| 第6回 「ネット書店」と「リアル書店」
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1999.11.15.
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過日、図書館でいつものように『新文化』をペラペラめくっていると 流行りのインターネット書店関係の記事の中に「リアル書店」という
言葉があった。
「リアル書店?」
要はインターネット書店を縮めて「ネット書店」と呼び、それに対応したか たちで従来の本がある書店にリアルを付け「リアル書店」と命じ、使ってい
るわけである。
結構、便利なのでしばらく使わせて頂きます。
しかし、この「リアル書店」という言葉は一般化しているのでしょうか?
「ネット書店」のことをちょっと戻って考えると、「革新=異物」という言 葉が適切かと思う。そのツールを持ち、駆使することによって商機ありと判
断し、他産業も続々と参入してくるのだと思う。
従来とは全く違った販売システムを「ネット書店」は従来の「リアル書店」 の市場に持ち込んだ。この「革新」とも言える出来事は模倣活動という小さ
な差異化を繰り返し大衆化へ急進している。
しかし、それは情報量の多さを最大の武器に量的に拡大、拡散しつつあると いう感じがどうしてもしてしまう。
肝心な質=編集の変化も同時平行で行なわれているのだろうか?
「リアル書店」を内包した「ネット書店」は95/12の丸善を機に96/ 4八重洲、96/10紀伊国屋、99/7青山ブックセンター、99/8文
教堂99/9三省堂、、ジュンク堂書店等と一気に立ち上げている。
11月には紀伊国屋書店が数店舗で店頭在庫の開示と店内のどこに あるかを明示する「ハイブリッド ウェブ サービス」を立ち上げた。
ハイブリッド・・・、お客さんもパソコンたたくけど、出版社もたたくんだ ろうな。
入荷と売れ・返品・どこに置くかが全部つながってないとできないはずなの で、大変なことです。しかも完全を要するわけだから。
万引きで持っていかれた本のフォローはどうすんでしょ。入荷データは あるし、どこに置いてあるかのデータはあるけど、本が無いことになるわけ
だから。棚卸も数える必要が無くなって集計だけで「その差」が分かるわけ だから楽と言えば言えるけど、在庫データに基づいて本の有無のチェックは
必要だからなァ。また新刊入荷時に置く場所・棚を決めるんだろうから、既 刊書も含めて担当者レベルでちょっと棚替えってわけにもいかないだろうし
。まだあるけど・・・。結構、がんじがらめかもしれないと勝手に想像して います。
リアルとネットという販売ツールを「混成させない」という考え方もあった はずで、混成したためにリアルの特性が損なわれないことを願うばかりです
。紀伊国屋に知人がいないので「何くだらないこと考えてんだ。全部クリア してるんだよ」と言われそうですけど。
ただ、紀伊国屋は2000年、来世紀のひとつの書店像を明確に提示したわ けですから敬服します。
しっかし、現場は大変だろうなァ。
「リアル書店」は「ネット書店」という照返しの良い異物・ツールをを持っ たのではないだろうか?制度、慣習にからめとられ、取次の販売代行という
位置に甘んじている多くの書店が、<実物がある>ということはどういうこと か、と考えざるを得なくなり、何をどう持つかということに考えが及んでい
くだろう。
「ネット書店」の書誌データベースに相当するのが「リアル書店」の品揃え ・陳列ということになる。
いくつかの「ネット書店」をのぞいて見たり、「リアル書店」に足を運んで みて思うことは、量ではなくやはり編集術か、ということである。
「ネット書店」が誇る情報量だけじゃつまらないし、「リアル書店」の実物 がある、というだけじゃやっぱり楽しめない。
本を紹介・販売する場合には、現在の好みや動きが反映する。
以前は無視されたり軽視されたりした著者や著書でも、現在では
脚光をあびたり再評価されることが多々ある。社会体制・政治思想・政治行 動などを考慮し、店・個人が、ある選択基準を立てて本を紹介・販売してい
くのだと思う。
それは多様であればある程良いと思う。読む方だって問題を立てながら読む わけだから。やっぱり編集=問題の立て方かなぁ。
出版、本の扱いが雑になるということは、やがては言葉の死へとつながって くと考えられる。アレントは著書の中で「言葉が死ぬと、人間から公的領域
というものが消える。公的領域が消えると、生きることの意味が消える、そ の結果、人は単一なものに対する対抗原理を失い、最終的にはある種の全体
主義を呼び起こしてしまう」と書いています。
今の政治情勢をみると、ちょっとひっかかってきますね。
出版、流通、販売、読書という行為は、やはり共同作業でなければならず、 自分を守るという意味でも大いに加担すべき価値のあることだと思う。
年間約6万5000点の新刊が発売されていると聞く。
書店の現場で、いわゆる新刊台で販売される期間はいよいよ短くなりつつあ る。発売から1ヶ月間、新刊台で販売される本は数えるくらいしかないはず
である。多くの本は1ヶ月を待たずに新刊台から外され棚前の平積みに廻る か、棚に1冊残されるか全部返品になるかのいずれかであろう。
書店の現場で新刊台から外された本は、発売から2ヶ月1年5年、それ以前 に発売された本と同等の扱いを受けることになる。
本の持つ〈強度〉を横にらみで現在というフィルターを通し編集・提示する 作業が本格的に重要になり、それを最前線で実行することのできるのが「書
店員」であると思う。
その場では、「リアル書店」の仕事と「ネット書店」のコンテンツの作成の 仕事の差は全く無いと考える。
もちろん、前提として出版社の仕事もその重要性を増す。
「書店」として読者にどのように提示・販売するかという編集術の技・共闘 が出版社、読者を交えて新旧のツールで再意識、実施されることになるのだ
と思う。いや、もう既にはじまっているはずだ。
おしまい。
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