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2004.5.11.発行 vol.163 [ちょっと小休止 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2004.5.11発行
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■ vol.163
■■ mailmagazine of book reviews [ ちょっと小休止 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
→本をめぐる情報+アルファの雑談です。今回は字数少ないです。
★新連載「もっとピントがボケる音」樽本周馬
→2003年度の話題作、安田謙一『ピントがボケる音』が生まれるまで。
★「私選 東京〈本読み場〉ガイド」高野麻結子
→どこで読んだってイイけど、どうせなら気持ちのいい場所で読みたい。
★「大阪豆ごほん」柴田尚美
→北堀江のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
→各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
→新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「かねたくの読まずにホメる」金子拓
→買ったときから、いや手にしたときから読書ははじまっているのです。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。
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■南陀楼綾繁のホンのメド
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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紹介したい情報はいくつもあるのですが、目下、公私ともどもに切羽詰ってお
りますので、展覧会を二つだけご紹介します。他の情報は15日発行の次号に
掲載します。
★「文字の文字」平野甲賀と字游工房展
〈文字〉のかたちにこだわりつづけるデザイナーと、タイポグラフィー会社の
これまでの仕事を集大成します。会場は「Gallery 5610」。以前、河野鷹思展
も開催した、ゆったりと気持のいいギャラリーです。
【日時】
2004年5月21日(金)〜6月18日(金)
11:00〜18:00
日・月・祝日休廊
【場所】
Gallery 5610
東京都港区南青山5-6-10・5610番館
tel : 03-3407-3311
fax : 03-3406-6300
http://www.deska.jp/
★内澤旬子=CRAFT碧鱗堂BOOKSの展示会
「本の世界のはじっこから」
イラストルポライターとしてさまざまな雑誌で活動する一方、ユニークな手
づくり本作品を発表してきた内澤旬子の新作、旧作を展示します。個展という
よりは、コーヒーを飲みながら気軽に観ていただける展示です。ぜひいらして
ください。モクローくん=南陀楼もときどき会場に出没します。
【出品物の一部】
豆本「昼寝犬」「夜行犬」
「モクローくん絵ハガキ帖」
「シラカバ絵巻」
「おやじがき」
その他、イラストルポ掲載の雑誌など。
【日時】
5月13日(木)〜6月1日(火)
14:00〜24:00
■定休日 18日(火)、19日(水)、26日(水)
【会場】
cafe NOMAD 文京区根津2-19-5 電話03-2822-2341
(千代田線根津駅1番出口より徒歩1分)
*カフェですので、ワンオーダーお願いします
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■もっとピントがボケる音 樽本周馬
(1)『ピントがボケる音』とはどんな本なのか?
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2003年9月に刊行され一部の好事家のあいだで話題となり、今は書店の音
楽書・批評(あるいはJポップ)の書棚にひっそりとささっている安田謙一著
『ピントがボケる音』(国書刊行会刊、2940円)。ロック漫筆家:安田謙一のコ
ラムを集めた本です。そして私はその本を企画した担当編集者、樽本です。突
然すみません。
ちょっと前に初めて南陀楼綾繁さんにお会いしたとき、自分が出版社に入っ
て初めて企画したこの本について、酔っ払って色々話をしたところ、じゃ本が
出るまでの経緯を書いてみたら、と言われました。何故?と思いましたが、す
ぐに納得しました。この本が出たときに一番言われた言葉は「よく出したなあ
(あきれた感じでor 心底びっくりした感じで)」。社内では勿論のこと、知人
からも各媒体からも、そして著者本人からも。その疑問は未だ解明されず今に
至る……。南陀楼さんも同様の疑問を感じられたのだと思います。なので、そ
うした疑問を解消すべく何回かにわたって(1冊の本で! 後で縷々述べます
が、この本『ピントがボケる音』そして安田謙一については一晩中、いや毎日
二時間ずつ一年間でも語ることが出来ますよ)『ピントがボケる音』刊行に至
るまでのことを書いていきたいと思います(当たり前にように話を進めてます
が、いいんでしょうか?)。
さて、とはいっても、そもそも『ピントがボケる音』という本を知らない人
が多いでしょう。本書を刊行した時、会社のHPのニュース欄で『ピントがボ
ケる音』紹介文を書きました。結局この文章が本書の内容を一番分かり易く
(しつこく)説明しているようなので以下に引用します。
*****
『ピントがボケる音』(安田謙一著)は、小社刊行物の中では珍しい音楽コラ
ムを中心としたポップカルチャー本です。ポップカルチャー本といってもピン
とこないかもしれませんが、音楽・映画・文芸など文化芸術風俗全般を扱った
書物、とでもいいますか。音楽書でもなく映画書でもなくエッセイ集でもなく
文芸評論でもなくそれら全てミックスした〈ヴァラエティ・ブック〉です。川
勝正幸『ポップ中毒者の手記(約10年分)』『ポップ中毒者の手記2(その後の
約5年分)』(DAI-X出版)、小西康陽『これは恋ではない』(幻冬舎)といった
名著がそれに当たります。つまりは植草甚一・小林信彦・片岡義男らによる書
物の系譜といっても良いでしょう。そして『ピントがボケる音』もその系譜に
連なる本なのです。
安田氏は音楽評論家・文筆家として80年代後半から執筆活動をおこなって
きました。最近ではクレイジーケンバンド関連の文章でその名前を知った人も
多いのではないでしょうか。とにかく独自の批評眼でもって見つけ出した
(&出会った)魅力あるモノ・コトを深い愛情をもって理屈をこねつつ紹介す
る、その機知溢れる文章は定評があります。何度読んでも面白い彼の文章のフ
ァンは少なくなく、長い間なぜ安田謙一の本が出ないのか!? とフンガイしつ
つ不思議に思っていたのです(担当編集者もその一人です)。今回の単行本は、
その渇を癒すべく過去15年に書かれたコラム・評論をこれでもか、というぐら
いに詰めこんだ本となっております。
*****
……などなど、長々と書いておりますが、なぜ会社のHPで一冊の本にこう
した異常なスペースを割くという暴挙が可能だったのでしょう? 答えはHP
担当が私だから、です。この種の暴挙は今も続いているワケですが……。とい
ったところで、続きはまた次回。
〈たるもと・しゅうま〉1974年奈良県生まれ。2000年より国書刊行会勤務。
担当書籍に『吉屋信子乙女小説コレクション』『鴨居羊子コレクション』『国
書刊行会SF・未来の文学』など。
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■私選 東京〈本読み場〉ガイド 高野麻結子
(7)5月病も元気に乗り切る本読み場[少しだけ番外編]
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連休をしっかり休んだ休みボケの人も、働き通しの働きボケの人にも平等に
5月はやって来ます。いずれにしても、若葉も目に鮮やか、初鰹も楽しみ、と
なると少し新しい風が吹いてくるのを期待したい今日この頃。
今回は、じっくり読書ができる場所、というよりもこんなところがあったん
だ! という驚きをもたらしてくれる場所の案内です。
それは池袋西口から要町方面に向かい、てくてく歩いて約10分ほど。
「CARAVAN BOOKS」という洋書の古書店です。
洋書の古書店というと、豪華なワニ革装丁の全集が鎮座していたり、デザイ
ン本がジャーンと置かれていたりと敷居が高い印象を勝手に持ってしまいがち
ですが、木がふんだんに使われた外観で、例えるなら槍ヶ岳の山小屋のような
本屋さん。大通りから一本入った路地にあるため、池袋の喧騒から完全に隔離
されていて、一層「ここはどこ?」感が漂います。棟続きの建物は英会話教室
になっていて、先日行った時には間のガレージでオーナーが日曜大工に励んで
いました。
置かれている本はペーパーバッグ、絵本、語学書から旅行本、コンピュータ
ー関連書までが1階にあり、2階に上がると絨毯敷きのまさに個人の部屋(ち
ょっと雑然とした)のようになっていて、『良いライターになるためには』『日
本人に英語を教える』や『水彩画の描き方』のような洋書の実用書籍が棚に納
まっています。
ここの良さは、やはり独特の雰囲気に尽きます。おそらくお父さんの海外赴
任でやって来ただろう高校生の女の子が二人、ペーパーバックのコーナーで本
を選んでいました。「あっこの本!」「何?」「ボーイフレンドが薦めていた本
だ!…ああ会いたいなあ」…というような話で盛り上がっているようです。会
話の内容は少しイメージも込みですが、そんなふうにして本を買う、というだ
けでなく、ここは母国の離れのように、日々の生活に不可欠な場として機能し
ているようです。
先日、日本に住むアメリカ人から「映画が大好きなのに、日本語字幕の上映
ばかりなのが残念」という話を聞きました。ちょっとずれるかもしれませんが、
こういった場所が日本でもっと充実していたらと思います。本はどれも手頃な
値段。さ来週からカフェスペースがオープンする予定なので(日曜大工はその
ためでした)、そこでひと休みもできるようです。日本語で本を読む人にも、
一度訪れてみてほしい場所です。
■Caravan Books
豊島区池袋2-21-5
11:00〜21:00 無休
http://www.booksatcaravan.com/
〈たかの・まゆこ〉ここのところ、外国の方と本について話をする機会が何度
かあったのですが、英語もドイツ語も中国語も、本についての言葉は各国いろ
いろで面白いなあ……と。人生はあっという間。相変わらず進歩なく、些細な
感動で日々は過ぎ行く。それもまたよし。5月21日発売の『散歩の達人』はそ
んな大人でも大丈夫、な31歳からのカフェ特集です。
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■大阪豆ごほん 柴田尚美(おまめ)
(7)おそろしき豆本展
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東京・大阪共同企画豆本展「昼の豆本・夜の豆本」。21日のオープニングラ
イブから行ってまいりました。東京開催場所のカフェ「ひなぎく」はほの暗い
店内、経堂「ロバロバカフェ」は白い壁で明るい。だから昼と夜というテーマ
で参加者に作ってもらというわけです。
1年前、ロバロバカフェとひなぎくとおまめで「ロバまめぎく企画」と題し
て3店鋪の遊びが始まります。好き勝手に企画の絵を書き、有名多望な方々に
参加依頼を頼み、ライブをしよう! 記念冊子を作ろう! そして、記念豆本
キットを作ろう! などと企画会議は盛り上がったのでした。
ライブには元たまの知久さん。マネージャーさんを頼って交渉。実現!
企画記念豆本キットは、ひなぎくにも時々来るという今をときめく人気のイラ
ストレーターである100%ORANGEさんに依頼しようなどということになり、きっ
と断られると覚悟していたにもかかわらず、面白がってすんなり了解してくれ
もう有頂天。調子に乗って「ロバとまめとひなぎくが登場するお話を書いてく
れませんか」なんて図々しいお願いをする。100%ORANGEさんも話すうちに乗っ
てきちゃって、表紙を手刷りするなんて言い出す始末。
知ーらんでぇ、知ーらんでぇ〜
そして、迫りくる開催日を前に、豆本キット表紙の手刷り作業は100%ORANGE
さんを締めきり地獄に追いやることになり「少し後悔しました」と添え書きに
書かせることとなりました。一方、私は2mm厚のボール紙を550セット分、
日毎夜毎切りまくったのでした。きっとボール紙TVチャンピョンに出場する
ための猛特訓なのだわと言い聞かせて。
ヘトヘトになりながら山ほどのキットパーツをダンボールに詰め東京出荷。
東京2店鋪はキット詰め作業とオープニング準備に1週間前から寝る時間のな
い日々を過ごす。オープニングに駆けつけた日、ぐったり青い顔のスタッフた
ちを見てゾッとしたのでした。
『これが来月の私の姿……』。おそろしやおそろしや。
しかしながら揃った72冊の豆本は、企画した私たちとともにきっと作家さ
ん達も徹夜をしただろうことがうかがえる素晴らしいものばかりでした。
ひとつのことをたくさんの人でするということの大変さと素晴らしさを痛感。
豆本講座も満員御礼。滞りなく無事に終えました。めでたしめでたし。
静かで穏やかなGW。それは嵐の前の静けさ。どうか素晴らしい嵐が4坪の
おまめ部屋を飲み込んで、私ともども豆となって飛んでしまえ〜
★豆本展「昼の豆本・夜の豆本」おまめ部屋
5月8日(土)から5月23日(日)までの土日と13(木)14(金)。
参加作家は、宇田川新聞、内澤旬子、ちょうちょぼっこ、山口マオなど36人
(グループ)です。
〔おまめ〕
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
地下鉄四ツ橋線四ツ橋駅下車6番出口西へ徒歩2分/地下鉄長堀鶴見緑地線
西大橋駅下車徒歩5分
土日:12:00〜19:00(13:00〜14:30は豆本講座なのでできれば避けてください)
今月のみ13(木)14(金)の平日を営業します。
平日が可能な方はどうぞお越しください。
http://homepage1.nifty.com/omame/
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■酒とつまみと営業の日々 大竹聡
(12)人の輪も広がる感謝感激の頃
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平成15年5月、『酒とつまみ』2号は順調だった。発売から1ヵ月半ほどで、
大阪は梅田のブックファーストから創刊号、2号各15冊、堂島のジュンク堂か
ら各30冊、仙台のあゆみブックスから各20冊の追加注文が入り、地方・小出
版流通センターからも、4月末の50冊に加えて5月13日に30冊、同22日に
は100冊の注文が来た。また、吉祥寺のパルコブックセンターからは2冊の客
注も入った。おそらくはHPを見た人からの注文だろう。この客注はことのほ
か嬉しく、休みをとった土曜日に自ら2冊を納品し、あまりの気分の良さに吉
祥寺の「いせや」(公園脇の支店)に足を運んだ私は、もつ焼き片手に焼酎を
ガブ飲みしたのである。
人の輪も広がっていった。創刊号と2号の巻末には、ボランティアでお手伝
いをしてくれる人を募集していたが、その、ほんの小さな告知に対し、実にさ
まざまな人が手を挙げてくれたのである。埼玉の主婦のTさん、京都で創刊号
をまとめ買いしてくれたW君、酒に関する膨大なメモを作っている神保町のT
さん、イラストレーター志望のMさん、美大出のS君などなど、経歴も仕事も
みな違う素敵な人々が我らの仕事場を訪ねてくれた。それも、この上なく嬉し
いことだった。ただ、募集をしておいてナンだが、いつ、何を、どう手伝って
もらえばいいのか分からず、その後こちらからも音信不通になっていること、
この場を借りてお詫びいたします。
当メールマガジンの南陀楼さんにも、『酒とつまみ』を発行することで御縁
ができた。連載陣のエンテツさんや高野麻結子さんにお引き合わせいただき、
八重洲口の加賀屋東京店でガブ飲みしつつ、今書いているこの連載の話も固め
てもらったのである。昼は書店に電話をかけて売上調査をし、追加注文の発送
準備をし、夜は夜で、こうした『酒とつまみ』から生まれる人の輪の中で、う
まい酒を飲めた。
6月6日には、小誌連載陣の松崎菊也さんとすわ親治さんが出演する『他言
無用ライブ』が調布グリーンホールで開かれた。デザインのIさんとカメラの
Sさんが先乗りし、私は後から追いかけて、ホールのロビーで『酒とつまみ』
を売った。この日、知人との飲み会に『酒とつまみ』を持ち込んでいた編集W
クンからメールが入り、8冊売れたとのこと。私は、こちらも19冊と即座に返
事を出した。
ライブ終演後は、スタッフ、出演者の打ち上げに参加。うまいビールを飲ん
だ。松崎さんも、すわさんも、グイグイ飲んでいる。内輪の宴に長居は禁物と
我々は中座して失礼した。調布から私の自宅は近いので、早々に帰りついてシ
ャワーを浴びると、ケータイが鳴っている。電話の声はすわさんだった。先に
帰ったことを松崎さんが怒っているという。その声の向こうで松崎さんの怒鳴
り声がする。
「てめえはあ! 松崎の酒が飲めネエっていうのかあ!」
そしてすわさんの声。
「松崎は、もう、ウンコでーす!」
電話は切れた。私は、嬉しかった。この雑誌をかわいがってもらっていると
思うと、無性に嬉しかった。冷蔵庫から缶ビールを取り出し、プルリングを勢
いよく引き上げた。
〈おおたけ・さとし〉『酒とつまみ』編集発行人。
南アルプスは奈良田温泉に日帰り取材。空いた時間に釣りをしようとの思惑
は前日の大雨にて頓挫。諦め切れず下部川、本栖湖と回って最後は山中湖から
道志川へ。日暮れまで1時間。日釣り券1000円を惜しむあまり年券を購入。
こうなりゃ秋まで通うのだ。ヤマメを釣って、それを肴に、そう、酒を飲む
のだ!
http://www.saketsuma.com
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■版元様の御殿拝見 塩山芳明
(20)アストラの巻 善良貧乏版元の意地とモルタル風ホッ建て小屋
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前回の大中央公論“ナベツネ”新社の後にココじゃ、1000円以上する「共
栄堂」のスマトラカレーの翌日に、「小渚そば」のミニかきあげ丼セット(480
円)を食べるようで、胃も懐もビックリか?(両店共に味は良し。後者、量が
少な目なのが難点)。が、記念すべき(誰が?)連載20回目には、一番ふさわ
しいかも。
アストラ発行のミニコミ『記録』を知ったのは、例によってすずらん通りの
「アクセス」。薄っペラな割に500円もするが(PR誌の中でも一番チャチな
『未来』に近かった)、告発記事が過激で、アースや代々木ゼミナールの実名
バンバン。懐かしの総会屋雑誌でもないのに(一文にもならぬのに)、よくや
るわいと呆れつつ、同店で毎号買うように。数年後に拙著『嫌われ者の記』
を出した際、献本など勿体ないので1冊もしなかったが(版元一水社は数冊送
ったと)、同社にのみ「読者ですが、こんなん出しましタ!」と送付。誌面全
体に漂う、生まれと育ちの悪さから来る熱い下品さに共感を。
すると返事が。1度会いたいと。「嫌だな、万一仕事頼まれちゃ。この手の
雑誌は稿料も出ないと言うし…」が、どんな編集部かと覗き見気分で訪問(我
が事務所から徒歩10分)。場所は神保町3丁目の21。首都高脇で、日当たりの
悪いジメジメ地帯。英弘ビルとあるが自称で(万年荘がレジデンスと称するが
如し)、古ぼけたモルタル風ホッ建て小屋だ(一応4階)。外見は小汚いが、
中はよりゴミタメで、窓から外も見えず超陰気。予想どうり。
以来、ありがたくも6年近く仕事を。最初の3年は「エロ漫画で喰う」なる
業界ネタ。以降は「奇書発掘」と題した書評気取りの悪口コラム。で、一番驚
いたのは、何と原稿料が出た事(盆暮れに、半年分づつまとめてと言うのもシ
ブイ)。御多分に漏れず同社も苦しく(受験関係の仕事の利益を、同誌に注ぎ
込んでるらしい)、借りてるフロアーも社員も半減したし、『記録』自体もパ
ンフに近い形になってしまったが、未だに稿料付きで刊行し続けているのは、
文字通り狂気の沙汰(気まぐれで出してる単行本も、売れたとの話は一切聞か
ない)。
推測するに、一種の意地なのだろう。企業告発ルポでは裁判に負け、金銭的
に大ダメージを受けたと言うし、筆者が書き始めてからも、国労組合員、斉藤
典雄の、「サイテイ車掌のJR日記」をめぐり、革マル派に屈辱の1P大謝罪広告
を(しかも2カ月連続で!! 今となれば、全く問題になる内容ではないのだが)。
以降、当然臆病となり、「塩山さんの連載も実名批評が多いから…」と、当初
の口約束通り本にしてくれない。気持ちはわかるが少々シャク。で、昨今は
“『記録』内総会屋”を自称。同誌と友好関係にある団体(交換広告でわかる)、
つまり救援連絡センター、部落解放同盟、あるいは革マル派の悪口を意識的に
書く事に。その度に、「ちょっと表現を…」と萩編集長が、高級な手みやげ持っ
て現れるので溜飲が下がる(やっぱイジメるなら、誠実で善良な市井の貧乏人
に限る!!)。
同社周辺は、縁起の悪い一帯でもある。日刊工業新聞、森本組は実質破綻や
倒産。みずほ銀行はどうなるか不明。70年代に輝いてた冬樹社も目と鼻の先だ
ったが、消えて久しい(本郷方面に移転した、大月書店は臭覚が鋭かった?)。
日本橋川沿いの新和出版というエロ本屋も、社長が夜逃げ。ふと、死んだ明治
生まれの婆ちゃんの言葉を。「神社のそばだけにゃあ住むもんじゃねえで、芳
明。肺病だ早死にだ夜逃げだで苦労すんな、てーげーそうゆ家なんなんだで」
婆ちゃんの念頭にあったのは、群馬県の一の宮、貫前神社。ここでは当然大靖
国神社。善良貧乏版元の意地は、靖国の霊に勝てるのか!?
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。なお、この連載に関しての批
判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(ただし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jphttp://www.linkclub.or.jp/~mangaya/
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■かねたくの読まずにホメる 金子拓
(22)いい仕事をしている地方版元
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岡将男『岡山の内田百間(門+月、以下同)』岡山文庫、1989年3月、800円
定金恒次『木山捷平の世界』岡山文庫、1992年10月、800円
小澤善雄『飛翔と回帰―国吉康雄の西洋と東洋』岡山文庫、
1996年7月、800円
先日、職場の同僚と世間話をしているうち藤澤清造が話題に出た。数年前金
沢の版元・龜鳴屋から『藤澤清造貧困小説集』が刊行されたとき、ちょっとし
た話題になったことを思い出す。貧窮の果てに芝公園で凍死した、知る人ぞ知
る私小説作家の藤澤清造である。彼の郷里金沢の文学館ではそれなりに顕彰さ
れているらしく、また代表長篇「根津権現裏」が『石川近代文学全集』中の一
巻に抄録されている。
実は、わたしたち二人が共通して知る古本屋にこの「根津権現裏(抄)」が
入った『石川近代文学全集』の端本があったのだ。藤澤清造単独ではなく、加
能作次郎らとの合冊で、値段もそれなりにするのだけれども、よく行く古本屋
に、端本のうちよりによって藤澤の巻が置いてあるなぞ奇跡的なことなのでは
あるまいかということで落ち着いた。同僚は、鏡花や犀星だけでなく、藤澤清
造のようなマイナーな文士の作品もきちんとフォローする金沢という町の文化
度の高さに感じ入ったとこぼしていた。
私はといえば、東京の大きな出版社の本にばかり目を向けがちで、ときどき
地方都市に本拠がある出版社の出版物にすぐれた作品を見いだし、その都度驚
く(たいていすぐそのことを忘れてしまうのだが)。金沢に負けず劣らず「い
い本を出しているなあ」と思っているところに、「岡山文庫」を出している岡
山の日本文教出版がある。
「岡山文庫」とは名前のとおり文庫本のシリーズで、現在までに総巻200冊を
超える一大叢書となっている。郷土の出版物として、『岡山の植物』や『岡山
の古墳』『岡山の民話』といった風土・歴史・民俗物から、岡山出身、もしく
は岡山に深く関わった人びとの評伝などが幅広くラインナップされている。こ
のうち私が持っているのは上に掲げた三冊。いずれも岡山出身の作家・画家に
ついて、岡山との関わりに重点をおいた、一般的な評伝とはまた違った角度か
ら彼らを捉えたものである。
現在竹橋の東京国立近代美術館で「国吉康雄展」が開催されており(16日
まで)、そこに『飛翔と回帰』が図録とともにうずたかく積まれていた。こう
いった本は出会ったときに買っておかないといけないという強迫観念が働き、
つい買ってしまったのである。百間や木山捷平はまだしも、国吉康雄のような
若くしてアメリカに渡ってその地で没した画家についても目配りが届く。そん
な岡山文庫に注目したい。
参考:「小さな橋の博物館」
http://www1.harenet.ne.jp/~wawa/B/bridge.html
〈かねこ・ひらく〉サイト「本読みの快楽」運営。本業は日本史研究者。
このゴールデンウィークは山形の実家に帰省しました。東京に戻ってきても、
定期券を間違って入れてしまうなど、休みボケがとれていません。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~kinko/index1.htm
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