2001.8.15.発行 vol.78 [なすびの馬 号]

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■CONTENTS----------------------------------------------------------
★トピックス 

★「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)
→不作と言いつつ51冊も本を買っている著者でありました。

★「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
→関口涼子さんの詩を取り上げます。

★「書店を面白くするためノウハウ」/掩耳(えんじ)
→中国古典から、「書店」の連載に変わりました。

★「本の周りをうろついて・・」/湯川新一
→しばらく休載になりまーす。
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■トピックス
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■白水社さん、秋の復刊
白水社さんが9月に海外小説の復刊をするようです。クロード・シモンやソ
ール・ベロウ、ベケットなど実に魅力的なラインナップです。
『シネロマン』ロジェ・グルニエ 塩瀬 宏訳
『水の鏡』ロジェ・グルニエ 須藤哲生訳
『ファルサロスの戦い』クロード・シモン 菅野昭正訳
『オリエントの星の物語』ミシェル・トゥルニエ 榊原晃三訳
『はまむぎ』レーモン・クノー 滝田文彦訳
『アフリカの印象』レーモン・ルーセル 岡谷公二訳
『マーフィー』サミュエル・ベケット 川口喬一訳
『ワット』サミュエル・ベケット 高橋康也訳
『小さな世界 アカデミック・ロマンス』デイヴィッド・ロッジ 高儀 進訳
『ケンタウロス』ジョン・アップダイク 寺門泰彦・古宮照雄訳
『犠牲者』ソール・ベロウ 大橋吉之輔・後藤昭次訳
『闇の中に横たわりて』ウィリアム・スタイロン 須山静夫訳 
なお、HPではクイズをやっていて正解者のなかから抽籤で本もあたるよう
です。
http://www.hakusuisha.co.jp/0108/topics/quiz.html
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■「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁
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全点報告 この店で買った本
第16回 多読の月、多買ならず

 今回は不作でした。「51冊も買っといて、なんだ」という声が聞こえそう
だけど、冊数のモンダイではありません。毎日のように書店を覗いてはいた
のですが、店内を一回りするだけで、「今日は買わなくてイイや」「他に欲
しい本がないから買わない」と、そのまま出るコトが多かったのです。夏バ
テなのか、本屋でうろうろしているよりも、ウチで本を読んでいたい気分で
した。おかげで、今月は買った本をワリとすぐ読んだし、積ん読だった本も
まとめ読みするしで、えらく「読みが進んだ」のです。つまり、本を買って
いるとそれだけで満足してしまって、読む方にエネルギーが回らないという
こと? イヤなことに気づいてしまった……。

七月五日
◎高岡書店
有間しのぶ『モンキー・パトロール』第2巻、祥伝社、667円+税(以下同じ)
有間しのぶ『ラブミーてんだい!』第1巻、竹書房、619円

七月七日
◎創文堂(本駒込)
中井久夫『治療文化論 精神医学的再構築の試み』岩波現代文庫、900円
柳父章『「ゴッド」は神か上帝か』岩波現代文庫、1100円
◎博山房書店(本駒込)
『唐沢なをきのうらごし劇場』メディアワークス、1400円
ロドリゲス井之介『ふたりの大井川 就職日誌』第1巻、小学館、505円

七月十日
◎ブックマート市ヶ谷
『噂の真相』8月号、448円
『文藝』2001年秋号、952円
【ひとこと】市ヶ谷にできた「文教堂」にはときどき入ってみるのだが、文
庫であってもマンガであっても、この店で買ってみたいな、と思うことがま
ったくない。この大型店の波をかぶって、100メートルほど離れたところにあ
った書店は閉店してしまった。残るは、「ブックマート市ヶ谷」だけだ。
『文藝』は岡崎京子についての別冊と間違えて買ったが、通常号なんですね、
コレ。雑誌っぽいつくりだと、もう売れないというコトなのだろうか。

七月十二日
◎阪急ブックファースト(渋谷店)
花くまゆうさく『野良人リサイクル』青林工藝舎、1300円
『気刊 何の雑誌』第1号、667円
岡崎武志『古本でお散歩』ちくま文庫、780円
実相寺昭雄『怪獣な日々 わたしの円谷英二100年』ちくま文庫、880円
岸本葉子『実用書の食べ方』晶文社、1600円
岸本葉子『恋もいいけど本も好き』講談社、1600円
大月隆寛監修『腐っても「文学」!?』(別冊宝島Real17)、宝島社、1333円
角田光代『これからはあるくのだ』理論社、1400円
『ロック画報』第5号、1700円
『本の雑誌』8月号、505円
『すばる』8月号、838円
『新潮』8月号、857円
『etc.』7・8月号、200円
◎デラシネ・ショップ(オンライン) http://homepage2.nifty.com/derac
ine/
大島幹雄『サーカスと革命 道化師ラザレンコの生涯』平凡社、2330円
神彰『幻談義』佐藤富三郎、700円
【ひとこと】サーカス研究家の大島幹雄氏のサイト「月刊デラシネ通信」で、大島氏の著
作(絶版)と、販売委託されている自費出版本を買う。どちらも書店では買
えない本だし、定価で買えるのもウレシイ。このように著者自身が本を売る
サイトについて、『彷書月刊』(弘隆社)9月号(8月25日発売)の「ぼく
の書サイ徘徊録」で書いているので、ご興味があれば。

七月十八日
◎三茶書房(神保町)
『全国古本屋地図』21世紀版、日本古書通信社、2000円
【ひとこと】ほとんど2年ぶりに出た改訂版。神保町だけみても、ここしば
らくで古本屋の開店・移転の動きが激しいので、この改訂版が出るのを待ち
かねていた。それにしても、なにゆえ「21世紀版」なのだろうか? いった
いイツまで持たすツモリなのか……。

◎東京堂書店
角田光代『地上八階の海』新潮社、1500円
角田光代『恋愛旅人』求竜堂、1400円
クリストファー・ホートリー編『投書狂グレアム・グリーン』晶文社、
3400円
綱島理友『よろず古本 綱島探書堂』実業之日本社、1400円
高田里恵子『文学部をめぐる病い 教養主義・ナチス・旧制高校』松籟社、
2380円
ヴィーリ・ミニマノフ『ロシア・アヴァンギャルドと20世紀の美的革命』
未来社、2400円

吉行淳之介『やわらかい頭 吉行淳之介対談集』講談社文芸文庫、1400円
『サイゾー』8月号、657円
◎書肆アクセス
川崎ゆきお全集6『恐怖!人喰い猫』幻堂出版、1500円
「談」別冊『shinkohin world コーヒー』たばこ総合研究センター、800円
『8ミリ映画制作マニュアル2001』ウェンリサーチ、500円
◎高岡書店
野中英次『魁!! クロマティ高校』第2巻、講談社、390円
野中英次『課長バカ一代 子供用』講談社、390円
島本和彦『吼えろペン』第1巻、小学館、533円

七月十九日
◎ジュンク堂書店(池袋店)
角田光代『愛してるなんていうわけないだろ』中公文庫、552円
【ひとこと】一階入って右側に、店内在庫の検索システムが二台ほど置かれ
ている。検索結果をプリントアウトできるので、それを持って棚を見て回れ
ばよい。今後、各階に入れば、かなり使い勝手があるのではないか。
◎リブロブックセンター(池袋店)
『「近代文学」創刊のころ』深夜叢書社、2000円

七月二十三日
◎ブックセンター荻窪
天藤真推理小説全集16『背が高くて東大出』創元推理文庫、820円
『イカす!雑誌天国』洋泉社ムック、1200円
黒田硫黄『茄子』講談社、524円
【ひとこと】荻窪駅北口で以前から営業している書店だが、数年前に真隣に
ブックオフができたことで話題になった。平日の昼間だったせいか、客の姿
が少なかったけど、新刊コーナーは相変わらず充実している。『イカす!雑
誌天国』は、タイトルがあまりにもヒドイが、最近のムックには珍しく中身
が詰まっていて、その日のウチに読了した。

七月二十四日
◎丸善(御茶の水店)
江戸木純・叶井俊太郎『映画突破伝』洋泉社、1400円

七月二十六日
◎紀伊國屋書店(大手町店)
『Memo男の部屋』9月号、505円
【ひとこと】この店は、大手町唯一の大型書店として、五、六年前にオープ
ンした。ぼくはその頃、この辺の会社にいたので、毎日のように寄ったけど、
場所柄からいって当然なのだが、ビジネス・実用重視の品揃え(他のジャン
ルはやる気ナシ)に辟易したものだ。数年ぶりに覗いたのだが、棚の位置も
含めて、ほとんど変化がないのに驚く。『Memo男の部屋』なんて雑誌を買っ
たのは、この夏、葉山の「海の家」に連れていってくれた、ライターの渡辺
裕之さんが、海の家の建築過程を取材した記事が載ったからだ。

七月二十八日
◎夢幻堂(直販) http://www.joker-web.co.jp/
つげ忠男選集1『狼の伝説』北冬書房、1941円
つげ忠男選集2『昭和御詠歌』北冬書房、1941円
つげ忠男選集3『屑の市』北冬書房、1941円
【ひとこと】漫画家のつげ忠男さんにお会いして、エッセイの原稿をいただ
く。そのときに、つげさんのサイト「つげ忠男劇場」の管理者である「夢幻
堂」の菊池さんから、この三冊を購入した。サイトの「ブックショップ」で
販売されているこれらの本が買いたいと、お会いする前にメールで注文して
おいたのだ。新刊で手に入るが、ココで買うとサイン入りだ。ご本人にお会
いした日に買った本というのは、たぶん、ずっと記憶に残るだろう。些細な
ことなのだけど、帰りの電車で、ちょっといい気分だった。

七月二十九日
◎東武ブックス(日暮里店)
倉田真由美『だめんずうぉーかー』第1巻、扶桑社、857円

七月三十日
◎東京堂書店
五十殿利治『日本のアヴァンギャルド芸術 〈マヴォ〉とその時代』青土社、
2800円
◎書泉ブックマート
つげ忠男『けもの記』ワイズ出版、2331円

今月の購入本 51冊(読んだ本はこのウチ半分。いつもは三分の一以下です)

【お知らせ】前回、大傑作マンガとして紹介した藤本和也『ふらりふらり』
の愛読者にウレシイお知らせです。今まで同人誌などに発表した短編を集め
た『藤本和也作品集1995-2001』
500円(税別)が、8月15日に刊行予定! 詳細は「餅屋ブック」まで。
http://www.mochiya.nu/mb/
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■「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
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交換することと交感すること
    −関口涼子詩集「二つの市場、再び」(書肆山田)

  わたしたちは、伝達だけを主眼とした言葉を喋るだけでは生きていけない。
狭い範囲であっても発話者の予測を超えた、その時限りの独自な反射の手応
え−つまり「話し相手」を得て、発せられた言葉が時空の中で独自な生命を
生きるのを見届けること−を感じることで発話することの豊かさと発話した
自分自身の生の豊かさを確信し、その豊かさを拠り所として次の瞬間の生に
向かうこととなる。携帯電話に向かって途切れることなく喋り続けること、
パソコンの前に座って夢中でメールの返信を打ち続けること、言葉を使うこ
とによって人間は自分が独自な運動体として生きる場を自らの力で切り開い
ていると言うことができるのではないだろうか。
  そして、言葉がその発せられた場と反応し、生命ある運動体として「生き
ていく」様を純粋に取り出して味わおうと考えた詩人がいた。

  詩人関口涼子(1970年生まれ)は、十代で現代詩手帖新人賞を受賞し、そ
の早熟な才能を注目された。第一詩集『カシオペア・ペカ』ではタイポグラ
フィを極限まで追求し、製本の大胆さを含めて読者の度肝を抜いた。大学で
は中世フランス文学を専攻し、アラビア文学にも造詣が深い。現在フランス
で研究活動を行っているが、吉増剛造らの詩を仏訳するなど、詩の交流にも
熱心。第二詩集に『(com)position』、第三詩集に『発光性diapositive』が
ある。そして五月、第四詩集『二つの市場、ふたたび』(2000円)を出版す
る運びとなった(以上、出版元は書肆山田)。

『二つの市場、ふたたび』は散文体の断片をつなぐようにして書かれた、
一種の長編詩の体裁を持っている。北アフリカかどこかに滞在している間の
生活空間や意識を描いているらしい。「らしい」というのは、この作品にお
いては情景や行為について表面的な伝達をするだけの記述が、注意深く避け
られているからだ。

  *

    腕力のあるその手で直に記されたかのような文字の押し寄せる頁、改行
  または句読点のない章、まわりを取り囲む、空間を立ち上げる読書の行為。
 「その時」という接続詞の持つ発音の例外的な強さに、始めるべきではなか
  ったとすぐ気づき青ざめさえしたけれど遅く、それが今ここに市場を作り、
  市場は最初から存在し、そこに最初から私たちは住んでいた。

    歩くことが疲れを生むのだと分かっていてもやめることができない。文字
  の上を踏むと靴の裏にはその跡が薄い層として確実にかさなり、故に足取り
  はどんどん重くなり、KとRのつく、散歩とは到底呼べない、そのような行
  動が散歩として私たちの初期の行動記録には記されている。

   *

  「書く」という行為が言葉が交換される「市場」に置かれ、「読まれる」
という予感と交感していく様が想像されている。その想像の軌跡がほとんど
肉体的な生々しさで語られていくのがスリリングだ。その「書く=読む」の
営みが、異国の空気に包まれ土地に反応して意識を昂ぶらせていく作者の内
部感覚と重ね合わされる。作者の住む町には実際に市場があるのだが、それ
は決して等身大の「実際の市場」としては記述されない。書かれた言葉であ
っても、読まれる可能性を持つことによってそれは常に動的な関係性の中に
あるのだから、決して固定化された静的な「市場」の像など持ってはいけな
い−作者はそんなことを言いたげである。
  読まれる可能性を持つということは、書かれた言葉は未知の読者によって
常に突き動かされる存在であるということ。その、突き動かし突き動かされ
る言葉の像を、関口涼子は忠実に写し取ろうとしているように見える。

  *

    涼しい朝のうちに杏も譲り受け、陽が真上に来る時間帯にはそれを手に
  する男の人の低い声に後ろから唱和しささやかな朗唱の跡では掌の上に接
  吻で薄い膜を作り、夕刻には傍らの彼女の肩の曲線もゆっくりとなぞった。
  羊を呼ぶ声が後ろにいても聞こえるように、幾方向にも向かう性愛、関係
  を一見曖昧にしてしまうような性愛のもたらす結果も、急がされることなく
  ゆったり待ってもらっていた。

  *

  微妙にシンタックスがずらされており、客観的な事物の像の伝達ではなく、
事物に触れ合った意識が生む言葉自身の動的な状態を伝えることに細心の注
意が払われていることがわかる。そして意識が周囲の様々な事物と交感を図
っている際の、快楽に酔うような状態のことを、「幾方向にも向かう性愛」
という言い方で表現したのではないだろうか。言葉は一定の事物を指し示す
ことで役割を終えることなく、複雑な時空と関わり合う自らの存在そのもの
を寿ぐように存在する。言わば、存在して事物と関わり合うこと自体に欲情
しているのだ。

  人が存在するところには言葉もまた存在する。人は互いに交通し合うから、
言葉もまた交通し合う。そして現代では、通信手段・交通手段の発達から、
一人の人間が一日に非常に数多い相手とそれぞれ違った種類の発話をこなさ
ざるを得ない状況に陥っている。数が多い分、言葉はその対象との関わりが
薄くなり発話は「用件」の名で縛られ、言葉自身の自己表現の場ではなくな
ってしまう。交通の過密が、言葉からゆったりとした豊かな交感の側面を奪
ってしまっていると言えるのではないだろうか。関口涼子の詩は、圧倒的な
力の資本が介入する以前の、生き生きした個別のやり取りの場であった「市
場」を模することにより、言葉の自己回復を試みたもの、ということができ
るのではないかと思うので
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■書店を面白くするためノウハウ/掩耳
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1)書店が勝ち残るための前提条件、の巻

中国古典にかわりまして、今回からリアル書店――特に、都市型の五百坪以
上の大型書店に主に当てはまりそうな、書店を面白くするためのノウハウに
ついて、つらつら書いて行きたいと思います。ちなみに、「こうすれば売上
が上がる」「百倍もうかる(笑)」「書店でも巨富が稼げる」といったアニ
メヒーローの必殺技みたいな超強力手段、どんな状況でも任せておけという
ノウハウでは一切ありませんので悪しからずご了承ください。まあ、ちょっ
と気の利いた書店ならほとんどやっていることでもあり、どちらかと言えば
すぐ怪獣に踏み潰されてしまう自衛隊の戦車くらいの威力しかなかったりす
るかもしれませんが(笑)

まず、今回は一番前提となる基本的な条件について考察します。

まず、ノウハウを組みたてる根本条件として、次の3つを考えます。
1)現在の書店の顧客はゼロサム(ある決まった定量の取り合いであり、こ
ちらが増えればライバル店は減る。逆もまた然り)
2)値段では、基本的には差がつけられない。
3)立地条件がまず決定的な差にならざるを得ない。

これらを順に詳しく考えて行きます。
1)書店の顧客はゼロサム
この条件には2つの意味があります。まず、同じ地区内でのライバル店同士
の競合。さらに地区ごと(都内であれば池袋VS新宿VS神保町とか)の顧
客の奪い合い。

まず、ゼロサム状況をを考えなければ理由には、書店出店バブルでの失敗か
らの教訓があります。各書店業界がごく最近まで出店競争に血眼になってい
たとき、書店大型チェーンの社長などがその理由として唱えていたのが、
「新しい顧客を掘り起こす」という夢のようなお題目でした。現状の出版流
通業界を考えるなら、その発言がいかに甘く、後々はた迷惑な結果をもたら
したかがわかります。書店が増え過ぎた為、ある特定数の顧客がさらに細切
れとなり、結局どの書店もボロボロ、その影響もあって出版社や取次ぎもボ
ロボロという状況が生まれてしまった面もあるわけですから……

この意味で、顧客の新規掘り起しなど基本的には不可能、他店からの奪い合
いと助け合いという一見矛盾した行為こそ唯一の生き残る道ということを根
本に据えるべきだと個人的には思います(まあ、現在の不況下ではすでに当
たり前のことなのかもしれませんが)。

また、昨今の特徴として地区ごとの競合が激しさを増しているということが
挙げられます。まず、自店のある地区に人が来てくれなければ商売にならな
い――このため、地区内で団結してまず顧客を引っ張っることが生残りの条
件でもあり、失敗すればみんな一緒に沈没しかねない状況が散見されてもい
ます。

そして、地区内で団結して他地区より顧客を奪ったなら、そこでやって来た
顧客を地区内のライバル店同士で奪い合うわけです。つまり表では仲良く手
を握って地区に顧客を呼び、テーブルの下では蹴り合いをしてその顧客を奪
い合うというとても大人な(笑)二面性を持った戦略が不可欠なのです。こ
れは、その地区の各店が共通認識として持たなければならないでしょう。い
や、地区発展に協力したのにウチの店だけ売上不振だ、どうしてくれるーと
いう情けない発想を禁じるためなんですが(笑)キャッチコピーは「嫌らし
い大人の団結と自助努力」でしょうか(笑)

この前提にも、ゼロサムがあります。顧客が新規に増えない、いや、徐々に
減っているような状況においては、他に魅力的な地区があったり突然にでき
たりした場合、その地区はジリ貧・壊滅的な凋落に見舞われざるを得ない現
実があるわけです。そして、いったんマイナスに転げ落ち始めたものを元に
もどすのは、かなり難しくならざるを得ません。まあ、今であれば、他地区
よりいかにマイナスに転げ落ちる勢いを緩くするか、くらいのもので上出来
なのかもしれないですが……

さらに、各地区がこのような努力を重なることで、もしかしたら業界全体が
面白くなるかもしれない、とも思う――まあ、これは風呂敷広げ過ぎかもし
れませんが、そんなことも考えられます。

ええと、では、次の条件――
2)値段では、基本的には差がつけられない。
3)立地条件がまず決定的な差にならざるを得ない。

秋葉原の電気街などにもよく見られることなんですが、店舗には「立地が悪
ければ悪いほど、値段も安い」という傾向があります。顧客にわざわざ足を
運ばせる動機を、資本主義最大の武器(笑)である安売りに求めるわけです
ね。

でも、本ってこれが基本的にできません。だから同じ規模と品揃えの店が、
例えば駅構内、駅から三分、駅から十五分にあった場合、まず99%駅構
内の店が売上的に圧勝にならざるを得ないわけです。その意味で、最近本の
商売に目覚めた鉄道会社がすっごい良い立地に出店してがっぽり稼ぎ始めて
もいるのは、出るべくして出た傾向なのでしょう。まあ、既存の書店には大
迷惑な話なんですが……。

では、立地が悪かったり、そうでなくても似たようなライバルから顧客を奪
うにはどんな手があるのでしょう??。

まずは、品揃えで個性化を計るという手段。ミステリー専門店とか、コミッ
ク専門店にするとか、関連本を棚に張り巡らす業界用語で言えばリブロ今泉
棚で話題を狙うとか――これは一つの手です。ただし、どちらかと言えば中
型店以下の店に適したノウハウかもしれません。ジャンルを絞った専門店は
規模を大きくしすぎると坪効率を急落させますし(特定のジャンルのアイテ
ム数は物理的限界が小さい)、今泉棚は人材を得なければ維持が難しいから
です(人材が複数いるなら、これも有力な手段なのでしょう)。

他に有力な手段としては、値段以外のもので差をつける、というノウハウが
あります。これは主に出版社との関係によらないと実現できないため、大型
書店ほどやりやすい方法でもあります(出版業界は、結局いまだに力関係と
人間関係でものごとが決まる部分が大きいので)。例をずらずら列挙してみ
ます。
・売れている本が売切れにならず置いてある
・そこでしか手に入らないサイン本がある
・そこでしか手に入らない品切れ・絶版本がある
・面白いフェアをやっている
・そこでしか手に入らない情報がある
・他の書店では置いてなかったり、片隅にしか置いてない、面白い本が大々
的にプッシュされている……

以上のような前提をもとに、次号より今までの経験を元に具体的なノウハウ
に触れてきたいと思います。
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■あとがき
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>先日、はじめてコミケというものに行ってきました。
>へー、同人誌とかを売ってるコミック・マーケットのことですよね。
>そうそう、まあ売る方も買う方も凄い人数だったんですが、岡田斗司夫さ
んを発見してちょっと感動しました(笑)
>さすがオタキングですねー。なんか、コスプレの人とかもいるんでしょ?
>おお、よくぞ聞いてくれました(笑)。会場の外にバルコニーみたいなス
ペースがあってコスプレの人がうろうろしてるんです。で、カメラマンに
「撮影させてください」って声かけられた人は、柵の方にいってポーズとる、
わけです。そういう人がずらーっと並んでいるんですが、結構露出がすごか
ったりする人もいて、もうビックリ。
>うーん、そのシステムって声かけられる人とかけられない人に分かれるん
じゃ……
>たぶんそうみたいですねー。いやはや、コスプレの世界も厳しいのかもし
れませんね(笑)
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