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2000.11.10.発行 vol.16 [少々ずるい気がする 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2000.11.10.発行
■■ vol.16
■■ mailmagazine of book reviews [少々ずるい気がする 号]
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■「星新一論」中山修一
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星新一『夜明けあと』新潮社
SFショート・ショートの生みの親である、星新一さん。氏の小品から読
書の楽しみを知ったという人は少なくないと思う。星新一の小説は小さい頃
にしか分からないこと、大きくなってからしか分からないことがあることを
私に教えてくれたのだと思うのです。「星新一の小説で読書感想文を書いた
」。先日、小学生の姪の周辺からそんな話を聞いて、少々嬉しくなった。で
もその取り合わせは、おじさんの頃は笑い話として使われていたし、先生も
けっしていい顔しなかったんだよ。
むかし星新一が好きだったという人は多い。しかしどんな小説が一番思い
出に残っているかたずねてみると、かならずといっていい。彼あるいは彼女
の口から出るのは、君の思っている作品ではない。あるいはまったく君の知
らない話である。そして悲しいことに、記憶をもとにした彼、彼女から聞か
される話はそんなに面白くないのです。現代の寓話といえるその作品が語り
継がれることが少ない、その理由は、日常と非日常、計画性と非計画性(予
期せぬ結末)が交錯した複雑な構成をとっていることだと思う。みじかさは
民話や昔話の類を連想させるけども、これでは人に面白く話しにくいだろう。
忠実に朗読する以外に手はないのである。
氏の小説を今でも好きだという大人は少ない。それは登場人物の匿名性と、
社会的・歴史的背景のなさが、青年期を過ぎる頃には物足りなく、彼の作品
を手に取ろうとしなくなる理由であると思う。かえって当時は面白いと思わ
なかった『人民は弱し 官吏は強し』といった中篇小説が、今は面白く読め
る(ちなみにエッセイの類は今読んでも面白い)。この小説は、明治の時代
に、製薬会社を経営する父・星一(はじめ)と政治家、官僚との闘いがテー
マである。政財界の派閥闘争に翻弄される星製薬という一民間企業の歴史は
、あの米騒動で有名な鈴木商店の歴史を連想させるものである。新興勢力や
異なるものはひたすら排除しつづける日本の政治−官僚機構、財閥勢力によ
るセコい手口と、そんななかでもひたすら前を見つづける父親が淡々と描か
れている。小説としての出来、不出来よりも、とにかくこれだけは書き記し
たいという思いをこめた、筆者畢生の作品だろう。
私にとって星新一の小説は文庫本で、しかも新潮社版がお気に入りだった。
並べたときに背中を緑色で統一したいから(他の理由として新潮社版だけに
しおり紐がついていると言った「通」もいる)。さし絵、イラストは真鍋博
さん、和田誠さんが定番。
氏の小説を単行本で買ったのは、『夜明けあと』(新潮社)が最初で最後
である。安政5年から明治45年までの新聞記事を、年毎に氏の興味の赴く
ままに拾い集めたものである。例えば明治35年の項は、故皇太后の喪中、
正月の町に飾りが少ない。* 飼犬の税、1頭につき年に2円(報知)そば
の代金の百倍。* 電話交換の仕事に適当とみなされ、多数の女子を募集
(国民)* ・・・・・といった具合だ。それら断片から、明治という時
代が浮かびあがってきます。10年前に買って読んだ時に目を引いたのは、
ちょうどバブルの崩壊直後だったので、株は賭博であるといった議論がなさ
れたという記事だとか、西郷隆盛伝説といった記事だったけれど、今読みか
えすと庶民の日々の生活、話題に重点があることが分かる。
「明治時代には、夢や、将来への期待や、面白いことが、いっぱいあった。
それを知っていただければそれでいいのです」。今、このあとがきのことば
を読むと、晩年、氏が古きよき明治時代に生きようとしたかのようで、戻る
べき時代のない昭和・平成に生きる私にとっては、少々ずるい気がする。氏
のSFショートショートの世界を大人のものにするという可能性がまだまだ
あると私は思うから。
<中山修一 新曜社営業部 32歳 年間読書量今年は20万円ぐらい 超好
きなジャンル 週刊マンガ>
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■「私、この本で徹夜しました」朝日山
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パリは燃えているか(上下巻) ドミニク・ラビエール&ラリー・コリンズ
早川書房
「よく見ろ、日本人。これが戦争だ」
は、言わずと知れた「亡国のイージス」初版の帯の惹句。日刊工業新聞社の
「火薬の話」なんかを読んで、「亡国……」はTNTやHMXオクトーゲン
の爆速速度を小説的脚色で操作しているらしいなんてことを見抜いても(ひ
でえ読者だな)、やはり超弩級の傑作。こいつを超える作品を期待される、
福井晴敏は次作が大変だ(『川の深さは』はデビュー作以前の乱歩賞最終選
考に残った作品だから、厳密には次作ではない)。「亡国……」発売直後の
小説現代に載っていた短編「畳算」を読めば、まだまだやれるとわかるが、
本人はたいへんやろな……でもね、この惹句がふさわしい本は他にもあるのよ
。それが、米仏ジャーナリスト合作の、こいつです。
「パリは燃えているか」とは、ヒトラーがノルマンディーの敗北後、パリを
連合国軍に渡すくらいなら、焦土にしてまえと命令し、命令が遂行されたか
を聞くために吐いたセリフ。話の主軸は、臨時政府を樹立するドゴールと、
パリ防衛戦を託されたナチスの精鋭、フォン・コルティッツ将軍。たが、こ
の本は、この2人だけが主人公ではありません。パリ開放にかかわった有名
無名のレジスタンス、連合国やナチの幹部や兵士たち、そしてパリ市民が一
週間の間にどんな行動をしてきたのか。膨大なインタビューや資料収集によ
って描き出されたパリ攻防戦。すごいぞ!
ノルマンディー上陸作戦が一息ついた時、修道士に化けてドイツ占領地帯に
潜む英情報部部長クロード・オリビィエ大佐のもとに暗号文が届きます。連
合国軍がパリを迂回し、パリ開放をできるだけ先送りにすると書いてありま
す。理由は簡単、パリなんか占領した日にゃ、パリ市民を養うために膨大な
ガソリンや食料、医薬品を回さなければならなくなるからです。
戦争の早期終結には、一刻も早くドイツに入りたい。パリ市民なんかにかま
っていたら、兵站が伸ばせない。連合国軍はパリ市民に足を引っ張られたく
なかったのです。
「ああ、たいへんなことになった」「破局だ!」
オリビィエ大佐が頭を抱えたのは、パリではすでにレジスタンスが叛逆のの
ろしを上げる寸前まできていたから。主力はロル=タンギー率いる共産党レ
ジスタンス。ロルが一斉蜂起を急ぐのは、おたおたしていたらドゴール派に
先陣を切られる恐れがあったからです。
ロルにとって、目標の社会主義政権を誕生させるためには連合国軍が入って
くる前に首都を制圧しておく必要があったのです。
これに対してドゴール派を率いるジャック・シャバン=デルマは、ドゴール
の命令なしには絶対にパリで武装蜂起を許してはならないと厳命されていま
した。ロルの方が組織力は明らかな優勢。武装蜂起阻止に失敗すれば、待ち
受けるのはドイツ軍の反撃によるパリ消滅か、ドゴールを蚊帳の外においた
共産党政権の樹立。シャバン=デルマは絶望的な作戦を強いられます。
対するドイツ軍のパリ大司令官コルティッツ将軍は、着任直後から嫌な予感
に捕らわれていました。戦況悪化のおり、ヒトラーに呼び出されたコルティ
ッツ将軍は、ヒトラーの自信あふれる顔が見たかったのです。ヒトラーの顔
さえ見れば、前途の暗雲は晴れると信じていたのです。ところが彼にパリ赴
任を言い渡したヒトラーの顔は狂人の様相。この戦争は負ける。しかし、コ
ルティッツは生粋の軍人。逃げるわけにはいきません。しかもパリへ向かう
車中でレイという男に「親族連座法」の制定を知らされたばかり。任務に失
敗したら妻子まで罰を受ける……コルティッツの退路は断たれたのです。
最悪の場合、パリを根こそぎ破壊しろと破壊工作部隊が派遣され、凱旋門か
らベルサイユから、あらゆる歴史的建造物に十二分の爆弾が仕掛けられます。
青い顔をして訪ねてきたパリ市長テタンジェは必死にパリ破壊をやめるよう
説得にかかります。しかし、
「あなたはパリのためにはじつに立派な弁護士ですな、テタンジュさん。あ
なたは義務を立派に果された。わたしも、同じくドイツ将軍としての義務を
果たさなければなりませんな」
コルティッツには、そう言うしかなかったのです。
風雲急を告げる情勢にドゴールは連合国の縛りをかいくぐって亡命先からフ
ランス入り。かつてパリを撤退していったフランス解放軍もパリに進軍した
くてうずうずしています。だが連合国軍の方針は変わりません。
とうとう、共産党レジスタンスの武装蜂起の準備が整いました。事前に察知
したドゴール派は、やむなくイヴ・バイエに命じて武装蜂起しパリ警察署を
占領します。すぐ新総監が任命され、総監と同時に入ってきたキューリー夫
人の義理の息子がモロトフカクテル(火焔瓶)を造り始めますが、ドイツ軍
が差し向けてきたのは、ドイツが誇る、あのパンサー戦車。レジスタンスの
武器は小銃やピストル、火焔瓶くらい。出遅れた共産党レジスタンスも間髪
を置かずに武装蜂起。最も長い七日間の幕が開く……。
圧倒されるのは、まず登場人物の多さ。正直言って、かなり気合いを入れて
読まないと、わけがわからなくなる(^_^;)ものの、しっかり読めばこれほど
戦時における人間の姿を上から下から敵味方から描ききったモノはそうない
でしょう。また、登場人物の台詞の中に、こいつら大阪人かと思えるユーモ
アが散見されるのは、パリの力ゆえか。
ただ愛した男がドイツ兵だったフランス女
フランス女に好かれたと思い込んていたドイツ兵
連合国司令部を欺いて、脱走進軍するためこっそり燃料や弾薬を貯め込む解
放軍将校
収容所から移される夫が乗る列車を何日も自転車で追いかける妻
撤収していた屋敷を前の状態に戻し、割ったグラスの代金を置いて出ていく
ナチ将校仲間の戦車がドイツ軍の砲撃で炎上したのに逆上し、ドイツ兵捕虜
を走る装甲車の下に放り込む連合軍兵士自分の命と引き換えにパンサー三台
を撤退させ、市庁舎に籠もるレジスタンスを救った赤いスカートの少女
遁走する兵士、母の名を呼びながら息絶える兵士
ヒトラーの名に泥を塗るまいと全滅覚悟で闘うナチ親衛隊
パンサーの圧倒的な火力に全滅寸前のレジスタンスのため、周辺市民が合唱
するラ・マルセイエーズ
連合国兵士に一目ぼれして結婚する女
パンサーに立ち向かう勇気はあっても、戦死した友の母に真実を告げる勇気
のない兵士
そしてクライマックス。ドゴールが一世一代の大バクチを打つ!
希望と絶望、出会いと別れ、愛と憎悪、恐怖と勇気、正気と狂気、運と不運
……人間の全てを教えられるこんな本、今の日本じゃ絶対に出ない本ですね。
与えられた独立と勝ち取った独立の差なのかねぇ……。それとも、これだけ
の大作を作っても採算とれるほど売れないからなのかなぁ……。
もっとも戦争の一断面を切り取るなら、いい本もある。個人的には「はだし
のゲン」、「かわいそうなぞう(金の星社、つちやゆきお)」「大空のサム
ライ」などが気に入ってます。でも最近は、あまりいいのに当りませんねぇ
……
最近の外れと言えば、岩波の「集団自決」。満州移民の悲劇を追うのはいい
が、著者も編集者も「編集」をやっていないのが見え見えの手抜き本。中盤
の水増し原稿読まされる読者の身になってみろ。半分に削って、原稿を引き
締め、2200円を1500円で出せば単価引き下げ以上に売れて、傑作になると思
うよ。
今も昔も「戦争の記憶を語り継ごう」なんて言って、昔どんなひどい目にあ
ったか記録を残そうとする人は多いけど、手抜き本や苦労話の披露だったら、
少なくとも朝日山は読む気は失せます。これまでそれなりに読んできて、あ
あ、またかと思えるような本なら、読みたいとは思いませんもん。
「戦争の記憶を語り継ごう」と、ほんとにそう思うなら、これくらいの作品
を我々の前に出してきて欲しい。だからこそ、「亡国のイージス」の惹句を
もう一度使わせていただきます。
「よく見ろ、日本人。これが戦争だ」
(朝日山 百姓 36歳 年間読書量50冊 好きなジャンル 特になし)
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■あとがき
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>なんか最近、眉間にしわ寄っちゃうことが多いんですよ―
>はあはあ
>自動販売機を使おうとしても、二千円札使えないわ、新五百円硬貨使えな
いわじゃないですか。いったいこの国の通貨体系はどうなっているのかと・
>ああ、そうですねー。しかし、二千円札って見ませんねー。本当に実在す
るんでしょうか? もしかして都市伝説の類なんじゃないんですか(笑)
>確か、二千円札つくれば景気回復の助けになるとか発案した人がいるんで
しょ。ばっくれてないで、言いだしっぺがなんとかしろーって感じですね。
>うーん、セガをぼろぼろにしちゃった作詞家といい、バブルで浮かれてた
人の発想って一体・・
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