2004.8.5.発行 vol.175 [夏の読書 号]

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■■ [書評]のメルマガ                        2004.8.5発行  
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■                                              vol.175
■■     mailmagazine of book reviews   [ 夏の読書 号] 
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。遠くの展覧会がオモシロイ!
★「もっとピントがボケる音」樽本周馬
 →2003年度の話題作、安田謙一『ピントがボケる音』が生まれるまで。
★「大阪豆ごほん」次田史季(ちょうちょぼっこ)
 →北堀江のふたつの「本スポット」から届く、楽しくて美味しいお便り。
★「私選 東京〈本読み場〉ガイド」高野麻結子
 →どこで読んだってイイけど、どうせなら気持ちのいい場所で読みたい。
★「酒とつまみと営業の日々」大竹聡
 →各方面で話題沸騰のミニコミ「酒とつまみ」の営業秘話です。大好評。
★「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →新幹線通勤中に毎日一冊は本を読む男が版元の社屋を徘徊します。
★「かねたくの読まずにホメる」金子拓
 →買ったときから、いや手にしたときから読書ははじまっているのです。

*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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【トピックス】
★モクローくん大感謝祭
 7月30日から千駄木の「古書ほうろう」で開催されている「第一回モクロ
ーくん大感謝祭」。モクローくんこと南陀楼綾繁とモク妻こと内澤旬子がつく
る世界で唯一の古書目録愛好フリーペーパー「モクローくん通信」。この「モ
ク通」の愛読者や古本好きの方に向けて、古本やミニコミの展示販売を行なっ
ています。初日のイベントには47人もの方が集まってくれました。感謝。期間
中、展示・販売物は頻繁に入れ替えますので、どうぞ覗いてください。

〔古書モクロー〕
初めて古本販売に挑戦。一冊ずつにコメント付きの値札が貼ってあります。
「自分だったら買うだろう」という値段に設定したツモリです。また、紙モノ
コーナーでは、絵葉書、マッチラベル、チラシ、雑誌付録などを放出。音楽CD
も販売しています。

〔モクローくん通信と物数奇工房関連〕
「モクローくん通信」バックナンバーセット(500円)、モクローくんマッチ
(100円)、モクローくん扇子(2500円)など。また、モクローくんのミニコミ
「物数奇」「日記日和」も、残部僅少を売り尽します。もちろん、新刊『ナン
ダロウアヤシゲな日々』サイン本もあります。

〔関連ミニコミ〕
モクローくんが寄稿したミニコミ「酒とつまみ」「ぐるり」「ifeel」「BOOKISH」
「田中小実昌の本」を販売。噂の「月の輪書林古書目録」もココで買えます。
また、初日イベントに出演の河内紀さんの著書『ラジオの学校』(筑摩書房)
も販売中。

〔モクローくんのお宝本〕
店頭の展示台で、モクローくんのささやかなコレクションを公開します。期間
前半はチェコで買ってきた本を展示中。ヨゼフ・ラダの絵本と、ヨゼフ・チャ
ペックの装幀本が中心です。目下の一番人気は、『だあしえんか』(昭和9年)
です。なんと戦前に忠実な翻訳が出ていたんですねえ。後半は花森安治が装幀
した本や雑誌を展示する予定です。また、本棚では内澤旬子が集めた「イイ顔&
イイ動物」表紙のコレクションも展示しています。

期間:8月22日(日)まで
時間:月〜土 10:00〜23:00
   日・祝 12:00〜20:00
   期間中は無休。ただし、8月6日(金)は映画『戦場の夏休み』上映会
   のため、通常営業は19:00までとなります。
場所:古書ほうろう
   東京都文京区千駄木3-25-5 (千代田線千駄木、西日暮里から各5分)
   TEL/FAX 03-3824-3388
   e-mail horo@yanesen.net
http://www.yanesen.net/diary/horo/

★『文筆生活の現場』関連イベント
 佐野眞一、斎藤貴男、藤井誠二、武田徹、大泉実成ら、「ライフワークとし
てのノンフィクション」にこだわる書き手が、自らの文筆生活と意識を赤裸々
に語った本、『文筆生活の現場 ライフワークとしてのノンフィクション』
(石井政之編著、中公新書ラクレ)刊行を記念して、以下のイベントが行われ
ます。

その1:出版ネッツ寄り合い「文筆生活の現場 ライフワークとしてのノンフ
ィクション」

同書編集委員を務めた4人のフリーランス・ジャーナリストによるディスカッ
ション。
司会     石井政之
パネリスト  烏賀陽弘道、粥川準二、森健

日時:8月7日(土)午後1時半
会場:出版労連会議室(TEL 03-3816-2911)
中央線・地下鉄:御茶ノ水駅、地下鉄:本郷3丁目駅
参加費:1000円(予定)
主催・問い合わせ:出版労連
http://www.jca.apc.org/NETS/

その2:渡辺一史・石井政之トークショー&サイン会
「自分探し」の戦場にて〜障害・コンプレックスと向き合うこと〜

 顔にアザがあるというコンプレックスと向き合うことで、ライターとしての
人生を切り開いてきた石井政之氏。重度身体障害者とのかかわりの中で、自ら
のボランティア体験を『こんな夜更けにバナナかよ』(北海道新聞社)として
刊行した渡辺一史氏。<障害><コンプレックス>をキーワードに、2人の気
鋭のライターが「自分探し」にあえぐ現代の若者の内面とその特質について、
自分達の体験を踏まえながら語り合います。

日時: 8月22日(日)15:00〜17:00
場所: BookDepot書楽 2Fイタリアンレストラン「アグリコ」
参加費:1000円 (フリードリンク)  ※手話通訳あります。
問合せ:0120-4946-19  担当:渡辺・倉嶋 まで
ブックデポ書楽 外商部渡辺
http://www.syoraku.co.jp/
住所 〒さいたま市中央区2-3-5アルーサB館
Tel 048-852-6581 Fax 048-852-6721

また、bk1で『文筆生活の現場』特設ページが開設されました。執筆者の著
書が購入できます。
http://www.bk1.co.jp/s/bunpitsu/

【映画】
★「社会派コメディの変遷 渋谷実と前田陽一」
 千石の三百人劇場では、現在「巨星 小林正樹の世界」が上映中(〜15日
まで)。『切腹』や『上意討ち 拝領妻始末』をスクリーンで観直したいのだ
が、そのあとにも、渋谷実&前田陽一という特集が控えている。前田陽一は松
竹大船で渋谷実の助監督についている。作風は違うし、「社会派コメディ」と
いうくくりが正しいかどうかは判らないが、二人ともワリと好きな監督だ。と
くに好きなのは、渋谷の『自由学校』と前田の『ちんころ海女っこ』。前田な
ど、昔は名画座三本立ての常連だったのに、いまは観る機会がホトンドなくな
ってしまった。この機会にまとめて観ておきたい。
 ぼくが観たいのは、渋谷……『もず』『青銅の基督』『やっさもっさ』『悪
女の季節』『酔っぱらい天国』、前田……『七つの顔の女』『喜劇 右むけェ
左!』『三億円をつかまえろ』といったあたり。さて、何本観られるかな?

期間:8月16日(月)〜9月12日(日)
場所:三百人劇場
http://www.bekkoame.ne.jp/~darts/pagejb.html

【展覧会】
★「真尾倍弘・悦子展」【開催中】
 真尾倍弘(ましお・ますひろ)は、終戦後、前田出版社で「文壇」という雑
誌の編集長をつとめていた(同社には、のちに書肆ユリイカを興す伊達得夫が
いた)。悦子はこの時期のことをのちに『阿佐ヶ谷貧乏物語』(筑摩書房)に
書いている。この二人はその後、平市に行き、そこで手動印刷機を買って「氾
濫社」と名乗り、「月刊いわき」という郷土雑誌を発行した。
 悦子がその時期のことを書いた『たった二人の工場(こうば)から』(未来
社)は、涙なしには読めない。ココまで悲惨なのに、雑誌づくりのことを考え
るだけで明るくなれるとう辺りも、他人事とは思えず。
 いわき市の草野心平記念文学館では、この「氾濫社」の活動を中心に、詩人・
真尾倍弘、作家・真尾悦子の生涯と作品を紹介する展覧会を行なう。先に通販
で図録を買ったが、一枚一枚の写真を眺めているだけで、こんなスゴイ人たち
がいたのかと尊敬の念が高まった。ぼくは会場に足を運べるか判らないが、お
近くの方はぜひ行ってみてください。
 なお、展覧会には関係ないが、8月20日(金)18時30分〜 高田渡のコン
サートが開かれる(無料)。こっちも必聴!

期間:9月12日(日)まで
開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)              
月曜、7月20日(7月19日は開館)休館
場所:草野心平記念文学館
〒979-3122 福島県いわき市小川町高萩字下夕道1-39
TEL (0246) 83-0005 FAX (0246) 83-2939
http://www.k-shimpei.jp/

★企画展「小樽・札幌古本屋物語」
 ユニークな企画を(たぶん)低予算で実現してきた小樽文学館が、またオモ
シロそうな展覧会を行ないます。
「喫茶店、市場とともに少なくなりつつある、街のなかの古書店は、店主と客、
あるいは客どうしが本を通して対話を交わす場所である。また一冊一冊の古書
は、複数の蔵書家の堆積によって、本の中味とは別の物語をはらんでいる。そ
のような古書と古書店をめぐる興味深い知識とエピソードを展示紹介する」
 ああ、一度は行きたいなあ。

日時:9月3日(金)〜11月3日(水) 月曜休館
場所:小樽文学館
〒047-0031
小樽市色内1丁目9番5号
TEL:0134-32-2388
http://www4.ocn.ne.jp/~otarubun/bungakukan/yakataindex.html

【買えないけど気になる本】
★復刻版『兵隊』刀水書房
 日中戦争中から昭和19年まで、広東で軍報道部が発行する兵隊の投稿雑誌
があった、しかも初代編集長は火野葦平……なんてコトはじめて知りました。
全国の図書館でも所蔵がホトンドないという、その『兵隊』全36冊が復刻さ
れました。当時にあって、一切の検閲がないという驚くべき雑誌(パンフにあ
るように「戦時下の自由」とまで云えるかは保留しますが)。神保町の三省堂
書店で見たけど、復刻としてのクオリティもかなり高いです。

仕様:合本4分冊、上製、箱入り/総1942ページ。
定価:本体3万円
問い合わせ:刀水書房 Tel 03-3261-6190 Fax 03-3261-2234

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■もっとピントがボケる音  樽本周馬
(4)こんな本に関われたという幸福
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 さて、これから編集作業へと入る。まずテキストデータで残っているものは
全て送ってもらったが、ここ2、3年分しか無かったので、あとはスキャンす
るか手打ちすることになった。「ミュージックマガジン」「レコードコレクタ
ーズ」他、安田謙一文章が載っている雑誌・書籍を安田さん自身の所蔵のもの
を送ってもらう。奥様のいれめさんによる丁寧なアーカイブがあったので助か
りました。以後、資料をただひたすらコピーして手打ちしてパソコン上でレイ
アウトして、という作業を3ヶ月程続ける(至福の時!)。この作業中で編集
部の誰からも一切干渉されなかったのは不思議だが、そういう出版社なのです。
安田さんの書いた文章はほぼ全て記憶している(!)という根拠のない自信が
あったので、構成は一応こちらでざっと作り、それを安田さんがチェック、厳
密に取捨選択してほぼ完成となった。加筆訂正がほとんど無く、今更ながら元
の文章の完成度の高さに驚いた。

 取捨選択過程で泣く泣くはずしたのが「エル・マガジン」連載の「ヒット100
上から見るか下から見るか」という歌謡曲批評。オリコンランキングから気に
なる曲をピックアップする連載(イラストはキング・ジョー。これも最高)で、
第1回がなんと話題になる前の「大泉逸郎/孫」。以降まだどこの馬の骨とも…
な平井堅やモーニング娘。関係のものを丁寧に的確に解読した文章は間違いな
く近田春夫『気分は歌謡曲』を超えている。のだが、やはり全部載せるのは無
理で、かといって抜粋はイヤなので今回はパスということになった。いずれ安
田謙一コラム集2冊目に入れてほしいものです。

 そろそろ外回りを整える段階までたどり着いた。オビ推薦文は小西康陽さん
にお願いする。小西康陽著『これは恋ではない』がなければ『ピンボケ』はな
かったといっても過言ではない。小西さんは超多忙のなか素晴らしい推薦文を
書いてくださった。私自身ピチカートマニア!だったので、天にも昇る気分で
した。ちなみに小西さんが推薦文を書いた本はいまのところ『ピンボケ』だけ
では?(レコードは無数にあるけれど)というのが少し嬉しい事実。装幀は学
生時代からの友人、立花之輝に頼む。新進気鋭のデザイナーの彼もまだ書籍の
デザインはしたことがなかった。私にとっても初めての本なので、彼も初めて、
でいいじゃないか、ということで、いまだに本屋で見かけても静かに目立つか
っこいい装幀をしてくれた。本文イラストは『花形文化通信』時代から安田さ
んと付き合いのある辻井タカヒロさん(現在「CDジャーナル」で二人の連載
「ロックンロール・ストーブリーグ」が読めます)。辻井さんのイラストが入
ったあとでやっと『ピントがボケる音』は〈ヴァラエティブック〉となった。

 そして。『ピントがボケる音』を作る上で安田さんが唯一絶対的注文として
出したのが、カバーイラストを本秀康さんに頼むということ。もとからお二人
はファン同士(?)だったので、問題なく成立。本当にファンタスティックな
イラストを描いていただき、安田さんと二人で歓びでむせび泣きました。さら
に感動したのが本さんによるカバーストーリー。──どこかの国が国おこしの
ために異常に巨大なレコードプレイヤーがついた宮殿を建てる。それは1年の
ある時期だけ回転し、妙なる音楽を奏でるという。それを聞いた安田謙一は早
速観光に訪れるが、その日は回転する時期ではなかったので、巨大なレコード
盤は静止したまま。しょうがないので記念撮影だけして帰る。写真を現像して
みるとピンぼけ写真の中でアラ不思議、ワザワザ何もない国まで足を運んでく
れた安田さんをねぎらう音楽の妖精たちが素敵な音楽を奏でているではありま
せんか……! このストーリーを聞いて、改めて、これほどに幸せな本はない、
と確信し、そうした本に関われた事を神に深く深く感謝したのでした。もっと
売れてもいい本だ。                  (次回完結)

「ちょっとピントがボケる音」
http://www.kokusho.co.jp/outoffocus/index.html
デザイナー立花氏が作ってくれた『ピンボケ』公式HP。カバー・本扉のキャ
ラがかわゆく動きます。内容を立ち読みも出来るので是非ご覧下さい。

〈たるもと・しゅうま〉1974年奈良県生まれ。2000年より国書刊行会勤務。
担当書籍に『吉屋信子乙女小説コレクション』『鴨居羊子コレクション』『国
書刊行会SF・未来の文学』など。

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■大阪豆ごほん  福島杏子(ちょうちょぼっこ)
(10)旅の途中の古本屋
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 年に数回、どこか遠くへでかけたくなることがあります。コレといった目的
はありませんが、見聞を広めたい、おいしいものが食べたいという欲にまかせ
てでかけます。

 この4月には喜界島・奄美大島へ足をむけました。喜界島はその得も言われ
ぬ名前と黒糖焼酎の産地であることから心惹かれました。隆起珊瑚でできた喜
界島は平坦な土地のため、第二次世界大戦中に航空母艦と間違われ空襲をひど
くうけたといういわれが残っています。観光地化していないためとてものんび
りとした雰囲気を味わえますが、残念なことに、本屋も古本屋も見あたりませ
んでした。それでも、バスの中で女子高生のようにおしゃべりを楽しむおばあ
ちゃん、その日に口にする魚は船を出して釣りに行く民宿のおじさん、観光客
であるわたしたちにめいっぱいお土産をわたす飲み屋のおっちゃん、食用に飼
っているヤギが犬に食べられたと驚いた様子もなく話すおっさんなどとの出会
いに新鮮な気持ちになりました。

 その喜界島から早朝に発つ一日一便のフェリーに乗り込み奄美大島へ渡りま
した。ここはご存知の方も多いでしょうがビルも建ち車も多く行きかう街です。
奄美大島の名瀬市で2軒の古本屋へ行きました。1軒は「海邦塾書店」。ここ
のオーナーさんは塾経営と平行して古本屋を営んでいます。6畳ほどの店内に
は背の高い本棚が置かれ、人が3人も入ったらいっぱいという小さな古本屋さ
んです。マンガ、文庫、文芸書などが所狭しと置かれています。やはり奄美大
島という土地柄、島尾敏雄の本がドカンと。寺山修司や金井美恵子などもあり
ました。『冬枯れの美』小堀杏奴を購入。もう1軒は「本処 あまみ庵」。こ
こは2階建てで、1階には均一本と暮し関係の古本、階段途中には美術本、2
階にはマンガ、小説などが置かれ比較的誰もが入りやすい古本屋です。なんと
いっても2階奥には郷土資料の本が充実するコーナーがあります。他ではなか
なか手に入らないだろう奄美大島関連の書物(歴史もの、民俗学もの、郷土料
理のレシピなど)がそろっているので必見!『HORIZON』という奄美大島のグ
ラビア誌も手に入ります。

 奄美地方というと独自の文化が培われてきた土地だと思うのですが、本屋も
古本屋も今となってはヤマトンチュウのことばであふれています。奄美語で書
かれた書物自体が少ないのかもしれませんが、なにかしら奄美ならではの紙モ
ノを見つけられなかったことが残念でした。

 旅先という特異な土地でふらっとみつけた古本屋さんでおもしろい発見をし
たいものです。

〈ふくしま・きょうこ〉貸本喫茶ちょうちょぼっこのメンバー。このところ将
来年金がもらえるのか気になり、老後のための貯蓄など考えています。城夏子
さんのように、老いてもパンタロンにド派手なサングラスなんてかけて陽気に
過ごしたい。

貸本喫茶ちょうちょぼっこ
〒550-0014 大阪市西区北堀江1-14-21 第一北堀江ビル4F
地下鉄四ツ橋線四ツ橋駅下車6番出口西へ徒歩2分/地下鉄長堀鶴見緑地線西
大橋駅下車徒歩5分
金  :18:00〜22:00/土日:13:00〜21:00
http://www.nk.rim.or.jp/~apricot/chochobocko.html

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■私選 東京〈本読み場〉ガイド 高野麻結子
(8)緑の森の先の白い建物  都立中央図書館の喫茶ルーム
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 夏の図書館の思い出は、京都の小さな寺のお堂に似ている。それは暗くてひ
んやりとして、シーンと静まったこちら側から眺めた庭の風景のような、読書
感想文の課題図書に貼られた丸いシールを手で触れたときの感触のような、暑
さで惚けた自分が音や香り、それらの五感によって我に返る空間。

 地下鉄の広尾駅の階段を、汗を拭き拭き上がっていくと、ゆるやかに続く坂
道と、その左手には有栖川宮記念公園。そしてその緑の森の先に見える白い建
物は、いわずと知れた都立中央図書館。

 この5階に喫茶ルームがあります。司法試験の受験生や、70代くらいのおじ
いさんに混じって薄暗いその空間でひと息つけば、大きな窓の向こうに東京タ
ワーが見える。

 そこで開いた一冊は、『ナイン・インタビューズ −柴田元幸と9人の作家
たち−』(柴田元幸/アルク発行)。ポール・オースターの『ムーン・パレス』、
リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』などの翻訳を手がけた氏
が、海外の8人の作家と、村上春樹氏の計9人に試みたインタビューを収録し
たもの。原文とその日本語訳で構成され、彼らが自作、文学、人生について語
っているのですが、一番の魅力は、この本、CDが付いているのです。インタ
ビュー時の。作家の生の声を聞き、その文章を目で辿ることができる。対談の
中で彼らは選ぶ言葉に迷ったり、興奮して語調が強くなったり、意外と自作に
対して素っ気なかったり。その場面の一つ一つが目の前で、再生されるのです。
もともとこれは、発行元アルクの英語雑誌『English Journal』の連載に大幅
に手を加えて出版されたものですが、語学目的だけではもったいない。耳から
入ってくるそれらの言葉、語られる意味が分からなくても、いいのです。もち
ろん自分もその一人。読書にこれだけ不向きな季節はないけれど、時間だけは
たっぷりある。新しい何かに期待したい、今年の夏の課題図書にお薦めです。

 ここから再び下界に降りるまで、しばし心おきなく読書に浸れる貴重な空間。
ダレ気味な日々に気持ちよい風を吹き込んでくれること、保証します。

◆都立中央図書館
   港区南麻布5-7-13
   http://www.library.metro.tokyo.jp/
   ※個人の資料貸出しはしていません。

柴田元幸編『NINE INTERVIEWS−柴田元幸と9人の作家たち−』アルク、2004年
3月、2500円。

〈たかの・まゆこ〉編集者。「散歩の達人」別冊、夕方に酒場で一杯飲むスス
メ『東京夕暮れスタイル』が出ました。近代文学館主催の「夏の文学講座」、
詩人の荒川洋治さんはやっぱり面白いなあ、とひっそり感激。相変わらず緊張
とときめきで過呼吸の日々です。

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■酒とつまみと営業の日々  大竹聡
(15)セコすぎる根性が言わせた「3号は4000部!」
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 2003年の夏を迎える頃――。2000部を印刷し、発売から3ヶ月ほど経過し
た『酒とつまみ』2号は、順調に売上を伸ばしている模様だった。創刊号の残
部数も、わずかになっている。この調子なら2号の完売も不可能ではないかも
しれない。そんな期待が生まれたためか、苦手な編集作業に追われる間も、3
号の発売がことのほか楽しみだった。

 小誌の場合、編集にしろ営業にしろ、ほとんどの打ち合わせは飲み屋で行わ
れている。少なくとも編集WクンとカメラのSさんと私の3人で何か話すとき
は、100%酒が入る。酔ってバカ話をし、酔った勢いでつい喋ってしまった過
去の失敗談から話が膨らみ、それが実際の企画になる。そんなことが少なくない。
 Sさんと私はひたすらバカ話をするだけである。聞かれてもいないのにそれ
まで隠していた色っぽいエピソードなどを開陳し、ひとりニタニタ笑ったり照
れたりしているSさんは不気味だが、そんな話の中にも使えそうなネタはある
もので、Wクンはそれらをすかさず小さなノートにメモるのである。もし、こ
のメモ帳と、ぐーたら酔っ払いオヤジふたりの毎夜繰り返されるヨタ話を聞き
つづけるWクンの辛抱強さがなかったならば、『酒とつまみ』創刊はあり得な
かったと断言できる。
 が、私が威張ることではまったくない。
 
 2号までは表紙含めて64ページだったが、3号から80ページに増ページする
ことが決まっていた。というより、そんなに増やしてもネタが追いつかないと
いうWクンの忠告を、私はほとんど聞いていなかった。
「80ページ、ねえ! いいじゃないの、立派じゃないの。雑誌みたいじゃな
いの」
とワケの分からないことを言ってはニタニタしていた。そのくせおもしろいア
イデアは浮かばないので、呼気で判定するアルコール検知器2台を東急ハンズ
で購入してくるくらいが関の山だった。

 私が悩んでいたのは部数である。2号の調子もいい。3号は80ページに拡張
する。ならば部数も、と考える。メールでそんなことを伝えたら、連載陣の二
木啓孝さんから、
「いったれ、いったれ、1万部いったれ!」
という心温まる返事を頂戴した。しかし、1万なんて到底無理。悩んでいたの
は2000部のままで様子を見るか、3000部くらいまで増やしてみるか、その程
度のことだった。最初にビビって後から増刷すると印刷製本費が高くつくこと
は創刊号の2度の増刷で学んでいた。3000部、思い切っていってみるか……。

 ちょうどその頃、第3号の集団的押し掛けインタビューにご登場を願ったプ
ロレスラーの蝶野正洋氏に、ゲラを送ってあった。彼と私は中学時代の同級生
という気安さもあって、修正箇所はないかと、気楽に電話をかけた。
「原稿、見てくれた?」
「ああ、来てたね。任せるよ。ところでさ、あれ、何部刷ってんの?」
「エ? ああ。あのね……」
「俺、出てんだからバーンといけよ」
「そう、そうね、バーンと4000部!」
 昔の同級生にさえ自分を少しでも大きくみせたいと思うセコすぎる根性が言
わせた4000部、なのであった。

〈おおたけ・さとし〉『酒とつまみ』編集発行人
ある午後。冷蔵庫に豚のバラ肉とアスパラを発見。隣のビニール袋にジャガイ
モも。肉を先に炒めて一度外へ出し、細切りのイモとアスパラをバターでしっ
かり炒めてから肉を再投入。オロシニンニクと塩、胡椒、最後に醤油を少し。
完成。昼からビール。当然です。
http://www.saketsuma.com

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(23)潮書房の巻  「戦場の左翼」の本拠はシャレた物件
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 筆者が勝手に“廃墟通り”と名付けてる、旧日刊工業新聞社ビルや旧森本組
ビルがある一角は、正式には専大通りと呼ぶ。目白通りを飯田橋駅方面から来
て左折、同通り右手とっつきにあるのが、潮書房(単行本、文庫の光人社と同
居)の7階建てビル(千代田区九段北1-9-11)。小ぶりだが、デザイナー仕立
てのレゴを7つ重ねたような、灰色基調で一部ベージュの、悔しい事に実にシ
ャレた物件(無論、バラバラ兵士の死臭を連想させる物は一切ない)。廃墟通
りで唯一の真っ当な建物と、渋々だが認めざるを得ない(ほめるのって退屈)。

 近く撤去予定の日刊工業新聞ビル(織田作之介も一時ワラジを、と思ってた
ら、ありゃ日本工業新聞。森“筋肉脳ミソ”前総理もか?)との間に、2軒の
有名物件。隣の隣がラーメンの「斑鳩」。高くて量が少なくスープがぬるい。
味は並だが店員が黒っぽい制服でスカしてて、マスコミ取材のコピーが壁にペ
タペタ。タダでも行きたくないタイプの店(店頭には馬鹿そうな客が常に列)。
次が少年写真新聞社。よっぽど待遇が悪いのか、一昔前は一年中募集広告を
『朝日新聞』に。最近死んだ会長だか社長は文人肌の人だったらしいが、西武
の堤清二(辻井喬)を持ち出すまでもなく、土方肌経営者に比べ冷酷な人使い
を?(ビルの下品な生馬糞色は、どう見ても“土方肌”なのだが…)。

 首都高をくぐった森本組ビル向かいに「ラ・トゥール千代田」なる、森本組
&熊谷組(もう一社は失念)という本格ゾンビゼネコンによる、西洋棺桶風マ
ンションが完成したと、あかね書房篇の際に触れた。この縁起の悪い建物が建
つ前に、ここにも潮書房が。旧社屋なのか単に倉庫だったのかは不明だが、木
造2階の物件のすさまじさは、前回の沖積舎が皮肉でなく、金ピカ御殿に見え
ると言えばわかってもらえよう。「あの『丸』は、こんなゴミタメ で…」。
上京直後の70年代頭、初めて前を通った時は幻滅の余り気分が悪くなった。

 “戦場の左翼”。筆者の潮書房へのイメージだ。面白い戦記物を多数出し、
当然ヒロイズムも途中で結構満喫させながら、「まあ結局は人殺しごっこさ!」
と、最後にポンと肩を叩かれ、我に戻される感じ。それは『東京大空襲』(E・
バートレット・カ−・光人社NF文庫)から、三野正洋の“小失敗の研究”シ
リーズまで、著者の資質や国籍と無関係に共通する流れのように思える(近所
の潮出版社の本の全てに、“大作印”の実印がポンポン押印してるのとは別、
と思いたい)。

“20世紀において、私たちは長い間、戦争の惨禍の中で身を潜めて生きてき
ました。若者たちの多くは将来への希望を捻じ曲げられ、「国家」という常に
悪のみを主宰する目に見えぬ巨大な奔流に巻き込まれて、それぞれの人生の目
的を転換して生きて行く外に術がなかったのです。食べる物もなく、住むとこ
ろもなく…”

 余裕があれば全文引用したい格調高い一文は、同社HP、「会長挨拶」から
(高城肇)。「会長挨拶」というスタイルと文に、同社の本質がチラリ垣間見
える雰囲気。どうやら、左翼だ右翼だの次元で運営されてる会社ではないらし
い。余り近寄らず(前はよく通るが)、国家に媚びない出版物を、黙って読ま
せてもらおう(少年写真新聞社の先の酒屋、「大坂屋」は立ち飲みもOK!)。
そろそろ洋泉社の向こうを張り、任侠畑に侵出したら?(余計なお世話です
ネ!)「読者挨拶」でした。

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。なお、この連載に関しての批
判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(ただし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■かねたくの読まずにホメる 金子拓
(24)一筋縄ではいかない人?
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黒岩比佐子『『食道楽』の人 村井弦斎』岩波書店、2004年6月、4200円

『食道楽』という本の名前は何度か聞いたことがある程度で、てっきり料理随
筆だと思っていた。ところが小説だという。作者は村井弦斎。この作者の名前
と彼の作品『食道楽』が私の読書アンテナにインプットされたのは、春に読ん
だ阿川弘之『食味風々録』(新潮文庫)がきっかけだった。

 同書所収「牛の尾のシチュー」という一文がそれで、結婚したとき奥さんが
嫁入道具として新居に運び込んだなかに『食道楽』春夏秋冬の全四冊が混じっ
ており、これを見て阿川氏は「おや、これは」と思ったという。「爾来此の本
は、わが家の書棚の隅へ腰を落ちつけてしまい、度々の引越しにも処分される
のを免れて、五十年近く経った今尚、表紙が破れかけのまま居据っている」。

 五十年もの長きにわたり阿川家の書棚を生き抜くことができたのは、小説と
してでなく、実用書として遇されたからだった。夫は『食道楽』を拾い読みす
るたび、妻に「此のへんのところ、お前よく勉強しといてくれよ」と念を押し
た。

   何しろ、当時としては実に贅沢な、手の込んだ、和洋支の料理
   が列記してあって、お登和嬢がその作り方を、次々詳しく説明
   するのである。「当時」とは「食道楽」が出版された明治三十
   六、七年当時の意味であり、私たちが世帯を持った昭和二十年
   代の意味でもあるが、いずれにせよ今と時世がちがい、読めば
   一々珍しく、こんな旨そうな物一度食ってみたいと、驚きもし
   憧れもした。(新潮文庫版『食味風々録』28頁)

 このあとエッセイでは、表題にあるオックステール・シチューや「上質の豆
腐か河豚の白子と似た味の、(牛の―引用者注)脳味噌の角切りフライ」、東
坡肉、トマトジャムといった『食道楽』登場の料理が次々と紹介され、思わず
舌なめずりをしてしまう。

 阿川氏のエッセイの記憶が消え去らないうちに、黒岩比佐子『『食道楽』の人 
村井弦斎』という評伝を得たのは幸運だった。カバーにある内容紹介を見ると、
村井弦斎という人、『食道楽』以前には新聞小説家として長篇未来小説を著し、
晩年は仙人を志して断食・木食などを研究実践した奇人であったらしい。宮武
外骨・斎藤緑雨・矢野龍渓・澁澤栄一らと交友があったという事実にも惹かれる。

 本書は村井弦斎という人物の評伝であるだけでなく、彼の代表作たる『食道
楽』が後年の食味随筆・小説に与えた影響にも目配りが行き届いているようで、
巻末の索引を参照すると、上で触れた『食味風々録』もきちんと言及してある。
せっかく岩波書店は評伝を出したのだから、いずれ岩波文庫に『食道楽』を入
れてくれないものだろうか。

 ちなみに、このメルマガで南陀楼綾繁さんが推奨している遠藤哲夫さんの
『汁かけめし快食學』(ちくま文庫)をいま読んでいるが、ここにも『食道楽』
は登場する。いよいよ注目の本である。

〈かねこ・ひらく〉サイト「本読みの快楽」運営。本業は日本史研究者。先月
は体調を崩して入院してしまったため、休まざるを得ませんでした。結局それ
ほど重病ではなかったため、かえって充実した読書生活を楽しんできてしまい
ました。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~kinko/index1.htm

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