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第9回 「人間、線さえ引けば相当なことができるぜ」その2
2000.02.15.

過日、つけっぱなしで音を消してあるテレビに12〜13才の男の子と少し 年長と思われる男の子が写し出された。「ジハード=聖戦」とテロップが流 れたので、おやっと思い音を出そうとしたが、その画面は終わってしまった。 その間数秒でどんよりした私の目が見たものは2人少年の高揚感に満ちた疑 いのまったく無い澄んでキラキラした目だった。しかし、その少年たちの服 は迷彩服で、その左肩には古びた小銃がごく自然にかけられていた。

2月3日、オーストリアで移民排斥を打ち出し、ナチス容認の発言の多い巧 みな話術の極右・ハイダー党首率いる自由党と保守・国民党の連立政権が発 足した。それに対しEU加盟国は自由党が政権に就くことに圧倒的多数で非 難決議(賛成406票、反対53票、棄権60票)を採択した。
一部の報道では内外の批判が広がるに連れてオーストリア国民の自由党への 支持率が上昇し、51%の国民が連立政権を支持しているとある。
『朝日新聞』2/5付そのオーストリアに対しEU(欧州連合)の14ヶ国 は、それぞれオーストリアとの実質的に外交関係を凍結する外交制裁に踏み 切った。
主な制裁内容は、@閣僚会議などの政治的接触の中止、A各国駐在の大使と の接触を事務レベルに制限、B国際機関のポスト選びでオーストリア人を推 さないなど。『朝日新聞』2/8「ハイダー氏、大統領クレスティルと前首 相クリマを反逆罪で追求へ」
『朝日新聞』2/5付「憎しみを説く人たちでつくられている政府の国に行 くことはできない」とノーベル平和賞作家エリ・ヴィーセル氏ウィーン訪問 を中止。2/8「政治と芸術は切り離せぬ」とハンガリー出身のピアニスト、 アンドラーシュ・シフ氏、右翼参加政権の発足に抗議してワシントン在米オ ーストリア大使館で開かれるコンサートの出演をキャンセルした。
その他、芸術・文化の分野にもその影響は広まりつつある。
『産経新聞』2/5「オーストリア連立政権反対デモ、首都で激化。新政府 批判の記者、解雇」
内外の評価の<差>がはっきりと現れている。国益の対立ではなく、人権感覚 や歴史認識といった深い理念が元になっているようだ。

99年末にはセルビア人抜きのコソボ暫定評議会が成立している。

最近の『朝日新聞』をペラペラめくるだけでも2/8「イスラエル、レバノ ンに大規模空爆・イスラエルが報復」、2/8「人権団体HRWは昨年のN ATOのユーゴスラビア空爆の死亡した民間人は約500人と発表」、 2/7「ロシア軍、チェチェンの首都制圧」、2/4「国連報道官はアフリカ ・シエラレオネで反政府ゲリラに連れ去られ兵士などにされていた6歳〜 12歳の子供37人を救出。昨年7月以降約800人の子供を保護」、2/1 「国連調査委、人権法廷設置を勧告、東ティモール国軍の責任を指摘」、 2/1「イスラエル・シリア和平交渉の前途多難。楽観視一転、早くも中断」 、1/31「北アイルランド再び緊張、武装解除進展せず」、1/28「スペ イン、武装組織バスク祖国と自由・テロ再開」、1/25「キリスト教徒・ イスラム教徒、宗教抗争で死体の山、復讐の連鎖やまず」、1/22「エク アドルで政変、軍と先住民インディオのデモ隊が国会を占拠、新政府の樹立 を宣言」
『産経新聞』2/8「チェチェン大統領、首都奪還へ決意表明、今後はゲリ ラ戦」、2/7「チェチェン攻撃は虐殺とした米国系反戦記者消息不明」、 2/2「EU15ヶ国、中国の人権弾圧非難の決議採決。中国、不当な反中 と反論」、1/20「インドネシア・マルク諸島、宗教抗争周囲に波紋」、 1/19「ウイグル自治区、宗教テロ非難、中国に表明」「インドネシア・ ロンボク島で教会焼き討ち」、1/18「国連のイラク新査察機関、委員長 の人選難航」、1/18「パキスタン・カラチ移民間の派閥抗争、爆発で8 人死亡」、1/15「中国、北朝鮮移民を送還」・・・

1/13「日本・大阪、平和博物館での南京大虐殺ウソ集会、中国が残念と 申し入れ」
(そういえば少なくとも一年半以上前、深夜テレビの映画紹介のコーナーで 南京大虐殺と思われる当時のフィルムを編集した映画の制作発表の模様が 伝えられた。たぶん中国人監督だと思うのだが、彼の憔悴しきった沈鬱な 表情といくつか紹介された悲惨極まりない映像が強く印象に残っている。 監督のその表情と言葉は明らかに「政治」の関与を感じさせるものだった 。両国を明らかに傷つける作品だけに、その困難さは容易に想像できる。 その後、何の報道も無いのでどうなったのであろうか。
現状およびハッカー等々のことを考え、その映画が公開された時のことを 想像するだけで・・・。
私が見たと思っている制作発表は南京大虐殺とは何の関係も無いものだっ たのかもしれない。しかし、どこで行なわれようとも人道に反する罪とい う問題は消えるものではない。)

『産経新聞』2/3「IRA声明、自治停止なら武装続行」、2/3「中国、 チベット仏教カギュー派の最高位活仏カルパマ17世の密出国についてダ ライ・ラマが深く関与していたと指摘」

等々、<この種>の記事は枚挙にいとまがない。

冷戦体制の終結(89年ブッシュ、ゴルバチョフのマルタ会議で冷戦終結 を宣言、91年6、7月コメコンとワルシャワ条約機構を相次いで解散し 冷戦は終結した)後、抑圧や差別を覆い隠してきたイデオロギーのタテマ エが外れるなかで個人や集団の生・自由と自治への要求が解き放たれた。

世界紛争地図『イミダス』より
アジア
南シナ海領海問題、ミンダナオ紛争、東ティモール独立運動、台湾独立問 題と中国、チベット独立運動、新疆紛争、チベット独立運動、カシミール 紛争、パンジャブ紛争、スリランカ民族紛争・・・。

中東
パレスチナ自治交渉、中東紛争、キプロス紛争、クルド問題・・・。

アフリカ
西サハラ紛争、アルジェリア原理運動主義紛争、ソマリア紛争、エチオピ ア・エリトリア紛争、ルワンダ内戦、ブルンジ内戦、コンゴ(旧ザイール) 紛争、スーダン南部問題、アンゴラ内戦・・・。

旧ソ連・東欧
チェチェン紛争、タジキスタン紛争、ナゴルノ・カラバフ紛争、ボスニア ・ヘルツェゴビナ紛争、コソボ問題、マケドニア問題、アフガン内戦・・ ・。

ヨーロッパ・その他
バスク分離運動、ペルー・エクアドル国境紛争、メキシコ先住民問題・・ ・。

一方、過去の清算と今のこの問題をなんとか解きほぐそうとする動きも出 はじめている。

『産経済新聞』2/4「パリ3日:北への沈黙打破を:仏の知識人18人が 新聞に表明」とある。この声明文はフランスの新哲学派の旗手アンドレ・ グリュックスマンや「共産主義黒書」で共産主義の罪を糾弾した歴史家の ステファン・クルトワ、ピエール・リグロ、ジャーナリストのオリビエ・ トッド等18人で、1/27ストックホルムで開催された「ホロコーストに 関する国際フォーラム」に出席の46ヶ国の政府首脳に「ナチの収容所やホ ロコーストの思い出を永久に持続させようというあなた方の会合には全面的 に同意するが、こうした民主国家の首脳が北朝鮮で起きていることには沈黙 しているように見える」と批判し、さらに「北朝鮮は死の恐怖が支配する十 数ヶ所の強制収容所を隠蔽しており、全体主義国家の狂気はこれら収容所の みならず数年来の飢餓によって百〜三百万人の国民をも襲っている。生存者 も食うや食わずの状態である。」「北朝鮮が国家として人道に反する罪を構 成している」と指摘した。その上で民主国家を標榜する世界の政府首脳に対 し「許し難い行為を繰り返さないために、沈黙を破って強制収容所を解放す るためにどんな方策を取るのか世論に公表して欲しい」と訴え、国際社会に 北朝鮮問題を座視しないよう要請した。『朝日新聞』2/3「北朝鮮の改良 型弾道ミサイル・テポドン2号、核搭載可能とCIAが発表」2/3「北朝 鮮副首相、核開発凍結解除を示唆」

『朝日新聞』1/20「ベルギー人道違反法、大量虐殺や戦争犯罪などをベ ルギー国内で裁く<人道違反法>に基づいた提訴が相次いでいる。被害者と容 疑者の国籍を問わずベルギーと無関係な国の市民でも自国の指導者等を訴え られる世界ではじめての法律。」象徴的意味合いが急速に広がりつつある 「国家主権に対する人道の優先」を具現化する試みとして注目されている。

『朝日新聞』1/15「カンボジア内閣は1970年代後半にポル・ポト政 権下で起きた大虐殺を裁く法廷の設置に関する特別法案を一部修正し、閣議 決定した。国連は判事の選任方法、意思決定の手続き、検事の起訴権限など があいまいで、裁判をマヒ状態に陥れる可能性があると指摘した」
『朝日新聞』1/25上の1/15の記事について「妥協の連続、にぶる矛先」

前回の原稿・人口爆発との関わりは、
将来の人口動向は1996年国連推計によると世界人口は2010年に68 億9078万人、2030年に83億7160万人、2050年に93億6 672万人と推測されている。また、その増加の90%以上は現在の開発途 上国にあらわれるとされている。

開発途上国とは国連の定義によれば、日本を除くアジア・アフリカ・ラテン アメリカ、オーストラリア・ニュージーランドを除くオセアニアである。そ の人口は現在世界の80パーセントを占める。1900年には68%であっ たので急増していることがわかる。

上記、紛争地図と重ね合わせると、多くの子供たちがその地域に生を受け、 冒頭に書いたような子供たちに育つ可能性が高いということである。

つづく。

紙面が尽きました。「人間、線さえ引けば相当なことができるぜ」その3で はいくつかの資料をあたり、これら紛争の類型化を書こうと思います。

それでは、また。

文責:湯川新一


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