2000.7.20.発行 vol.5  [抜き差しならない 号]

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■「暗記しちゃうほど、読み返した本」 田崎洋幸
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『大衆の反逆』 オルテガ著

初めて読んだのは学生時代(かなり昔)。実はゼミのテキストでした。
読後の感想は、「保守反動」。なに言ってるんだこの人は。というのが素直
な印象。
その後ゼミで討論が始まり、血気盛んな若者達は総じて同じ意見でスター
ト。
最初からもう一度読み返すという作業と、先生の解説が始まり、徐々に印象
が変わりはじめるのだが…。
まず、オルテガという人の生い立ちが「保守反動」。いわゆる貴族なんです
ね。当時、民主主義というものが台頭してきて(システムとして)、それに
対する反動(正統)的意見の代表者と思われていた。ところが、彼が言いた
かったことはそうではなく、「バカな大衆に任せてはおけない」ということ。
ここでいうバカな大衆とは、「盲目的に何かに向かって突き進む輩」という
こと。
ある社会的なシステムは良しに付け悪しきに付け、一つの権威や権力によっ
て維持されている。そのシステムはピラミッド構造であり、それぞれに位置
する人々の意識の問題でもある。頂点に立つ人は、そのような自覚と意識で
行動すべきである。というのが、オルテガの意見。
確かにこれは保守反動と思われがち。文脈から読みとればそうなる。
しかし、オルテガが言いたかったことは、「道徳見地に立った自主判断に
徹しろ」ということ。つまり、自らの判断は正しいのか否か、自らの行動は
正しいのか否か、を常に自問すること。これは全ての人間に必要なことであ
り、位の上下は関係ない。
ピラミッドの構造上、下部に位置する人々(大衆)のエネルギー(数)が強
大となる。ゆえに大衆の個々が、道徳的に自らの行動を的確に判断すること。
それこそが、よりよい社会を形成することになり、上部に位置する人は、そ
の徳を持って行動すべし、となる。
よく考えると、これって民主的思考なんですね、実は。
現代でも、大衆と思われる人々(もちろん私もその一人)が、自らの社会的
な位置づけを自覚しているのか、行動に責任を持っているのかということを
問われ続けているように思う。
結局、圧倒的多数の大衆がどのように考え、行動するかによって、民主的な
社会の形成は任されているということなんですね。
そう言えば、フロムも『自由からの逃走』で同じようなことを言ってるし、
ブルームの『アメリカン・マインドの終焉』、ベラーの『心の習慣』もそう。
無節操な言動は、自らの自由を放棄することでもあるということ。
責任を持って行動しているかと言われると、正直辛いんですけどね。
<白水社、筑摩書房(文庫)など>
(田崎洋幸 37歳 みずず書房営業次長にして、その容姿は“業界のショー
ケン”とも言われる。しかも、独身!! これは逃す手はないですぜ、そこ
のおぜうさん)
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■「暗記しちゃうほど、読み返した本」 美野貴美
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何度も読みかえす本には、わたしの憧れがつまっている。

『グリとグラ』といえば、おひさま色のパンケーキ。
ふわふわして、きいろくて、あったかくて。
どんな味なんだろう、と読むたびにわくわくしていた。
そして、グリとグラがパンケーキを焼いて食べるまでを、
小さなわたしは飽きることなく、眺めつづけた。

わたしの抜き差しならない食いしんぼうぶりは、すでに
この頃から発揮されていた、というわけだ。

中学生で、女の子なら一度はハマる「コバルト文庫」に
見事に引っかかる。

最も愛読したのは「丘の上のミッキ−」シリーズ。
中学生になりたての頃に、このシリーズがスタートしたので、
なんだか主人公のみくちゃんと一緒に成長した気がしている。

ばりばりの箱入りお嬢様・みくちゃんと、香道の次期お家元
にして、完璧な美少年・アケミくんとの恋のゆくえ、そして
友情と成長の物語。思えば、女子高に行ってしまったのは、
この本のせいかもしれない…
「おかみき」は、まさしく「女の子のバイブル」だった!

ここで、わたしが小学生のときに出会い、いまでも読み
かえしている「本のなかの本」をご紹介したいと思う。

『ドリトル先生 アフリカゆき』にはじまる、
「ドリトル先生」シリーズ
(ヒュー・ロフティング/井伏鱒二訳/岩波書店)である。

ハラハラドキドキのストーリー、登場人物+動物の魅力、
シンプルな文体、訳のうまさ――わたしは井伏鱒二の名前を
このシリーズで知った――、さし絵のかわいらしさ。
これほどに、読む人の気持ちを浮き立たせ、想像力を
かきたてる本があるだろうか。

オウムのポリネシアに動物語を習って、自由に動物語を
あやつれるようになったドリトル先生。
動物の気持ちが分かる、やさしいドリトル先生を慕って、
町じゅう、いや、近隣中の動物たちが、
先生に診てもらおうと押しかける。

おりしも、サルのチーチーの故郷・アフリカでは、
疫病が蔓延したくさんのサルたちが苦しんでいた。
先生とその「家族」の動物たちは、サルを助けるために、
遠くアフリカへ出発する――つづきは読んでのお楽しみ。

わたしの持っている「ドリトル先生」シリーズは、カバーのない
岩波少年文庫。巻ごとに違う色で刷られていて、ロフティング
自身がかいたさし絵があしらわれたものである。

この6月に新装版の刊行がはじまり、「ドリトル先生」シリーズも
全13冊揃う予定になっている。このシリーズを読んで、
かつてのわたしのように夢中になる子どもがいればいいな。

この本は、空想することをわたしに教えてくれた。
そして、読むことの楽しさをはじめて味わせてくれた。

ドリトル先生は、ずっとわたしのそばにいる。
(美野貴美 出版社勤務 韓国渡航歴5回)
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■コンテンツの紹介
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当メルマガは、月3回(10日、20日、月末)の発行です。

10日号)
「私、この本で徹夜しました」
上記のタイトルで、本好きの出版業界人の方々2〜3名に執筆して頂きます。
執筆者は毎月代わります。

20日号)
「暗記しちゃうほど、読み返した本」
上記のタイトルで、10日号と同じ著者が執筆いたします。

月末号)
連載執筆者の書評
・石飛徳樹(朝日新聞名古屋本社学芸部記者 39歳 年間読書量100冊 
好きなジャンル・文学)
・ミラクル福田(某人文系大手出版社編集 30歳 年間読書量100冊
弱 好きなジャンル 文芸・芸能)      
・守屋淳(フリー 34歳 年間読書量100冊 好きなジャンル 古典)
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■あとがき
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>出版界のちょっと嫌な話をひとつ
>はあはあ
>今度、名古屋に超大型書店が出るんだけど、立地的にそこのライバルにあたる
書店チェーンが、出版社に対して、そこの書店に本を出さないように圧力かけた
んだって
>ひぇー、やくざですか??
>複数の出版社から情報をいただいたんですが、もちろん、そんな圧力には屈し
ない断ったところも多いようですが・・・
>いけませんねー。だいたい悪事は一兆八千億里を走っちゃうのがこの業界なん
だから、やめときゃ良いのにね・・
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