の眼差しだったりするものが、作者の私的な予感≠具現化して
いく。
「はっきりと見ること。写真を撮ってぼんやりと見ていたものをはっきりと
見ることは『意識化』に影響してくる」


  蓑田貴子は、一貫して表現としての写真を追い求めてきたアーティストで
多くの個展・グループ展の経験を持ち、小林のりおらとインターネット上で
「web photo collection」を開催したこともある。初期の頃は、対象を記号
として取り扱うやや抽象的な作風であったが、「写真の作品化への疑問や難
しさを強く感じていた」そうである。
  「特定の対象を追いかけていくこと、写真の中で、ある対象が際立ついわ
ゆる対象度の高い作品は他人が撮ったものを見るのは好きでも、私自身が撮
ることについてはあまり愉しめなく、また求めていないということだった。
もっと、些細な、日常の中で塵のように落ちて消えていくもの、しかしきら
っと光りながら・・・そういうものを求めていたのだった」
  自分自身の想いそのものでもないし、対象そのものでもないもの、身の回
りにあって作者と親しい関係にありながら特定されていないもの、主観世界
の内側にあってその中心になく周辺で浮遊するもの、子どもを抱える主婦と
しての忙しい生活からほんの一歩自分を外へ連れ出してくれるもの−を、写
真表現の専門家としての蓑田貴子は対象としているように思える。それは「
塵のように落ちて消えていくもの」の意味を考察することであり、「時間と
は何か」を考えることにもつながっていく。「滲んだ色」は、自分の子ども
を撮影した写真だが、露出を長く取っているために色も形も滲んでいる。そ
の滲み≠ニいう別次元の空間の中で、母親としての自分に笑いかけてくる
子どもと対面することとなる。それは、私的な時間の「肖像写真」とでも言
えるものだ。そしてその意味合いをより明確に訴えるために彼女は写真作品
に印象的なタイトルをつけ(「骨をくわえた獣」と題された犬の写真はすば
らしい)、詩作品を書き下ろすこととなる。
「水着のまきこ/笑い声が響いて 青い空に飛んでゆく/水に濡れた布地がと
ころどころ/肌にぴったりくっついて/プリントされた花模様の黄色と水色
/その色が濃くなっている/ざざっという強い水音に振り向けば/水着の色も
庭木の緑色も/さるすべりの花の濃いピンク色も/絵の具になって流れ落ち
た」

  二人とも40代に入った女性の芸術家であり、その作品はその生活と強い関
係を持っている。北爪は「いわゆる家事というもの。そこを切り裂くように
詩を書く意識が通過する。いえ、切り裂かなくては窒息してしまうから、日
常に詩を書く道筋を保ち続けているといったほうが近い」と書き、蓑田は「
写真を撮って、撮った写真を見て、思いを巡らせ考える時間が、閉塞感を持
った私の日常に風穴を開け、救ってくれるようだった」と書く。二人とも膠
着しかける日常意識を解きほぐす、もしくは切り裂くために表現活動をする
が、その表現は日常を無視することでなく逆に注視することによって、日常
に新たな意味を与え、日常に息を吹き返そうとさせるものとなっている。そ
して更に、キャリアのある詩人・写真家としての表現意識の膠着を解くため
に表現手段を取り替え、自分と鑑賞者とのコミュニケーションの道を再確認
しようと試みているのだ。
  表現とは普段言えないこと・見えないものを「表に現す」ことであろう。
一定の表現手段におけるプロであることに限定されない、人間が人間に言い
たいことを伝えていくという本来的な意味での「表現者」として、二人は振
る舞ったように思えたのだった。

※引用は全て冊子「くつがえされた鏡匣」より行いました。
--------------------------------------------------------------------
■中国古典で浅学菲才が直る!?/掩耳
---------------------------------------------------------------------
君子は豹変す――変わって行くのは悪いことなの?

今回、漢の宣帝という名君をひいて、韓非子と儒教の併用の話を書こうと思
ったのですが、またまた脱線して、時事ネタを取り上げたいと思います。

森首相が退陣を発表、その後継に四人が名乗りをあげていることは周知の事
実ですが、今回の話題は出るの出ないのと騒がれて、結局出なかった野中務
氏についてなのです。

変節の人――後継選の出馬が騒がれていたとき、マスコミはこう野中氏を呼
びました。郵政改革を叫び続けてウン十年の小泉氏との対比において、わか
りやすいから、と使われていた節も見られるのですが。変節の人VS一筋の人
みたいな……

この呼び名、小沢氏を非難していたと思ったら小沢氏と連立を組み、公明党
を批判していたと思ったら公明党と組み……という、野中氏の豹変振りを、
とてもマイナスに諷したレッテルです。
でも、面白いことに、中国古典ではこういうのってプラスに捉えるのです。
しかも儒教と、その対立項であるはずの荘子においてすら……

それが「君子豹変す」です。もともとは易経の中にある言葉で、日本ではあ
まり良い意味では使われなかったしますが、中国古典においては誉め言葉、
しかも、これは二番目の誉め言葉なのです。
では、一番は何か? ――「大人(たいじん)は虎変(こへん)す」なので
す。

虎も豹も、季節がかわるときに毛が抜け変わり鮮やかに変身します。その変
わりっぷりが一番見事なのが、虎、その次が豹ということから来ています。
ちなみに、三番目は、「小人は面を改(あらた)む」です。変わったように
見えるけど、実は浅い表面、顔つきだけって感じでしょうか。

つまり、深いところから、パッパッと鮮やかな変革をとげられるのは、立派
な人の証拠なわけです。しかも、変わりッぷりが鮮やかなほど立派な……
もちろん、変わることの性質にもよるでしょうが、変わっていくこと自体のマ
イナスの感覚はありません。
これは、臨機応変という行為に対する価値観とも繋がっているかもしれません。

日本では、あまりに臨機応変過ぎる人物というのは、何考えているのかわから
ない、日和見なマイナスな奴、という捉え方になりがちです(まあ、変わらな
い奴=成長しない奴という言い方もありますが)。それよりも、〜一筋ウン十
年の方が愛され、支持されたりします(昔、牛丼の吉野屋の宣伝文句だった気
も≪笑≫)

一方、中国の古典では、勝ち残るため、向上するために変わるのはあたりまえ
臨機応変に処世するのは当たり前という価値観があります。
例えば、孔子の『論語』にも、その対極の『荘子』においても、遽(ほんとは
草かんむりがつく字)伯玉という人物を賛美しているのですが、まず『論語』
では、

●国家がきちんとしていれば仕えるが、きちんとしてなければ才能を隠してし
まう。
と、孔子の共感を買い、
さらに『荘子』によれば、
●遽伯玉は、六十才にして六十回も生き方を変えた。最初は正しいと判断して
も、後から自己否定していったのだ。
と賛美されたのです。
今のマスコミからすれば、いずれも<変節の人><節操のない人>と叩かれそ
うな生き方ですが……

ここで話は、いきなり兵書に飛びます。『孫子』においては、まさに臨機応変
が重視され、愚直やこの道一筋などといった戦略は=敗北のお馬鹿さんという
価値観に彩られています。融通が利かないのを自慢するなど想像外のできごと
だったりします(笑)

なんで、こんなに違うのでしょうか?
日本はぬるま湯的共同体主義であり、中国は根本的に個人主義(儒教はそれを
無理矢理まとめる鋳型みたいなもの)だから、かもしれません。ぬるま湯につ
かってノンビリしている集団にとって、コロコロ変わる奴は目障りなのです。
そして、みんながみんな、だいたい何考えているかわかるから、ぬるま湯も維
持されるという……

一方、自己責任を基本とする個人主義では、そんな甘いこといってられません。
失敗しても、誰も公的資金など投入してくれないのですから(笑)。生き残り
の為には、変わることも必要であり、それ自体はプラスでもマイナスでもない
のです。要は、何のために変わるのかってことでしょう。
結局、マスコミってあまりに無自覚な日本的ぬるま湯共同体主義の典型(長い
ですね、スミマセン)なのだ――そんなことが、この対比から浮かび上がって
くるような気がします。
---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------
>最近、ファンケルに凝ってるんですよ
>はあはあ
>HPからだと、なんと送料無料で配達してくれるのhttp://www.fancl.co.jp/
>げげ、男なのに、化粧にでも目覚めたんですか(笑)
>いえ、サプリメントなんです。例えば、ブルーベリーエキスの「快視サポー
ト」っていうの飲んどくと、校正が楽で楽で。
>校正って字の間違いとか直す奴ね
>そうそう、漢文の校正とか「日」と「曰」とかクイズみたのばっかりで、も
う目を酷使しまくりなんですが、でも、これ飲んどくと結構大丈夫なの
>うーん、なんか話半分に聞いておいた方がいいような話だな〜(笑)
----------------------------------------------------------------------
■広告募集のお知らせ
当メルマガでは広告を募集しています。一回につき購読者数(現在3780人)
×1円×3行以内の予定です。詳しくはメールでお問い合わせ下さい。
=====================================================================
■ 電子メールマガジン「[本]のメルマガ 」(毎月5・15・25日発行)  
■ 発行:[本]のメルマガ発行委員会                                     
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。                    
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで anjienji@mcn.ne.jp                       
■ HPアドレス http://www.aguni.com/hon/  
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。                
■ メールマガジンIDナンバー:0000013315
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。    
=====================================================================

▲トップページへ戻る