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2000.6.10.発行 vol.1 [古本漁りなんて 号]
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■ご挨拶-------------------------------------------------------------
今号より、創刊です。よろしくお願いいたします。
編集同人 守屋淳 水谷幹夫
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■「私、この本で徹夜しました」 地場潤一(某誌編集)
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「古書店めぐりは夫婦で」
ローレンス&ナンシー・ゴールドストーン
浅倉久志訳
ハヤカワ文庫 1999
680円+税
あれはクリスマスの頃だったか、土曜の夜、GFと細工町のイタリアンレス
トラン「カルミネ」に行って、そのあと日仏学院の裏あたりの暗い道をウロ
ウロして、飯田橋のほうに降りてきたとき、本屋の「深夜プラス1」がある
のを思い出して、入っていろいろ冷やかしていたら目に留まったのがこの文
庫本だった。だからいまでも「深夜プラス1」のカバーをかけたままなんだ
けど、かけたままなのにはもう一つわけがあって、それは『古書店めぐりは
夫婦で』なんて、ぼくのような独身男がもってると結婚願望があるからそそ
られたんじゃないか、なんて人から勘ぐられそうで恥ずかしいタイトルで、
さらに困ったことにはじっさいそういう面がないとは言えないからなのだ。
そんないきさつで購入したこの本、新刊情報や書評は見た記憶がない。だか
ら発売時にどんな評判をとったかは知らないけれど、アメリカの古本の世界
をかいま見ることができる、とても面白い本なのだ。
訳者あとがきにもあるように、マサチューセッツ州レノックスに住む中年作
家夫婦が、誕生日プレゼントに『戦争と平和』の美本をさがしたのがきっか
けで古本の世界にはまり、地元を皮切りにボストン、シカゴ、ニューヨーク
まで古本屋めぐりをし、ついにオークションにまで参加するというあらすじ
なのだが、とにかく盛り込まれたウンチクがすごい。
著者夫婦はたぶんアメリカのなかでも特殊な、インテリ世界の住人なのだろ
う。ニューイングランドやニューヨークに多い、おもにヨーロッパ(ユダヤ
?)系の、どちらかといえば左派の人々。旦那のローレンスが通ったニュー
・スクール・オヴ・ソーシャル・リサーチは、もろそういう学校だし、この
本の面白さは、そういう「もう一つのアメリカ」を見せてくれるところにも
ある。
本書の原題はUsed and Rare、つまり「使用済・稀覯」。アメリカのイエ
ローページでは本屋の分類でUsed and Rareという項目があるらしく、本
書の冒頭で「セコハン」と「Rare」が峻別される。ぼくはニューヨークに
行ったとき、パティ・スミスやサム・シェパードがバイトしてたことでも有
名な古本屋〈ストランド〉に行ったけれど、本書では〈ストランド〉は「セ
コハン屋」みたいに片づけられている。
古本の世界で人気のある作家(つまり、高値がつく)は、いまでも新本で手
に入るメジャー作家より、忘れられかけている作家、あるいは生前はあまり
評価されなかった作家が多いようだ。まあ当然か。スコット・フィッツジェ
ラルド、ドス・パソス、ラヴクラフト、『ドラキュラ』、『ターザン』ぐら
いまではなるほどなあと思うけれど、ジョセフィン・テイ、ネヴィル・シュ
ートのような、日本では1作ぐらいしか有名でない作家や、はてはB・トレ
イヴンなどという謎のプロレタリア作家まで出てくる。トレイヴンのことを
著者夫婦が知ったいきさつもいかにもで、マンハッタンからバークシャーに
引っ越す前に試験的にバークシャーの一軒家を借りて住んだら、その家の昔
の所有者が共産党員で、左翼系作家の蔵書がいっぱいあったのだ。
登場する古本屋さんたちがこれまたユニーク。著者が作家で翻訳書だという
こともあり、無意識にフィクションのような気持で読んでたんだけど、みん
な実在の人物なのだろう。日本の古本屋さんとはちょっと雰囲気が違って
(偏屈な感じは共通だけど)、ヒッピーくずれのような髭もじゃ+ジーンズ
の中年男や、亡命ユダヤ人のもとジャーナリストで、ナチスの政治家・建築
家アルベルト・シュペーアに会ったことがあるとか、『キャッチ22』のジョ
セフ・ヘラーがまだ売れない頃から注目していて大親友だとか、多士済々。
そして、本書は古本についての豆知識や用語もいろいろ出てくる。まあどう
でもいいような知識だけど、それを言っちゃあ、コレクターの世界はなりた
たないのだ。例えば……
★初版本にも「ファースト・ステート」と「セカンド・ステート」がある
★「ブック・クラブ版」の見分け方
★「アメリカーナ」とは
★「モダン・ファースト」とは
……ほんの一例だけど、あなた、知ってますか?
ところで、こうしたUsed and Rareの世界をかいま見せてくれる本屋さんは
日本にもある。あとがきで訳者の浅倉久志さんが三栄町の雄松堂書店にふれ
ているけど、神保町の洋書屋さん、北沢書店の2階の古書部も、なかなかの
ワンダーランドだ。文学書、フォークロア、言語学、演劇、各国事情などな
ど、お金とスペースがあれば買っちゃうのに!という本がわんさか。
ここの本は、本書に出てくる古本屋と同様に、表紙と見返しの間に紙がはさ
まってて、値段とこまかい保存状態が書いてある。
本書45ページに、19世紀アイルランドの怪奇作家シェリダン・レファニュ
の「緑茶」が入ったリプリント版が7ドル50セントと出てるが、いま北沢
にもレファニュの作品が2冊ある。しかもはるかに貴重なレア本だ。
『In a Glass Darkly』London, Peter Davies版 1929年 3万円
有名な「緑茶」「カーミラ」など5篇収録。初版は19世紀末で、3巻本だ
ったらしいが、これは1929年版でハードカバー、イラストも豊富。
『Uncle Silas』1884年刊 3万円
未邦訳?の長編
だいたい古本漁りなんて偏屈な趣味だもんね。それを『南仏プロヴァンスの
12か月』(訳者あとがきに紹介されている書評が言及している)みたいな
心暖まるお話にしちゃってるところがミソなんだろう。本訳書のカバーデザ
インもそれを意識した感じ。でも日本の古本屋さんめぐりはこうはいかない
よなあ。ぼくのGFはビジュアル系で、古くて汚いものが大嫌いだし……。
なお本書には『Slightly Chipped』(やや傷みあり)というタイトルの続
編(未邦訳)もあるそうだ。
<地場潤一:編集者 年間読書量?冊(1冊全部読了することはまれ) 好
きなジャンル・音楽(最近の収穫はマニュエラで買ったジャン=リュック・
ポンティの『キング・コング』とエッセンシャル・ロジックの『ビート・リ
ズム・ニュース』)>
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■「私、この本で徹夜しました」 畠中理恵子(書店店長)
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「渚と澪と舵−わが愛の航海記」桐島洋子著 文春文庫
桐島洋子を御存じだろうか?
「淋しいアメリカ人」(大宅壮一ノンフィクション賞)
「聡明な女は料理が上手い」といった著書あり。
かの桐島三姉弟、
桐島かれん(モデル=アラーキーの「恋愛」という写真集はキレイ、
歌手=サディスティックミカバンド再結成の時ヴォ−カルもやった、
最近は写真や絵で活躍中)、
桐島ノエル(エッセイスト、翻訳家)、
桐島ロウランド(写真家、江角マキコの元ダンナ)
のお母さま。
元祖「未婚の母」で有名な烈女である。
本書は彼女の30年前のデビュー作、
三人の「小さな相棒達=子供たち」へ贈った
自伝的な作品だ。
「雑誌記者をしながら、
会社(文藝春秋社)に内緒で生んだ渚(かれん)、
クリスマスに船上で産声をあげた澪(ノエル)、
ヴェトナム従軍記者時代に妊った舵(ローリー)。」
三人の生まれた経緯から
一人で産み、一人で育ててきた母の20代の日々を
手紙形式で綴った第一章に始まり、
臨月の身で
ソ連、ヨ−ロッパ、アジアと一人旅を決行、
最後は計画通り
船の上での出産を果たす(船上の医療はタダ)旅行記。
戦場ヴェトナムへの船の旅の様子を描く「グッドウィリ−航海記」。
そして、「ヴェトナム戦線従軍記」。
”no Involeved,no commitment”
無謀で生意気、しかし、
個人として生きることに誠心誠意を尽くす
独りの若い女性の烈しい熱意が伝わってくる。
停滞を嫌い、幼子二人を他人に預け渡米、
もう一人も現地で知り合ったアメリカ人に預け
殆どお金も持たず大陸横断する彼女の旅。
(子供への仕送りをするためあらゆる仕事をこなしもする)
ジャーナリストとして冷静にアメリカを観察する目。
また、大きなお腹でも一日中歩き回り
60年代の旧ソ連や北欧、インドを見つめる目。
その、後には引けない視線で語られる文章は
クールでいながら情熱的で
読み出したらやめられない。
桐島洋子の文と行動は、
走り出したら何処に行くか解らない、
途中では止められない
気がつくと朝になっているような
疾走感があるのだ。
(他の著書「マザーグ−スと三匹の子豚」
「家族になるものこの指とまれ」も
そうである。)
巻末解説は次女ノエルが書き
桐島洋子を
巻き込まれた側の、
娘からの別の視点から捕らえていて
これも興味深かった。
今でも時たま、
無性に彼女の本が読みたくなる。
その独善的で挑戦的な文章、小気味良い人物批評の言い切り。
何よりも彼女の行動的な所が気持ち良い。
ひたすら前へ前へと突っ走ってゆく。
自分が落ち込んで、或いは停滞している気分の時、
桐島洋子のひたすら己を信じ、回りをなぎ倒し?
運命を、幸運を切り開いてゆく、
そしてそのかかえる孤独。
そんな姿を読むと
何だか今が、
うだうだするのが馬鹿らしく思えてくる。
彼女のかっこよさに肖りたくなってくる。
自分と正反対だから
よけい惹かれるのかも知れない。
超スピードで家事をこなし
たくさんの人たちと洗練された会話をし
恋に生活に人生にと
強気に楽しむ。
そんなガッツ私にはない。
それでも
深夜ガス台を磨きながら、私は
何故か満ち足りた気分になるのだ。
これって逃げ?
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「百日紅 上 下」杉浦日向子著 ちくま文庫
「もう、漫画は描きません。時代考証家としてやっていきます。」
と断筆宣言?した杉浦日向子。
「もったいない!」と思わずにはいられない。
江戸という時代の独特な匂い、時間の流れ、風俗を
彼女の漫画ほど見事に描ける人はいないのでは、と思う。
本書は江戸浮世絵の異端の絵師、
葛飾北斎に材をとり
同じく絵師であり、
「アゴ」と呼ぶアイソなし、20をとっくに過ぎた
行かず後家の娘お栄(杉浦日向子の分身?)と
女好き、酒好きの愛敬者の弟子池田善次郎(後の渓斎英泉)を中心に
市井の人々を描いた80年代の作品だ。
北斎といえば
生涯描きまくり、好奇心の固まり、
変わったこと、人を吃驚させることやりまくり。
とんでもないジイさんである。といわれている…。
とんでもジイさんは杉浦日向子の大得意。
同じご町内に住むごとく
本書でも奇人北斎のおとぼけ、したたか、
絵を描くことへの生臭いまでの執着を
飄々と描く。
番町にさらされた女の生首、
「走屍」のホトケ、
夜明けに首から魂が抜け浮遊する花魁。
ゲテモノ好きの北斎は
あっちこっちへ絵の題材を求めに行く。
時には河獺まで彼に絵を描いてもらいに訪ねてくる。
(人間界のみに棲んでいるわけではないのだ。)
また、雪の日、女弟子葛飾北明とスッポンを食べる様など
ひたすら色っぽく、そして毒がある。
お栄の描いた地獄絵が現実に現れるの話、
天狗の子を拾う話と
出てくる出てくる…。
読み出したら止まらない。
寝せてくれない面白さだ。
タイトル「百日紅」は江戸の歌人加賀千代女の
散れば咲き 散れば咲きして 百日紅
から、とのこと。
百日の間、ただただ咲き乱れる百日紅の花。
北斎の、
お栄の、
善次郎の、生が
咲き乱れる。
やっぱり、杉浦日尚子には
漫画を描いて、描いて、描いて、
咲き乱れてほしいなあ。
<畠中理恵子 書肆アクセス店長 年間読書量60冊 好きなジャンル
日文>
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■コンテンツの紹介
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当メルマガは、月3回(10日、20日、月末)の発行です。
10日号)
「私、この本で徹夜しました」
上記のタイトルで、本好きの出版業界人の方々2〜3名に執筆して頂きます。
執筆者は毎月代わります。
20日号)
「暗記しちゃうほど、読み返した本」
上記のタイトルで、10日号と同じ著者が執筆いたします。
月末号)
連載執筆者の書評
・石飛徳樹(朝日新聞名古屋本社学芸部記者 39歳 年間読書量100冊
好きなジャンル・文学)
・ミラクル福田(某人文系大手出版社編集 30歳 年間読書量100冊
弱 好きなジャンル 文芸・芸能)
・守屋淳(フリー 34歳 年間読書量100冊 好きなジャンル 古典)
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■あとがき
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>初手から大ボケしちゃいました(TT)
>はあはあ?
>月末号の執筆者、ミラクル福田さんなのに、パラダイスにしちゃって・・
あああ、ごめんなさーいぃぃぃぃ
>いきなり人の名前間違えちゃいけませんね。しかし、このボケぶりと対話
調、他のメルマガで見たような気が・・・
>ああ、それは言わないで(笑)
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