2000.9.20.発行 vol.47 [ 遅刻はお好き? 号]

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■■ [書評]のメルマガ                           2000.9.20.発行  
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■トピックス
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■新進出版社の新刊
月曜社という主に人文書を主体とした出版社が始動しました。まず
・『アウシュビッツの残りもの』ジョルジュ・アガンベン 上村忠男・廣
石正和訳 2400円
を手始めに、以下次のラインアップで出るようです。
・『ルーツ――二〇世紀後期の旅と翻訳』ジェームズ・クリフォード
毛利嘉孝・有元健・島村奈生子ほか訳
・『友愛と敵対――絶対性の政治学』アレクサンダー・ガルシア・
デュットマン 大竹弘二・清水一浩訳
・『スモール・アクツ』ポール・ギルロイ
毛利嘉孝・有元健訳
・『ポストコロニアル理性批判』ガーヤットリー・C・スピヴァク
上村忠男・本橋哲也ほか訳

■畠中さん、今回お休みです。
今回、畠中さんがお休みです。カワイソウな野良猫拾ってきたら、子供産ん
でしまって、そうしたらあらまあ大変……と、私生活が波乱万丈の展開のよ
うです。詳しくは来月号をお楽しみにお待ち下さいませ。
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特別公開シンポジウム「明治・大正・昭和;日本はどう作られてきたか」
司会・小森陽一 9/29関川夏央、成田龍一、11/10 赤坂憲雄、兵頭裕己
※明治以降、日本という国と人々の行動原理はどのように形成されたか、
文学、ジャーナリズム、民俗学など多様な視点から探っていく。(13時〜)
料金:2回5000円、場所・NHK文化センター青山教室 ?03-3475-1151
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■「人間が起こし得る悲劇について」小林圭司
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『白の闇』
ジヨゼ・サラマーゴ著 2300円 NHK出版

この20日号のメルマガでとり上げる本は、毎月10日までに書名を編集人であ
る守屋氏にメールすることになっている。
ノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴが極限状態における人間の尊厳を描いた
現代の寓話『白い闇』を書評することを連絡した翌日に、想像を遥かに凌駕
する形で、人間の尊厳を踏みにじる悲劇~米国における同時多発テロ事件が
起きてしまった。

『白の闇』をはじめて手に取ったとき、奇抜な着想というよりも、苛酷に過
ぎる状況設定に慄然とした。

物語はこんなふうにはじまる。
自動車を運転していた男が、信号待ちの間に失明した。
医学的に眼自体にはなんら異常は認められないのに、目の前が真っ白でなに
も見えないというのだ。
そしてこの失明は、「見えない」眼で「見られる」ことにより伝染し、あっ
という間に多くの人々が視力を失う。

だが、サラマーゴのつくり出す恐怖は、失明そのものが原因となるものでは
ない。
失明した人々の世界で露わになっていく人間の本性こそが、本当の恐怖を引
き起こすのだ。

政府はこの強い伝染力を押え込む手段も、治癒法も見出すことができず、発
症者をかつて精神病院であった場所に隔離する。
軍隊に包囲され脱出することのできないこの施設で、患者たちはどうにか苦
労して生活をつくり上げていく。
しかし、新たな患者が急激に増加し、その中の武装した勢力が人々を支配す
るようになる。
また、盲目での不自由な日常生活は、衛生面でも破綻をきたし、人々の心を
荒廃させる。
崩壊していく秩序、力による支配、その結果引き起こされる悲惨な事件・・
・。

想像上でしかあり得ないとはいえこのような状況下で、人間はどのように行
動するだろうか。
サラマーゴは人間の弱い部分から目を背けることなく、人間が行いうる愚か
しい行為を、冷徹に見つめる。
一方で、過酷な環境においても、他者へのやさしさや愛情を示すことのでき
る、人間を人間たらしめる行為についても多くを割いている。
後半はまさに、人間性の再生についての物語で、象徴的なラストへと連なっ
ていく。

あとがきによるとサラマーゴは、「人間が理性の使用法を見失ったとき、た
がいに持つべき尊重の念を失ったとき、なにが起こるかを見たのだ。それは
この世界が実際に味わっている悲劇なのだ」と言ったという。

現実に、悲劇は最悪の形で起こってしまった。
これ以上悲劇を繰り返さず、他者への尊重を回復することは不可能なのだろ
うか。
この小説に答えを期待するのは的はずれだが、考えるためのヒントはいたる
ところに散りばめられている。
そんな深い懐を持った作品だ。
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<小林圭司 出版社営業部員 32歳 年間読書量50冊 好きなジャンル
 翻訳小説・サッカー>
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■『IT勉強したけりゃ、こんなのを読みなさい』朝日山
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「定刻発車〜日本社会に刷り込まれた鉄道のリズム」三戸祐子 交通新聞社

企画力のある本って、いいですね。テーマに、それほど興味があるわけでも
ないのに、ついつい興味をそそられて、買ってしまう……。最近の本で出色
だと思うのは、推理作家にして建築のセンセ、森博嗣助教授の「臨機応答・
変問自在」大学生に質問を出させて、それに森センセが答えるというだけの
本なのだが、前書きの教育論が唸りたくなる出来。その上学生の質問と森セ
ンセの答えがめっぽう面白い。

でも、こういう本はたいてい外国のノンフィクション、最近なら、「銃・病
原菌・鉄」みたいな大著になって、日本のモノは多くない。これは日本人が
こういう骨太ノンフィクションを書けないというより、書いても採算が取れ
るほど市場がないから書けないというのが原因ではないかと思う。

だからだと思う。あんまし大著でないなら、面白い企画を見事な切れ味で読
ませてくれる本は数多い。日本人の手になる大著が欲しければ、出版社は英
訳・輸出も考えて本を作る必要があるのではないか……ひとまずは、こうい
うのを英訳するとどうだろう?

「定刻発車」は、日本では誰もが当たり前だと思う鉄道の定時運行、要する
に時刻表どおり正確に鉄道が動く理由を述べた本だ。正確な運行に関しては、
日本の鉄道は2番手を圧倒的にぶっちぎるトップランナーだという。著者に
よると、こんなに正確に運行する鉄道は世界中探しても日本しかないんだと
か。なぜ日本だけそんな芸当ができるのか?なるほど、そそられますなぁ
(^_^;)……

著者の問題意識は、明治の鉄道誕生以前の江戸時代まで遡る。なぜなら、
今、日本の鉄道マンが発展途上国に行って鉄道をつくり、指導しても日本の
ような定時運行は全くできない。国際協力事業団の専門家が現地に行って最
初にする仕事が、まず現地のメンバーを時間通り同じところに集合させるこ
とから始まるそうだ。

日本でも、たとえば朝日山時間\(^o^)/とか言って、時間にルーズな人も
いないではないが、そういう奴は怒られるのが普通だ。が、外国ではそうは
いかない。下手に怒ったら向こうが怒って帰ってしまう。とすると、日本の
場合、事前に定時運行ができる国民性や土壌が昔からあったのではない
か……これがビジネス書の版元から出るなら、鉄道誕生期の英雄譚で終わる
ところなのに、この視点。ここで、ぐっと引き込まれます。

で、日本にはお寺などの鐘で時刻を知り、時間通りに動く習慣があった……
黒船でやって来たペリーは、幕府の役人を眠らせなかったが、浦賀の時鐘が
うるさくてペリーもまた眠れなかったというエピソードに「ははは」と笑っ
ていると、第一章最後に、うげっ!

なんと大名行列のダイヤグラムの写真が……紛れもない運行管理表が江戸時
代に存在していたではないか!。「アミノ酸のスープ」に例えて、定時運行
という生命が江戸時代に育まれていたという著者の主張まで読み進めると、
もう徹夜の誘惑には勝てまへん(^_^;)

著者は需要、鉄道マンの熟練、列車の技術革新などさまざまな分野から定時
運行の謎を掘り起こしていく。その一つ一つはごもっとも。需要面を挙げて
みる。朝八時半、新宿駅で二分間隔の列車が三分間隔、五分間隔になれば、
それだけで駅に人が溢れて危険な状態になるという……1分の遅れがどれだ
け危険を生むのか、説明されたらホントに怖い。人が死なない、けがしない
状態を維持するには時間通り列車が来なければならない。時間通り発車しな
いといけない。こういう環境だから定時運行に必死になるんだと言われて、
逆らえる人はいないだろう。この時間に新宿駅にいるなんてことはやめよっ
と(^_^;)

鉄道は高度かつ大規模なシステム産業だ。大鉄道は規模の大きさ、複雑怪奇
さでは、原発や石油プラントなどを軽く凌駕するだろう。新宿駅一つきちん
と管理するのも大変なことで、乗り入れする列車のみならず、たとえば京浜
東北線に遅れが出ても新宿駅にすぐ影響が及ぶものらしい。

機械の信頼性が99.999%でも、JR各社くらいの規模になると一日一つや二つ
は故障する。しかもどれが故障するかわからない。列車はすぐには止まらな
い、危険な乗り物だ。緊急にブレーキを踏んでも五百メートルは走る。緊急
事態を発見したときには時既に遅し。

そんなリスクを封じ込める。あるいは封じ込めないまでも列車運行の影響を
最小限に止めるためには、トップから現場まで全員名人になり、日々知恵を
絞り、技術を磨き、体を張って「戦って」いなければならない。1センチの
狂いもなく電車を定位置に止めようとする運転手。線路幅1ミリの調整に必
死になる保線員、秒単位のスケジュールで動く駅員……日本の鉄道マンとは、
精密機械のような動きを要求されるのだ。驚くべき人機一体。こりゃ下手す
ると軍隊よりすごいんじゃないだろうか。

彼らの戦いがあって初めて、我々は定刻通り目的地に行けるのだ。これくら
いの気持ちで新聞も記事書いてもらいたいもんだ。「いのちの初夜」読みも
しねぇで読んだふりしてハンセン病関連記事書いて、ばれないと思ってんの
か?思ってんだろうな(笑)

で、最後に著者は大型爆弾を用意する。なんと日本の鉄道は、将来世界に誇
る定時運行を捨てるかもしれないという。できなくなるのではない。やめる
というのだ。その背景にあるのは情報技術の進展だとだけ書いておくので、
あとは読んでお楽しみいただきたい。まさしくこれぞIT。スーパーのお買い
得情報のブロードバンドの如きとは、格の違う世界が見えてきます。

メーカーのエンジニアなんかと話していて、彼らが一番喜ぶのは「こんなこ
とをしたいねん」と話すことなんです。彼らは技術は持っているけど、持っ
ている技術をどう使えばいいのかを案外知らない。知っているのはIT業界以
外の人間なんだわ。

某IT業界の太鼓持ち教授が冷蔵庫をインターネットに繋いで牛乳が切れたら
配達されるシステムなんて提唱してるけど、そんなの誰が欲しがってるわけ
?今日は牛乳じゃなくてオレンジジュースが欲しいとなったらキーボードか
タッチパネル叩かにゃならんじゃないか。オレ、いらんよ、そんなの。

本当にITを離陸させたいなら、各業界のトップレベルの人材に、何やりたい
か聞いて回ることですな。そんなこともわからないITバカの本読むより、い
かにもITと関係なさそうな、こんなノンフィクションの方がよほどITの勉強
になります。

山形浩生が、「銃・病原菌・鉄」を最高のIT本というのは、歴史を動かすパ
ラメーターは何かを知れということ。朝日山が言うのは、何が求められてい
るのか、その筋の人間に聞けということ。ITは目的じゃないのです。目的を
達成する手段、それも選択肢の一つに過ぎないのです。

そうそう、製鉄業界が巨大システムの運用ノウハウをITに応用して業績を伸
ばしていることを知ってる人がこれ読んだら、鉄道会社の株を買いだすかも
しれませんね。製鉄業界でも手に余るシステムは、鉄道会社が手がけるよう
になると思ったりしてね。あ、株買おうと、電話が手に延びているあなた、
値上がりしなくても朝日山は責任持たないからね(^^ゞ。

http://www.gozans.com/bk/?b=4875130996&s=shohyo 
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(朝日山 百姓 36歳 年間読書量50冊 好きなジャンル 特になし)
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■あとがき
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>今年は秋刀魚が安いですねー。近くのスーパーで百円で売ってたと思った
ら、その向かいでは、なんと一匹98円ですよ。
>そうそう、今年は豊漁らしいですね。
>私、実はフライパンで秋刀魚焼いてるんです。
>フライパン??
>そう、フライパンにキッチンペーパー敷いて、秋刀魚のっけて、その上か
らもキッチンペーパー被せて、きっちり蓋をして焼くんです。
>そんなので、大丈夫なの?
>これが案外きれいにおいしく焼けるんですよ。キッチンペーパーに吸収さ
れるためか、煙も全然出ないし。ぜひお試しください。
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