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2000.11.30.発行 vol.18 [うさこちゃん 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2000.11.30.発行
■■ vol.18
■■ mailmagazine of book reviews [うさこちゃん 号]
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■「大いに興奮させられたが」石飛徳樹
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血の味
沢木耕太郎著
新潮社・1600円
沢木耕太郎久々の小説は、いま社会の関心を最も集める少年犯罪がテー
マである。
ただし、彼が書き始めたのは15年前だ。ほぼ9割方を10年前に書き
終えていたものの、彼自身がそこに書かれていることの意味を十分に理解
できずに、残りの1割を書けないでいたという。
このところの一連の少年犯罪と、それに対する社会のヒステリックとも
思える反応が、最後の1割を書かせたということになるだろう。
主人公は「私」。今は公認会計士をしており、家庭にも恵まれて幸せな
生活を送っている。しかし、中学生の時に、ナイフで人を刺し殺して、少
年院に入っていた経験を持っていた。
ある日、「私」は、電車の中で一人の乗客の目つきに吸い寄せられる。
以前、殺人のひきがねを引かせた或る男と同じ目つきだったからだ。
突然、周囲の壺から無数の蛇が這い出してくるように、封印していた忌
まわしい過去の記憶があふれ出してくる……。
相当力の入った作品だが、非常に読みやすい。読書が苦痛でない人なら
一気に読了できるだろう。とても興奮させられた。
中学生の「私」と銭湯で出会うゲイのボクサーの造形には、「一瞬の夏」
「敗れざる者」の空気を色濃く漂わせる。
自分の精神バランスを狂わせる過去の感触というのは、いくら封印して
も、ちょっとしたきっかけで飛び出し、たちまち奔流となって襲いかかる。
その怖さが震えるほどに伝わってくる。
世の中捨てたような英語教師と「私」とのひねりの入ったさりげない心
の交流。お勉強しか能がなくて医学部を目指すしかないと思いこんでいる
秀才の哀しみ……。「私」が殺人に至るまでの間には、青春小説として共
感できるエピソードがいくつも盛り込まれている。
そして、何よりいいのは、この物語が、酒鬼薔薇に始まる現代の少年犯
罪をあまり想起させないことである。
「ゴールドラッシュ」や「エイジ」なども個人的には大好きな小説であ
るが、現代への寄り添いが強く、ジャーナリスティックなケレンを感じる
部分も多かった。
これらに比べ、「血の味」はもっと古典的な気がする。喩えるならば、
カミュの「異邦人」みたいな。
ただ、終わり方は少々納得がいかなかった。
下手な推理小説のドンデン返しのようで、唐突感がすごくあった。
ミステリーのネタばらしになるので、詳しくは書けないが、そういう結
末になるのなら、そこまでの描写があまりに不足していると思う。
同じ殺しでも、これではテーマがまるで違ってしまうではないか。
いま、ミステリーは明らかに純文学に接近してきたが、今度は純文学か
らミステリーの手法を取り入れようとしているのか。
あるいは、9割が10年前に書かれ、1割が今書かれたという時間のギ
ャップが、齟齬を生んだだけなのだろうか。
非常に興奮はしたが、読後感がすっきりしない。そんな小説だった。
(石飛徳樹 朝日新聞名古屋本社学芸部記者 39歳 年間読書量100
冊 好きなジャンル・文学)
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■「絵本、よんでますか?」ミラクル福田
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『ディック・ブルーナのすべて』 本体価格2800円 講談社
10月24日に、新宿の紀伊國屋サザンシアターで、五味太郎・小野明
著『絵本をよみつづけてみる』(平凡社ライブラリー)の出版を記念した
対談が行われた。これは『絵本をよんでみる』(同)の続編にあたるもの
だ。対談者は、五味太郎、江國香織、小野明の3氏。
饒舌な五味さんに、江國さんも負けずに喰らいつきながらトークは進む。
『ふくろうくん』、『ふたりはともだち』(アーノルド・ロベール/文化
出版局)に話題が移った時には、"絵本の登場人物には、読者の視線を意
識しているに違いない"という五味さんと"登場人物は絵本の世界の人、読
者の影は見えないでしょ"という江國さんの間に、論争の熱い火花が・・・。
演劇論にまで話題は広がりながら、五味流、江國流の絵本の読み方がわか
る、心地よい対談だった。そして、この時に取り上げられたもう1冊の絵
本が『ちいさなうさこちゃん』(デッィク・ブルーナ/福音館書店)であ
る。
もちろん、“うさこちゃん”も、作者のブルーナも知ってはいたけれど、
不覚にも、“ミッフィー”と“うさこちゃん”が“同一うさぎ”だったと
は知らなかった(結局よく知りらないということです)。しかし、なんで
名前が違うのだろう、と思いません?あまりにつまらない理由なのですが、
“うさこちゃん”は福音館書店から刊行されていて、“ミッフィー”は講
談社からの出版だからのようです(福音館書店の訳は石井桃子さん、講談
社の本は絵のみのため訳者はいないようです)。どうしてここで違いを出
そうとするのだろう。“うさこちゃん”や“ミッフィー”が好きなよい子
(おじさん)は混乱してしまいますね。
さて、この対談を聴いてから、なんとも不思議な“うさこちゃん”の世
界が頭にこびりついて離れなくなってしまった。本屋で児童書のコーナー
を覗いては、ぱらぱらとめくり、版画を思わせるような太い線(版画好き
なのです)と、単純な色使い(色数が少ない)、そして、じっと見つめる
“うさこちゃんの瞳”に釘付けとなったのです。そんな時、『ディック・
ブルーナのすべて』という本を見つけたのである。
本では、まず、ブルーナの世界に住むキャラクターが紹介された後に、
「ブルーナ世界の秘密」と題された章が続く。ここで、気になって仕方が
なかった太い線のことや、色、“うさこちゃん”の視線の理由がすべて説
明されているのだ。不思議に思ってからすぐに理由がわかってしまう、タ
イミングのよさに少しびっくりしてしまいました。
さて、この章の“6色のメッセージ”、“シンプルの法則”、“正面向
きの効果”、“正方形の意味”、“12場面の理由”、“絵本ができるまで”
を読めば、ブルーナが必然をもってキャラクターを描いていることがわか
る。ちなみに色について、背景に赤を使う場合は、“うさこちゃん”が幸
せに包まれていることを表現している。「赤はあなたの方へ向かってくる
あたたかい色」とブルーナは考えているからだ。だから、ブルーナにとっ
ての色の使い方は、歌舞伎の隈取のように様式化されているのだ(少し大
げさなたとえですが)。でも、なぜ様式化しているのか?その理由を知り
たければ、読むべし。わかりやすいけれど、奥深いものがあります。
全部で、この本には20ほどのキャラクターが紹介されている。どれも、
太くて、やわらかな曲線で描かれていて、かわいらしいけれど、いちばん
お茶目なキャラクターは、間違いなく"ディック・ブルーナ"本人だ。まあ、
写真を見て欲しい。品のいい眼鏡をかけたおじいさんが、自転車に乗って
カメラ目線でたたずむ姿は、ブルーナの世界から抜け出てきたキャラクタ
ーそのもの。ブルーナ本人の姿を見るだけで、ほのぼのした気分になれる。
こんな本をクリスマスにでも貰えたらうれしいだろうなあ、と独り考え
てしまいました。
(ミラクル福田 某人文系大手出版社編集 30歳 年間読書量100冊
弱 好きなジャンル 文芸・芸能)
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■「私、この本で考え込まされました」守屋淳
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『リセット』盛田隆二 角川春樹事務所 2100円
現代では、現実がフィクションを超えてしまっているなんて言われること
がありますよね。でも、その言葉にはきっとこう問い返すべきなんだろう
とも思います。現実ってなに? マスコミのショッキングな事件報道とネ
ット、近所の噂話で構成される何ものかが、現実なのか・・と。
この小説は、現代における家族小説の一つの典型とも言えるものです。そ
して、そこに様々なキケンな小道具――クスリ、売春、引きこもり、殺人
等・・がふりまかれています。その意味では、フイクションが現実の側に、
思いっきり切り付けた一太刀のような読後感を受けます。
しかし、こういう試みって、昔は当然ありふれていたんだけど、今はあま
りなくなっちゃった気がします。実は、これらの要素をまとめてきちんと
ある程度以上のレベルで書ける書き手って、そうはいなくなちゃったんじ
ゃないんですかね・・。
何故か?
今の団塊および、その下の年代の書き手って、自分と近い年齢のことは当
然書けますが、自分の子供の世代のことになると、トンと精彩を失う気が
します。特にトンがってる子供に関しては、リアリィティがないんですね。
かといって、今の二〇代後半以下の書き手は、やはり同年代のことは書け
ても、今の四十代以上の男女、特にその折り重なった心の闇のような心理
をやはり、なかなか書けません。
お互いがお互いに、どうも異邦人になっちゃってる気がします。特に、そ
の心のディープな部分に関しては・・。
この小説、そこの部分が非常にうまくいっているんです。
まず、主人公の女子高生がとても魅力的です。と、同時に、至上希に見る
悲惨な女子高生ヒロンイな気も・・(笑)。なんか、読んでると結構切な
くなってきます。それと、引きこもり高校生君が、肌身の感覚をもって迫
ってきます。しかし、こいつも悲惨なんですよね・・
一方、その親の世代では、出版社の編集者と、引きこもり青年君の父親が
とっても魅力的です。
この二つの世代が、現実味をもって描かれていることで、この小説は週刊
誌的スキャンダラスな話題を扱っているように一見よそおいながら、重層
的な重い手応え――まさに、現実の手応えをもって迫ってきます。昔は有
り触れていたはずの、現実とフィクションのせめぎあう感覚を浴びせられ
ることになります。
読了後、いろいろなことを考えさせられた小説でした。
(守屋淳 ご隠居 年間読書量100冊《仕事で他にも少々》 好きなジ
ャンル 古典)
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■あとがき
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>なんか、コンピューターウイルスにやられちゃいました
>ほうほう
>MTXとかいう奴で、知人からのメールのファイル開けたら、あらあら・・
>パソコンおかしくなったんですが?
>ネットでつなげないHPが出たくらいで、後はどうってことないんですが、
持主の知らないうちに勝手にメール出して、ほかのパソコン感染させちゃうん
ですよ。
>おや、まあ!
>だから、僕も知人から教えられるまでは気がつかなくて、でも偶然ウイルス
がバクってて、メールは他に出してなかったのでよかったんだけど・・。しか
し、駆除するのに五時間くらいかかちゃいました。
>みなさんも気をつけましょうねー
>あ、知人からのメールでも、本文なしで添付ファイルのみっていうのは、開
けない方が無難ですよー
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