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2001.3.31.発行 vol.30 [ただ生活があり 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2001.3.31.発行
■■ vol.30
■■ mailmagazine of book reviews [ただ生活があり 号]
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■トピックス
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■10日号が大リニューアルされます!!
次の号から、毎月10日号は南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)さんに代わ
ります。すっごい意欲的な企画を立ち上げてますので、ぜひご期待ください。
■『釣り上げては』もう四刷り決定だそうです
20日号で取り上げました、アーサー・ビナード著『釣り上げては』(思潮
社 二千円)、その後もNHKや日経で取り上げられ、すでに四刷りまで決
定したそうです。詩集での大ヒット作品となるか??
■今どきハイゼンベルクが売れているという話
20世紀を代表する物理学者のハイゼンベルク。その『部分と全体』がなん
と馬鹿売れしているみたいです。原因は、日経新聞で中谷巌先生が紹介した
記事だとか。こんな超古典でも、紹介いかんでは、売れるんですねー。
みすず書房より、4500円。
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■「桐野夏生がミステリーから遠ざかった本当の理由」石飛徳樹
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玉蘭
桐野夏生著
朝日新聞社・1800円
桐野夏生は、1993年に「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞を受けて
デビューした。だから、多くの読者の頭の中では、「ミステリー作家」と分
類されている。
しかし、直木賞の有力候補になった「OUT」から、実際に受賞した「柔
らかな頬」、さらに昨年の「光源」に至るまで、作家・桐野夏生の7年は、
「ミステリー」の色をフェイドアウトさせていく過程だったといえる。
「光源」もそうだったが、そして今回の新作長編で、ほぼ完全にミステリ
ー色を一掃し、新しい地平を切り開こうとしている。
この小説は、大きく分けて二つの物語から構成されている。
一つの物語は現代だ。広野有子(ゆうこ)は出版社を辞し、中国・上海の
大学に留学している。恋人だった医師・松村を東京に捨て置き、今は、留学
生寮内の濃密で哀しい男女関係の中を浮遊している。
もう一つの物語は約70年前にさかのぼる。こちらの主人公は、中国で貨
物船に乗っている広野質(ただし)。有子の大伯父に当たる。寄港先の広東
で、曰くありげでかなりくたびれた年上の女・浪子に出会い、内縁関係にな
る。
二つの物語をつなぐのは、質の残した無味乾燥な日記と、時折有子の前に
現れる質の亡霊。
有子は、質の人生をたどるうち、自らの人生も転機を迎えようとしている
ことに気づく。
有子と松村、質と浪子。二組のカップルはいずれも、互いに愛し合ってい
ながらも、二人の間には大きな暗闇が横たわっている。
しかし、その暗闇は対照的なものである。
質と浪子の方にある闇は、死に対するせっぱ詰まった不安から発生してい
る。戦時下であるのはもちろんのこと、浪子は重い結核を抱えている。
彼らは激しく肉体を求め合うが、双方とも死を意識して、愛をうまく育む
ことができない。
一方、有子と松村の抱える闇は、現代らしく、生に対する漠然とした不安
から来ている。死の恐怖が遠くに去っている二人は、生きていること自体が
虚構に感じられて、何か拭いがたい違和感を持っている。
有子は、質に対して、自身は決して得ることの出来なかった「生の実感」
を嗅ぎ取って、救いを求めようとするのだ。
もちろん、質に救いを求める有子の姿こそが、現代を生きなければならな
い私たちの姿である。
終章で、質には、ある種の救いが訪れる。ところが、私たちの分身である
有子に救いは訪れない。そこがとても桐野らしい。
質の物語はすでに歴史の方に属している。だから物語らしい結末があって
もよい。
しかし、有子の物語は現在進行形の「リアル」である。ここに結末らしい
結末をつけるのは、「リアル」を失うことになる。
ミステリーというジャンルに携わってきた桐野は、終章で取って付けたよ
うな結末を配さねばならないことに嫌気が差し、徐々にミステリーからフェ
イドアウトしていったのではないか。
有子のけじめは、私たちがつけなければならないのだ。
・『玉蘭』桐野夏生 朝日新聞社刊 1800円
http://www.ganessa.com/shop.php3/0906200024/29/
(↑こちらからお買い上げ頂けます)
(石飛徳樹 朝日新聞名古屋本社学芸部記者 39歳 年間読書量100
冊 好きなジャンル・文学)
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■「考えるって、どうすること?」ミラクル福田
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『はじめて考えるときのように』 野矢茂樹 PHP研究所
本体価格1550円
●最近の傾向
NHKの「週刊こどもニュース」に出ている、池上さんの本を、本屋さん
で最近よく見かける。これがよく売れているようだ。本の特徴は、時事問題
などのわかりずらい事柄を「こどもニュース」の切り口でわかりやすく解説
するというもの。ほかの棚を見回してみても、いろんなコーナーで、わかり
やすく書かれた本を見つけることができる。手にとって、気に入って、買っ
てしまった本には『かわいいからだ』(メディアファクトリー)なんて、ほ
とんど自分には関係ない本もあったりして。このほかにも、集英社の「痛快
!」シリーズなど、わかりやすくということに眼目が置かれている本が多い。
ひと昔まえなら、人文書といわれる分野では、入門といってもなかなかわ
かりやすい本がなかった。入門といいつつ、表現のしかたがマンガだったり
するくらいで、初めて読む人に親切な本は見かけなかったように思う。でも、
時代は確実に変わってきている。装釘も造本もセンスのいい本が出てきた。
書いたのは『論理トレーニング』(産業図書)の著者である野矢茂樹。この
本は数年前に「『構造と力』以来の人文書のヒットになる!」と言う出版社
の営業マンがいたくらい衝撃があった本だ。実際、"論理"なんていう地味な
内容でありながら、人文書の定番にして、棚に欠かせないロング・セラーと
なっている。そんな著者が懇切丁寧な哲学の本を書いた。
●「考えるって、どうすること?」って聞かれたら・・・
人にものを教えるということは、とても大変なことだ。相手が本当に理解
しているかがわからなければ、話を先に進めることはできない。それが顕著
になるのが、子どもに何かを教えるときだろう。その最たるものが学校。ま
ったく初めての子どもたちにものを教えなければならない教師は、仕事とは
いえエライと思う。
さてさて、この本はタイトルを見てもらえばわかるとおり、「考えるって、
どうすること?」という子どもの質問から始まる。あなたならどう答えるだ
ろうか。ぼくは、納得してもらえるような答えを考えつくことができなかっ
た。目の前で見せてあげることができないし、第一、自分がいまひとつよく
わかってないような気がする。自分自身に説明ができない。そこで辞書を
引いてみた。
【考える】?物事について、知性を働かせて論理的に筋道を追う。また、
そのようにして結論や判断を得る。?事実を調べただす。よく調べて罰
する。?占う。占いによってあらわれるしるしによって判断する。
(『大辞林』三省堂)
?が調べたいことの意味になるのだけど、これじゃあ子どもたちにはわか
らない。大人はわかったような気分になれるかもしれないけれど。
●耳を澄ますこと
野矢さんの答えはすごい。考えるっていうことは、心の動きでも、頭の中
の動きでもなくて、頭の中が空っぽであっても、"考えている"ともいえる、
なんて言っている。そうすると、風呂に入っていても、トイレで用をたして
いても、もしかすると寝ていても"考えている"ことになってしまう。どうや
らそれも考えているということらしい。気になることや、心に引っかかるこ
となどがあるときに、何かの拍子にそうしたことの答えが閃いたり、はっと
することがある。そうなるまでの過程が"考える"ということなんだと。そう
いうときに、ぼくらは「考えている=耳を澄ましている」のだと。
例えば目的地に向かうとき、ずっと目的地のことなんて考えちゃいないだ
ろ?何をしていても目的地に向かっているんだ。それと同じなんだ。なんて
ことを言われてしまうと、ミョウに納得できてしまう。きっとそうなんだと
思える。(この説明でわからなかったら1章だけでも読んでみてね)
ここまで紹介したのは1章だけ。2章〜6章まであって、最後には"考える
こと"とは人と話し合うことや、社会、世界とのつながりの中で行っているこ
となんだ、なんてことまで言ってしまっている。なんだか感動的だと思いま
せん?
そこに至るまでの道々で、いろんな格好いい言葉が出てくる。「ことばが
なければ可能性はない」なんてのは、その最たるものではないだろうか。"文
学とは・・・"なんて言ってる人は無条件でうなずいてしまうかもしれないけ
れど、この言葉もしっかり、わかるように説明してくれてるから、納得させ
られてみてね。
●ニッポンの将来
南伸坊と澤口俊之の共著『平然と社内で化粧する脳』(扶桑社)では、生
物として黄色人種(日本人)は、ネオテニー(未熟であること)を進化上の
戦略としてきたといっている。自然環境に適応して生きていくための戦略が、
ここのところうまく機能してなくて、どうも日本人の足を引っぱっているよ
うな気がする。世の中だんだん複雑になるのに、どうもニッポン人の頭の中
はどんどんシンプルになっているような気がする(エラソウですが)。
わかりやすく書かれた本が、少しでも、その歯止めになることを祈りつつ
(もちろん自分の頭も!)、また、本屋さんに行こう。
野矢茂樹の本
『哲学の謎』(講談社現代新書)、『無限論の教室』(講談社現代新書)、
『論理学』(東大出版会)、『心と他者』(勁草書房)、
『哲学・航海日誌』(春秋社)など
(なんと、こちらは現在品切れ中で注文できないそうです、スイマセン・・)
(ミラクル福田 某人文系大手出版社編集 30歳 年間読書量100冊
弱 好きなジャンル 文芸・芸能)
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■『私の絵日記』畠中理恵子
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『私の絵日記』藤原マキ著
北冬書房・東京都目黒区大橋1−4−10
?03−3461−2834
四六版・196頁・本体1748円・1993年10月刊
つげ義春の妻である著者は状況劇場などで活躍した女優だ。
すでに亡くなって、かなり時間が経つ。
本書は、彼女の「つげ義春と息子・正助と3人の、静かな生活」を
切々と、淡々と綴る絵日記。
1982年に刊行され、2刷後絶版状態になるが
1993年に増補版として
新たに「思い出日記」を加筆し再版される。
すでに7年以上経った本なので
残部もかなり少なくなっていると思われるが
(増刷されていないし、今後無くなっても
きっとまた品切れ状態になってしまうと思う。)
何とかまだ在庫があるようなので
ここにご紹介させていただく。
ある意味でつげの『無能の人』の原点は、ここにあるのかもしれない。
しかし、本書は「カーチャン」の視線であり、
それゆえか切なさが増す。
つげのそれは
あくまで創作であり、ギュっと胸を締め付けられるような
厳しさを感じる事があるが
本書は、
もっと私的で生活感があり、
生活が具体的になればなるほど
切ない。
何故なのだろう。
そして、ユーモラスな独特なタッチのペン画で
つげ家の日常の情景を描くイラスト。
とても落ち着く。
そう、読むと落ち着いた気持ちになるのだ。
息子のために幼い頃の生活の記録を残しておこう、と
ナベカマのある台所の「カーチャンの部屋」で
この日記を描き始めたという。
日常生活の細々とした出来事の楽しさを描いた前半。
(散歩の途中に畑で大根の葉っぱを失敬したり
古道具屋にあった憧れの市松人形を買った時のこと。
正助のおねしょや女友達との時間。
オトウサンの中古カメラ趣味。
この辺も『無能の人』に出てくる。)
そして、つげが「不安神経症」を発病し、家の中に暗い影が落ちて行く後半。
自分のカラに入ったままの夫・つげ。
著者自身も体調が悪く、不安な神経質な時間が過ぎて行く。
「あとがき」で著者自身も異質な感じがする、と言っている構成だが
現実生活の空気を色濃くでていて
これがまた本書の魅力を強めている。
センチメンタルというのでもない。
過去の甘い記憶でもない。
ただ生活があり、過ぎて行く毎日がある。
「生活記録として始めた訳ですから、
出来るだけありのまゝを描きました。」
とあるように
そのままの家族や人が描かれている。
だから、痛切で
「嘘」でない世界に、落ち着くのかもしれない。
家事に気持ちが癒されるように
少しつらいが
毎日の営みは和ませてくれる。
そんな1冊。
是非読んでみてください。
私の絵日記 1748円
http://www.ganessa.com/shop.php3/0906200024/28/
(↑こちらからお買い上げ頂けます)
(畠中理恵子 書肆アクセス店長 神保町の看板娘、じゃなくて看板奥様)
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■「コレ以上衝撃の爆笑コミックは有り得ません」守屋淳
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『怪奇版画男』 唐沢 なをき著 小学館 1050円
この本、実は電車の中で読んで、腹抱えるほど笑いそうになるのをホントに
我慢しまくって、でも吹き出して周囲から白い眼で見られつつ、やっぱり我
慢できなくてもう死にそーってな具合になったっていうお笑いの超衝撃作で
す。
何が凄いって、ある意味まったく新しい笑いのジャンルを切り開いちゃった
んです、コレ。種明かしはしませんから、とにかく読んでみてください。な
んというか、世の中ここまでの馬鹿がいるのか(もちろん最大級の誉め言葉)
と、感動し、唖然とし、そして顎が外れそうになります。ただ、まあ前半余
りに衝撃過ぎて、後半ちょっとスレちゃうのが玉に瑕かもしれませんが・・
ああ、種明かししたい。でも、初見の方の衝撃を和らげたくないから、じっ
と我慢するのですぅ・・
しかし考えてみると、<笑い>って、あらゆる表現の中で最も個人的なセン
スが必要なものかもしれません。
<泣き>だったら、定番のお涙頂戴パターンを使いまくればなんとかなるわ
けです。
薄幸の女性が、ようやく幸せをつかみかけた途端、不治の病で死んじゃう、
とか(見たて『椿姫』)、けなげな少女が、生きとし生けるもののために命
を投げ出すとか……(見たて、『風の谷のナウシカ』)
<衝撃>っていうのも、まあ、結構簡単で、子供の頃、売春したとかイジメ
にあったとか、人殺したとか、まあ、世間のモラル180度引っくり返しち
ゃえば「衝撃のなんたら」とか宣伝されそうなのはできちゃいます。
以上のって、つまりはあるパターンにはめればできちゃうんですね。そして、
案外新しいものはできにくい。
でも、笑い、特に斬新な笑いは、そのパターン化が一切できないんですね。
もちろん既成のパターンにはめちゃうのもアリなんだけど、どうしても、そ
れだけだと飽きられちゃうスピードが<泣き>とか<衝撃>より速くなっち
ゃうのが宿命で・・。これは例えるなら<香り>みたいなものかもしれませ
ん。すぐ効くけど、長持ちしないという・・
まあ、作者の方は腱鞘炎にならないようにして頂きたいと思います。でも、、
ぜひ次はオールカラーの読みたいとか、すごい残酷なこと思ったりして(笑)
・『怪奇版画男』 唐沢 なをき著 小学館 1050円
http://www.ganessa.com/shop.php3/0906200024/31/
(↑こちらでお買い上げ頂けます)
(守屋淳 ご隠居 年間読書量100冊《仕事で他にも少々》 好きなジ
ャンル 古典)
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■あとがき
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>いやー、最近、健康診断に行ったんですよ。
>はあはあ
>そしたら、血液検査で尿酸値が高めって出ちゃって・・
>なんですか? 尿酸値って
>ええと、要はそれが高いと終いには痛風になっちゃう血液中の有害成分で
す。
>おやまあ、贅沢病とか言われるやつですよね。もしかして、貧乏のフリし
てイイもの食べてたんでしょう??
>うう、絶対そんなことないんですけどねー。今日の夕飯だって野菜スープ
にパンですよー。もう、気分は「おじゃまんが山田君」の貧乏大学生三人組
(笑)。病気だけ<贅沢>っていわれるヤツになるのは哀し過ぎますぅ、シ
クシク
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