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2003.12.15.発行 vol.144 [三十六歳の子ども 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2003.12.15 発行
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■ vol.144
■■ mailmagazine of book reviews [三十六歳の子ども 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
→本をめぐる情報+アルファの雑談です。なんか結構ネタが残ってました。
★読書日記2003「神保町で本を読む」竹内啓
→本好きが集まるコーヒー店で働く、やっぱり本好きの若者の日記です。
★「大阪豆ごほん」福島杏子
→北堀江のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「新刊書店の奥の院」荒木幸葉
→売り場を飛び回りながら拾ったネタを大公開。婦人誌新年号がアツイぜ。
★「渡辺洋が選ぶこの一冊」
→ノーベル文学賞を受賞した南アの作家J.M. クッツェーを紹介します。
★「全著快読 古山高麗雄を読む」荻原魚雷
→昨年亡くなった芥川賞作家の残した約50冊を丹念に読んでいきます。
★「今月ハマったアート本」平林享子
★「もっと知りたい異文化の本」内澤旬子
→残念ながら2本とも休載です。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。
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■南陀楼綾繁のホンのメド おかわり
前号で載せ切れなかった情報を落穂ひろいしておきます
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★都筑道夫さんが亡くなる
ミステリ作家の都筑道夫さんが、11月27日に亡くなっていたと、12月13
日付の新聞に載ってました。74歳。「ハワイ・ホノルル市内の病院で」とあり
ます(たしかお子さんか誰かが住んでいたハズ)。自伝『推理作家が出来るま
で』(フリースタイル)が出たり、光文社文庫からコレクションが刊行中だっ
たりと、最近その魅力に触れるチャンスが増えていただけに残念です。
都筑道夫といえば、長編・短篇・ショートショートなどを網羅した角川文庫
で多くの作品を読みました。イマでもあの版(イラストは山藤章二)にいちば
ん思い入れがあるなあ。じつは、3年ほど前に、フリースタイルの吉田さんの
お誘いで、片岡義男さん、平野甲賀さん、日下三蔵さんとともに、都筑さんと
食事をしたことがあります。ぼくは一ファンというだけで、末席で緊張してロ
クに口も聞けませんでしたが。あのとき、お兄さんの正岡容(いるる)さんに
ついて聞けなかったコトが、いまとなっては惜しまれます。
★稲生典太郎さんも亡くなる
「日本古書通信」で知ったのですが、日本近代史研究者の稲生典太郎さんが
11月24日に、87歳で亡くなっていました。稲生さんは近代史の資料集をいく
つも編纂した方で、『暖かい本』(沖積舎)という古本に関するエッセイ集も
あります。ぼくはこの本を読んで、『季刊・本とコンピュータ』の第一期・14号
(2000年秋号)のアンケート「増えつづける本、手立てはあるか?」の執筆
をお願いした。
「私なんかでいいのかなあ」と云いつつも、「天井に達せんばかりの段ボール
の箱の柱は、すでに五十本を越える」などと、現役の書痴である様子をおもし
ろく書いてくださった。それにしても、このアンケートに答えてくれた方で、
千野栄一さん、徳永康元さんがこの数年に亡くなっているコトを思うと、淋し
い気持ちになった。
★中川五郎はスゴかった
今週はライブづいていて、高円寺「円盤」のオフノートVSオズディスク「デ
ュオ一週間」シリーズは、最終回にも行ってきた。中村よお+桂牧のデュオで
は、フォークギターとエレキギターの不思議なハーモニーが聴けました。桂さ
んは来年1月に初のソロアルバムをオフノートから出すそうです(この日はオ
ズディスク側だったけど)。
次の中川五郎には度肝を抜かれました。以前に江古田で数曲歌うのを聴いて
ますが、そのときとは段違いにヨカッタ。54歳であの歌、あのアクション!
ピョンピョンはねて、床のビール瓶を倒してたし。
ラストの「三十歳の子ども」は、いい年して身分も収入不安定のすべての世
代の「子ども」のテーマソングじゃないだろうか。五十四歳の子どもが歌うこ
の歌を聴いて、三十六歳の子どもであるぼくは、そう思った。あとで中川さん
にお聞きしたら、それが入っているアルバムはいまはCDで出ていないそうだ。
聴きたいなぁ。
イマイアキノブ(ギター)、松村孝之(パーカッション)、そしてHONZI(バ
イオリン)というメンバーも、中川の歌を最大限に引き出していた。イマイ・
松村は渡辺勝のエミグランドにも参加、HONZIはフィッシュマンズのサポー
トで知られています(最近は早川義夫もHONZIがお気に入りだと、同行した
石井章さんから聞きました)。このメンバーでレコーディングされた新作が、
来年春にはオフノートから登場するそうです。
それにしても、ここ2年ほどのぼくの音楽生活は、完全にオフノートという
レーベルを中心に回っているなあ。事務所が葛飾区金町にあるというのも、ご
近所なので親しみがもてる。いずれ、どこかでオフノート社主のインタビュー
というのをやってみたい。どっかの雑誌(ミニコミでもいい)でやらせてもら
えないかな?
「中川五郎ウェブサイト」
http://www.goronakagawa.com/
★名張市立図書館から『江戸川乱歩著書目録』刊行
乱歩の出身地である三重県の名張市立図書館がコツコツと刊行してきた「江
戸川乱歩リファレンスブック」の第三弾、『江戸川乱歩著書目録』が知らないウ
チに出ていた。ぼくは1冊目『乱歩文献データブック』は買い逃した(品切れ)
が、2冊目の『江戸川乱歩執筆年譜』は持っている。内容の正確さはいうまで
もなく、地方の公共機関の出版物というイメージとはまったく違うセンスのい
い装丁、二色刷りの本文などに驚いた。
コレを企画し、ほとんど独力で進めてきたのが嘱託の中相作さん。彼のサイ
ト「名張人外境」には今回の本の「驚きの七大特長」が載っているので、以下
に引用させてもらおう。
一 ● 江戸川乱歩の生誕地にして深刻な財政硬直化に直面する三重県名張市
が乱歩を愛するすべての人のために血税を注ぎ込みました。
二 ● 前二巻にひきつづいて平井隆太郎先生のご監修と全面的なご協力をた
まわり、巻頭には新保博久さんの書き下ろしエッセイ「池袋十二年」
を頂戴いたしました。
三 ● 同じく前二巻にひきつづき、戸田勝久さんの美麗な装幀で書籍本体、
函、扉、見返しを飾っていただきました。
四 ● 『心理試験』が探偵小説ファンを瞠目させた1925年から『貼雑年譜』
完全復刻版が乱歩ファンを驚喜させた2001年まで、77年のあいだに
刊行された乱歩の著書1424点のデータを一巻にまとめました。
五 ● 記載データはまあこんなようなものですが、巻末には狂気と妄執が凝
り固まったかのごとき索引を附してリファレンスの便に供しました。
六 ● 全ページ二色刷りの本文は犬がレイアウトを担当したという風聞があ
ります。
七 ● ご希望の方には編集担当者のサインを添えてお届けいたします。ただ
しすこぶる悪筆です。
A5判・ハードカバー、310頁、定価3000円+税150円
申し込みは、現金書留にて。以下にその方法があります。
http://www.e-net.or.jp/user/stako/ED1/E01-pr1.html
★古書展でやせる?
久しぶりに、神保町の古書会館の古書展(書窓展)に、初日の朝から行きま
した。開場時間の10時ちょっと過ぎに入ったら、会場は芋を洗うような混雑ぶ
り。とくに、掘り出し物の多い「あきつ書店」の棚には、10人以上が群がって
いました。ヒトが棚の前に二列に重なっているどころか、下に潜っているのや
ヨコから割り込むのがいて、四重ぐらいになってました。
こういう光景を見ると、以前は引いていましたが、ぼくも最近は慣れてしま
ったので、隙間を見つけて突入。すごい勢いでみんなが本を抜くので、ごそっ
と棚が空く。そこに、店の女性がどんどん新しい本を追加します。棚に入れよ
うとされる瞬間にみんなの目が、いっせいにそっちに向くのがオモシロイ。ま
るで養鶏場で餌を待つ鶏のようでした。
全部見終わって、列を抜けたら、この寒いのに汗が吹き出ます。ちょっとや
せたかも。毎回初日の「あきつ書店」に群がるという、新しいダイエット法を
思いつきました。だれか『古書展でやせるダイエット』という本を書きません
か? 書きません。そうですか。
★徳川夢声のブームが来る!?
前号で読書日記を書いてくれた濱田研吾さんが本を出します。しばらく前に
私家版で出して話題になった『職業”雑”の男 徳川夢声百話』をベースに書
き下ろした『徳川夢声と出会った』(晶文社、2000円)が今週刊行です。濱田
さんはまだ20代なのに、夢声のことなら70代の老人より知っているという恐
ろしいヒトです。
この本が出るのにあわせるように、徳川夢声が1953年に鱒書房から出した
徳川夢声『いろは交友録』がネット武蔵野から復刊されます(1400円)。い
ろは順に四十七人を自在に描いたもの。改訂した上で、岡崎武志さんが解説を
書いているそうなので、この値段はお買い得なのでは?
今年はエノケンや小沢昭一の映画祭があり、同じに本も出たりしたので、来
年は「徳川夢声映画祭」でもやってほしいなあ。
★今月の「夜明かし本」
手をつけなきゃヤバイ仕事を目の前にして本を読むというのは、どうしてこ
うも気持ちイイんだろう? それがめちゃくちゃ面白い本だったら、もう終り。
すべてをあきらめて夜中までかかって読了してしまうのだ。もちろん翌朝には
慙愧の念に駆られるのだが。
そんな風に今月読んだ本は、東直己『探偵は吹雪の果てに』(早川書房、1800
円)、南伸坊・鏡明・関三喜夫『完全版 シンボーズ・オフィスへようこそ!』
(フリースタイル、1600円)、田口久美子『書店風雲録』(本の雑誌社、1600
円)、大屋幸世『蒐書日誌』第4巻(皓星社、2800円)など。
そしてその『蒐書日誌』について、「愛書家なら心得ている筈の常識さえ欠
如」「年がら年ぢゅうありふれた本ばかり有難そうに買っている」「大屋幸世
は書誌学者ではない」と罵倒しているごとく、全ページが緊張感にあふれた谷
沢永一『日本近代書誌学細見』(和泉書院、2800円)も、持ちあるいて二日で
読み終わった。この本については、『レモンクラブ』次号で取り上げます。
【小沢信男ウォッチング】
EDIの雑誌「サンパン」(次号は年末発売予定)で、「聞き書き 作家・
小沢信男一代記」の構成を担当している関係上、小沢さんが書いた雑誌などに
はなるべく目を通すことにしている。しかし、この方は文芸誌から同人誌まで
活動範囲が幅広いので、ぼくひとりでは見逃すこともあるだろう。そこで、目
に付いたものはココでメモし、読者からの情報があれば掲載するようにしたい。
『東京人』2004年1月号(特集「食べ歩き、あの人この人)に、大村彦次郎・
森まゆみとの座談会「『文壇酒徒番付』の頃」(p84-90)。
『日本古書通信』12月号に、「敗戦と文芸誌」(p2-3)。
戦後の文学を代表する文芸誌「近代文学」が、「駅のキオスクでさえ売って
いた」という証言は貴重。
【南陀楼のお私事】
★「東京人」2月号で精興社ルポ
2004年1月初旬発売の「東京人」(都市出版)で、「『活版印刷』という仕事
印刷会社・精興社の歴史とこれから」という記事を書きました。青梅にある同
社をはじめ、精興社と仕事をした出版人や、同社を調査し『活版印刷技術調査
報告書』(2002)を執筆した森啓さんへの取材をもとにした、15枚ほどのルポ
です。『報告書』のことは出たときに「書評のメルマガ」でも紹介しました。
それ以来、精興社のことに興味を持っていただけに、ウレシイお私事でありま
した。例によってギリギリまで原稿書けず、タイヘンだったけど。
★「ifeel(アイ・フィール)読書風景」の古本特集
1月14日発売の紀伊國屋書店のPR誌、「ifeel」で「古本の未来形」という
特集を組みます。岡崎武志×角田光代の対談にはじまり、クラフト・エヴィン
グ商會・吉田篤弘、近代ナリコ、オヨヨ書林・山崎有邦、うらわ美術館・島田
有美子のエッセイ、ユトレヒト・江口宏志さんミニインタビューなどが入ります。
南陀楼は「表情のある本を求めて 〜目録読書の愉しみ〜」というエッセイ
を書きました。「モクローくん通信」も紹介してもらい、一周年のいい記念と
なりました。
〈購入方法〉
○全国の紀伊國屋書店にて発売(本体305円)
http://www.kinokuniya.co.jp/
○ご購読ご希望の方は、
紀伊國屋書店総務部企画広報課 電話:03-5469-5902かEメールにて
info@kinokuniya.co.jp
宛ご連絡ください。郵便振替用紙をお送りいたします。
○なお、本誌は、「オンラインマガジン」として
紀伊國屋書店HP(http://www.kinokuniya.co.jp/)にも掲載いたします。
★帝都逍遥蕩尽日録
「まぼろしチャンネル」でほそぼそ連載中。今回は三鷹にできた古本屋「上々
堂」のことを中心に。
http://www.maboroshi-ch.com/cha/nandarou.htm
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■読書日記2003 神保町で本を読む 竹内啓
『冨山房新築落成記念 昭和七年十月』で昔のすずらん通りを想う
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【10月29日】
神田神保町の〈神田伯剌西爾〉(かんだぶらじる)というコーヒー店で働い
ている。今日から神保町名物古本まつり。靖国通りもいつもより人通りがある。
店も繁盛……といきたいことろだが、そうでもない。
【11月2日】
古本まつりと連休が重なり、すずらん通りのいろんなイベントもあって、神
保町はどこも大騒ぎ。僕も三省堂会場やら岩波会場やら色々行きたいのだが、
店も忙しいのでそれどころではなく、バタバタしてるうちに古本まつりは終わ
ってしまう。毎年のこと。お客様を迎える側なので、仕方ないけど。
【11月4日】
古本まつりが終わって神保町は台風一過の様。店もヒマ。ヤバイヤバイ……。
仕事への地下鉄の中で数日間読んでいた奥本大三郎編著『百蟲譜』(平凡社ラ
イブラリー、1994年)、終える。あっち読んだりこっち読んだりできる本で楽
しめた。また読み直したい。
奥本さんの本は、昆虫や動物好きの僕にはたまらない。いつか、寝起きに
NHK見てたら奥本さんの話を聞けて、その日は一日気分が良かった。
斑猫(ハンミョウ)の話を読んで、小さい頃、祖父の家の近くの神社で見た
のを思い出した。
【11月6日】
仕事は休み。久しぶりの丸一日の休みだ。どこに行こうか、前日夜に酒飲み
ながらワクワクしていたが、結局昼ごろまで寝てた。夜、上野の文化会館での
コンサートに行く予定があったので向かう。午後3時頃、上野に着く。上野公
園ブラブラしながら、ふと、奏楽堂のことを思い出した。
奏楽堂は旧東京音楽学校の建物を切り縮める形で解体、上野公園内に移築さ
れたもの。昭和62年に完成するまで紆余曲折あった。その経緯は、『上野奏楽
堂物語』(東京新聞出版局、1987年)に詳しい。
一年ぐらい前、古本屋でその本を見つけ、買おうか、でもちょっと高いなぁー、
次また来たとき買おう……と思っていたら、数日後、棚から消えた。売れたと
いう。よくありますね、こういう事。「買っときゃよかった」。しばらくして
別の古本屋で見つけて、すぐ買った。気に入ってグラシン紙までかけた。
その本を読んで少し勉強していたので行く気になった。中に入れるのだろう
か? 幸い、開いていた。何回かここの前を通った事はあるが、入るのは初め
て。恐る恐る覗く。入館料300円。
入ったら、その『上野奏楽堂物語』を売っていた。なんだ、ここで売ってた
のか、早く言ってくれよ……と心の中で言いながら、知らなかった自分を反省。
この日は催し物をやっていた。「明治の作曲家たち」。当時の楽譜や資料を
見ることができた。もちろん建物もよかった。
【11月17日】
森まゆみ『明治東京畸人傳』(新潮社、1996年)読んだ。森さんの本を読
むとヤネセン(谷中・根津・千駄木)あたりをブラブラしたくなる。
【11月19日】
古本屋で、『冨山房新築落成記念 昭和七年十月』(冨山房、1932年、非売)
を買う。その当時の社屋の図面や写真が入っていて面白い。すずらん通りの街
灯も本当にすずらんの形。現在の社屋の一階に、数年前まで冨山房書店があり、
僕の好きな書店だった。
【11月21日】
店で◎◎区立図書館のカードの落とし物。お店というのは忘れ物や落とし物
がとても多い。メガネ、傘、ハンカチなどなど。〈ぶらじる〉の場合、これに
買ったばかりの本、探書リスト、古書目録、アイドルカレンダーなどが加わる。
出来る限り、お返しする。
今回は、カードに名前は書いてあるが、住所が分からないので、そこの図書
館に郵送しようと思う。
〈たけうち・けい〉1971年、岡山生まれ。〈神田伯剌西爾〉に勤務。
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■大阪豆ごほん 福島杏子(ちょうちょぼっこ)
(2)情熱は突如としてやってくる
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はじめまして。「貸本喫茶 ちょうちょぼっこ」といいます。前回の「おまめ」
さんと交代で、「大阪豆ごほん」を連載させていただくことになりました。
「ちょうちょぼっこ」は大阪・北堀江のマンションの一室で、ひっそりと週末に
開いている貸本喫茶です。わたしたちは4人でこの空間を運営(というほどた
いそうなことはしておりませんが)しているので、4人が順番に書かせていた
だくことになります。いまは、先週末の古本バザーが無事に終わってホッとし
ているところです。
さてさて、「ちょうちょぼっこ」というなにやらあやしげなせまい空間には、
お客さんの座る座席と、いまにも雪崩がおきそうな本棚があります。「貸本喫
茶」ですので、本を閲覧しながらお茶を飲んでいただくこともできます。もち
ろん、会員になっていただければ蔵書を貸出することもしています。
この蔵書、ジャンルも特にきわだったものもなく整理もされていませんが、
すべてわたしたちが好き勝手に集めてきたものです。わたしたちは、ひまがあ
ればいつだって古本屋を巡り、新刊書店をうろうろし、コンビニで立ち読みな
んかもして、 部屋で珈琲を飲みながら本を読んでいれば日々是満足な4人で
す。本さえあれば、とは思いませんが、本がなかったら、とは思う毎日です。
そんな古本好きが興じて、「ちょうちょぼっこ」のお客様と昨年、『本箱』
という古本に関する小さなミニコミを和綴じで制作しました。細かい手作業が
とても苦手なわたしたちがなんとか和綴じの作業を気合いでこなしたこの冊子
は、おかげさまで1000部を完売することができました。
「『本箱』のつづきはないんですか?」とよく聞かれるのですが、これまた注
ぎ込む情熱が持続しないわたしたちには、今はまだ次のことが考えられません。
情熱は突如としてふってわいてくるのです。たぶん。ただ、『本箱』を通して
得られた人間関係が今の「ちょうちょぼっこ」を支えていることは事実です。
そんなつながりがきっかけとなって、今度「ちょうちょぼっこ」は新天地への
引越しが決まりました。いまのマンションの一室という秘密結社のような空間
から、少しはオオヤケな場所へ。
現在のマンションの一室では2003年12月21日まで営業をしております。
1月はお休みをいただき、2月から心機一転新たな場所で再開します! 次回
はその引越しについて書くことができると思います。ゆる〜い「大阪豆ごほん」
ですが、どうぞあたたかくみまもってください。
〈ふくしま・きょうこ〉貸本喫茶ちょうちょぼっこのメンバー。日本にルリユ
ールを紹介した栃折久美子さんがとても気になります。装丁についてだけでな
く、彼女が描く恋についての複雑な思いや気持ちがとても気になるところ。
【告知】
2003年12月23日〜2004年1月5日まで京都・恵文社で行われる「冬の大古本
市」に出展することになりました。個性的な古本屋さんも出展されるので、ぜ
ひ機会があれば足を運んでください。
貸本喫茶 ちょうちょぼっこ
http://www.nk.rim.or.jp/~apricot/chochobocko.html
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■新刊書店の奥の院 荒木幸葉
(12)魅惑全開!婦人誌新年特大号の巻
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「主婦の廃物利用の歴史的変遷」(文学部なのに……)という恥ずかしい卒
論で学校をでて、10年近くたちます。「牛乳パックは、布を貼ってペン立て
に」とか、「針金ハンガーは曲げてズックをほして」とか、耳年増な知識ばか
りストックしたまま、今だその放出先がない始末。実生活では、炊飯器はホコ
リをかぶり、包丁とまな板をつかわない料理を探求し、お湯しか沸かせない説
もないこともない。どうやって、くらしてるのかしら。わたしは。
書店で年の瀬の風物詩といえば、暦や日記・手帖だったりしますが、もう一
つ、盛り上げねばならないのが、婦人誌新年号のコーナーです。書店向け情報
誌には「商店街、PTAなどにも促進を」とか、「2ケ所陳列もしくは実用書と
連動販売」などという店頭活性化策が、つよーい口調でのってます。
御多分にもれず、ウチの店でも某誌は「キャンペーン商品」指定のため、毎
年、「いつかは役立つはず」と自らを励ましながら、買わせていただいており
ます。で、家計簿の一ページも活用しないまま、お蔵入り、がおきまりのコー
ス…いや、そんな話はどうでもいいとして。
まずは、付録。戦前は、発売日には風呂敷が必要なほど何種類もついていた
そうですが、ここ最近は、3、4種類にとどまっているようです。それでも、家
計簿やカレンダー、おかずブックといった本誌とかわらぬ束のものを挟みこむ
わけですから、大抵ビニール紐で亀甲に縛られ、数冊積んだだけでボリューム
満点の平台になります。
『すてきな奥さん』の「夢がかなう!節約おかずの本」は、載っているおか
ずをつくると、貯金が増える、ダイエットにきく、健康になる、運がよくなる、
という夢が実現。ずいぶん欲張りだなあ。ここで、問題なのは、Dr.コパアドバ
イスの“恋愛運アップ”のおかず。例えば、鍋焼きうどん。ナルトのピンクは、
恋心を高める開運カラーらしく、「心ときめく恋をしたいなら家庭運も上げな
きゃネ」と、コパさんから無邪気な吹出しがでています。恋のお相手がダンナ
さまじゃないとしたら……。鍋焼きうどんばかり食べてるヨメは要注意。
あと、個人的に「読めた」のが、『主婦の友』の「必ずたまる!家計簿」。
家計簿そのものでなく、欄外の「知得お役立ちメモ」に注目です。「玉ねぎを
古ストッキングの足先に詰め、保存」とか、水道代節約のため、「子どもとト
イレに入り、二人分まとめて1回で」とか。本誌でも、食パンの袋をとめるプ
ラスチックのクリップでごぼうの皮むきをしたり、卵のあきパックにカレーの
残りを冷凍したりと、かなり荒技度の高いお知恵が充実しています。
そのほかお約束の、大掃除やおせちづくり特集を含めると、一冊で、紙のお
姑さん状態。来年こそは、これらの知識をぜひ実践してみたいものです。が、
総額100万円があたる、とじ込みスピードくじ「幸せの銀はがし」にあっさり
ハズレた今、またもや正月からノンタンと一緒に風船を配っている自分がみえ
てしまい……。ここは、全員サービスの、コパ先生オリジナル「幸せを呼ぶ親
子トートバッグ」に応募するしかないな。本気です。
〈あらき・さちよ〉「あきたこまち」のビニール袋を筒型に切ってハンドルに
くくりつけ、バイクの腕カバーをこさえている人を目撃。たしかに、ぶ厚くて
防水・防風にはなるけど。こういう男らしい工夫癖も、結構好み。
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■渡辺洋が選ぶこの一冊
(12)南アの地方で黒人たちが作り出す「現実」
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J.M. クッツェー、鴻巣友季子訳『恥辱』早川書房、2000年12月
(原著1999年) “Disgrace”J.M. Coetzee(1940-)
−−今回はノーベル賞受賞の決まった南アの作家J.M. クッツェーさんの小
説『恥辱(Disgrace)』ですね(1999年発表、私の読んだのはPenguin版、
翻訳は早川書房)。
−−クッツェーさんの存在は、作品の翻訳もけっこう出ているのですが、今回
のノーベル賞で初めて知りました。1940年南アの生まれ。ボーア人(オランダ
系の移住者)とイギリス人の血を引いています。昨2002年にオーストラリアに
移ったとのことですが詳しい事情は何も知らないままで読みました。
−−南アと言えば黒人に対する徹底的な差別政策アパルトヘイト(1991年廃止。
ちなみに日本人は経済力その他から「名誉白人」として優遇された)で有名な
国ですが、そのくらいの予備知識で読んでどうでした?
−−きつい話です。主人公のデビッドはプレイボーイでならした初老の大学教
授。英文学が専門(バイロンとか)だが、今は時代の流れに押されてか(日本
同様?)、改編されてできたコミュニケーション学部とかに配属され、やる気
のない生徒に講義しながら若手の教授陣からは過去の遺物としてうさんくさが
られて生きている。
−−プ、プレイボーイって?
−−いい男でもてたんでしょうね。今は50代初めだけれど、2回離婚して娘が
1人、会員制の契約売春で「情熱なしの欲望」を充たしていたのだけれど、街
で子どもを連れた相手の女性に気づき追っかけてしまって以来、彼女は姿を現
さなくなってしまう。悶悶としているところで教え子に手を出し、1回でやめ
ておけばいいのにアパートを調べて押しかけてやってしまったり、というあた
りで彼女が退学すると言い出して驚いた実家の両親に告発されて、もう大学も
つまらないし、ロクな弁明もせずに大学を辞職してしまう。
−−プレイボーイだから、生徒を「情熱のままにやった」けれど「悪いことを
した」と謝る必要もないと突っ張った訳ですね。
−−で、地方で一人で犬を預かったり花や野菜を育てて売ったりして暮らして
いる娘の元に身を寄せたのですが、黒人のグループに襲われ、彼は毛髪や耳を
焼かれ、娘は犯されてしまう。そのことを彼は警察に訴えて犯人を捕まえ法の
裁きを受けさせることで乗り越えようと主張するのだけれど、娘はそんな保険
会社に訴えるようなやり方では解決しない、父親である彼は何も分かっていな
いと、お互いの溝を強調する。
−−もともと白人エリートだった父親にしてみれば娘のこだわりが理解できな
い。暇つぶしに手伝った獣医院では、犬がとにかく増えすぎたせいと、ちゃん
とした獣医が週に1回くらいしか来ない、きちんとした薬品も整っていないと
いう事情から、ちょっとした不具を抱えた犬たちを薬で殺すのがメインの仕事
になっている、もともと娘の手伝いくらいの感じで隣に住んでいたはずの黒人
家族がどんどん勢いをつけてきているといった状況が、白人優位の南アの都会
で暮らしてきた彼には、何もかもが貧しくて馬鹿馬鹿しいとしか見えない。
−−でも彼は、傷を負った娘のそばを離れられずに、獣医院に通って犬を殺す
手伝いを続けます。
−−彼は殺した犬を袋詰めして、都市の病院に運んで焼却係に渡せばそれです
むのに、彼らが袋詰めされた殺された犬たちが炉の入り口とかで引っかからな
いように死後硬直を袋の上からシャベルで叩きつぶすのを見て、出っ張った袋
が無事焼却炉に入るまで自分で何度でも機械を操作することに良心の救いを見
出すようになったりしていくのですが、娘が、自分の愛する地方の土地で安全
に生き続けていくために隣人の黒人の(名目だけとしても)2号さんか3号さ
んだったかになると言うことにはやはり激しく抵抗します。
−−黒人からしてみれば、地方の農村で1人でロクな武装もせずに暮らしてい
る白人なんて取りあえずは暴力の対象でしかない。娘を襲ったグループも隣に
住んでいる黒人の知り合いなんだけれども、やっと人間なみの暮らしが送れる
と元気づいている黒人社会から見れば犯人をむしろ保護して不問に付してしま
う事件にすぎない。
−−で、デビッドの娘ルーシーは名前だけでも隣人の黒人の男性の何人目かの
妻となってでも、この地方で安全に暮らせることを選ぶ。
−−肝心のデビッドはどうなるかというと、都市で特権的な白人インテリに戻
ることを選ばずに、南アの地方で黒人の論理に飲み込まれるように身をゆだね
ていくことを選ぶのかなと思います。結末あたりについてはここでは書けない
のでボカした書き方になりますが、南アの地方で黒人たちが作り出している
「現実」に身を委ねないと(恥辱?)、その先には行けないんだという表現か
なと思います。最後には救いが訪れているなんて評している人もいるようです
が、そんなに甘くないと思いました。南アでも彼の作品を嫌っている白人たち
がいるとか。
−−これから読む方はちょっと構えてしまうかもしれませんが、作品によって
かなり違った表情を見せる作家と聞いていますので、その辺はご自分で判断し
てくださいということですね
〈わたなべ・ひろし〉詩人。体のあっちこっち悪くなってはなおして生きてま
す。中年ですなあ、とは詩集『少年日記』(だまされたと思って読んでほしい。
書肆山田より)の作者でもある年男の感慨。
http://www.catnet.ne.jp/f451/
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■全著快読 古山高麗雄を読む 荻原魚雷
(12)この徒労感を誰かとわかちあいたい
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『今朝太郎 渡世旅』講談社文庫 昭和54年7月刊/単行本は講談社 昭和
51年3月刊
今回はめずらしく時代小説である。
『今朝太郎 渡世旅』の主人公の今朝市は、田舎の水呑み百姓である。ここ
のところ、凶作続きでやっとのことで食いつないでいる。そこに自称商人の新
吉がふらっと村にやってきて、今朝市にせんずりやピッチョンポッチョンを教
え、吉原の話をし、江戸にさそう。
「百姓てえのは、しょせん、浮かばれねえな。生かさず、殺さず、絞れるだけ
絞れ、たあよく言ったもんだな。おめえは一体、何を張り合いに生きているん
だい?」
今朝市はどうしようかぐずぐず迷う。その後、新吉が行方不明になり、今朝
市に八十二両もの大金が残された。
というわけで、今朝太郎の旅がはじまるのだが……。
これがもうケンカは弱いし、博打をやっては負けるし、挙げ句の果てに大事
なお金も盗まれてしまう。ぜんぜんいいとこなしだ。
村を出たのも渡世人になるのも、今朝太郎の意志ではなく、運命に翻弄され
た結果である。今朝太郎自身は、いつもの古山さんの小説の登場人物のように
とりとめもなく悩み、道中をともにするばくち打ちや飯炊き女との奇妙な縁を
ぐるぐる考えているうちに寝てしまう。
ひょっとしたら古山文学の中でももっともダメな主人公ではないか?
仮にも時代小説である。股旅ものである。なのに、こんなにカタルシスのな
い、ぐだぐだの話でどうするんだ! と、ファンのわたしですら思うくらいだ
から、ふつうの時代小説のファンが読んだら、途中でいやになるだろう。
なぜ古山さんはこんな時代小説を書いたのだろう?
わたしの憶測としては、古山さんは時代小説の形をかりた『阿Q正伝』のよ
うな話を書こうとしたのではないかと思うのである。
最後まで読んで、なんともいえないため息が出た。この徒労感を誰かとわか
ちあいたい気分である。
〈おぎはら・ぎょらい〉ライター。著書『借家と古本』(スムース文庫)。こ
の原稿を書きながら「発掘! あるある大事典」を見た。テーマは「あなたの
性格&体質は3歳で決まっていた?」。内向的で人見知りの性格は赤ん坊のと
きの環境のせいだという。そんなこといまさら教えられても困る。
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■あとがき
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今年も出版をめぐってのさまざまな動きがありましたね。ぼくがいちばん驚
いたのは、池袋の芳林堂書店が年内に閉店するというニュースです。そのこと
を知ったあと、田口久美子『書店風雲録』(本の雑誌社)を読んだら、1970年
代前半の池袋では、芳林堂が書店のリーダーだったという証言がありました。
それが80年代にリブロに代わられ、90年代にはジュンク堂に、という変化が
ありました。では、2000年代は? そのあたりがまだ、見えてない気がします。
来年あたり、大きく動くのでしょうか? 一冊の本、ひとつの書店を取り上げる
小さな視点を大事にしながら、大きな変化も見逃さない。「書評のメルマガ」は
そういうメディアでありたいと思っています。
ぼくの編集号は、今年はコレでおしまいです。では、来年お会いしましょう。
(南陀楼綾繁)
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