| 第24回 買うよりも売りたい!−読者が書店員になる日
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2001.5.15.
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こうした動きが出てくることは充分予想していたが、遂に日本のオンライ ン書店でもアソシエイト・プログラムが走り出した。オンライン書店が顧客
の個人や企業のサイトと直接提携し、相互に利益を与えていく仕組みだ。簡単に言うと、顧客のサイトがオンライン書店のサイトや記事や、或いは商品
自体にリンクを貼り、そのリンクを通じてオンライン書店に注文がいくよう にする、代りに顧客は売上に応じた何らかのバックマージンが貰える、とい
うもの。書店側では売上の増大、顧客の囲い込み、知名度の上昇が、客側で はマージンの実利とオンライン書店と提携することによるサイトへのアクセ
ス数の増大が魅力ということになろうか。大手ではアマゾンとbk1が先陣 を切り、やや遅れてbolもスタートした。
ざっと見た感じでは、アマゾンはどちらかと言えば実利的・ビジネス的な 面に、bk1は顧客の囲い込みの面に、それぞれ重点を置いているようだ。
だが、どちらも目指しているのは顧客が顧客を連れてくるという今流行りの 口コミ・マーケティングの確立であろう。インターネットは基本的に口コミ
のメディアだ。大量の情報を一方的に頒布するマスメディアや、一等地に構 えた店舗に大量の商品を揃えて客が詰め掛けるのを待つデパートとは違う。
インターネットの商売は、当たり前だがインターネットを見る習慣のある人 によって支えられている。ネット商売は不特定多数を相手にしているのでは
ないのである。そしてインターネットを見る人たちというのは、当然日頃電 子メールをやり取りに慣れている人たちであり、自前のサイトを既に持って
いるかいずれ持ちたいと思っているかする、情報の「発信の意志」を持つ人たちである。この「発信の意志」を利用したのがアソシイト・プログラムと
いうわけだ。
ここでは読者が店員として嬉々として働く、ということが期待され、事実
実現されている。提携した個人サイトは、いわばオンライン書店の「支店」
ということになるが、各個人は恐らく利益などは度外視して、「自分の店を
持つ」楽しさに夢中になることだろう。
この意味で、一歩進んだモデルを提供しているのがイーエスブックスであ
ろう。ここでは、既にある個人サイトがリンクを貼るというのではなく、顧
客に、イーエスブックス内にある「みんなの書店」コーナーの中で直接自分
独自の「店」を作らせるという方式を取る。各個人が「○○店長」として自
分の好きな本を並べる。自己紹介や読書履歴を書き込むページもあり、「店
長」がどんな人なのかがこれでわかってしまう仕組みになっている。
ぼくの友人はこれを「出会い系サイト」と呼んだが、イーエスブックスは書店員が並べた本を読者が買う、という方向性から脱した商法を考え出した
のだと言える。書籍を中心にして、客同士がたがいの顔を見るため・見ても らうためのストリートをイーエスは提供したわけ。顧客が作った個性的な「
書店」で並べられた本が即、売り上げにつながるかどうかは大きな問題では ない。そうした見た目の効率性よりも、「イーエスブックス」という名の遊べる「ストリート」の必要性を、客に植え付けることに成功したのだ。
こりゃ、全国の書店員も密かにこのストリートに店を構えることで、好きな本を並べる暇のない日頃のうっぷんをはらしただろうなあ。
ところで、これは「今日の芸術」の文章なので、この辺で商売の話はヤメ
にして、表現の方に話題を転換してしまおう。
アソシエイト・プログラムに参加する顧客の数の目もくらむような多さか
ら考えると、「いかに人間というものは表現をしたい存在なのか」がわかっ
てくる。見ているよりはヤリたい、買うよりは売りたい−−これが大衆の本
音なのだ。マス・メディアの一方向的な表現の流通の形式が、いかに大衆を
精神的に抑圧してきたかが、こうしたEビジネスの台頭を見るとわかってく
る。そして、サイト上で詩や小説を発表する若い人たちのものすごい増加の
ことも考え合せると、ビジネスは一部の作家たちを「聖化」し、彼らの書い
た「商品」を崇めさせることだけでなく(これはこれでなくならないだろう)、
大衆に「自分の本」を書かせることも守備範囲に収めるだろう。
各自が各自の欲求に従って表現活動を行う−−このこと自体は、今まで繰り返し書いてきた通り、歓迎されるべきことであろう。
問題は次の段階、各自が「本当に」各自の欲求に従って表現活動を行って
いるか、にある。各自の中に隠された、秘められた部分を「表に現す」こと
が「表現」なのである。自分を認めさせることが表現なのではない。ただ顔
を見知るだけの「出会い系」ではだめで、伝達不能と思われる程の心の中の
微妙な要素が確実に「出会う」ことが大切なのだ。Eビジネスの新しい動き
がただの「出たがり」を増やすだけでは、その将来は暗い。
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