2001.10.31.発行 vol.50 [ 100年前のことまで 号]


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■「タクシー・ドライバー」をほうふつさせる負のエネルギー」
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★★「ニッポニア・ニッポン」
阿部和重著
新潮社・1200円★★
 
 主人公は、鴇谷春生(とうや・はるお)という若者。親に甘やかされたせ
いで、自意識が異様に肥大し、社会に適応できなくなっている。
 彼は中学校の同級生だった本木桜にずっと愛情を感じているが、相手には
当然のように避けられている。
 ある時、彼は、日本の国鳥である鴇(トキ)と自分の苗字との関係に気づ
き、絶滅に瀕しているこの鳥に、パラノイア的な関心を示す。
 トキに対する彼の思い入れはどんどんエスカレートしていき、ついには、
トキを殺害して、日本社会に一石を投じようと考えつく。
 周到な準備をして、鴇谷は生息地の佐渡島に向かうが、上越新幹線の中で、
ペンフレンドに会いに行く女子中学生と出会う……。

 阿部和重は、「インディヴィジュアル・プロジェクション」に続き、若者
の負のエネルギーの暴発を活写してみせる。
 鴇谷の負のエネルギーは、どこかアメリカ映画「タクシー・ドライバー」
をほうふつさせる。
 社会から無視された存在で鬱々としていること。
 社会に対する被害妄想を膨らませていること。
 女性に冷たくされたことが暴発のきっかけになっていること……。

 ロバート・デニーロ演じるタクシー運転手が大統領候補の暗殺を試みたよ
うに、鴇谷は、ニッポニア・ニッポンというナショナリズムを背負った学名
を持つ貴重種を狙う。トキは鴇谷が言うとおり、日本国民に特別な感情を呼
び起こす。彼の妄想は幼稚だが、トキに対する日本のメディアの異様なはし
ゃぎぶりを批判する部分は大いにうなずけるのだ。

 ここには、人をテロルに突き進ませる病理とプロセスが描かれており、図
らずもタイムリーな出版となった。しかも、叙情を排した硬質な文体でつづ
られているため、極めてリアルなイメージを抱かせる。

 過剰にも見える状況の緻密な説明は、著者が映像に近い位置にいるせいだ
ろうか。
http://www.gozans.com/bk/?b=4104180025&s=shohyo 
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(石飛徳樹 朝日新聞名古屋本社学芸部記者 39歳 年間読書量100
冊 好きなジャンル・文学)
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■「『アドルフに告ぐ』(手塚治虫)にならぶ傑作だ!」ミラクル福田
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『虹色のトロツキー 1〜8』 安彦良和 中公文庫コミックス 
各533円(本体価格)

物騒ですね。

飛行機に乗って、機体を小刻みにゆらす妙な音を聞いただけで、「あぁ。も
うあかん」って思ってしまうし(関空上空で)、最近、牛肉を食べてないか
ら、行きつけの焼肉屋のおばちゃん(谷中)が元気かどうか、とても気がか
り。郵便で炭疽菌が送りつけられたら、どうしたらいいんだろう。

いままでどこかほかの国の出来事だと思っていたことが、確実に自分の身に
迫ってきている。村上龍はよく「平和ボケ」と言っていたけど、日本人は
「何か」が起きたときに対応ができるのだろうか? なんてことを言ってる
自分はどうだろう?

よく考えるのは、カクシャクとした明治人が、いま生きていたら、どんなこ
とを考えて行動しただろうか、ということ。『虹色のトロツキー』に出てく
る石原莞爾や安江仙弘、辻政信、中山優などが生きていたら、やっぱり小泉
純一郎のような政策をとったのだろうか? そんなことを考えながら読んだ
けど、そんなことわかるわけがないよなぁ。

<満州帝国>
石原莞爾ら関東軍参謀が起こした満州事変の翌年、1932年に満州帝国は建国
された。ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』の舞台だ。満州族・漢
族・蒙古族・朝鮮族・日本人が相和して国を構成する「五族協和」が満州の
国家イデオロギーだった。しかし、謀略術数ばかりを弄する日本が、この理
想を本当に実行するつもりがあったかどうか・・・。
(説明したらながくなるので、わかりにくい文章ですが、こんなとこで)

もともと日本史は中学校程度、日本が第二次世界大戦に負けたことくらいし
か知らないので、満州には「満州建国大学」という大学があり、ここで、
「五族協和」の実践にむけて教育が行われていたことを知ることができてよ
かった。そしてこの大学に、ウムボルトが入学するところから物語は始まる。

<あらすじ>
日蒙ニ世のウムボルトは、多感で扱いにくい青年。しかし、関東軍の軍人で
あった亡父がトロツキーと接触していたらしいことから、石原莞爾らの「ト
ロツキー招聘計画(満州建国大学への)」に利用されることになる。この計
画を阻むために、スターリン率いるコミンテルンの刺客が現れてウムボルト
がさらわれてしまう。そこからウムボルトは流れ流れて、抗日聯軍や満州国
軍に加わったりと、1930年代の日本とそれをとりまく情勢に翻弄される。
そして、ノモンハンでは、ソ連の支配下になった外蒙と、ウムボルトのいる
満州国の蒙古族同士が戦うことになってしまう。

<さてさて>
作者は『機動戦士ガンダム』の主要スタッフ安彦良和。『虹色』のウムボル
トがどんな人物かを一言で伝えられるとしたら、「1938年のアムロ・レイ」
と言えるだろう。ガンダムを経験した世代ならこれで伝わるはずだ(ニュー
・
タイプみたいだね)。
アムロの青くささと優柔不断さは、それまでの勧善懲悪が中心のテレビアニ
メの世界では斬新というより、違和感を覚えるものだった。でも、あれから
20年たったいま、『虹色』で再び「アムロ」に出会うと、大きな歴史のウネ
リに飲み込まれながらも、自分で正しいと思うことを、からだを張って行っ
ていく姿にやりきれなさを感じてしまう。

「五族協和」という、日本軍にとっては政略のための方便でしかなかったか
もしれないものに、理想を見出し、実現しようとする人びとの姿は痛々しい。
クンデラの言うように、誰も過ちの贖罪をしないのが歴史で、個人の人生な
んて歴史の皮肉にからめとられてしまう「冗談」のようなものだとしたら、
先人たちの悲劇はどうなるんだろう。ついこのあいだのテロはどんなふうに
償われるんだろう。

ウムボルトはいまの世界を見てなにを思うだろう?

<ところで>
主人公のウムボルトが、創設されたばかりの満州建国大学に入ったのが昭和
13年。僕は昭和45年(1970年)生まれで今年31歳(独身、恋人募集中)
だから、物語は僕が生まれる32年前のことになる。たいして前のことではな
いじゃないか! なんて、ようやく気がついた(鈍感・・・)。宮崎哲弥は
「いまから100年前のことまでしか責任は負えない」というようなことを言
っていて、まあ、そんなとこかなと思ったけれど、よく考えてみると、僕は、
自分の生まれ年から年齢分遡ったくらいがせいぜいかな。
http://www.gozans.com/bk/?b=4122036240&s=shohyo 
(↑こちらからお買い上げ頂けます。分量が多いので一巻のみあげています)
(ミラクル福田 某人文系出版社編集 31歳 年間読書量80冊弱
好きなジャンル 文芸・芸能)
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■「中国を深く知りたい人への宝物」守屋淳
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『中国思想文化事典』溝口雄三 丸山松幸 池田知久 東京大学出版会

今回のテロ事件を、『孫子』的な観点で見れば、どう位置づけられるか?

これは、魅惑的な問いではありますが、実は今の時点では恐らく何を書いて
も嘘にしかならないかもしれません。

なぜなら、湾岸戦争と違ってアメリカ側にしろ、テロ組織側にしろ、確実な
情報があまりに少な過ぎるからです。出て来る情報の多くはプロパガンダの
臭いがする以上、それを前提に語るのは、かなり難しいとしか言いようがな
いと思います。

ただ、ひとつポイントを挙げるとすれば、『孫子』的な世界観では、ある勢
力とある勢力がどろ沼の戦争に陥ると、もっとも利益を被るのは第三者勢力
である、ということです。
第三者勢力――例えばそれは中国と見たてることも可能かもしれません。
『文明の衝突』にも書かれている事ですが、長期的な視野で見る限りパック
スアメリカーナに挑戦していくのは、おそらく中国であろうという見方はで
きます。そして、今アメリカはボロボロになりかねない危険な戦いに足を踏
み込んでいます。

そこで、中国はどうでるか――中国自体、イスラム過激派のテロに悩まされ
ている経緯もあり、その対処法はとても注目すべきものです。

ということで、数十年後の未来を見越して、日本人は中国文化を知っておい
た方が絶対にいいよーという無茶苦茶な筋道のつけ方で(笑)、ご紹介する
のがこの本です。

はっきりいってこの本、というか辞書、ものすごい傑作です。一応中国古典
の翻訳を生業とするわたくしが、全部読み通したうえで言うのだから、間違
いありません(ちょっと偉そう)。

なにが傑作なのか。
中国思想を学ぶ場合――例えば、仁とは何か、朱子学とは何か、道教とは何
か……、実はそれぞれ別々に入門書なり専門書を読まなければならない場合
が多いのです。
それらがみな手際よくまとめられた本があるかというと、案外ないというの
が実情です。中国思想や文化は異様に幅が広い分(仏教から、道教的神秘思
想から、儒教からあるわけです)、どんな優秀な執筆者でも一人で書くとい
うのは至難の技ですし、大勢で分担する場合、どうしてもイマイチな部分が
出てきてしまうのです。

しかし、本書はさすがに東大出版会50周年記念本(笑)。いやー気合の入っ
たよい執筆者たちが書いていて、ホントに読ませます。まあ、それはたまに
日本語が下手な人とか、おいおいと言いたくなる人もいますが、それもご愛
嬌程度。辞書としても、読み物としても稀有な高みに達した本が生まれたと
思います。
特に「仁」とか「義」とか、われわれが普段何気なく使っていながら説明を
求められるとよくわからない言葉を、膨大な文献を駆使して読み解いていく
あたりは、目から鱗が落ちるような感覚を味わせてくれて絶品です。

中国思想をさらってみよう、非西欧的な発想に新しいものを発見したい、と
いう方は、ぜひ読んで欲しい一冊です。
http://www.gozans.com/bk/?b=4130100874&s=shohyo 
(↑こちらからお買い上げ頂けます)
(守屋淳 35歳 ご隠居 年間読書量100冊《仕事で他にも少々》 好き
なジャンル 古典) 
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■あとがき
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>ある超大手印刷会社さんの話しなんですが
>はあはあ
>そこには当然パソコンが完備され、ネットにも繋げるそうなんですが
>それで遊んでいると怒られるとか(笑)
>いえいえ、それで「2ちゃんねる」という巨大掲示板があるじゃないです
か
>ああ、ありますねー
>そこに社内から繋ごうとすると、自動的にシャットアウトがかかるらしい
んですよ
>それって……繋いでいた人がすごく多かったってことでしょうねー(笑)
>そうそう、それにきっと、社内事情や悪口を書かれないようにしようとい
う意図もあるんでしょうね。いやー、ちょっと逆に社内事情を勘繰りたくな
っちゃいました(笑)
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