2000.2.28.発行 vol.27  [北極星なのだ 号]

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■「会話のニュアンスきちんと伝える」石飛徳樹
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「ぼくらがドラマをつくる理由」
北川悦吏子、土井裕泰、植田博樹、高井一郎著
角川oneテーマ21

 新聞記事を書いていていつも歯がゆく感じることがある。話を聞いて、談
話の形にする時、言葉の隅っこに宿っているニュアンスの部分を表現できな
いということだ。
 記事に登場する人のセリフは、カギカッコでくくってあっても、ほとんど
書き言葉のように簡潔かつ論理的になっている。
 もちろん、大抵の場合、だらだらっとしゃべったことを、こちらで発言者
の真意を勘案し、要約しているわけで、その際に、大勢に影響はないがちょ
っと面白いなあ、というような部分を残すことはまずできない。
 惜しいと知りつつも、一番おいしいところを切り落としているのだ。
 
 以前、ある売れっ子のテレビドラマ脚本家から手紙をもらった。
 趣旨は、インタビュー記事の掲載紙を送ったことへの礼状なのだが、その
中にこんなことが書いてあった。
 「確かにそんな趣旨のことを言ったけれど、随分と偉そうに言っているよ
うな印象を受けました」
 ニュアンスの部分を削り落としたせいで妙な断定調になり、結果として、
間違ったことは書いてないが、本当に彼の言いたいことが読者に必ずしもう
まく伝わらなかったということになる。
 ドラマの脚本家といえば、セリフの専門家である。あの「忠告」は随分こ
たえた。

 前説が長くなってしまった。
 さて、この新書である。テレビドラマのヒットメーカー4人が、ドラマづ
くりのノウハウや撮影現場の雰囲気などを自由闊達に語り合ったものだが、
各人の発言のあちこちに、味わい深いニュアンスが数多く含まれている。
 新聞と違い、字数の制限が厳しくないせいもあろうが、さすがはセリフの
プロたちだなあと思わせる。

 北川悦吏子は「愛していると言ってくれ」「ロングバケーション」「オー
バータイム」「ビューティフルライフ」などの高視聴率ドラマの脚本家。
 土井裕泰はTBSディレクター。「愛していると言ってくれ」「ビューテ
ィフルライフ」などを演出した。
 植田博樹はTBSプロデューサー。「ビューティフルライフ」で北川、土
井と組んだほか、「ケイゾク」「QUIZ」など凝りに凝った作品を得意に
している。
 高井一郎はフジテレビ・プロデューサー。「彼女たちの時代」「オーバー
タイム」や、今放映中の「ロケットボーイ」などリアルでリリカルなドラマ
を手掛けている。

 友達同士が居酒屋で雑談しているかのように、話は進んでいく。
 プロデューサーはモテるとかモテないとか、お前はモテただろうけど、僕
はモテなかったとか、そんな与太話をしながら、いつのまにかドラマづくり
核心がさらりと語られている。
 
 北川悦吏子のツッコミもシビアで面白い。
 例えば、土井裕泰の演出のある部分について、ケチをつける場面。
 「土井さんってけっこう本にないことをやってくれる人で、(中略)えっ
と思ったことがあったの」
 と言った後、弁解する土井に追い打ちをかけるように、
 「やりすぎだと思わなかった?」
 と、容赦なく責め立ててくれる。

 一見言葉はきついけれど、そして、確かに土井演出を批判してはいるのだ
けれど、彼女の語調には楽しんでいるようなニュアンスがある。
 言われている方も恐縮してみせたりしつつ、戯れているような楽しいニュ
アンスがきちんと伝わってくる。
 恐らく彼らのドラマ制作の現場では、こういうシビアな会話がなされなが
ら、全体としては楽しくドラマを作っていくという雰囲気があるのだろう。
 それが彼らのドラマづくりの秘訣なのだ。
 新聞記事的なセリフだと、そういうところがうまく伝わらない。
 これはドラマ作法についての本ではあるが、新聞文体というものを改めて
考えさせられた。

『ぼくらがドラマを作る理由』
http://www.ganessa.com/shop.php3/0906200024/19/
(↑こちらからお買い上げ頂けます)

(石飛徳樹 朝日新聞名古屋本社学芸部記者 39歳 年間読書量100
冊 好きなジャンル・文学)
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■「出版とは"愛"なのだ!」ミラクル福田
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 『浮上せよと活字は言う』 橋本治 中央公論社 本体価格1165円

 「好きな作家は?」と質問して、“橋本治!”と答える人がどれくらいい
るのだろう。でも、やっぱり橋本治以上の作家はいない(と思う個人的に
は)。誰かから借りてきた考えや、言葉ではなくて、自分の言葉や考えを足
場にして発言する人はなかなか見当たらない。初めて読んだときから、その
批評や小説は何にもまさって、大きな指針となってきた。そう、原始、女性
が太陽であったように、橋本治は北極星なのだ(個人的には)。その橋本治
が出版について語った本を紹介するのだ。

 2月の上旬に、『誰が「本」を殺すのか』(プレジデント社 本体価格1
800円)という本が出版された。出版業界の苦しい状況が、ノンフィクシ
ョン界の雄・佐野眞一によって詳しく描かれている。「本」を取り巻く職種
の人々に取材し、書かれたこの本を、いま出版業界にいる人は(出版を志す
人、喰いモンにしようとする人も)、読んでおくべきだろう。
 この本に限らず、出版についての本が、ここのところ多く刊行されている。
『人はなぜ、本を読まなくなったのか?』(トランスアート 本体価格13
00円)、『本の未来はどうなるか』(中公新書 本体価格780円)、こ
のほか、『バカのための読書術』(ちくま新書 本体価格680円)などの
読書論を含めると、かなりの点数が出ている。やはり本をめぐる状況の厳し
さゆえか。

 さて、『浮上せよと活字は言う』が中央公論に連載されたのは、1993
年1月号〜12月号までで、1994年3月に単行本となっている。出版業
界内で話題となった『出版幻想論』(藤脇邦夫 太田出版)とほぼ同時期の
刊行だ(この本に感化されて出版営業になったのだ、私は)。この時期、
“本が売れない”ということは、いまとは比べものにならないほど深刻では
なかった。だから、『浮上せよ』が書かれる契機は、『誰「本」』の“本が
売れない”“出版業界大変だ”といったものとは異なる。“バブル崩壊”後、
出版業界はどうなるのかという疑問と、“活字離れ”という1980年前後に出
始めた言葉、そして“言葉”がなおざりにされている状況に対しての怒りと
警告からだ。

 『浮上せよ』はノッケから、映画評論が始まってしまう。対象は、耽美で
難解な作品を作ることで有名な、ピーター・グリーナウェイが監督した『プ
ロスペローの本』である。1・2章を割き、50ページにわたって映画を論
じながらも、実のところ語っているのは本のこと。正確に言えば「活字離れ」
という現象を引き起こした原因について語っている(その後の章では「活字
離れ」という言葉を使う人を批判し、“知”の怠慢を論じている)。

 その中で、『プロスペロー』を観た橋本治は、“わからん”と率直に言う。
そして“でも、好きだから分かりたい”と思う。だから、原作の『テンペス
ト』を読む。シェークスピアのことや当時のことをいろいろと本で調べる。
それでようやく、なるほどと“分かる”ようになる。
 “分かる”ということは、素晴らしいことだが、かなり面倒なことでもあ
り、独力でなしとげることは大変だ。だから、そこで“知りたい人、分かり
たい人”がいるならば、やさしく手をさしのべることが必要で、それは“知
っている人”の役目なのだ。啓蒙とはそういうことで、出版に携わるとい
うことはそれを行うことなのだ。そう語っている。

 でも、世の中そう美しくはいかない。“知っている人”はどんどん本の内
容や、本自体にはまり込むことで、自分たち以外の人に無関心になっていく。
そして高いところを求めるために、“知りたい人、分かりたい人”と離れ、
孤立していく。“知りたい人、分かりたい人”は困難にぶつかって、ただの
“知らない人”になってしまう。
 どんなにエライ“知っている人”もその昔は“知りたい人、分かりたい人”
だったはずなのに、そのことを忘れている。そこには何かが足りない。
何があればいいのだろう? 何だ?

 名著『ぼくらのSEX』(集英社 本体価格1465円)の中で橋本治は、セ
ックスを教えることがいかに困難なことかを語っている。単なる性器の摩擦
だけのセックスではなく、それ以上の快感を得ること(もちろん精神的なセ
ックスも含めて)を相手に教えることが、どれほど面倒で、長い「教える−
学ぶ」という関係を続けなければならないか(終わりはないのかもしれない)
を。でも、それは“愛”があればこそ、できるものなのだ。
 そうだ! きっとそれは、本をめぐる場面でも同じことなのだ。“本”と
いうものを通して人から人へ“何か”を引き継いでいく(内容にしろ、本自
体にしろ)。確かに面倒なことかも知れないけれど、そこには“愛”あるの
だ。出版とは“愛”なのだ!(無理あるかなあ?)

 孤島に住んで、権力によって島を支配しているプロスペローは、本に囲ま
れた孤独な生活を送っていた。対話する相手もなく、孤立しているプロスペ
ローの姿が、出版業界の姿とダブって見え(語られ)てしまうのはなんとも
寂しい。しかし、プロスペローは『プロスペローの本』の中で、『テンペス
ト』中で、孤立している状態を自らやめている。そして、やさしさを取り戻
し、言葉を交わす他者と出会うのだ。

『浮上せよと活字は言う』
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(ミラクル福田 某人文系大手出版社編集 30歳 年間読書量100冊
弱 好きなジャンル 文芸・芸能)  
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■「状況次第の善に適応する」守屋淳
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『蝿の王』ゴールディング 新潮文庫

人の本性は善と悪、どちらか(一応、白紙説もあるんですが)という有名な
対立が中国にはありますが、どっちか必ず選べと言われたら、みなさんどち
らに一票投じますか?

まあ、とっても難しい選択ですが、ただ一つ傾向として言えることは、『人
の性は善である』的なことを信じて疑わない人は、滅茶苦茶に人に迷惑をか
けやすい(人殺しもへっちゃらな)傾向が、歴史的にはあるということでし
ょうか。

そもそもの源流・孟子からしてそういう傾向のある人でした。アドバイスし
た結果が悪くても、俺には責任などないと言い、豪華な馬車と出で立ちで各
国を周って金を出させ(まあ、やくざですな)それを弟子に諌められると君
子とはこれでいいのじゃ、と言い張り・・イヤーな人なんです(笑)

ということで今回の『蝿の王』。イギリスのノーベル賞作家の代表作です。
無人島に、子供たちが漂流し・・という漂流紀の体裁借りてますが、これが
とにかく傑作。それぞれの子供たちが、人間のいろいろな面――知性や野蛮
成長や付和雷同――を体現しているなキャラクターで(しかも、物語が進む
に随って、それが徐々に発現していったりもする)、中盤以降、読み始めた
らもう絶対頁をめくるのを止められないスリルが展開されます。

ここで一番壮絶なのは、人間の悪を作者が見据えていることです。二十世紀
は殺戮の世紀とも言われますが、敵を殺せ、それが正義や善だと言われ、実
際そうしていた期間や地域がとにかく多かったことを、それは意味します。
しかし、それはもちろん平和時には通用しない考え方です。つまり、人(の
遺伝子)は、他人を殺せという「善」にも、180度違うはずの他人を殺す
なという「善」にも、どちらも結局適合しつつここまで生き延びてきたわけ
です。針がどちらに振れるかは、状況次第。そして、舞台の無人島は前者に
針が振れていきます・・

読んだ後、三日くらい衝撃で頭がくらくらしてました。そんな傑作です。

『蝿の王』
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(守屋淳 ご隠居 年間読書量100冊《仕事で他にも少々》 好きなジ
ャンル 古典) 
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■あとがき
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>あの近くのスーパーでの話しなんですが
>はあはあ
>蕎麦買おうと思って裏見ると、ほとんど成分表示が「小麦粉 そば粉」の
順なんだよね
>ああ、重さ順の表示って奴ですね
>これって、ほとんど小麦粉51%以上のシロモノってことじゃないですか。
そんなのありなのかなー。納得いかないなー。ジュースは果汁百%のみなのに
なんで、蕎麦はこんないい加減で許されるんだープンプン
>そしたら、きちんとした蕎麦屋さん行けばいいじゃないですか。出前取ると
か
>う、痛いところを、び、貧乏でそんなお金は・・シクシク(笑)
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