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2004.7.5.発行 vol.171 [真夏の大感謝祭 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2004.7.5発行
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■ vol.171
■■ mailmagazine of book reviews [ 真夏の大感謝祭 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
→本をめぐる情報+アルファの雑談です。サイン会などのお知らせあり。
★「もっとピントがボケる音」樽本周馬
→2003年度の話題作、安田謙一『ピントがボケる音』が生まれるまで。
★「新刊書店の奥の院」荒木幸葉
→ご愛読いただきましたが最終回。アラキはいま金沢にいるのです。
★「大阪豆ごほん」柴田尚美(おまめ)
→北堀江のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
→各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
→新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「かねたくの読まずにホメる」金子拓
→残念ながら休載です。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。
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■南陀楼綾繁のホンのメド
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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【真夏の三都(?)三大(?)イベント】
非営利ライターが、鳥取・神戸・東京を巡業します。
★鳥取/南陀楼綾繁を囲む会
『ナンダロウアヤシゲな日々』刊行を記念して、南陀楼の大好きな鳥取市の
「定有堂書店」で茶話会を行ないます。題して、「本の海で溺れています」。
さて、どんなハナシになりますやら。気軽にご参加ください。
日時:7月10日(土) 夜7時から
場所:定有堂書店ホール
〒680-0037 鳥取市元町121
TEL&FAX: 0857-27-6035 e-mail: teiyu@nifty.com
連絡は奈良さんまで(090-2000-5844)
会費:無料
★神戸/「sumus」&「幻堂出版」真夏の ドサクサ・汗だくサイン会
真夏の神戸で、前代未聞のサイン会をおこないます。“本を散歩する雑誌”
「sumus」と西明石のこだわり個人版元「幻堂出版」の著者が一堂に会しての
サイン会です。
書店の「外」に長テーブルを出し、パイプ椅子にズラリと座った著者たちが
炎天下(アーケードはありますが……)2時間にわたってサインをし続けると
いうものです。
当初予定された川崎ゆきおさんが急病のため、ピンチヒッターに森元暢之さ
んが出てくださることになりました。なんと豪華な……。あと、内澤は「sumus」
の同人じゃないんですが、まあ、お許しを。
関西の「書評のメルマガ」読者の方にお会いできるのを楽しみにしています。
日時:7月11日(日)午後3時〜5時
場所:神戸・海文堂書店 (酷暑の店外)
〒 650-0022 神戸市中央区元町通3-5-10
TEL(078)331-6501 FAX(078)331-1664
◎メンバー
「sumus」軍団
南陀楼綾繁 (『ナンダロウアヤシゲな日々』無明舎出版)
山本善行 (著書に、『関西赤貧古本道』新潮新書 ほか)
内澤旬子 (著書に、『東方見便録』文春文庫 ほか)
「幻堂出版」軍団
森元暢之(著書に、『NOBARA』 ほか)
中村よお (著書に、『KOBE街角通信』 ほか)
川辺佳展 (著書に、『街の本屋が「カア!」と啼く』)
太郎吉野 (著書に、『神戸からころがたり オールライトぶるーす』)
なお、サイン会に先立ち、海文堂では7月3日(土)より、「sumus」&
「幻堂出版」どさくさフェアを開催中です。店内では両者の出版物(残部僅少
本あり)のほか、『ナンダロウアヤシゲな日々』で取り上げた本を南陀楼のPOP
付きで並べています。こちらもヨロシク。
★東京/「第一回モクローくん大感謝祭」
ライター・南陀楼綾繁とイラストルポライター・内澤旬子が2003年1月に
創刊した月刊「モクローくん通信」は、“世界で唯一の古書目録愛好フリーペ
ーパー!!”を標榜し、古本や古書目録についての話題を掲載しています。
創刊から一年半経って読者の数も次第に増え、南陀楼のキャラクター「モク
ローくん」の認知度も上がってきました。また、カバー、本文にモクローくん
が登場しまくりの南陀楼の初めてのエッセイ集『ナンダロウアヤシゲな日々』
(無明舎出版)も刊行されました。
つきましては、「モクローくん通信」の愛読者や古本好きの方に向けて、千
駄木の素敵な古本屋「古書ほうろう」の特設コーナーにて、3週間の展示販売
を行ないます。初日にはイベントも開催します。たくさんの皆様のご来店をお
待ち申し上げます。
期間:2004年7月30日(金)〜8月22日(日)
時間:月〜土 10:00〜23:00
日・祝 12:00〜20:00
場所:古書ほうろう
東京都文京区千駄木3-25-5
TEL/FAX 03-3824-3388
e-mail horo@yanesen.net
*期間中、南陀楼は2日に一度は来店します。モクローくんに会いたいという
方は、事前にご連絡ください(kawakami@honco.net もしくは 090-9347-8767
まで)。
◎展示内容
1)モクローくん通信のこれまで
「モクローくん通信」各号のバックナンバーの配布、マンガの原画、モクロー
くん&セドローくん人形の展示など。モクローくん絵ハガキ帖、モクローくん
マッチなどのグッズも販売します。
2)モクローくんとミニコミたち
新刊『ナンダロウアヤシゲな日々』サイン本のほか、「sumus」「サンパン」「彷
書月刊」「本とコンピュータ」などのミニコミ・雑誌を販売。南陀楼のミニコ
ミ「物数奇」「日記日和」も、残部僅少を売り尽します。
3)モクローくんと古書目録
南陀楼が集めている戦前・戦後の古書目録を展示。最新の古書目録を厳選して
配布もしくは販売。また、この一年で届いた古書目録を大処分、無料持ち帰り
コーナーもあります。
4)モクローくんのお宝本
店頭の展示台で、モクローくんのささやかなコレクションを公開します。期間
前半はチェコで買ってきた本、後半は花森安治の装幀本を展示する予定です。
また、内澤旬子が集めた「イイ顔」が表紙の本コレクションも展示します。
5)モクローくんの本棚
南陀楼さんのウチの「けもの道」で発掘された古本を販売します。絵葉書、マ
ッチラベル、チラシなどの紙モノも大量に放出。また、音楽CDも販売します。
*展示内容は変わる場合があります。
◎トークショー「古書目録の遊び方」
7月30日(金)午後7時より
出演:河内紀、向井透史(古書現世、セドローくん)、佐藤真砂(古書日月堂)、
南陀楼綾繁
入場料:300円
つくる側、読む側から見た古書目録の楽しみ方を語る公開座談会。後半にはマ
ル秘音源の放送もあります。当日来場の方には、新作のモクローくん絵葉書を
サイン入りで差し上げます。
*会場設営の都合があり、なるべく事前にご予約ください。お申し込みは、古書
ほうろうか南陀楼まで。
【イベント】
★「ふるほんと雑談」KITAODO BOOK CAF・2004
4年目を迎えた、北尾トロさんのブックカフェ、今年はなんと8週間だ!
「くだらなくて、おもしろくて、目が離せない雑本たちと、おいしい飲み物を
揃えてお待ちしてます。ぜひ遊びにきてください」(北尾さん)
日時:7月13日(火)〜9月5日(日) 月曜休み
2時〜10時半
場所:CAF・GALLERY SAPANA
〒167-0054 杉並区松庵3-40-10-2F
TEL&FAX 03-3332-0683
http://www.sapana.info/
【展覧会】
★日本の幻獣−未確認生物出現録−(UMA in Japan)
古くは鬼や天狗、河童、人魚、雷獣から新しくはツチノコやヒバゴンまで、
人々に目撃され記録されてきた不思議な存在を「幻獣」として集大成し、私た
ち日本人の精神文化の中に彼らがどう位置づけられるのかを探る試み。江戸時
代、疫病除けとして流布した幻獣の絵図や、幻獣出現を報じる瓦版、版本、明
治の新聞錦絵などに記録された幻獣、ミイラなどの造形物、写真などを一堂に
集め、幻獣の生まれてきた社会背景にも迫る……という展覧会。
いやー、ワクワクするなあ。「主な出品資料」が、
*人魚、河童、鬼、烏天狗、雷獣、龍のミイラ
*瓦版「尼彦入道」「奥州会津怪獣の絵図」
*絵図「水虎之図」「牛鬼図」「件獣之写真」「雷獣図」
*絵巻「幻獣尽くし絵巻」
*絵はがき・写真、その他幻獣をモチーフとしたさまざまな道具類
と、およそ展覧会らしくないモノばかりなのもイイなあ。
日時:2004年7月3日(土)−9月5日(日)
休館日:月曜日(7月19日は開館)、7月20日(火)
午前9時30分−午後5時 (入館は午後4時30分まで)
会場:川崎市市民ミュージアム 企画展示室
〒211-0052
神奈川県川崎市中原区等々力1-2(等々力緑地内)
TEL 044-754-4500
http://home.catv.ne.jp/hh/kcm/
★幻のロシア絵本1920-30年代展
春に兵庫の芦屋市立美術博物館で開催されていた、注目の展覧会が東京に巡
回。庭園美術館で開催されます。
1920-30年代に制作されたロシアの絵本を蒐集した吉原治良(1905-72)のコ
レクションを中心に、日本に現存する250冊を一同に集めて展示します。
これに合わせて図録が発行され(淡交社で刊行)、ロシア絵本10冊を忠実に再
現した「復刻版」も販売されます。また、今月の『芸術新潮』はズバリそのまま
ロシアの絵本の特集です。あとは、会場で現物を見るだけ、なのです。
期間中、連続記念講演会やロシア・アニメーションの上映会も行なわれます
(いずれも来館者対象・無料)。
日時:7月3日(土)〜9月5日(日)
毎月第2・第4水曜日(祝祭日の場合は開館し、翌日休館)
場所:庭園美術館
〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9
Tel.03-3443-0201
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/ehon/index.html
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■もっとピントがボケる音 樽本周馬
(3)とにかく全ての文章を収録したい!
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「安田謙一が書いたコラムを集めた本を作る」と決まり、まずどういう形の本
にするべきか悩んだ。彼が書いている文章というのは、ほとんどが600字程度
で長くて1500字、というのがほとんどで(600字というのはディスクレビュ
ーやミニコミのコラムでは標準的な字数で、彼自身肩書きを「600字の男」に
していたこともある)、一般的な本のように1段組で並べたら、ほんの少しし
か収録できないし、全てを入れようとしたら全10巻ぐらいになってしまう。
彼が今までに書いた文章すべてに愛着があり、また読み応えがあると信じてい
る人間としては、今回の初単行本に出来るだけ詰め込みたい。そこで導入した
のが、植草甚一・小林信彦の〈晶文社・ヴァラエティ・ブック〉スタイルである。
本メルマガを購読している方には説明不要だと思いますが、2段3段組あた
りまえ4段まで字を詰め込み、コラム・評論・対談などごちゃまぜに収録、と
きには他人の原稿まで挿入される、というのがヴァラエティ・ブック。有名な
のは植草甚一『ワンダー植草・甚一ランド』、小林信彦『東京のロビンソン・
クルーソー』で、いずれも晶文社の津野海太郎さんが編集したものである。お
そらく津野氏も植草・小林両氏のコラムを集めた本を作ろうと思ったとき、そ
のハンパじゃない量に呆然としたはずで、1冊になるたけたくさんの文章を収
録するため無理矢理ぶち込んだ結果があの形式なのだろう(と、今まで津野氏
が発表したエッセイを思い出しながら書いてますが、実際のところは先月から
「本の雑誌」で連載が始まった津野氏の晶文社サブカルチャー時代回顧エッセ
イで明らかにされるでしょう)。とくに小林信彦のコラムは最初にあれだけ詰
め込んでも、その後同じスタイルで二冊ぐらい刊行される量だった。ヴァラエ
ティブックといえば聞こえがいいが、とにかく全ての文章を収録したい、とい
うワガママな欲望を実現するための、しかし切実な、窮余の一策でもあったわ
けだ。
そして、安田謙一の場合も同じく、とにかく詰め込むためにはヴァラエティ
ブックの形式しか無い、のだった。ここで以前に晶文社で出た坪内祐三さんに
よるヴァラエティブック『古くさいぞ、わたしは』との決定的な違いがあると
思われる。坪内氏の本はあとがきでも書かれているように「ヴァラエティブッ
クを作ってみたかった」という願望を形にしたものである。そこに植草・小林
ヴァラエティブックに見られるような切実さはない。なによりも、私はあの本
が出たとき、その〈白さ〉にがっかりしたものだ。「字が詰まってない!」と。
字が詰まってないのはヴァラエティブックじゃない。
私自身ヴァラエティブックは大好きなのだが、オブセッションと言えるよう
な思い入れはない。『ピントがボケる音』で導入したスタイルはあくまで「そ
れしかない」からそうしたまでで──とはいえ、四段組の字数や版面、使用字
体など晶文社の本とまったく同じにするという完コピに近いノリでやったので、
前段の切実さ云々のハナシは忘れてください。ところでポップカルチャー本と
して先輩本にあたる川勝正幸著『ポップ中毒者の手記(約10年分)』は本文が
ゴチック書体の大きな文字で印刷されていて、晶文社本とはまったく関係ない
ように思えるが、その後川勝さんに聞いたところによると、晶文社ヴァラエテ
ィブックには大変思い入れがあるので、あえてそれは避けた、そうである。
で、安田さんはというと、ヴァラエティブックにはあまり思い入れはなく、な
にしろどんな体裁がいいかと相談していたときに「こういうのがイイネ!」と
言ったのが、ばばかよ著『ピクニッキズム』(扶桑社)だったので。
(つづく)
〈たるもと・しゅうま〉1974年奈良県生まれ。2000年より国書刊行会勤務。
担当書籍に『吉屋信子乙女小説コレクション』『鴨居羊子コレクション』『国
書刊行会SF・未来の文学』など。
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■新刊書店の奥の院 荒木幸葉
(14)最終回 東京をはなれて、の巻
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【5月末日】
14年間住んだ東京のアパートの引越日。N販の段ボール(指一本で開閉でき
る逸品)が6畳の部屋にぎっしり、うず高く詰まれ、倉庫状態。納品だとおも
えば、コンテナ台車か、パレット(すのこを大きくしたようなもの)&ビシャ
モン(と呼んでいたけれど、手動式小型リフト、かなあ。)さえあれば、ガガ
ーッと5分で詰み込み完了なんだろうけれど、そんなものはおろか、エレベー
ターすらないうえに、やたらと本が多く、業者さんに嫌がられる。
【6月某日】
羽田から小松空港へ。着陸前、みたことのない夕日の光景に言葉をうしなう。
あわいピンクとブルーと擦りガラスのような白のグラデーション。コロンバン
の包み紙みたいな。
【某日】
縁もゆかりもない土地でのくらし、3日目。朝日がとてもまぶしくて、めず
らしく5時ごろから目がさめ、ぼーっとしていると、祖父が大往生した、と実
家から電話。引越の荷物が届く予定だったが、急きょ、特急「サンダーバード」
と新幹線をのりついで、帰省。
【某日】
食卓の祖父の椅子のまわりで、飼い犬が、くんくん匂いをかいでいる。葬儀
屋の若い女の人が、ハイヒールで棺を抱えてきた。故人のゆかりのものをおさ
めてくださいというので、最近、ひっぱりだしては何度も読んでいたという本
を母がさしだすと、「書籍は燃えにくいので、火が通りやすいようにします。」
と、ページをジグザグ折りかえしていた。
旭川にうつる夕やけは、瀬戸内のみかん色。
【某日】
山から山へと雄々しく送電線を橋渡しする、ジャンボ鉄塔に目を細めながら、
飛騨高山へ。中心部は観光客で混んでいるので、高山ラーメン(超お醤油味)
と、串刺し飛騨牛1本を食すのみで退散し、山のそばにある、家具メーカの工
場でテーブルと椅子を注文する。かえりみち、鉱山の町をとおると、線路がみ
えたので、立ち寄る。「神岡鉄道」という第3セクターの鉱山列車駅。待ち合
い室には、『ハックルベリーフィンの冒険』やら、『労働組合ハンドブック』
やら、全集の端本やらがまばらに置かれた本棚と、旅館の床の間にあるよう赤
いテレビ。カタカタとチャンネルをまわしてみたけれど、砂嵐ばかり。
【某日】
自転車が届いたので、うれしくて、のりまわす。戦災にあっていない町らし
く、お寺や、古い民家がたくさん残っている。その一角にある美容院に勇気を
だしてはいってみる。引き戸をあけると、丸い砂利をかためた土間がつづき、
あじさいが生けてある。おばあちゃんちにきたみたい。花村萬月が好きで、江
國香織がきらいという同い年のお姉さんに、漆喰の壁の前で髪を切ってもらい
ながら、きのうスーパーではじめて見た、この土地ならではの野菜(フキのよ
うなもの)は、どうやって食べるのかを聞く。聞くだけ。
【某日】
室生犀星記念館にいった帰り道、おなかがすいて、犀川大橋のたもとにある
和菓子屋に駆け込み、おまんじゅう一つ、夕方だからと、100円を80円にして
もらう。店頭のちいさな水槽で、手のひら大の金魚が、ぶつかりながら泳いで
いた。河原に自転車をとめて、おまんじゅう片手に、「蜜のあわれ」をよみは
じめる。偶然にも金魚のおはなし。
【某日】
本屋にいく。ざっと平積みを見渡しても、なじみのない表紙が増えてきた。
自分のなかで、どんどん本屋が遠くなっていくかんじがして、心細くなってい
く気持ちと、しばらく、本から遠ざかっていたいという気持ちがけんかして、
どうしていいかわからなくなる。ちょうど、夏の文庫100册のフェアをだして
いるところにでくわす。パンダのかざりものをうれしそうに、あっちにかざっ
てみたり、こっちにつけかえてみたりしている店員さんをみて、じんわりして
しまって、あわてて店をでて、しばらく自転車をこいでみたけれど、とめた先
は、また別の本屋だったりするのでした。
〈あらき・さちよ〉元書店員。在職中は、本当に多くの方々に助けられました。
厚く御礼申し上げます。引越してからまだ1箱もあけられずにいる、本の段ボ
ールが片づくころには、なんとかなってるといいなあ。
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■大阪豆ごほん 柴田尚美(おまめ)
(9)本屋ではないところで本に出合う
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子どもの頃、私が行く本屋は商店街にあって、魚屋の向かいにあるので生臭
い臭いのするのが本屋のイメージ。買い物について行くと、本屋へ寄ってくれ
るのかどうか、魚を買う時期待と不安でドキドキした。魚を買って本屋を素通
りすることがわかった時、うるんだ目で本屋をながめる私を見て、胸が痛んだ
と母が言うのを聞いたことがある。
大人になって、本屋は生臭くなく紙の匂いのする空間になった。自分の意志
でいつでも入れて、自分が許せばいくらでも買えるようになった。小銭を握っ
て買いたいのを我慢して1册を選んだ頃、大人になったら思いっきり買ってみ
たいと思い、スーパーで買い物をするように欲しいものを次ぎ次ぎ腕に抱え、
レジにどっさり積み差し出した爽快感は忘れられない。
しかし、それもどれも満たされたら、本屋にあまり行かなくなった。あのワ
クワクした気持ちがそれほどに感じられなくなった。そして、本をあまり買わ
なくなった。それでもたまに買う時、それは本屋ではないところで出合う本の
場合が多い。例えばふらりと入った喫茶店、家具屋、パン屋など。一番最近買
った本が三重の関宿にある器とカフェの店にあった小泉誠『デザインの素』(ラ
トルズ)2500円。箸置きから住宅まで、うるさいウンチクではなくわかりや
すく簡単にそして素敵にデザインされているものたちが紹介されている。本の
デザインも編集もいい感じ。そして、製本が美篶堂さんだったのがまたよかった。
本屋で買うのもよし、本屋で買わなくともよし、でも本屋以外で出合う本の
方がなんとなく「出合い」を感じて買ってしまう近頃なのである。
〈しばた・なおみ〉小冊子「おまめ」発行人。 ショップ「おまめ」店主。豆
本製作。今月末まで、米子の「青杏文庫」で、「豆本とポチ袋展」を開催中。
31日(土)には、豆本講座を開きます(要予約)。
http://www.imaibooks.co.jp/seian/gallery/index.html
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
地下鉄四ツ橋線四ツ橋駅下車6番出口西へ徒歩2分/地下鉄長堀鶴見緑地線西
大橋駅下車徒歩5分
土日:12:00〜19:00(最終土日はお休み) 8月はお休みです。
http://homepage1.nifty.com/omame/
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■酒とつまみと営業の日々 大竹聡
(14)ミニコミ誌の広告料金って!
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前回に引き続き『酒とつまみ』広告問題である。第2号まで1本の広告もな
かったところへ、先輩のミニコミ雑誌2誌から交換広告の話が持ち上がり、編
集部では俄然、「広告なんとかしようぜ話」に熱が入ってきた。
が、名案なんぞ浮かぶはずもない。胃薬とか肝臓機能を強化する薬などが最
適と思うが、相手が製薬会社ともなれば広告代理店抜きに営業などかけられる
ものではない。20代の頃、求人広告の営業を経験している私は、広告1本を受
注するまでのプロセスが並大抵のことでないことだけは知っている。知ってい
るだけに気持ちが萎えて萎えて、よっしゃ、やったるで、という気にぜんぜん
ならないのだ。
とはいえ、3分の1ページの交換広告が2本入ることは先に決まったので、
せめて残りの3分の1ページを埋めなくてはならない。ならば、まず、掲載料
金を決めなくてはならない。いくらにすればいいのか。1万円か? 2万円か?
それが高いのか安いのか、まるでわからない。
わからないままある深夜、吉祥寺の「ハバナムーン」でビールを飲んでいる
と、そこへ某大手出版社の女性編集者が来た。彼女は部数の多い雑誌の編集者
なので、近くに座ったことをいいことに、思い切って聞いてみた。
「酒とつまみの広告料を決めたいんだけど、あなたの雑誌ではいくらくらい?」
彼女はまず、とてつもない発行部数を口にした。100万部を越えているのだ。
我らが『酒とつまみ』は堂々の2000部である。なんと、500分の1以下なのだ。
「それで広告のさあ、媒体料は?」
彼女はまたもや、とてつもない数を口にしたのである。200万円を越えてい
たのだ。いや、越えてなかったか。あまりに動転してよく覚えていない。でも
まあ、常識的に考えて、1ページ200万円は、あり得ない話ではない。私自身、
若い頃、バブル期とはいえ1ページ100万円以上の広告を扱っていた。
さて『酒とつまみ』だ。女性編集者がつくっている雑誌は100万部発行して
1ページあたり200万円。『酒とつまみ』は2000部、発行部数は500分の1だ
から、200万円を500で割ると、ああ! 1ページ4000円になったではないか!
しかも小誌はオールモノクロである。普通、カラーよりモノクロは安いのだ。
だから、常識的に考えたら2500円くらいしかもらえないということがわかった。
私は落胆した。ナニが1万円だ! 2500円がいいところよ! へッ、2500円
だって? 泣けてくる……。
しかし、である。我らが『酒とつまみ』はここでもまた、幸運に恵まれる。
第3号の編集作業も大詰めに差しかかった夏の初め、京都の染色作家から、有
料の広告掲載の申し出があった。広告主は、小誌デザインを担当するIさんの、
背の高い友人であった。広告媒体料は8000円、制作費が2000円、合計1万円
で、商談が成立。ついに、『酒とつまみ』に有料広告が入ることが、決定した。
〈おおたけ・さとし〉『酒とつまみ』編集発行人
6月末、創刊第5号が完成し、ほぼ1週間かけて書店を巡り、納品ラッシュ。
納品は嬉しいが、その時点で差し替えに返品もあるからときには悲しい思いも
する。それでも、数えてみたら取り扱い書店数が80店舗にもなって編集部一同、
雄叫びを上げる今日この頃。
http://www.saketsuma.com
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■版元様の御殿拝見 塩山芳明
(22)沖積舎の巻 天津敏が出てきそうな木造オンボロ2階建て
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アストラの“モルタル風ビルもどき”、あかね書房の“プレハブ社屋”に続
く、〈版元様のオンボロ御殿シリーズ第3弾〉、とでも言おうか? 学藝出版、
沖積舎の建物の小汚なさは、半端じゃない(舗道に場末のスナック風の、社名
入りの白い看板。建物との落差がおかしい)。千代田区神保町1-52。水道橋
駅から白山通りの左側を古本屋街方向へ直進。中古レコード屋、「トニーレコ
ード」の角を左折してすぐ。
放火にゃうってつけの、木造オンボロ2階建て。1階は倉庫なのか、シャッ
ターが閉じたまま。2階が事務所らしい。左側につんのめりそうな木造階段。
丁度田舎の役場の係長風の、ワイシャツ姿のオッサンがチンタラ階段を降りて
来る。「さぁて今日の昼飯は、牛丼太郎にするか、それともGTPが高目だし、
平禄寿司の方が?」とでも考えてるの?(「トニーレコード」の反対側並びに
「牛丼太郎」。『貧乏人新聞』第3号での、松本哉の同店の牛丼研究は抱腹絶
倒だった。なお、近所の「平禄寿司」の銀ブチ眼鏡のおばちゃんは、飯田橋の
潮出版社の向かいにある、「松屋」が「平禄〜」だった頃から回転寿司一筋の
“筋者”。知っても何の得にもならない豆知識)。
73年の設立と(連合赤軍事件の翌年)。2000年発行の折りたたみ式図書目
録を開く。詩集、歌集、句集、をメインに、永田耕衣、種村季弘、寺山修司、
小栗虫太郎他のビッグネームが並ぶが、ちょっとズレてると言うか、“遅れて
来た現代思潮社”というイメージがぬぐえない。正直なとこ、同社の本は2〜
3冊しか持っていない。そもそも本屋でまず見かけないし、直接“御殿”を訪
ねてと思う程の訴求力は、各出版物に感じない。
それより何より、定価で買うのがアホらしい。実は沖積舎にはもう一つの顔
が。未知谷、タッシェンジャパン、青弓社、フィルム・アート社、ギャップ出
版社他と並ぶ(04年夏現在)、神保町ゾッキ市場におけるキングメーカー(悪
役で言うなら、天津敏、内田朝雄クラスだ)。
国書刊行会は体質改善したのか、昨今めったに流さないし、夏目書房はデカ
イまぐれ当たりで虹の彼方へ(ウッフン。また戻ってらしてネ!)。とにかく
市場での息が長い。小沢書店や社会思想社のように、ちゃんと倒産した社の物
なら在庫が途切れればそれまでだが、沖積舎、タッシェンジャパン、青弓社の
3大キングメーカーは、確信的にゾッキを永続的営業分野にしてる感じ。
立派だ。すこしも恥ずかしい事じゃない。我がエロ本業界、特に高定価なグ
ラフ誌関係じゃ、コレは昔からの常識。最初からゾッキの事を考え馬鹿高い値
段を。硬派人文系出版社も、やっとエロ本屋の境地に達したかと、2000円で
「日本特価書籍」で買った、覆刻版『紅殻駱駝の秘密』(小栗虫太郎・本体
7000円)の外箱をなぜながらシミジミ(読む気は毛頭ない)。
沖積舎が天津敏(忍者味)、青弓社が内田朝雄(エロ味)、タッシェンジャ
パンは少々バタ臭い二本柳寛(パツキン味)か、などと考えながら、再び同社
前を古本屋に行く途中フラフラ(木造階段と書いたが、金属製だったかもとの
疑念が)。やはり木造だったが、フッと思う。あのオッサン、勝手に自らの生
活水準から、「牛丼太郎」や「平禄寿司」に行くもんと決めていたが、本当は
「ランチョン」や「ボンティ」だったのかもと。いい証拠が昔からゾッキで
儲けてるエロ本屋の社長共。愛人は囲うは外車は買うは、余程ボロいと見え多
くが息子に世襲(社員の給料や下請け料は糞安いのに)。各キングメーカー、
お世継ぎ問題はいかに!?
〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。なお、この連載に関しての批
判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(ただし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/
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■あとがき
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今回で荒木幸葉さんの連載が終わります。第一回は2002年8月でした。毎
回、本屋の売り場で拾った、本をめぐる話題を提供してくれました。この二年
間で、彼女の担当は頻繁に代り、正直、コラム書いてるどころじゃない場合も
あったみたいですが、休載を挟みながらよく続いたと思います。書店を辞め、
新天地での暮しがはじまったワケですが、落ち着いてきたらまた、定期的に書
いていただくつもりです。ご期待ください。
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