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2000.10.20.発行 vol.14 [二十世紀最大のカリスマ 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2000.10.20.発行
■■ vol.14
■■ mailmagazine of book reviews [二十世紀最大のカリスマ 号]
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■「暗記しちゃうほど、読み返した本」朝日山
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「幸福論」バートランド・ラッセル 岩波書店
最近、「カリスマ」が流行っているそうな。カリスマという言葉を朝日山が
知ったのは、20年ほど前、森村誠一の推理小説「カリスマの宴」を読んだ
時でありました。ま、それはいいんだけど、最近のカリスマって、言ってみ
れば各業界の名物男、あるいは女のことですわね。
高貴な血筋にべらぼうに優秀な頭脳、抜群の行動力に百歳近くまで現役を続
けた体力。科学者として優秀な業績をたくさん残したと思ったら反戦運動で
投獄され、ノーベル賞をもらったかと思えば、いつのまにか二大超大国に噛
みついている。
アインシュタインが、彼を理解できるだけ我々は知性を高めなければならな
いと評価する一方、宗教や道徳を破壊する背徳漢と大衆から非難される……
なんて人はそういません。
そんなわけで二十世紀のミスターカリスマといえば、この男、バートランド
・ラッセルを朝日山はいち押しに挙げます。「幸福論」は、今から七十年前、
ラッセル58歳の時に若者のために論じた、幸福な生き方のマニュアル本です。
「幸福論」の原題は"The Conquest of Happiness" 直訳すれば、「幸福の獲
得」といったところでしょうか。幸福とは、たなぼたで落ちてくるのではな
く、自ら獲得するものだという彼の考え方から来ています。
この本の出版の前年は、ウォール街の株価が大暴落した年です。出版時は、
世界中に社会不安が蔓延していた時期と言えるでしょう。ラッセルの序文や、
ラッセルに関して書いてある本では、ラッセルが若者に向けて、不幸の実相
を分析し、ラッセル自身が確かめた不幸から逃れる方法を伝授するために書
かれたとあります。実際その通りだと思いますが、朝日山には、それだけが
目的だったとは思えません。ラッセルは、若者に救いの手を差し伸べようと
するだけではなく、自らも救われようとして書いたように思えるのです。
理由は、この頃のラッセルが、何回めかの不幸のどん底時代にあったからで
す。この本の執筆時、ラッセルが理想的な教育を行おうとして始めたビーコ
ン・ヒル・スクールが開学3年目に当ります。学校の運営がうまくゆかず、
ドーラ夫人とのいさかいも絶えなかったであろうこの時期。3歳で孤児にな
った彼が最も大切にしたかったものが壊れかかっていたのです。この本の中
に書いてある幸福になるためのノウハウは、確かにラッセルがやってみて、
確かめたことでしょう。彼は、本を書いていく過程で、それを思い出し、こ
れまでと同じく、これからも自らの力で自分の人生を歩んでいくんだと決意
を新たにしている……そんな気がするのです。
さて、内容はというと……乱暴に要約すれば、彼はまず興味や熱意を外に向
けることを説きます。何にでも興味を持ち、その対象に熱意をもって取り組
めば、よほど外部の状態が悪くないかぎり、たいてい幸福は得られる。そし
て、間違った価値観や因習などに捕らわれないようになれば、不幸を避ける
ことができる。
朝日山が、特に気合いを入れて読むところはあちこちにちりばめてある「逃
げるな」のメッセージです。もっとも「逃げるな」と直接書いてあるわけで
はありません。
一つだけ引用します。
「非常に多くの場合、必要以上のためらいや臆病さは、かえって事態を悪化
させ、困難をいっそう増大させるものである。世間というものは、無関心な
人よりも、世間を恐れている人の方に、より暴虐になるものである」
ローラ・シュレッシンガーほど、きつくはないが、もともと大学の受験問題
に選ばれるほど品格の高い文章を書く人です。じっくりと読んでいると、じ
わーと彼のもつ優しさや強さが滲み出てくる。これがいいのです。英語で読
める人は、原書で読んだほうがもっと身に染みるでしょう。
(ローラ・シュレッシンガーは、アメリカのラジオパーソナリティ。深刻な
相談を持ちかけてくるリスナーを、甘ったれるなと叱りとばすことで有名。
彼女の本で『モラル・ヘルス』が二年前講談社から出たが、あっという間に
絶版……)
「人生論」とか、「幸福論」のタイトルは、古今東西、多くの人が書いてい
ます。そして、多くの人が人生の指針として何度も読み返しています。朝日
山にもそんなところがあって、十八年前に買った、当時は講談社から出てい
たこいつを機会あるごとに読み返しています。機会があるということは、す
なわち、あんまり幸福でないと自分が感じるときでありまして、正直なとこ
ろ読んだところで幸福になれるわけなんかありまへん(笑)。
この手のタイトルの本を読み返す人の大部分も、同じようなものなんじゃな
いでしょうか。それでもみんなが手を伸ばすのはなぜか?ノウハウよりも行
間から滲み出てくる著者の生き方に共感し、癒され、今の苦境に耐えて頑張
ろうと思えるようになれるからではないでしょうか。もちろん人によって生
き方は多種多様でしょうし、実際どれがいいかなんて読者の価値観によって
しか決められないものだと思います。
そんなわけで、もし今の段階で、何か別の人の生き方本を座右に置いている
方には、この駄文は何の役にも立たないような気がします。ですが、そんな
本を持っていないとおっしゃる方。どうせなら、二十世紀最大のカリスマの
本を人生の伴侶にするのも悪くないと思いますよ。
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「決断の条件」会田雄次 新潮社
会田雄次といえば、「アーロン収容所」で颯爽と文壇?に登場した、ルネサ
ンス史が専門のセンセ。晩年はパワーが落ちてきて読むに堪えなかったが、
昭和五十年代から六十年の始めの頃に書かれた本は、朝日山、熱心に読んで
おりました。彼のエリート指向のリーダー像は今も輝きを失っているとは思
いませんけど、内容が時事を素材していたことが多かったのが災いして、ほ
ぼ全てが絶版になっています。今は君主論や韓非子など、古典の言葉に会田
流の解説をつけた、この本くらいしか残っていません。ただ、エッセンスは
全てこの本に集約されていると言ってもよく、新潮選書に長年並んでいるの
も頷ける本です。
「私たちは、殆ど決断や選択という能力を持たないのではないかと思うほど
『優柔不断』な国民である」とある前書き冒頭。彼が言う「決断」や「選択」
とは、もちろんド素人が一円でも安くパソコンを買おうとアキバを執念深く
巡回することでも、暴力亭主との同居に疲れ切って子供を連れて着の身着の
まま家出することでもありません。冷静な現状把握と判断ができる。言い換
えれば、ド素人がアキバうろつくくらいなら、PC廃人にコンサルタントフ
ィーを払って買ってきてもらったほうが安くつく。家出する前に、亭主の財
産をかっさらうと同時に身の隠し場所を確保し、弁護士に離婚手続を依頼し
てから家を出るなんてことができない人間が多いと言っているのです。こう
した現状把握や判断ができる人間に増えてもらいたい。そんな人たちに日本
のかじ取りをやって欲しいというのが、会田センセの悲願でした。
全部で30の先賢の言葉が並び、解説がついています。いずれも相当えげつ
ない言葉に見え、冗談じゃないと憤慨する人にこそ読んでもらいたいので、
ちょうとだけ紹介。解説は、朝日山です(×☆\舗
まず第1の言葉
「民衆を真の味方にできるのは権力者だけだ」
君主論の原文を簡単にした言葉。95年以前、パソコンがビジネスに役に立
つと、導入の稟議書を懸命に回したあなた。みんなに嫌がられ、文章になっ
ていない下手くそな書類の清書をさせられ、センスがないので何度教えても
同じ事を聞いてくるアホに我慢強く付き合っても全然感謝されず、ブームに
なってから社長が使うと言い出したら今までがウソのように社内の雰囲気が
変わりませんでしたか?今も便利屋させられてる?なぜだと思います?あん
たに権力がないからよ。民衆は正義や合理性では動かないのよーん。いくら
努力しても認められないから、さっさと無料ボランティアなんてやめなはれ。
第16「忠義な使者は大切にするな」
六韜の原文を簡単にした言葉。最近北朝鮮の高官が米航空会社に「まるで犯
罪者(ならずものだったっけ?)を扱うような」扱いを受けたと怒って帰っ
てしまった事件がありましたね。ここで、「協議が先送りになった」とか、
「大人げない態度だ」とか、考えるようではダメだということ。ひょっとし
たら、アメリカはこの高官が一筋縄ではいかない優秀な奴だと見て、最初か
ら追い返すつもりだったのかもしれない。優秀な外交官にはお引き取り願っ
て、クズが出てきたらおおいに歓待して、こちらとしてはどうでもいいよう
な成果でも持たせて返せば、金正日は人を見る目を曇らせてこっちの思った
通りに操作できるようになるかもしれない……なんてことを考えて、わざと
嫌ーーーらしくボディーチェックをやらせたんじゃないか。もしそうなら、
アメリカは公式発表以外に何か企んでいる。北朝鮮を早く瓦解させたいのか、
それとも対中国の防波堤をもう一つ欲しがっているのか……なんとことを最
初に考えなきゃ外交とは言えないのよーん。
なんてのが満載!
残念ながら、会田センセの悲願は達成されるどころか、ますます遠ざかって
います。もともと会田センセはぼっちゃん育ちであるにもかかわらず学徒出
陣で戦場に放り出され、生存率二、三パーセント(要するに玉砕戦だ)なん
ていう環境の中で生き残り、収容所でついさっきまで理想だと思っていたヨ
ーロッパ的ヒューマニズムの欺瞞を嫌というほど見せつけられた人です。そ
んな人が、全共闘などの「理想」や「たたかい」が子供の遊技に見えたのも
無理からぬこと。そのせいか、かつてゲバ棒振り回していた人の評判はあん
まり良くないようです。そして今の日本は、そんな人たちがこれからトップ
になろうとしている時代なのです。
中には、見どころのある方もいます。例を挙げれば「金融腐食列島 呪縛」
のモデルになった「第一勧銀の四人組」には、全共闘、安保闘争時に大学に
いた人が2人います(活動家だったかどうかは知らない)。が、こんなのは
例外中の例外で、今は我が身かわいさにアメリカ追従のリストラに励み、か
つての同志は切っても自分だけは助かろうとする「元活動家」が少なくない
のです。
本当の「命懸け」が何たるか、知ろうとしないで自分たちが命を懸けたと自
慢する上司に使われては、若い世代が嫌になるのも当たり前。だからこの本
を読めと新社会人に勧めると、彼らは驚天動地の気分を味わって、間違いな
く感謝されます(笑)。上のバカさ加減に腹が煮えくり返る気分で働いている
中堅以下の社員諸君が、おそらくこれからこの本の売れ行きを支えていくは
ずです。
だから新潮社さん、今は細々としか売れなくとも、絶対に絶版にしないよう
に頼みます。
そいでから、この本を読んでもっと決断の条件について知りたければ、マキ
ャベリの君主論ほか、引用されている書籍を読んで下さい。
(朝日山 百姓 36歳 年間読書量50冊 好きなジャンル 特になし)
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■「暗記しちゃうほど、読み返した本」ウインダム茴香(ういきょう)
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『音楽』1,2,3巻 吉田秀和 朝日文庫
「評論家」の栄光とジレンマを体現した、吉田秀和が好きだ。
吉田秀和。小林秀雄、大岡昇平、中原中也の友人にして、現代最高の音楽・
美術評論家。
朝日新聞に、あたりさわりのない文章を書いてたりするが、それはもちろん
仮の姿に過ぎない。
いや、そのあたりさわりのなさこそが「極めてしまったもの」のジレンマを
体現しているのかもしれない。
吉田秀和は、特に音楽の分野において、考えうる限り最高の権威を持ってい
る。それは、最大限の栄光と、そしてジレンマを本人にもたらすようになっ
たとも見える。
それは、「貶せない」ということだ。これを本の世界に例えてみよう。吉田
秀和が書評を担当し、「この本は面白くない」と書いたとしよう。
すると、その本の著者は、作家生命を絶たれてしまう可能性すらある――そ
れほどの権威を吉田秀和は持ってしまっているのだ。
これを栄光とジレンマと言わずして、なんというのだろう。だから、現在、
吉田秀和の文章は、ある意味生ぬるさを感じさせる面もある。しかしそれは
ある究極の姿がそうさせているのだ。
そもそも「評論家」とは何か――。
ある自分なりの基準(他の演奏や絵、作品、すでに定まった権威との比較が
当然基盤になったりする)に従って、見たモノ聴いたモノをぶった斬り、序
列をつけたり、ある文脈の中に置いてあげることができれば、それが評論家
なのかもしれない。いや、それで済ませてしまうような評論家が多いのかも
しれない。
吉田秀和は根本的に違う。例えば、ある演奏を評論しようとする場合、まず、
自分が今まで聴いたその演奏を忘れるべく努力して、しかる後に聴くのだ、
とインタビューで語っていたことがあるのだ。
ある定まった権威との比較を否定したところから始める評論――それは想像
を絶する苦難の道に違いない。しかし、吉田秀和は、それをいとも簡単そう
に、しかも現代きっての名文で書いて見せる。
もちろん、そのためには、評論する自分という主体の枠を、常に広げる努力
をしなければならない。
評論が、ある決まりきった基準を根拠に(しかも、この基準は評論家本人の
中に一度設定されると、なかなか更新されなくなってしまう)裁断する――
二流以下の評論家によく見られる、この権威的、評価の上げ下げ商売とは正
反対の位置にこそ、吉田秀和の評論はある。
正直、凄いと思う。
評論や、書評といったものに手を染めるなら、こうでありたいと思う。
(ウインダム茴香 出版関係 年間読書量300冊 好きなジャンル 新書)
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■あとがき
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>えー、「アリーマイラブ」なんですが
>ああ、前に薦めてたビデオですね
>いま、TVで(NHK)新作のパート3が始まってまーす
>ほうほう
>実は、月末号の筆者の方が全員、「アリー」にはまった模様なんです。
>へーそうなんですか!?
>しかも、某懇意にさせて頂いてる出版社の社長もはまったという情報が・・
>ほほう、そりゃ凄い。本当に面白いんですね・・
>というわけで、ぜひ見てねーん(笑)
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