2000.10.20.発行 vol.50 [ お弁当と猫と総統と 号]

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■■ [書評]のメルマガ                           2000.10.20.発行  
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■■     mailmagazine of book reviews   [お弁当と猫と総統と 号] 
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■トピックス
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■五十号の御礼
今号を持ちまして、当メルマガも五十号を迎えることになりました。これも
御購読頂いているみなさまあったればこそのものです。本当にありがとうご
ざいました。これからもよろしくお願い致します。

■本の紹介
当メルマガで以前、書評を書いて頂いた辻和人さんの詩集が出版されました。
『Ver.μの囁き(バージョンミューのささやき)』書肆山田
とても読みやすく、かつ奥深い内容の詩集です。興味のある方はぜひお買い
求めください。
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■「弁当のおかずは肉さえ入っていればいい」 小林圭司
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家の料理本の棚を見てみたら、弁当レシピの本が5冊あった。

唐突ですが、ここで問題です。
次の1から5の弁当は、AからEのどの本の表紙に載っているものでしょう
か。

1. 三色おにぎり弁当(三色おにぎり・鶏のから揚げ・卵焼き)
2. ボリュームサンドイッチ弁当(照焼チキンサンド・オムレツサンド・
ポテトサラダ・ザワークラウト)
3. 鶏肉の梅風味から揚げ弁当(鶏肉の梅風味から揚げ・絹さやのわかめ
巻きレンジ蒸し・う巻き卵焼き・型抜きにんじんのピクルス・じゃが芋のバ
ター風味煮・黒豆の酢漬け)
4. 鶏の焼きづけ弁当(鶏の焼きづけ・大学いも・さやいんげん塩ゆで)
5. 日の丸弁当(ご飯・梅干し・たくあん)

A.『粗食のすすめ・お弁当レシピ』幕内秀夫(東洋経済新報社)
B.『栗原さんちの朝20分のお弁当』栗原はるみ(文化出版局)
C.『アイディアいっぱい子どものおべんとう100』(婦人生活社)
D.『栄養バランス満点カラフルお弁当』伊藤睦美(女子栄養大学出版部)
E.『ドーンと元気弁当』小林ケンタロウ(文化出版局)

すごく簡単なのもあるけど、全部当てるのは結構難しいのでは・・・。

正解は、1−C、2−B、3−D、4−E、5−Aでした。

字面からはなかなかイメージしにくいと思うのだが、実際に表紙を並べてみ
ると、それぞれに個性的だ。
偶然にも鶏がメインのものばかりだが、できあがりの作風はまるで違う。
1はいかにも子どもの喜びそうな楽しい弁当だし、2はちょっと小洒落てる
し、3は栄養バランスも考えました、てな感じだ。
でも、どれがうまそうか、どれが食べたいか、と聞かれたら、無条件で4だ
ろう。
ご飯・肉・簡単な野菜2品とシンプルで色合いも地味だが、ムダがないし、
なんといっても重量感がたまらない。
この弁当が四股を踏んだら他の弁当が吹き飛びそうな、そんな存在感があ
る。

この本の著者であるケンタロウ氏を知らない人はいないと思うが、今や大人
気の料理研究家&イラストレーターで、著名な料理研究家である小林カツ代
氏は彼の母である。
であれば、子どもの頃からさぞかしおいしいお弁当をつくってもらっていた
のだろうと思いきや、小学生になると遠足に行く姉の分までつくっていたと
いうから、その弁当づくりのキャリアはおそろしく長い。
母の弁当はシンプルで野菜の多い、作り手の知恵と愛情に満ちたものだっ
た、と著者は言う。
しかし、食べ盛りである10〜20代の男が食べたいと思うのは、野菜がた
くさん入ったヘルシーでカラフルな弁当では、まちがっても、ない。
見栄えなんか悪くても構わない、肉がドッカーンと入っていればそれでよ
し、だ。

そんな子ども(男)心を持って、料理人としての多彩な引き出しを駆使して
できたのが、このすばらしい弁当レシピ集だ。
はじめの章からしてすごい。
「いつかきっとかなえたかった夢のステーキ弁当」(!)という括りで、
ビーフステーキ豪快弁当、とんテキ弁当、鶏塩焼きステーキ弁当と並ぶ。
以下、肉、魚、パン、残りもの利用、ご飯もの、野菜と続くのだが、そのど
れもがボリュームがあり、内容的にも充実している。
見た目は気にしない。
弁当を彩りよく見せる手抜きテクニックとして、とりあえずレタスとプチト
マトを入れておく、というのがあるが、そんなつまらない遊び球はなし、す
べてど真ん中のストレートで真っ向勝負だ。

調理法も簡単。
弁当なんて、朝起きてから出勤・登校前のわずかな時間につくるのだから、
そんなに手間をかけてはいられない。
常備菜をつくっておくとか、前の晩のおかずを残しておく、なんて計算ので
きる人ならよいが(そんな人なら朝もきちんと早く起きそうだけど)、大抵
の人は時間を気にしながらのギリギリ進行だろう。
簡単であれば短時間で出来るし、失敗することも少ない。
僕自身、この本のレシピはほとんど実際につくってみたが、失敗して食べら
れなかった、なんてことはない。

それになんといっても、実際にうまいのがうれしい。
かたくり粉をつなぎに混ぜ込んでプリプリ感を出した野菜入りつくねとか、
鮭を焼くのではなくゆでて、酒・ごま油・醤油で風味づけしてご飯に混ぜた
りとか、ごくごく簡単な工夫でおいしくする小技をところどころ利かせてく
れる。
なかには、豚肉・キャベツ入りソース味といういたって普通の焼きそばをつ
くるのに、なんとスパゲッティを使うと、冷めてもべたつかない、というよ
うなびっくり技もある(これはカツ代母直伝のようだ)。
でもほとんどは、豚肉ザーサイ炒め、というような、ごくごく単純で味の想
像もつきやすい、でもおいしそうなものが多い。

ウチめしブームという言葉も聞くくらいで、最近は特に、昼食を外食にせ
ず、社食を利用したり弁当を買ってきて社内で食べる人も多いだろう。
毎日弁当を自分でつくる、という立派な人も少なくないかもしれないし、な
かには愛妻弁当なんていう羨ましい人もいるだろう。
でも、毎日見栄えのよい、カラフルで栄養バランスの取れた弁当なんてもの
をつくろうとすると、それは大変な労力がかかる。
献立を考えるだけでもううんざりしてしまう。
弁当なんて、他の人が見て批評するためのものじゃなく、見た目は悪くて
も、食べる人が実際に食べてうまければそれで十分なはず。
別に開き直っているわけではないが、「弁当なんてこんなもんでいいのだ」
と安心できるのがこの本だ。

だから、昼飯を65円バーガーで我慢しているお父さんに、ぜひこの本を見
て弁当をつくってほしい。
男が自分の弁当を自分でつくるなんて恥ずかしい?
昼食がマック・吉牛・立ち喰いそばのローテーションの方が、余程みっとも
ないよ。
自分の食べたいものを自分でつくるのはたのしいし、ずっと潔いことだ。
料理なんてしたことない?
いやいや、難しいことなんて全然ない、この程度の料理はつくれないと、奥
さんに捨てられたときに困りますよ。

最後に、この本のレシピの中で僕のいちばんのおすすめは、キャベツメンチ
カツ。
普通メンチというとタマネギが入っていて、食べているときはおいしいけれ
ど後で口の中がネギくさくなってしまうことが多い。
この本では、キャベツのみじん切りを塩もみして水分をしっかり絞り、豚ひ
きとよくよく混ぜて塩こしょうし、衣をつけて揚げる。
こんなに簡単なのに、すごくおいしい。
これさえ入っていれば幼稚園児の息子は狂喜乱舞だ。
「おとーさん、きょうのおべんとう、すげーうまかったー!」

『ドーンと元気弁当―食べざかり、伸びざかりに』
小林ケンタロウ著・文化出版局・本体1400円

http://www.gozans.com/bk/?b=4579206207&s=shohyo 
(こちらでお買い上げ頂けます↑)

<小林圭司 出版社営業部員 33歳 年間読書量50冊 好きなジャンル
 翻訳小説・サッカー 小林家では月・水の弁当を担当>
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■『フンザにくらして』畠中理恵子
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 初めにすこし。ご挨拶を。

 こんにちは。1ヶ月ぶりのご無沙汰です。先月は、何だか全く本を読めな
い月でした。(本屋がこんなことでは困る!)読書ってある程度心が落ちつ
いていないと出来ないものなのだと初めて知りました。癒しの読書ってある
と思っていたんですが、余裕なくなると癒しも何もなくただ眠りたい、逃げ
たいってなるのですね。はあ。
 個人的な話でお恥ずかしいのですが、野良猫が8匹わがアパートの庭に住
み着いて(ご飯をあげていたので当り前なのです)、大家さんに立ち退き要
求を受けていました。はは。(ペット不可のアパート)
 見捨てるわけにも行かず、でも野良だから人間に慣れてもいなくて、誰か
にもらっていただくにもいかず…。と八方塞り。9月は自分でも何していた
かほとんど憶えていません。情けない事に仕事にも支障きたしました。でも、
今はだいぶ落ちついています。子猫も保護し人慣れの訓練をしています。母
猫は避妊の手術後また野良として生きています。大家さんも今のところ静か
です。後は貰い手をさがすのみ。…。
 野良との関わりって難しい。野生なんだからどのくらい人間の意志で関わ
っていいのか今も悩みます。笙野頼子さんの『愛別外猫雑記』河出書房新社 
は泣ける。今回ものすごく共感しましたが、切な過ぎてしんどかったです。
特に9月はつらすぎて読み終わるのに時間がかかりました。でも、やっぱり
いい、と今は思います。ご興味があったら是非お読みください。すごく神経
質で激しいですが、真実だと思います。他人からみれば、憑き物が憑いてい
ると思われても仕方ないと思いますが。
 あと、角川書店の月刊雑誌『本の旅人』の大島弓子さんの『グーグーだっ
て猫である』。これももう現実。どんどん捨て猫を拾ってくる。いやあ、や
っぱり何か憑ていますね。ホント。

 さて、今月ご紹介する本は、中国との国境、パキスタン辺境・フンザで6
年間暮らしたご夫婦が書いた生活の記、『フンザにくらして』。以前、『ヒ
ンディ村 最後の桃源郷フンザにくらして』という絵本として同じ石風社か
ら出版されたものに加筆し、新版として出されたものだ。

 夫婦とも絵画を志し、1979年〜86年までインド・パキスタンで旅行
生活を送った。
 インドで地球に残る最後の桃源郷だと聞き、バスや飛行機を乗り継ぎ目指
す土地フンザ。殆どイスラム教。「急峻な山に囲まれ厳しい生活を強いられ
ててきた」住人は、「厳冬期に川を渡ったり、百キロの山道を36時間歩き
通した」ともいわれる強靭な民族だ。
 頭上から雪崩のように落ちてくる白い山々の中の緑の静かな村。土の匂い
のする人々と夫婦との、まさに素朴な生活が始まる。

 「レンズでもかけて見るような青い空、その広大な青さに消え入りそうな
句も。高台に登ると、八千メートル近くの白い山も小さく見える。」
 「氷河溶けの頃ともなると、大人の身体はある氷塊を流すほど、河は増水
して暴れる。」
 「日中、人気のないこの晴天下で、恐ろしいほどの静けさが染みてくる。
人間であることを忘れてしまいそうだ。」

 まさに想像を絶する、天井の風景だ。

 食事は、
 朝、前日の残りのパン(鉄板で裏表を焼いただけ)と
 塩入りミルクティ、
 昼、ラッシーとパン、
 夜、パンとイシビット(三つ葉の類)かジャガイモの煮物。
 春には、野の杏の花、たんぽぽを食べる。
 ジャガイモや人参の畑を耕す。
 ヤクを飼い、雑草とりに汗し、
 裸足で歩くこども。
 服も髪も汚れて不潔な匂いを放っていたが
 うつむき加減にのぞく瞳の輝き。
 ランプ。
 シラミと南京虫。
 
 貧しく、素朴な暮らしのあれこれを短い文と細かなペン画で綴る本書は、
牧歌的と外部からは思える人々の生活の、それだけでない、リアルな、厳
しさ、猥雑さをも描く。

 近親結婚からくる障害者の多さ。
 イスラム教による男性優位の習慣。
 貧しさや環境の厳しさ狭さからくる人間関係の畸形な姿。
 ずるさやせこさ。

 村の生活に馴染み、村の一員になればなるほど以前のようなのんびりし
たよろこびだけに浸れなくなり、村の人とともに同じ悩みをかかえるよう
になる夫婦。
 外側からのぞく生活と
 内側からみたの生活。
 自然の恵みと動じにその恐怖を味わう暮らし。
 
 日本の様々な猥雑さから逃れるようにこの地に辿りついた著者は、また、
生活の猥雑さに疲れてくる。

 やがて、フンザにも浸透してくる「金」の力。
 激しくなる貧富の差。
 すさんでくる人間関係。

 どこも、生活するという時点で同じなのかもしれない。
 同じだ、と解かることが本書の魅力でもある。
 同じだが、フンザはフンザの自足した豊かな生活があり、暮らす人間の
小さな感情がある。
 それは、煩わしいが、小さな愛しさのようなものを感じさせる。
 ほっとするというか。

 些細な諍いや、痴話喧嘩。
 貧しかったり、ひねくれたり、ずるかったり
 優しかったり、暖かかったり、照れていたり

 どこででもそれらの在る生活が全てなのだ、と本書は語っているように
思う。
 桃源郷などたぶんない。
 
 しかし、誰でも、その猥雑な生活を続けていく権利があるのだ、と言っ
ているように思う。
 それだけ、だ。
 それだけ、の豊かさを伝える一冊である。


『フンザにくらして』
 山田純子・俊一 文
 山田純子 絵
 四六判・170頁・本体1,800円+税
 ISBN4−88344−079−6
 石風社刊
 2001年10月10日発行 
http://www.gozans.com/bk/?b=4883440796&s=shohyo 
(↑こちらでお買い上げ頂けます)
<畠中理恵子 書肆アクセス店長 神保町の看板娘、じゃなくて看板奥様>
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■『今こそ読まれるべき小説』朝日山
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「ヒトラーの建築家」東秀紀 NHK出版

月刊プレイボーイの恒例記事に、インタビューがある。これが楽しみで同誌
を買う読者は、たいてい本屋でエロ本の棚に行かなければならない。この状
態を、以前は集英社に失礼だろうと怒っていた朝日山だが、最近の同誌は下
半身関係の記事が多く、これじゃ間違われてもしょーがないわと諦めている
(^_^;)

それでも2001/1月号には、「巨人たちの言葉」と題して、キング牧師、シュ
バイツァー博士、サルトル、ダリなど過去のプレイボーイインタビューの抄
録特集をやっていた。集英社さんよー、金髪ねーちゃんの写真集だけでなく、
こんな過去のすごい遺産があるなら本にしろよな。ま、それは置いといて、
その中で、好評だったため2001/7月号に今度は全文掲載されたのは誰であろ
う?元ナチス軍需相、アルベルト・シュペーアだ。

ベルリン都市計画など当時の建築家として最も大きな仕事をした男。軍需相
になってからはドイツの工業生産力を飛躍的に向上させ、シュペーア無かり
せば戦争は一年は早く終わっていただろうと連合国側に言わしめた男。戦争
末期、ヒトラーが命令した焦土作戦を阻止し、それでいてヒトラーが唯一の
友人と見なした男。

こんな興味深い男にほれ込んだ日本人作家がいる。それが建築家でもある東
秀紀で、彼が心血を注いでシュペーアを描いたのが、この「ヒトラーの建築
家」だ。物語は、シュペーアと当時在ドイツ日本大使館の庭園造りに派遣さ
れていた日本の建築家谷口吉朗を軸に進む。

シュペーアはドイツの裕福な建築家の一家に生まれ、親に意向に逆らえず建
築家となった。時は第一次大戦直後。超インフレでシュペーア家は祖父伝来
の財産を売り払ってアルベルトを大学に行かせ建築家にしたが、全く仕事が
ない。
そんな時期、大学で教えていた弟子の一人にヒトラーの演説を聞かないかと
誘われ、それがきっかけでナチス党員になる。

相変わらず仕事がなく、もはや仕事のためなら悪魔に魂を売り渡してもいい
と思っていたころに、先輩ナチス党員からおまえさん建築家だったよなと言
われて、ナチスベルリン本部の仕事を受注する。これがシュペーア自身予感
していた転機となる。

ヒトラーの活躍で伸びていたナチスの建築物を造る仕事が大量に舞い込んだ。
そして政権奪取後最初の党大会の会場設計の仕事でシュペーアはヒトラーと
対面する。この時、ヒトラーは図面を置けと言っただけで彼の顔すら見なか
った。それが首相官邸改装時には、ヒトラーは自分しか着ることを許されな
い上着をシュペーアに貸して居並ぶナチスの幹部たちを驚かせる。政治家に
なる前、建築家を志していたヒトラーは、自分の無念を若きシュペーアに託
そうとしたのだ。

レニ・リーフェンシュタールと共にシュペーアが演出した、名高いあのニュ
ルンベルグ党大会。やがて来るベルリン都市計画「ゲルマニア」の仕事と並
行して進むナチスドイツの対外強硬政策。ドイツに来た直後からきな臭さを
感じ、バウハウスなど先端的な設計思想の衰退に疑問を持った谷口は、シュ
ペーアを前に不安を口にする。同じ疑問をシュペーアもまた抱いていた。ル
・コルビュジェすら仕事がなく、満州国の仕事にありつけないと見るや、ム
ッソリーニに近づこうとしていた時代だ。

「この『ゲルマニア』が平和なくして実現できないことを、総統はよく知っ
ており、私の説明に耳を傾けているのを見ると、少なくともドイツの方から、
平和を破ることがあるとは思えないのです」
「私は建築家であって、政治家ではありません。でも私は総統を信じたい。
なぜなら彼は私の上司であると同時に、建築と都市計画について、同じ夢を
抱きあう友人なのですから」

シュペーアにはそう言うしかなかった。半信半疑でも、ヒトラーほど彼を評
価し、認めてくれた人物はいない。実際、ヒトラーのやることは成功の連続
だ。シュペーアはヒトラーを信じたかった。しかし、ヒトラーはとうとう戦
端を切ってしまった。この瞬間から、シュペーアの地獄への道が開かれるこ
とになる。

何で読んだか失念したが、ナチスは小説の素材造りに多いに貢献している。
世に傑作と呼ばれる小説や映画にはナチスがいなければ作れなかったろうと
思われるものがたくさんあるなんて話を読んだことがある。これは納得でき
る説だ。百獣戦隊ガオレンジャーの敵方の名前が「オルグ」なのに憤る古く
さいオッサンでも、ナチスは簡単に敵として見る(^_^;)

しかし、その中でも傑作と呼ばれるモノにはナチス=悪の化身といった描き
方をしていないものがけっこう多い。「鷲は舞い降りた」、「Uボート」な
どを駄作だと言う人はいない。

詳細な取材の賜物だろう。この小説の中で描かれる登場人物たちは、ヒトラ
ーを始めとしてみな骨肉を持っている。彼らの動きは、確かにそんなものだ
ったろうなと思う。中でもヒトラーの描写は素晴らしい。

戦争直前、完成した総裁官邸。ヒトラーはシュペーアにだけ言った。
「いま私の前には、二つの道が開かれている。頭の中にある計画を完全に実
行するか、完全に失敗するかだ。やり抜いたら歴史に残る英雄になれるだろ
う。しかし、もし失敗したら」
「私は裁かれ、地獄へ落とされるに違いない」

ヒトラーの賭けは失敗した。ドイツ全土までも焦土と化し、民族ごと心中し
ようとしたヒトラーに対して反対したシュペーアに答えるヒトラーの絶望の
深さを見よ。ヒトラーに無断で焦土作戦を阻止し、命令に背いたとヒトラー
に告白したシュペーア。シュペーアの告白にヒトラーは……本当にヒトラー
は狂っていたのかを疑わせるものにして、涙なくしては読めない。

だが、クライマックスは、ここではない。本当のクライマックスは、谷口と、
他数人が作る。詳しく書いたら興ざめなので書かないが、今読めば、読者は
ビンラディンとアメリカを思い起こさずにいられないだろう。
http://www.gozans.com/bk/?b=414005347x&s=shohyo 
(↑こちらからお買い上げ頂けます)
(朝日山 烏書房付属小判鮫 37歳 好きなジャンル 何だろ?)
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■あとがき
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>最近、なんかエバッてる人が多いと思うんですよ
>はあはあ
>例えば、高速道路の補修工事のCM見ていると、一言「御協力を」ってい
うだけなんですよねー。
>ああ、昔だったら、御迷惑かけて申しわけありませんとか、きちんと一言
ありそうですもんねー
>そうそう。それに最近、小さいサイズの『日本国憲法』読んだんですが、
最初に編集者みたいな人が、子どもに向かって《読みなさい》って命令調で
書いているんですよ。
>《読みましょう》、じゃないんだ……
>なんだかなーって感じでしょ。でも、礼儀を失ってエバっている人って、
実は二流以下の人が多いんです。崩れそうなプライドを見透かされないよう
に必死というか……
>ああ、道路関係は今、法人廃止とかスゴイですもんね。でも、憲法読めっ
てエバることは、少子化で児童書業界ボロボロの反動か、憲法が揺らいでい
る証しってことでしょうか??
>うーん、よくわかりませんけどね……
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