2000.7.10.発行 vol.4  [三大奇書とか 号]

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■「私、この本で徹夜しました」田崎洋幸
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『虚無への供物』 中井英夫著

書物というか作者にというか、その出会いは摩訶不思議なことが多い。
どのような経緯でこの本を読んだのか、まったく記憶がない。
が、とにかく一気に読み通したことは事実。今回お題目を与えられ、徹夜し
てまで読んだ本の記憶を呼び戻そうとしたが、意外にないことに気が付く。
つまり、夢中になって読むということが実際あまりない。
さて、この本を読んだことがある人は、「あー、いわゆる推理小説ね」と言
うことと思う。しかしそれは、中井英夫という小説家(詩人)を理解してい
ない。
中井英夫と本作については、講談社文庫版の年譜&出口裕弘氏の解説にお任
せするとして(いかにも出口さんらしい解説)、今は亡き天才作家(そう思
ってます)の魅力をなんとか伝えたいなー。
中井英夫のキーワードは「人外」。これだけでも充分怪しいのだが、その怪
しさがこの人と作品の魅力。登場人物像(名前も)、挿入される逸話、意外
な展開と、導入部分から引き込まれる卓越した筆さばきとプロット…。
幻想小説というジャンルがある。残念ながらその定義はわからないが、イメ
ージとしては理解できる。この本は推理小説ではなく(ミステリーでもな
く)、やはり幻想小説(ファンタジーでもない)だと思う。これから読んで
みようと思う人がいるなら、それを前提に読んだほうが絶対いい。
それから、中井英夫という作家(著作)の魅力は、他の著作を読むことで、
いっそう倍加される。ちなみに、本作+『とらんぷ譚』(短編集)できっと、
中井英夫ワールドにはまってしまう。
今回再読して不思議に思ったのは、実は決して読みやすい小説ではなかった
ということ。当時(15年位前)はなぜか、あっという間に読んでしまった。
ヒマ+体力があったのかな。それとも『ドグラ・マグラ』、『黒死館殺人事
件』、『久生十蘭全集』を読破し、その勢いがあったからかな。
あ、思い出したような気がする。誰かが、『ドグラ・マグラ』、『黒死館殺
人事件』と『虚無への供物』は三大奇書とか言っていたような…。それで読
んでみようと思ったんだ。
それから、本作は文庫で読めるのでぜひどうぞ。講談社文庫は初版が1974
年(完全にロングセラー)。文庫版全集が東京創元社から刊行中です。
(田崎洋幸 36歳 みずず書房営業次長にして、その容姿は“業界のショー
ケン”とも言われる。しかも、独身!! これは逃す手はないですぜ、そこ
のおぜうさん) 
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■お知らせ
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■ノーマ・フィールド氏講演会+サイン会
こちらも青山ブックセンター本店のイヴェント。『祖母のくに』(みす
ず書房、大島かおり訳、本体2,000円)刊行記念。講演テーマは「個人
に注目すること、政治が必要とするもの」。前著『天皇の逝く国で』
(みすず書房)も必読。みすず書房のURLは、http:www.msz.co.jp/
日時:2000年7月14日(金)19:00〜20:30 
会場:青山ブックセンター本店 カルチャーサロン青山 
お問い合わせ・申込先は、03-5485-5513 
要電話予約。入場無料、定員120名。
青山ブックセンターのURL
http://www.aoyamabc.co.jp/
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■「私、この本で徹夜しました」美野貴美
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このところ、雑誌では“韓国特集”が大はやりである。「title」、「流行通
信」、「Mutts」
…どれをとっても「ガイドブックにない韓国」「誰も知らないソウル」の大
合唱。

確かに、ここ数年で日本人旅行者は本当に増えた。
2泊3日、「安近短」のニーズにぴったりの韓国は、買物によし、
食べるによし、遊ぶによし。日本語だって案外通じるし、全然大丈夫じゃん?
ガイドブックに載ってる情報なんて、大体知ってんだからさ、
もっとディープなやつ、ないの? 人とやっぱ違うとこ行きたいし。
こんな要望にお応えしての特集なのだろう。

だが、「ガイドブックにない韓国」「誰も知らないソウル」の前提は、
「誰でも知っている韓国/ソウル」だ。

本当にあなたは韓国を知っているか? 
韓国の何を知っているのか? 

韓国の俳優、ベ・ヨンジュン(Yahoo!で検索すれば、
彼の圧倒的にステキな笑顔に出会えるはず)に「感電」して以来、
ハングンマル(韓国語)に親しみ、
ハングンヨリ(韓国料理)の一つも作り、
ソウルや韓国と名がつけば片っ端から読み漁っている私の経験から、
“徹夜した本たち”をご紹介。
きっと、あなたも韓国を歩いてみたくなる。

・ソウルの達人[完全版]/黒田福美&レッドペッパーズ/三五館
 
  黒田福美は、俳優。韓国バレーボール界のスター選手に
 「感電」するという小さなきっかけから韓国に関心を持つようになり、
 10数年で何と60回以上韓国に行っているという。

 『ソウルの達人』は、そんな黒田が、好奇心のおもむくままに、自分の
  足で歩き、食べ、見てきた体験を存分に詰め込んだ本。

  まずは、ソウルの街と黒田の興奮が重なり合った、
 説得力のあるガイドブックと  して大いに利用してほしい。
 
 ただ、この本には単なるガイドブックに終わらせない、
  黒田の韓国へのまなざしが垣間見える。
 もっとそのまなざしの意味を知りたくなった人は、
 『ソウルマイハート』(講談社文庫)をどうぞ。

  ちなみに、この本の袖に書いてあるハングルの意味は、
 「この本を持っている人は、  本当にいい人です。よろしくお願いしま
すね」。

・物語ソウル/荒木経惟・中上健次/PARCO出版
 
  以前何かの本で『物語ソウル』の存在を知り、
 どうしても読みたくなってほうぼうの書店や古書店を探した。
 
 しかし、熱望しているものであればあるほど手に入らない
  もので、『物語ソウル』は長らくわたしにとって「幻の本」だった。

  ところが、先日クワァンジュ(光州)の骨董市で
 わたしたちに声を掛けてこられたおじさんが、
 「日本語の本が置いてある本屋があるよ」といって、
 春秋書林という本屋に連れていってくれた。
 
 そして、『物語ソウル』は、あっけなくわたしのものになったのである。

   『物語ソウル』は、荒木の写真と中上の小説が
   交互に立ち現われる構成になっていて、
   読む者に写真と小説が交錯する感覚を起こさせる。

  この小説の舞台であるヨンドンポ(永登浦)は、
  くねくねした路地、密集したあばら家、小さな工場が家と混在する、カ
オスの街。
 
   そして、シジャン(市場、南大門市場だろうか?)の喧燥と諍い、
   キムポ(金浦)の荒涼もまた、『物語ソウル』の街である。

   カンペ(やくざ)の頭領・チャンギルとその女をめぐるこの小説からは、
   ある「韓国」が強烈ににおい立つ。

   このにおいは、何だ?

   この本を、わたしはクワァンジュ(光州)からソウルに向かう
   セマウル号のなかで読み始めたが、ソウル駅の直前に停まった駅は、
   そう、「ヨンドンポ」であった。
   しばし、目の前の風景と、『物語ソウル』の世界がクロスする幸運に
   恵まれたこともあって、この本は忘れがたい一冊となっている。

読後の幸福や充実や衝撃にただただ満たされたままなので詳しくはご紹介で
きないが、この2冊も挙げておきたい。

・われらが<他者>なる韓国/四方田犬彦/平凡社ライブラリー
 
  もともとは、PARCO出版(もしかして韓国に関係する本が一定程度
  出ていた時期があるのか)から出ていたものを、若干文章を差し替えて再
刊。
 
 「ソウル東大門のボエティウス」、「タルチュムからマダン劇へ」、
 そして「朴大統領が殺された日」。韓国映画についてのエッセイ群、
 さらに晩年の金素雲のこと。

 四方田さんの呼吸のリズムと手ざわりをざらりと感じる本。

・由煕 ナビ・タリョン/李良枝(イ・ヤンジ)/講談社文芸文庫

 充実感、というのはこういう小説を読んだ時にぴったりする言葉なのか、
 と実感させてくれた一冊。
 今はこれ以上書けない…
(美野貴美 出版社勤務 韓国渡航歴5回)
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■あとがき
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>今回は、お薦めのビデオを一つ
>はあはあ
>前にNHKの深夜でやってた「アリーマイラブ」ってやつなんですが
>なんですか、それ、恋愛ドラマ?
>うーん、アメリカの弁護士事務所を舞台とした、恋愛+社会問題+お笑い
+人間ドラマ+ちょっとアダルトなんですが
>ハチャ滅茶ですね(笑)
>そう、基本はお笑いに近いんだけど、よくぞここまで色んなこと詰めこん
だという脚本の冴えが凄いこと凄いこと。弁護士社会や陪審員制の滑稽さ、
歪みなんかが描かれてるかと思えば、シュールなお笑いあるは、そうそうダ
ンシング・ベイビーも元はと言えばここが発祥なんです。主人公のストレス
がある閾値を過ぎちゃうと見えちゃうという設定で。
>ヘー、そうなんですか。そういえば、コロンボ(懐かしい!)にしろ、ア
メリカのドラマはレヴェル高いですからねー。いいかもしれないですね。
>TVでやってたころ、僕はこれを見るためだけに夜更かししてましたもん。
レンタルになってるので、お暇なときにどうぞ。
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