2001.11.25.発行 vol.88 [ガイド、ガイド、ベスト 号]

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■■       mailmagazine of books       [ガイド、ガイド、ベスト 号]
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■CONTENTS----------------------------------------------------------- 
★トピックス
→ブックガイド新刊二点、講演会情報など。

★「現代思想の最前線」/五月(ごがつ)
→2001年英米語圏人文社会書ベストセレクション(前編)。

★「脱・書店員日記」/aguni(あぐに)
→統計で世界が見えてくる。シンプルに考えてみよう。
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■トピックス
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■恒例のブックガイド「ことし読む本いちおしガイド2002」発売!

毎年恒例の、好評ブックガイド2001年版が発売された。メタローグの『ことし
読む本一押しガイド2002』がそれだ。ベストセラーから学術書まで、大量のレ
コメンデーションと書評、コラムが満載。今福龍太からみうらじゅんまで49人
が選ぶ、「2001年単行本・文庫本ベスト3」、宮台真司・速水由紀子夫妻によ
る2001年のカルチャーレビュー対談、そして毎度ご苦労様の、文学からアート、
人文、科学まで16分野をフォローした「ベスト216冊」など、あれもこれも読み
たくなる本がいっぱい。こんな本もこの一年で出ていたのか!と感心する。本
体価格1500円。書店店頭でフェアのネタに活用されることの多い「ベスト216
冊」の明細は下記リンクにてご覧になれます。本書の目次明細もチェック!
http://www.metalogue.co.jp/ichioshi2002.html
http://www.metalogue.co.jp/publish/content/ichioshi2002.html

■『現代思想』が初の本格的ブックガイド「現代思想を読む230冊」を発売!

2002年で創刊30周年を迎える青土社の『現代思想』が、11月臨時増刊号でつい
に本格的ブックガイドを完成! 「ポストコロニアリズム」など8項目で構成
されたコーナー「文化とアイデンティティを読む」を皮切りに、「公共性」
「バイオ・ポリティクス」「グローバリゼーション」など8項目から成る「社
会を読む」、「国民国家」や「暴力」など7項目の「国家を読む」、「文学理
論」や「分析哲学」「精神分析」など11項目の「人文科学を読む」、「科学論」
や「アフォーダンス」など9項目から成る「科学と生命を読む」など、中堅か
ら若手の第一線の書き手が勢ぞろいで、一項目あたり3点ずつ、注目書や基本
書をピックアップ。自分の時代感覚をアップデートしたい読者には最適。税込
1200円は安い。http://www.seidosha.co.jp

■アガンベン、ヌスバウムら、初来日講演!

邦訳最新刊『アウシュヴィッツの残りのもの』(月曜社)が好評の、イタリア
を代表する哲学者ジョルジョ・アガンベンと、『クローン、是か非か』(産業
図書)や『国を愛するということ』(人文書院)などの編著者であるギリシア
古典学者で倫理学者のマーサ・ヌスバウム女史が、立命館大学で来月18日に行
われる国際シンポジウムに出席するため、初来日する。聴講無料。創始130年
学園創立100周年国際学術企画および新構想大学院(仮称)設置準備企画と銘
打たれた行事の一環である。基調講演はヌスバウムによる「女性と人間開発」
そしてアガンベンの「内戦と民主主義」。パネルディスカッションには、西谷
修、田崎英明、西成彦の各氏が参加する。詳細は下記リンクにて。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/krc/koen2.htm#label1

なお、アガンベン氏は、21日には東京外国語大学で開かれるシンポジウムにも
参加予定で「現代世界と剥き出しの生」という演目が予定されている。こちら
のシンポジウムの詳細はまだ公開されていない。アガンベン氏の講演は、先の
テロ事件に際してドイツの某新聞にコメントを寄せたものの内容と関連がある
ものと思われる。国家とテロリズムの共犯関係と鋭く指摘した論考の紹介は、
中山元氏の「哲学クロニクル」で閲覧できる。
http://www.nakayama.org/polylogos/chronique/207.html
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■「現代思想の最前線」/ 五月(ごがつ)
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第25回 英米語圏の2001年人文社会書ベストを勝手に選んでみる(前編)

神保町にある、三省堂書店神田本店の四階人文書売り場で、来月(2001年12月)
から一ヶ月間催されるとあるブックフェアがあって、私はここしばらくその準
備をサポートしている。そのブックフェアとは、2001年に刊行された英語圏の
人文社会書からベスト書目を選んで並べるというもので、三省堂書店のスタッ
フの方と相談のうえ、選書を進めた。

「洋書メインでブックフェアをやります」と聞いた時には正直驚いた。美術書
や小説のペーパーバックならまだしも、人文社会書で洋書のフェアをやるとは、
しかもそれを和書のフロアで展開するというのだから、そんな冒険をついぞ耳
にしたことのない私は、まっさきに売上のことが心配になるのとうらはらに、
実現できるとしたら相当面白いだろうという興味から、さっそく担当者と打ち
合わせを始めた。

最初はジュンク堂書店池袋店やリブロ池袋店が展開している現代思想棚のイメー
ジで、和書に洋書の基本書をプラスするという案があったが、基本書のほかに
も未邦訳の新刊にもチャレンジしたいという思いが担当者の胸のうちにあって、
まずはたたき台を作ります、と約束した。

英語圏に限らざるを得なかったのは、もっぱら仕入の事情による。ようするに、
返品可能なものでないと、実際売れるかどうかわからないのだから、仕入は無
理だった。買切で仕入れることになるフランスやドイツ、イタリアその他の書
目は外さざるをえない。しかし英米語はますますグローバルな学術世界におい
て主流となりつつあるし、実際にイキのいい思想家は英語圏にわんさかいるも
のだから、楽しんで選書に取り掛かった。

すると、2001年に刊行されたものだけでも相当数があり、基本書を並べるより
は面白そうな雰囲気になってきた。私にとってはあれもこれも読んでいないと
いう意味で大いに発見があり、驚きと興奮があった。ふだん、仕事と趣味の一
環として、和書をチェックするだけでも大変ななか、それでも洋書をこまめに
発注しているつもりの自分だが、見逃していた洋書がけっこうある。これでは、
喩えて言えば南陀楼綾繁氏並みのタフな買い入れをしないと、とても追いつけ
ない。そんな財力は私にはない(南陀楼氏にやりくりの秘密を教えてもらいた
いよ)。しかしこれが店頭に揃っていたら、正直、一読者としてうれしい。こ
んなチャンスはめったにないだろう。

というわけで、今月と来月の二回にわたって、2001年に刊行された英米語圏の
人文社会書の(勝手な)ベストセレクションをご紹介いたします。

三省堂本店のフェア台に平積みで置けるのは約55点ということで、そのうち七
割を洋書にしたいとの担当者の言。まさにチャレンジャーだ。そこでまず私は
33点の洋書をピックアップしてたたき台として担当者に渡し、即座に担当者は
それらが取次および三省堂の洋書部を通じて入手できるかどうかの確認にかかっ
た。後日、やはりルート上で入手困難な書目があって、英米のオンライン書店
では入手できるものすべてを仕入れるというのは無理だということがわかった。

そこで私は急遽13点を追加でピックアップし、あとはなんとか品数が揃えられ
るよう、書店スタッフや取次のかたがたが奔走されることとなった。期日まで
に届くかどうかが問題だ(テロ事件以来、国際便が全般的に遅配気味のようで
実際大問題だ)が、なんとか予定通り開始できそうである。大げさな表現では
なく、三省堂のスタッフの皆さんと関係者の皆さんに敬意を表したい。

この連載二回分で合計46点の書目を紹介するというのは無理なので、特に目玉
と思われるものをごく一部になるが取り上げる。三省堂書店に足を運べるかた
はぜひ覗いてみて現物を手にとってください。遠隔地のかたのために、ウェブ
上でもリストを見れるように、選書サポーターである私の側で以下の通り準備
しました。http://biblia.hoops.jp/g/index.htm

さて、今回の目玉のひとつはなんと言っても今月(2001年11月)に発売された
(はず)のチョムスキーの新刊「911」だ。その名の通り米国同時多発テロ
事件をうけての緊急出版で、日本でも文藝春秋から近刊予定と聞く。なかなか
品を確保するのがたいへんなようで、店頭に並ぶのは原書が先か邦訳書が先か、
微妙なところだ。私はバーンズ・アンド・ノーブルで予約を入れているのだが、
いまだに届かない。

タイムリーといえば、本号のトピックスに来日が告知されている、高名な倫理
学者マーサ・ヌスバウム女史が今年刊行した本を紹介しておきたい。ギリシア
古典学の大家でもあるこのシカゴ大学教授は今夏に"Upheavals of Thought"
という700頁を越える大著を刊行した。副題にThe Intelligence of Emotions
とある。哲学、心理学、文学、音楽などの様々な分野を参照しつつ、感情と知
のつながりを論じながら、政治的実践において利己と利他の裂け目を架橋し、
他者との係わり合いや価値観を豊かなものにするヒューマンな力としての「情
動論」を倫理学の中核として立ち上げるという、壮大な試みである。

本年は、女史の主著のひとつである"The Fragility of Goodness: Luck and 
Ethics in Greek Tragedy and Philosophy"もアップデートされた改訂版が
刊行されている。こちらも500頁を越えるもので、無視できない大著の新刊の
連発でぐいぐいと押してくる迫力は、近年ではジョン・ロールズ以来の強いイ
ンパクトを感じる。彼女ほどの大家が、論文を除いては一冊も単独著を邦訳さ
れてこなかったというのは不思議なことだ。

いっぽう、シリーズで注目すべきなのは、大手版元ラウトレッジが夏からスター
トさせた"Thinking in Action"である。サイモン・クリッチリーとリチャード・
カーニーの黄金コンビがエディターとして辣腕を振るっている。刊行の言葉の
要旨は以下の通り。

「この〈行動において思考する〉シリーズは、公衆のもとに哲学を連れ戻す一
大新叢書である。本シリーズのそれぞれの書目は国際的に高名な哲学者や思想
家によって書かれ、現代における重要なトピックを取り上げるもので、明晰か
つ読みやすい。本シリーズは、インターネットや宗教や移民難民問題、現代人
の科学観など、広範囲にわたる論点をめぐる議論について報告し、鋭く掘り下
げている。力強く簡潔で刺激的な〈行動において思考する〉シリーズは、現代
人がこんにち直面している主要問題について真摯に考えようとしているすべて
の読者にとって、必要不可欠な出発点である」。

第一弾のラインナップは、"On Cosmopolitanism and Forgiveness" by Jacques 
Derrida, "On Religion" by John D. Caputo, "On Science" by B. K. Ridley, 
"On the Internet" by Hubert L. Dreyfus, "On Belief" by Slavoj Zizek, 
"On Immigration and Refugees" by Michael Dummett"である。ジジェクの
本については浅田彰氏が、そしてドレイファスの方は王寺賢太氏が、それぞれ
「批評空間」ホームページのWEB CRITIQUEでいち早く書評している。
http://www.criticalspace.org/special/index.html

それぞれ装丁も洒落ているし、書き下ろしの力作揃いで内容も充実している。
例外としてデリダの訳書があるのは、クリッチリーとカーニーらしいリスペク
トの表し方である気がする。サイズも値段も手頃で、これならシリーズごと邦
訳を考えている出版社がいるだろうな、と想像していたら争奪戦を繰り広げて
いるひとたちがやっぱりいた。金銭的な競争相手には立候補できない同業者と
してはちょっとやきもちを焼きたいところだ。

なかでもジジェクとドレイファスは早いうちに邦訳が出るかもしれないが、私
としては、カプートの「宗教について」と、ダメットの「移民と難民について」
は一押しで、邦訳する適役がすぐに見つかるといいなと思う。特にダメットと
言えば、フレーゲ研究の大家として著名だが、30年以上前からイギリスとヨー
ロッパにおける移民難民問題に地道に取り組んできており、今回の書き下ろし
によって実にはじめて彼の活動の視野が一冊にまとめられたのだ。どこの版元
が版権を獲得するのであれ、これはいの一番に邦訳出版が望まれる。

今後のこのシリーズの刊行予定もいい。"On the Meaning of Life" by John 
Cottingham, "On Authority" by Paul Ricoeur, "On Film" by Stephen 
Mulhallなどであり、エディターの二人はそれぞれ"On Humour" by Simon 
Critchley, "On Stories" by Richard Kearnyが予告されている。クリッチ
リーがhumourをどう脱構築するのか、これは見ものだ。humourはラテン語の
「湿気」を意味する言葉からきており、古い医学では体液、転じて人の「気質」
を意味し、こんにちでは日本語でユーモアという言葉として知られるように機
知に富んだおかしみやこっけいさを表す。そういえば柄谷行人氏の著書にも、
『ヒューモアとしての唯物論』(講談社学術文庫)というのがあった。

クリッチリーは今年はオックスフォード大学出版の"A Very Short Introduction"
シリーズから"Continental Philosophy"という本を出しており、これもまさに
おいしい一冊で、ヨーロッパ哲学の手際いい見取り図としても、クリッチリー
というデリダ以後のいまや最先端の哲学者を知るうえでも、しかるべき出版社
が早々に邦訳すべき書目である。すでに読んでいる、すぐに訳せるという方は、
私までぜひご連絡ください。(以下、次回に続く)    [2001年11月24日]

○「2001年人文社会系洋書ベストセレクション」ブックフェア
三省堂書店神田本店四階人文書売場にて2001年12月1日から1月15日まで開催!
http://www.books-sanseido.co.jp/120thssd/kanda/kanda_top.html 
[フェアに出品されている洋書の在庫や値段は売場へお問い合わせ願います]
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■「脱・書店員日記」/ aguni(あぐに)
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第28回 数字の論理

久々に、海外の媒体への出稿を仕事としている友人に会い、「やはり中国はす
ごい」という話になった。勉強家だとか英語ができるとか、留学しても自国に
帰ってくる、とかWTO加盟とかいうこと以前に、とりあえず人数が多い、の
がスゴイ。

リクルート業界のヨタ話。
人材不足が叫ばれる現在の日本でも、優秀な人材というのは毎年500人は輩出
されているのだという。その500人をいかに奪い合うか、というのがいわゆる
大企業間での至上命題になっている、というお話。

じゃ、日本の人口が2倍になれば、その数が1000人になるかもしれない。って
ことはさ、中国は日本の10以上、スゴイ人を輩出しているかもしれない、とい
うことになる。こりゃすごいわけだ。日本は、といえば、次第に人の数が減っ
ている。これは未来が不安だね。

もちろん数さえが多ければいい、というもんでもない。後は純粋に確率の問題
だ。少なくとも人口が増えれば労働力は増えるし産業も回って行くわけで、人
口は少ないよりは多い方がいい。「富国強兵」というのはまあ、人口を増やせ
ばなんとかなる、という考え方において、正しかった。

数が多くて、そこに競争の原理が働けば、優秀な人材が誕生もするだろう。
そして優秀な人材が多ければ、それはその会社なり業界なり国家なりが発展も
するだろう。これは別に危険な思想ではないだろう。

昔、出版業界の問題として、魅力ある人材が業界にいなくなることだ、と言っ
たことがある。例えば優秀なクリエイターならゲームにいくだろう。ウェブに
行くだろう。なぜならそっちの方が給料が高いだろうし、そして何より魅力的
に映っているからだ。人数が集まればそこに競争が働くし、優秀な人材が集ま
れば生み出される価値も高くなる。すると給料も高くなるよね。

それはともかく、世の中は数字で見るといたってシンプルになる、ということ
を思うのだ。世界の1/5がイスラム教徒で、さらに増えている、とか、中国
人が10数億の人口を持っているとか、そういう至ってシンプルな数字によって、
世界は説明できる。バブルで予測や推測の数字が嘘であることが証明されて、
世の中はどうもこのシンプルな事実を忘れてしまっているのかもしれないけれ
ど、もちろん解釈には嘘があるかもしれないけれど、数字自体には嘘はない。

数字を見る力、その論理。これを養うことが、今、混沌として見える世界を読
み解くカギになる。
あなたはニュースの背後の数字をちゃんと読んでいますか?

<今回のオススメ>
『やがて中国の崩壊がはじまる』
http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?bibid=02076664
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■編集同人備忘録
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北部同盟がタリバン勢力を制圧したあとも「虐殺」するという悲劇が報じられ
ている。米国の対アフガン政策はこれによっていっそう決定的な失敗が証明さ
れた。PKO法案の改正の可決で、何か事を成したと思っている日本の政治家
は哀れである。彼らをのさばらせている私たち日本国民はもっと哀れだ。米国
の哲学者アルフォンソ・リンギスは『共有するものなき者たちの共同体』(未
邦訳)でこう述べている、「こんにち明らかに私たちは、ますます次のような
確信を深めてはいないだろうか? つまり、いかなる共通した民族的類縁性も、
言語も、宗教も、経済的利害も持たないような人々の死に、まさに私たち自身
が関わりをもっているのではないか、と」。冷静に見て、日本の後方支援は、
リンギスの言うかかわりあいの自覚を根本的に欠いているようである。 五月
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