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2000.10.10.発行 vol.13 [鉱脈を当てた状態 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2000.10.10.発行
■■ vol.13
■■ mailmagazine of book reviews [鉱脈を当てた状態 号]
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■「私、この本で徹夜しました」朝日山
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「変体少女文字の研究」山根一眞 講談社
今や、「メタルカラー」ですっかりメジャーになられました山根のおっちゃ
ん。電子文房具のおじさんが大出世。メタルカラー以後に彼を知った人には、
ただインタビューしているだけで食えている運のいいおっさんに見えている
かもしれません。ところがどっこい、なかなか苦労人なんですよ。
彼の名は、それより7年近く前から一部で大いに話題になり、期待もされて
いました。ただ、努力と経費の投入量ほど収益が上がらなくて、なかなか食
えなかったみたいですね。いつかは化けるだろうとは一部の人は思ってたん
です。そんな期待を抱かせるきっかけとなったのが、これです。
変体少女文字とは、いわゆる「丸文字」のことです。丸文字が有名になって
きた1980年代前半。当時、「近ごろの女学生は〜」と皆がいつものフレーズ
を並べてテキトーな事をほざいていたとき、若き山根青年は、「なぜ、こん
な文字が出てきたのだろう」と疑問に思いました。「識者」の発言でも、何
も調べずに言うことなんか、近くの飲んだくれのおっさんの言うことと同じ、
テキトーなものだと見抜いてたんですね。
彼は、まず当時流布していた「マンガのせいだ」などといった世間のテキト
ーな魔女狩り的言説を状況証拠から否定したうえで、丸文字が何時から発生
してきたのか、まず発生時期を突き止めようと、まるでアンモナイトを掘る
古生物学者みたいな、それでいて、きわめてまじめな方法で調査を開始しま
す。そして訪ねてきた女性が書き込む自由ノートが何十年間分残されている
京都の古寺、直指庵や、伊丹空港近くのラブホテル、マキシム(ああ、懐か
しい……ウソ)などの記録から、発生時期を昭和四十九年と確定します。
ここからが本番。山根青年は、発生時期、普及時期に何があったのか、様々
な角度から調べ始めます。丸文字で書かれた内容が、同じ価値観を持った者
に向けての公開を前提とした字体であることから始まる膨大な状況証拠調べ。
少女のいる学校・企業の調査、ファンシー文具やメディアでのナール書体の
出現……。中でも圧巻は、シャープペンシルと横書きの普及に触れたところ
で、ここまでくるともう、気分はほとんど「プロテスタンティズムの倫理と
資本主義の精神」。優れたノンフィクションや論文は、傑作スリラーに勝る
とも劣らないスリリングなものだと思い知らされます。
本の造りも「この闇と光」に負けないアバンギャルドなもの。半透明の紙な
のかビニールなのかよくわからん、丸文字柄の服が印刷されているカバーに
うっすらと見える少女人形のシルエット。カバーを外すと「少女」がハダカ
になるという懲りよう。メルマガに画像が載せられないのが残念。人によっ
てはスケベだと思うかもしれないが、モノを読んだら、そんな考えは吹き飛
ぶこと請け合い。当時の講談社の力の入れようもたいしたもんだ。これぞ、
王者の風格というものでしょう。
今は、変体少女文字は下火になり、「長体ヘタ字」だったかな?そんなのが
若い人に書かれているようです。山根のおっちやん、出番だよーと言っても、
もうやらんだろうなぁ……。
今の山根のおっちゃんは、ノンフィクションライターとして鉱脈を当てた状
態。ライターという商売がどれほど割が合わないか、ライターを職業にした
ことはないけど、アルバイト程度ならそこそこやった朝日山にはよくわかっ
てます。この本、当時の定価は千円。話題にはなったが百万部も売れたわけ
じゃありません。山根流の膨大なマンパワーを駆使するやり方では、それく
らい売れないと採算がとれないでしょう。
今の膨大なインタビューをこなす仕事もけっしてラクじゃないはず。専門家
相手のインタビューは、芸能人相手とは違うからね。でも個人的には、メタ
ルカラーに資料的価値は置いても、わくわくする感激はもうなくなりました。
かつてのような力技をまた見せて欲しいのですが、それを言える市場環境じ
ゃない。大新聞の幹部が「いい本が売れない」と言ってもせせら笑う朝日山
でも、山根一眞が言うなら頷かざるを得ません。
メタルカラーが売れなくなるのをひそかに望む。ああっ、朝日山って嫌な奴
だ!
(朝日山)
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■「私、この本で徹夜しました」ウインダム茴香(ういきょう)
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――佐野真一さんが出す予定の、出版界の内情を抉った本で、あたしゃ徹夜
する予定ザンす――
その昔、本のメルマガで五月氏が入院したとき、ピンチヒッターを頼まれた
ウインダムでーす。え、全然知らない? 覚えてない? そうですかシクシ
ク。
今回、ウインダムが取り上げるのは、日本を代表するノンフィクション作家
・佐野真一さんの、これから出る予定の新刊。その題材が、なんと出版界に
出版不況。一応、プレジデントという雑誌で連載していたのがベースで、大
幅に加筆とかしてるみたい。『巨怪伝』とか『旅する巨人』とかで、ノンフ
ィクションの真髄みたいな本出した人だけに、期待できますよこれは。え、
それにしてもこれから出す本なのに、なぜそれが徹夜本だってわかるかって
・・
実は不肖ウインダム、業界関係者ということで取材受けたのですよ。二時間
くらい話をさせて頂いたんだけど、その中で、佐野さん、こんなことを言っ
ていた。「いろいろ取材しているんだけど、書店、取次ぎ、出版ともに隔靴
掻痒というか、何かを誤魔化してる気がするんだな・・」
す、するどい。みんな自分のせいで出版界悪くなったとは言わないもんね。
そして、ズバっとこうきた。
「今の出版不況のは、結局、出版社と取次ぎと、書店どこが一番悪いんだ」
唸った末にこんな風に答えた。
「小悪党が書店で、黒幕の悪党が取り次ぎじゃないでしょうか・・」
(実はうろ覚えの会話)
つまり、こういうこと。バブル崩壊のあと、取次ぎがものすごい条件(支払
いが十年後なんていうのもあったという噂も)で、書店の出店を煽った。そ
して、馬鹿な書店チェーンがそれにのって書店出店競争が過熱。でも読者の
数が急激に増えるわけもなく、出店しすぎた書店チェーンはどんどんジリ貧
になった。
そこで始まったのが、大返品という奴。出版社も、書店の増加にともなって
ホイホイ新刊増やしたり、常備出したり、注文品入れたりとかしてたから、
返品できるモノはたくさんあって、もう怒涛の勢い。しかも、返品してもそ
れ以上に売上が悪くなったら、必殺の取次ぎに金払わない攻撃(笑)。で、
取次ぎも自分が煽っちゃったもんだから、強く言えないし、潰せもしない状
態・・
考えてもみてくださいな、書店の数が15年前のレベルだったとしたら、今
の出版界って全然不況じゃないかもしれないんだから・・
ちょっと余談になっちゃったんだけど、そんなどうしようもない構図を佐野
さん、しっかり取材してるんだから、これは面白くならないわけはない、徹
夜必至なのはわかってるってことなんだ。
でも、出版界どうしようもないとかいう話よんで、面白さに徹夜しちゃうの
も、なんだかなあ、という感じだね
(ウインダム茴香 出版関係者 年間読書数 300冊 好きなジャンル
新書・ノンフィクション)
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■あとがき
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>今回、発行が遅れました。ス、スイマセン・・
>どうしたんですか?
>いや、日にちを一日間違えてました(TT)
>馬鹿ですねー
>まあ、半失業者みたいなもので日にちの感覚がなくなってるんで、お、お
許しを・・
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