2001.7.31.発行 vol.42  [かなり熱い 号]

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■■ [書評]のメルマガ                            2001.7.31.発行  
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■■     mailmagazine of book reviews       [かなり熱い 号] 
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■トピックス
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■『中国思想文化事典』
東大大学出版会が創立五十周年記念として出版した本書、気や陰陽・五行な
ど項目別に読める事典として編纂されていて、ためになると評判です。溝口
雄三・丸山松幸・池田知久編で6800円。
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■「沖縄の歴史が透けて見える」ミラクル福田
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『子乞い 沖縄 孤島の歳月』 森口豁(もりぐち・かつ)1800円 凱風社

 「友だちバンザーイ」と一人の少年が、両手を思いっきり挙げて叫んでい
る(てのひらを広げて、もちろん指先までピンと伸ばして)。その口絵のモ
ノクロ写真一枚で、コロッと参って、買ってしまった。過疎に悩む南の島の
少年が、「友だちが来る」ことをこんなにも喜んでいる、なんだかイジラシ
イ。
 かといって、別に同情するつもりではなくて、ヒネタ餓鬼が多い昨今、こ
んなにも素直そうな少年をみて、のどかな南国気分を少しだけ味わいたかっ
たのだ。でも、舞台である南国の島はそんな悠長なことをいってられる状況
ではなかった。そして「のどかな南国」なんて言っているのが、単なる「無
知のほざき」でしかなかったことを、すぐに思い知らされてしまった。

 ところは沖縄、八重山諸島の鳩間島。沖縄本島からは400キロ近く離れてい
るが、台湾からはわずか200キロという、ホントに日本の南の島。周囲わずか
3.4キロ、島全体がリーフで包まれている美しい島。海ではブダイやタコなど
が豊富にとれ、庭先にヤシガニが現れるという、沖縄本島の人にすら、「こ
んなにすばらしい自然をすぐ前にして暮らせるなんて・・・」と言わせてし
まうほど、自然が豊かな島。

 この鳩間島では、子どもがいないため、小学校の存続が危ぶまれていた
(中学校はすでにない)。学校は島に残った最後の公共機関であり、島の人
々の「未来」につながる心の支えでもあった。学齢の子どもが増えれば、赴
任する教員やその家族も増え、島が活気づく。そして「中学校」もいつかで
きるかもしれない。島の命運は「学校」にあると、島の人たちは考えている
のだ。
 タイトルの『子乞い』とは、学校を絶やさないために、島の年寄りたちが、
島から出て行った自分の息子や娘、親類に、子どもを里子として島であずか
らせて欲しいと頼むその姿を、端的だけど残酷な響きで表している。

 鳩間島の「子乞い」や、島民の未来への不安、年寄りと若い世代の考え方
の違いなどを描いても、ドキュメンタリーとしては充分だ。でも、読んでい
てやりきれなくなったのは、現代の島の人々の苦悩が、沖縄のたどってきた
歴史を色濃く反映していること、つまり、日本が沖縄にしてきたことの積み
重ねにあることだ。

 そのおおもとは、中世から1902年まで続いた「人頭税」。ある年齢になる
と課される税金だが、沖縄の島々では、割り当てをすべて納めるには島の資
源が足りないため、未開の島に強制的に移住させられた。
 島によっては、それでも税を納めきれなかいため、幅一間ある絶壁と絶壁
の間を妊婦全員に飛ばせて人口の調節をしたり、ある時鐘を鳴らして、遅れ
た人を殺したりして、人減らしをしていたという。

 現代でもおかしなことを日本はやっている。日本中が沸きに沸いた沖縄の
本土復帰(おぼえちゃいないけど)。「沖縄復帰万歳! 天皇陛下万歳!」
と時の首相は叫んだらしいが、その結果、鳩間島からは医者がいなくなり、
郵便局がなくなった。得たものは出荷魚介用の冷凍庫だが、この時島には電
気がなかったという。

 これまでの歴史のしわ寄せが、今の今まで琉球弧に伝わってしまっている。
口絵で「バンザーイ」をしていた少年も、つまりは「島を存続させるために
強制移住させられた」ようなものだ。これまで「日本」が沖縄に対してして
きたこと、そして今、日本が沖縄に対してしていること。いろんなことが、
鳩間島の「子乞い」から透けて見えてくる。

 そんななかで、自分が生まれ、先祖代々受け継いでき島や海や空を守ろう
としている島の人々がいる。全部を背負って、頑張る人たちをただ応援する
だけでなく、なにかできるのだろうか?
 そこで考えた。

「そうだ、この本を薦めよう!」

 ところで、まじめに本を読んだ後は息抜きが必要。そんなときは『沖縄オ
バァ列伝』『オバァの喝!』(ともに双葉社 本体価格1300円)が楽しいで
す。

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(ミラクル福田 某人文系出版社編集 31歳 年間読書量80冊弱
好きなジャンル 文芸・芸能)
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■「厚いだけでなく、中身も熱い」石飛徳樹
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★★ルー=ガルー
京極夏彦著
徳間書店・1800円★★

 京極夏彦の新作はこれまでの作品−−京極堂シリーズや百物語シリーズ等々
−−とは、随分と趣が異なっている。
 舞台が過去ではなく近未来であったり、少女たちが主人公であることなども
そうだが、全体を支配する空気が違っている。いつもの衒学的なクールさがあ
まり感じられない。妙に熱いのだ。このあたりがひょっとすると評価を分ける
かもしれない。私は、と言えば、いつものクールさも良いが、今回の熱さはま
た格別に好きだ。

 21世紀半ばの日本。都市はネットワーク化が極限まで進んでおり、学校も
会社も、他人と接することがほとんどなくなっている。
 子供たちはコミュニケーションの取り方を知らず、心ある大人たちはただも
う疲れ、人生を投げ出している。
 これを憂慮した国は、子供たちに一定期間に一度、物理的接触−−リアルコ
ンタクト−−をすることを義務づけている。

 そんな時代のある都市で、14〜15歳の少女の殺人事件が連続して発生す
る。
 狙われる世代に属する4人の少女が主人公だ。
 世間知らずなお嬢さまの牧野葉月、頭脳抜群の都築美緒、他人に関心のない
神埜歩未、拳法の達人で戸籍のない麗猫(れい・みゃお)。
 リアルコンタクトに慣れてないため、ぎくしゃくしながらも、彼女らは見え
ない敵に向かい、力を合わせて戦いを挑んでいく。
 敵は一体どこにいるのか。そして何のために少女たちは殺されていくの
か……。
 
 ルー=ガルーとはオオカミのこと。ネットワークにがんじがらめに縛られ、
人工物質を食べて生命を維持する物として、ただ生かされているだけの少女が、
戦いの中で徐々に自然のパワーを取り戻していく。一義的には、それを象徴し
ている。しかし、一方で敵の正体や犯行の動機をも象徴している。ダブルミー
ニングな好タイトルだ。

 文明の過剰な進化から人間の自然性を取り戻せ、というテーマ自体が、いつ
もよりかなり熱くなっている。
 警察官僚の冷徹さ、巨大企業の怖さといった左翼的な視線もまたかなり熱い。

 いつものようにストーリーの合間に、蘊蓄話が大量に挟まれている。この蘊
蓄部分がまた熱い。
 「私たちは過去、個人には赦されない行為を国家という枠組みでは許容して
きた。そう大衆に思いこませるための詭弁こそが大義名分と呼ばれてきたので
す」
 「衆愚がナショナリズムを選び取る理由は、ただ判りやすいからというだけ
のことだ」
 「行政はいつでも少し遅れてブームを反映する」
 「エリア警備。制服。想起した制服姿が恐怖を喚起する。つい1日前まで、
葉月にとってそれは安全をもたらしてくれる、安心を表す象徴的なコスチュー
ムだった。いまはもう違う」
 「大昔のフィクションはさ、愛のためとか信念のためとか御託並べて、平気
で人殺しして賛美されてた」

 これらはむろん、パラパラとページをめくって適当にピックアップしたもの
だ。こういう熱い文章が満載されているのだ。

 よく読んでみると、これらはみんな現代に対する論評である。
 京極夏彦が近未来小説というスタイルを取った理由は恐らくここにある。
 近未来からならば、現代を「愚かな時代」と登場人物たちに振り返らせるこ
とができるのだ。
 彼は現代に対してかなり熱く怒っているのだろう。
 そして、これまでの作品に見られた過去へのノスタルジーも、現代に対する
怒りというモチベーションで説明できるのではないだろうか。

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(石飛徳樹 朝日新聞名古屋本社学芸部記者 39歳 年間読書量100
冊 好きなジャンル・文学)
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■「時間を弛めたいときにお薦めの本」守屋淳
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『るきさん』高野文子 ちくま文庫 580円

たぶん、二十代半ばから後半と思われる女性、るきさんとえっちゃん。
二人は仲良し。ふわふわとした感じの仲良し。
二人とも、彼氏はいないらしい。
ただし、るきさんは近所の自転車屋さんのお兄さんにちょっと惚れられてい
て、えっちゃんは同じ会社の後輩小川クンが好き。

るきさんは、お医者さんの保険の請求を自宅で計算する仕事。ひと月の仕事
が十日くらいで終って、あとは図書館で本を読んだりヤキソバパンを食べた
り。趣味はなかなかレトロに切手の収集。
一方のえっちゃんは普通の会社のOL、ブランドものが大好きでバーゲンに
目がない。

そんな二人の日常を描いたこの漫画、一度読んだら止められない不思議な魅
力にあふれている。僕はもう三十回くらいは読み返しています、たぶん。

まず、絵がうまい。リアル過ぎるわけでもないし、造形が独特なわけでもな
い。でも、ちょっとした手や足の描写なんか、ぞくっとするほど魅力的だっ
たりする。なにより、心が有無を言わせず安らいでゆくような優しい雰囲気
がなにものにも買え難い気分をつくっている。

出てくる人の微妙な距離感もいい。みんな、心地よい距離を保ちながら、び
っくりしたような表情でお互いをのぞきあっている感じ。ほどよい距離にい
る、ほどよくオモシロイ人々。

これは、創刊のころの『Hanako』に連載された漫画だ。1988年〜
1992年。まだまだバブルやその余韻が残っているころ。

日本があんなに狂奔していた時代に、なぜこんなにノンビリした、心優しい
漫画が生まれたのだろう。そういえば、これと交互に同じ『Hanako』
に連載されていた吉田秋生の『ハナコ月記』(ちくま文庫)には、ところど
ころにバブルの刻印が記されている。

『ハナコ月記』が時代を体現した傑作とすれば、この『るきさん』は時代を
超越した傑作なのかもしれない。不景気だ、先行きが真っ暗というこの時代
にこそ、ふっとこんな漫画は読まれ、読み返されるべきなのかもしれない。

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(守屋淳 ご隠居 年間読書量100冊《仕事で他にも少々》 好きなジ
ャンル 古典) 
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■あとがき
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>なんか、外務省がぼろぼろになってますねー
>はあはあ
>エッセイやら、旅行記やらを読んでいると、たまに大使館の話とか出てく
るときがあるんですが、なんか良く書いてるものほとんどないですよねー
>ああ、田中外務大臣も、大使はお殿様だとかなんだとか言ってましてねー
>そうそう、で提案なんですが、いっそのこと外務省がネットで大使館掲示
板なり投書箱をつくって、ここの大使館でこんなヒドイ扱いを受けたとかの
意見や実体験を受けつければいいと思うんですけど・・
>ああ、各大使館もしかしたら劇的に態度が変わるかもしれませんね(笑)
>うーん、でも大使同志の出世競争における足の引っ張り合いに使われたり
して(笑)
>ああ、それはありえますねー。じゃあ、みんなで大挙して水戸黄門みたい
に各国を放浪すればいいんだ。失業対策にもぴったし(笑)
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