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2001.10.25.発行 vol.85 [ファントム・リム 号]
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■■ [本]のメルマガ 2001.10.25.発行
■■ vol.85
■■ mailmagazine of books [ファントム・リム 号]
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■CONTENTS-----------------------------------------------------------
★トピックス
→新刊情報、イベント情報、新書創刊、アフガニスタン映画など。
★「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
→空虚な中心の周囲を旋回する幻想、そのインペリアルな暴力をめぐって。
★「脱・書店員日記」/aguni(あぐに)
→シャーロック・ホームズをやめて、ワトソンかコロンボになろう。
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■トピックス
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■タイムリーな一冊「現代思想」10月臨時増刊号・総特集:これは戦争か
F・フクヤマ、ウォーラーステイン、デリダ、M・マフマルバブ、チョムスキー
サスキア・サッセン、ジジェク、臼杵陽、岡真理、酒井隆史、小倉利丸など、
国内外から24篇の力作論文とコメントを収録。もちろん池上編集長の編集後記
も見逃せない一冊。青土社刊、税込価格1000円、ISBN4-7917-1080-0
http://www.seidosha.co.jp/
※つづく11月臨時増刊号は満を持しての「現代思想ブックガイド」。権力(杉
田敦)から内部観測(松野考一郎)まで40項目200点を一挙紹介! 詳細予定
は本誌掲示板にて近日続報。 http://www66.tcup.com/6629/anjienji.html
■ル=グイン「ゲド戦記」最新シリーズが9月についに発売
アメリカを代表するファンタジー作家アーシュラ・ル=グイン(1929-)による、
「アースシー物語」つまり日本では「ゲド戦記」(岩波書店・全4巻)として
知られる魔術師物語の傑作シリーズに、最新作が登場した。その名も『他なる
風』。妻テナーと娘テハヌーがレバンネン王のもとへ上京し、一人暮らす年老
いたゲドのもとに、アルダーという魔法使いが訪ねて来る。アルダーはローク
島の「様式の長」からゲドのもとへ行くように奨められたのだ。彼は眠ること
を恐れていた。「夢」を見るからだ。彼の「夢」を足がかりに、境界を越えて
浸入しようとする一群があった。その恐ろしい出来事をアルダーはゲドに告白
し、ゲドはある助言を与えて彼をレバンネン王のもとへ送るのだった……。は
たしてこれが完結篇になるのか、それとも新たなプロローグ? 成長したテハ
ヌーや竜の娘アイリアンの活躍に注目!
"The Other Wind" by Ursula K. Le Guin, September 2001, Harcourt Brace,
256 pages, ISBN: 0151006849, $25.00-
http://www.harcourt.com/
■東京大学フランス語教材「Passages」刊行記念連続講演会
好評の英語教科書シリーズ「ユニヴァース・オヴ・イングリッシュ」に続いて、
東京大学出版会はこのたびフランス語の教科書「パッサージュ」を発売した。
フツウの語学テキストとは一味違う楽しさがある。フランスの歴史、社会、文
化を広く深く原文で読む、というのが趣旨。記念に行われる「駒場発」のイベ
ントは以下の通り。
第一回(講師:三浦信孝氏+工藤庸子氏+野崎歓氏)
日時:2001年11月2日(金)19:00〜21:00
第二回(講師:蓮實重彦氏+管啓次郎氏+工藤庸子氏)
日時:2001年11月9日(金)19:00〜21:00
会場:青山ブックセンター本店 カルチャーサロン青山
お問い合わせ先:電話03-5485-5511(10:00〜22:00)
参加方法:各回要電話予約。定員120名様、入場無料。
http://www.aoyamabc.co.jp/
■『剣の思想』(青土社)刊行記念講演会
「現代思想」誌に連載されていた異色の往復書簡が単行本になった。武術家の
甲野善紀氏と、文学者であり剣術の遣い手でもある前田英樹氏らによる『剣の
思想』である。発売を記念して以下の通り講演会がひらかれる。
トーク&パフォーマンス 「剣の術技と極意」
日時:2001年11月23日(金・祝)15:00〜17:00
会場:青山ブックセンター カルチャーサロン青山
お問い合わせ先:電話03-5485-5511(10:00〜22:00)
参加費:入場料\500-、要電話予約。定員100名様
※青山BCではこのほかに注目サイン会が目白押し!
「HIROMIX のパリ」(朝日出版社)刊行記念・HIROMIXさんサイン会
「碁娘伝」(潮出版社)刊行記念・諸星大二郎氏サイン会
「連戦連敗」(東京大学出版会)刊行記念・安藤忠雄氏講演会 + サイン会
「YUMI TADA BEST@A」(河出書房新社)刊行記念・多田由美サイン会
詳細はHPで→ http://www.aoyamabc.co.jp/
■光文社新書が創刊、更なる新書戦争の嵐が店頭に吹く
仕事盛りの30代をターゲットに、今月(2001年10月)光文社新書が創刊された。
テーマは「ほんとうの知はどこにあるのか?現場にこそある」。ビジネスにせ
よ研究開発にせよ美術にせよ、ブレークスルーはつねに現場から起こる。その
現場にスポットを当てることで、新しい知のありようを探る。啓蒙主義ではな
い、本物の知恵を提示する、21世紀にふさわしい教養書……とのこと。装丁は
香港の国際的デザイナー、アラン・チャン氏が担当。第一弾書目は以下の通り。
「Zカー」片山豊・財部誠一、「本格焼酎を愉しむ」田崎真也、「タリバン」
田中宇、「駅弁大会」京王百貨店駅弁チーム、「チラシで読む日本経済」澤田
求、「東京広尾アロマフレスカの厨房から」原田慎次ほか、「思い通りに家を
造る」林望、「DV─殴らずにはいられない男たち」豊田正義、「ビジネス英語
を速く読む」古藤晃、「怪文書」六角宏。
http://www.books-sanseido.co.jp/promo/koubun_sinsyo.html?MBR_NO=&SESSION=
http://www1.kobunsha.com/book/index.html
■映画「よみがえれカレーズ」緊急上映会決定
約十年間にわたるソ連軍侵攻による苦しみから一転して内戦の危機へ向かう転
換期アフガニスタンの民衆に密着した記録映画「よみがえれカレーズ」が、来
月(2001年11月)にBOX東中野で上映される。同館の緊急特集「War is not
the answer」の一環。この作品は、1988年春から秋にかけて、激しい内戦のさ
なかに生きる人びとの生活を活写する。帰国した難民の群、困難な生活に耐え
る妻たち、黙々と寺院を修復する職人、和解工作を図る元反政府ゲリラ指揮者、
カレーズ(地下水)の水を絶やさないように懸命な作業する農民…。戦火に疲
弊し、平和な暮らしをもとめて生きる人々の姿をカブール、ヘラートなど各地
で撮った作品である。アフガニスタンと日本の合作。
http://www2.ocn.ne.jp/~tutimoto/newpage5.htm#a
日本アフガニスタン合作映画「よみがえれカレーズ」
1989年/16ミリ/カラー/116分
記録社・シグロ作品
監督:土本典昭、熊谷博子、アブドゥル・テイーフ
撮影:高岩仁、一之瀬正史。録音:栗原豊彦
上映館:BOX東中野(東京都中野区東中野4−4−1ポレポレビル地下)
上映期間:2001年11月3日〜11月30日
上映時間:モーニングショー(毎朝10:15開映、12:15終映)
料金:前売り券1200円、当日一般・大・高1400円、中・シニア1000円
問合せ:BOX東中野(代島・芝・阿部)電話03-5389-5571、FAX 03-5389-6779
http://www.mmjp.or.jp/BOX/
※フィルム貸し出しとビデオ販売もあります。英語版あります。
問合せ:シグロ(電話03-5343-3101、FAX03-5343-3102)
東京都中野区中野5−24−6中野第二コーポ210
プリント貸出料 60,000円
ビデオ販売
・個人価格 20,000円
・ライブラリー価格 50,000円
■マフマルバフ監督最新作「カンダハール」上映会
イランを代表する巨匠モフセン・マフマルバフがアフガン問題を真正面から扱い、
カンヌ映画祭で大きな話題を呼んだ最新作が、11月19日、有楽町朝日ホールにて
16:00より開映。「第2回東京フィルメックス/ TOKYO FILMeX 2001」特別招待
作品。http://www.filmex.net/2001/special/index.htm
記念刊行物情報! モフセン・マフマルバフ監督自身によるレポート、公開書簡、
インタビュー等が一冊になって、11月中旬に現代企画室から刊行予定。世界の無
関心がアフガニスタンを苦しめた。バーミヤンの石仏は、世界の無知の前に自ら
の無力を恥じて倒れたのだ、とする表題作は上記で紹介した「現代思想」2001年
10月臨時増刊号・特集:これは戦争か、でも抄訳が読めます。
『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない、恥辱のあまり崩れ落ちたのだ
(仮題)』モフセン・マフマルバフ著、武井みゆき+渡部良子=訳、現代企画室、
価格未定、2001年11月中旬刊行予定。
現代企画室HP http://www.shohyo.co.jp/gendai/
版元ドットコム(メルマガで書籍情報配信) http://www.hanmoto.com/
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■「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
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第24回 ファントム・リムとしてのWTCあるいは不朽の自由
J・G・バラードは1988年、とある短編で、開戦後わずか数分間のうちに終結
する「第三次世界大戦」を描いた(*1)。1995年1月、それは折から続くエネ
ルギー危機、第二次イラン・イラク戦争、ソ連のアジア系共和国の内戦、イス
ラム教と戦闘的フェミニズムとの間で結ばれた不気味な同盟関係などを「背景」
に、米ソ間で「起こる」。しかしマス・メディアはその当時、国民の主たる関
心事であるレーガン大統領(三期目)の病状を、異常なまでにこと細かく、24
時間体制で報道しており、国民の方も、合間あいまにごく短く伝えられる緊急
事態をまるで気にとめない。ついに戦争は米国民のほとんど誰にも注目されな
いまま、あたかも政府高官と軍部だけが当事者であるかのようにして、四分後
に終わる。アラスカと東シベリアにそれぞれ核ミサイルが打ち込まれた事実す
ら、誰も知らない。
*1:「第三次世界大戦秘話」。短編集『ウォー・フィーバー』1992年、福武
書店(改題『第三次世界大戦秘史』1994年、福武文庫)に収録された。
心拍、呼吸、血圧をはじめとする大統領の肉体と精神の機能の詳細は、スコア
化されて、テレビ画面の下部を占領し情報を流しつづける。物語の主人公はイ
ラン・イラク戦争がトルコやアフガニスタンを巻き込まないか、また、ソ連軍
が国境でパキスタンに攻撃を仕掛けたのかどうかをさかんに心配するのだが、
彼の妻は「ロニー」のCTスキャンの結果を気にしているのである。終戦後も
大統領の容体にかんする報道熱は冷めぬまま、国民はますます大統領とシンク
ロするようになる。そして結末では、とある式典で大統領はテロに襲われて死
ぬものの、テレビ画面上の心電図などの医療データは「テロ未遂」のニュース
とともに、なにごともなく復旧するのだ。
ニューヨークの歴史を題材にドキュメンタリーを制作したTVディレクター、
リック・バーンズは、世界貿易センタービルについてこう語った、「あれは私
たちにとって幻肢(phantom limb)なんです。つまり、感じることはできるけ
れど、そこにはない。でも、そこに必ずあるんだと感じるから、気になってし
まう」(*2)。
*2:"A Skyline Is Conspicuous by an Absence" by Peter Marks,
in "The New York Times" October 24. 2001. http://www.nytimes.com/
あるべきものであり、あり続けていくべきもの、常にそこにあって人々に安堵
を与える何か(WTCのように?)。そうした幻想は、あり続けていくべきも
のとしてのアメリカの「自由」に象徴的な根拠を与える。すなわち、《不朽の
自由 enduring freedom》作戦にも。さらに、American Way of Lifeの体現
者としてのブッシュ大統領が語る言葉にも、「(自由、勝利、尊厳ほか、何で
もいい)〜であり続ける」という資格と意義を与える。彼は国内においてはホ
ワイトハウスにいるとは限らず、「どこか」にいる。チェイニー副大統領も
「どこか」にいる。「どこか」にいるが、メディアを通じ「常にそこに」現れ、
ああそこにいて勝利と報復を約束してくれる――と国民に思わせる。大統領は
安堵を与える幻想の中枢として、自らファントム・リム(幻肢)あるいは国民
の幻想の投影でなければならないのだ。
しかしこのファントム・リムはまさに文字通りファントム・リムとして、つま
り「本当にはそこにはないもの」として時代とともに捨象されもする。幻想は
必要だが、それを宿す対象は更新されていくのだ――大統領すらも、である。
ご存知だろうか、2001年10月24日時点では、アマゾン・コムの書籍部門で、
セールス・ランクの見事一位に輝いているのは、ケミカルバイオテロに対処す
るハンドブックでも、ビン・ラディン研究書でもない。しかもその本はまだア
マゾンで発売開始されていない。今月発売予定のそれは、元連邦検察官バーバ
ラ・オルソンによるビル・クリントン大批判の書『最後の日々』である(*3)。
*3:"The Final Days: A Behind the Scenes Look at the Last,
Desperate Abuses of Power by the Clinton White House"
by Barbara Olson, October 2001, Regnery Pub, ISBN:0895261677,
Hardcover, 258 pages, List Price: $27.95, Amazon Price: $19.56
http://www.amazon.com
1999年の前作"Hell to Pay"で、少女時代から現在に至るまでのヒラリー夫人
の「権力志向」を滅茶苦茶にこき下ろして「売れっ子」になった彼女だから、
アメリカ国民も「今度はどんな暴露が」と期待している節があるかもしれない。
その期待が裏切られることはないだろう。『最後の日々』は、ホワイトハウス
におけるクリントンの暴君ぶり、という以上に、悪行を撒き散らす「ならずも
の」ぶりを容赦なく暴露している。セクハラ事件ばかりが彼の問題点ではない
というわけだ。ワシントン的言説の社会学を試みたい読者にはお奨めかもしれ
ないし、オルソンも含めたアメリカの政治地図がどうなっているのかを調べた
い人にとっては参考資料になりうるのかもしれない。が、しかし。
導き出される公理とは、《幻肢はすげ替えられる》ということである。自由に
人々は夢を見て良い。ただし、どうせ見るのなら「同じ」夢を見て、「非国民」
になるのは避けるが良い。中立はありえないし、小学生にだって忠誠を誓わせ
るのだ。ザイーフ大使も自分の息子がムジャヒディンになるのを誇りにしてい
るではないか。……。皮肉はここまでとしよう。繰り返し言えば、アメリカ国
民は自由に夢を見て良い。だが、なぜ「幻肢」と知りながらそこに「無」では
なく「実体」を名指すのか。何もない場所が枢軸となるとき、そこには「空虚
な中心」が発生する。ロラン・バルトは何をそう表現したか。それがアメリカ
ン・ドリームであれ、敵の姿であれ、空虚な中心はその周囲に幻想を旋回させ
る(*4)。インペリアルな暴力が発生するのはまさにそこ、無へと続く偽装さ
れた実体、偽装された自由と正義である。[2001年10月24日]
*4:ジジェクであれば、ラカンに倣って、幻想ではなく「現実」と言うだろ
う。すでに三度書き直されている下記の長文コメントを参照されたい。テロ事
件関連の識者のコメントの中で、もっとも「意地悪」でもっとも鋭い(ゆえに
やっかいな)議論を呈示している。では原文と翻訳を挙げる。
"Welcome To The Desert Of The Real - 10/7/01 - Reflections on WTC
- third version -" by Slavoj Zizek
http://www.lacan.com/reflections.htm
「現実界の砂漠へようこそ!」スラヴォイ・ジジェク著、村山敏勝訳
『現代思想』2001年10月臨時増刊号「特集:これは戦争か」pp.10-24.
※原文には5つの原注が付されているが、村山氏訳では紙幅の都合によるもの
だろう、ほとんどすべてが省略されている。
「現実という砂漠にようこそ(1)」哲学クロニクル210号(2001/10/05)
http://nakayama.org/polylogos/chronique/210.html
「現実という砂漠にようこそ(2)」哲学クロニクル212号(2001/10/08)
http://nakayama.org/polylogos/chronique/212.html
※中山元氏の運営するサイト「ポリロゴス」より毎日配信されているメールマ
ガジンに掲載された、ジジェク論文の最初期(9月14日発表)段階のものの翻訳。
(2)の方は「少し枝葉を刈り落とした訳」とのこと。なお、中山氏によるテ
ロ事件特集サイトは下記へアクセスを。
http://www.nakayama.org/polylogos/chronique/911index.html
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■「脱・書店員日記」/ aguni(あぐに)
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第27回 まず、常識を疑え!――「他人」の話を聴くということ
どちらかといえば私は、他人の話を聞かないほうである。他人の言葉を途中
で遮り、「ああ、それは××ということだね?」と、相手に皆まで言わせない
ことが良くある。おそらくこれは幼少期に読んだシャーロック・ホームズへの
憧れとかがあるのかもしれないが、しかしこれはされた方は決して気持ちの良
いものではない。
最近、ひさびさに実家に帰ったのだが、そのとき、ウェブサイトの使い勝手
などということを考えていて、で、ほとんどインターネット初心者の親にサイ
トを使わせてみた。そこでびっくりしたことは、いかに自分が意図してデザイ
ンしたり予測していたこととは関係のない動きをするのか、ということである。
「これはこう解釈されるだろう」と信じていた言葉やインターフェイスが、も
のの見事に裏切られていく様は少し衝撃的だった。
例えば、書店でよく使われる「フェア」という言葉。彼は本屋好きではある
が、「フェア」の意味するところを知らなかった。「例えば、春になると辞典
をいっぱい積んでいるでしょ?」と説明しても、彼にはその事実=フェアであ
る、という言葉へのつながりはないようだった。彼にとってそれは辞典をいっ
ぱい積んでいる、以外の何者でもなかったのである。
なるほど、と思った。こればかりは出版・書店関係者以外の他人に話を聞か
ないと、なかなかわからないことだ。
ここで重要なのは、「他人と」という部分だ。あるテーマについて、それを
関係者や近しい人間で考えたり話したりするとなると、どうしても共有してい
る情報というものが多すぎる。そこにはおそらく暗黙のうちに「通じてしまっ
ている言葉」や「共有している常識」というものがあるわけで、それを客観化
するためには、何も知らない「他人」といかに話をするか、という方が意味が
ある。
何もこれ、ウェブの使い勝手だけではないと思っている。経営改革・経済改
革・国際秩序・テロ対策。人の気持ちが不安定なときに必要なのは、おそらく
ビジョンを示すことなのだろうとは思うけれども、それ以前に必要なもの。そ
れは他人の言葉にきちんと耳を傾けることであり、それをきちんとビジョンに
つなげていけるような、カウンセリングともコーチングとも言えるような能力
なんだと思う。近頃流行りの経営改革本。『ザ・ゴール』にしても『V字回復
の経営』にしても、まずは関係者のヒヤリングから初めているでしょ?
今年の世界はテロやら戦争やら誘拐やら、どうも「他人の話を聞く」という
ような年でもないようだけれど、2002年はワールドカップやらユーロ通貨統合
やらが予定されていて、これはちょっと他人の話を聞かなくては済まないんで
はないか、と思う。来年のことを言うと今度は聞く前に笑われるかもしれない
が、自分の「常識」を相手に当てはめる前に、まずは話を聞いてみる。こうい
うことが重要になってくると思っているのだけれども、どうだろう?
というわけで私は、そろそろ、憧れるのはシャーロック・ホームズをやめて、
ワトソンかコロンボになろう。と思っているところだ。
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■編集同人備忘録
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先月お伝えしたあとも本誌の掲示板では識者たちによるテロ事件関連のコメン
トへのリンクが増えつづけている。加藤尚武、アムネスティ・インターナショ
ナル、サミュエル・ハンチントン、アンドレ・グリュックスマン、中村哲、ジ
ャック・デリダ、ジョルジョ・アガンベン、マイケル・ハート、ジョージ・カ
フェンティス、養老孟司、緒方貞子、国境なき医師団、ジャック・アタリ、ポ
ール・ヴィリリオ、上祐史浩(!)、ムミア・アブ=ジャマール、スーザン・
ジョージなどであり、むろんまだリンクされていないテクストは多数ある。今
後も皆さんからの情報提供をお願いしたい。なお、本誌HPはリニューアル準
備中。しばらく「凍って」いたが、年内には完了するだろう。 五月
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