2000.11.20.発行 vol.53 [ 寒くなってちょっと疲れて 号]

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■「ファストフード国家の恐怖」 小林圭司
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『ファストフードが世界を食いつくす』
 エリック・シュローダー著 草思社刊 本体1600円

ファストフードとまったく無縁の食生活を送っている人はいるだろうか。
手軽で安価で、どこにでもあって、どこの店でも安定した味で期待を裏切る
ことのない便利な食べ物を決して自分に近づけることがないとしたら、それ
は立派に違いないが、頑固でもあるかもしれない。
大抵の人は、ぼくと同じように、ファストフードを日常的に食べているはず
だ。
そんな人間にとって、困った本が出てしまった。
なんでも、「ファストフードが世界を食いつくす」、というのだ。
原題は「ファストフード国家」だから一捻りしている邦題なのだが、実際に
書かれている内容は、タイトルの数百倍はセンセーショナルだ。

でも、まず断らなければならないが、これはいわゆる「買ってはいけない」
本ではない。
確かに、消費者にとって有用な情報はたくさん盛り込まれているが、それを
センセーショナルに扱い、不買運動を引き起こすことを目的にしているので
はない。
ファストフード・チェーンで行われているオペレーションがどのようにして
人間性を阻害するかということについては、『マクドナルド化する社会』と
いう名著でご存知の方も多いだろう。
また、民族主義とファストフードに象徴されるグローバル経済という二つの
相容れない正反対の力が衝突し、依存しながら、民主主義を無力化していく
様については、『ジバード対マックワールド』というこれまた名著に描かれ
ている。
そして、この『ファストフードが世界を食いつくす』も、それらに比肩する
名著と言っていいだろう。

ぼくはこういった本を読む毎に、ある種の感慨におそわれる。
現代社会における人間性の喪失。
たまらなくせつなくなるテーマで、これは研究書やノンフィクションではな
くて文学作品なのではないか、とさえ思ってしまう。
ところがここに描かれているのは現実だ。

では、その現実がいかに衝撃的かを紹介してみよう。
アメリカ・ファストフード業界の創成期を記した冒頭は、それでも夢と活力
が感じられる。
しかし、次章になると、マクドナルドとディズニーが互いに相乗効果を期待
して利用しあいながら、善悪の判断のつく前の子どもたちを食いものにして
いる事実が明かされる。
続いてファストフード業界が効率を上げることのみを優先させるために、前
時代のベルトコンベアー・システム的な阻害された労働を強要し、労働組合
の結成を決して認めず、従順な弱者であるティーンネイジャーや外国人労働
者をそのような労働に充てることについて述べられている。

これだけでも十分うんざりさせられるのだが、これ以降はファストフード業
界がどのように構造的に世界を食いつくそうとしているかという、さらに深
いところへと入っていく。
独立型の中小企業を助ける目的で作られたはずの政府機関による融資を、
ファストフード業界が新規店出店資金として利用してきたため、本来対象と
なるべき企業を駆逐する結果になっていること。
ファストフード業界への納入価格を下げるために、冷凍フライドポテト業界
はじゃがいも農家への提示価格を引き下げようとすること。
養鶏業者は、自前の鶏舎で、鶏肉加工業者が所有する鶏を飼育しなければな
らないこと。
必要な設備投資と財務リスクを負うのは、より立場の弱い養鶏家だ。
O−157による食肉の汚染問題が起きても、食肉業界とファストフード業
界は共和党右派の大口献金者であり、厳しい科学的食品検査システムの導入
を妨げていること。
特に汚染疑惑の高い挽肉が、農務省によって買い上げられ、全国の学校給食
に供されているという信じられないような事実。

また、消費者として気になる食品の成分や安全性についても、もちろん愕然
とすることのオン・パレードだ。
かつて牛脂で揚げていたフライドポテトを植物油に切り替えたため、風味を
補うために香料を使用して味を一定化させている。
牛肉よりも鶏肉の方がヘルシーだと一般的には考えられているが、チキン・
マック・ナゲットは「ビーフ・エキス」で味付けされ、キロ当たりの脂肪分
はハンバーガーの倍に相当する。
肉牛は牧場から肥育場へ移され、商品としての目方を増やすために、ホルモ
ン剤と鶏・馬・豚などの肉骨粉や牛の血液を与えられる。
不衛生な肥育場はO−157の温床でもあるが、食肉処理場においても、消
化器官の中身をこぼしてしまうことによって、食肉が汚染される。
これらはこの本で挙げられていることの一例に過ぎない。

さらに食欲を減退させてくれることには、この本のハイライトでもある、食
肉処理絶望工場、とでも言えばよいのだろうか、苛酷な労働を描いた箇所が
ある。
不衛生で劣悪な労働環境、厳しいが低賃金の労働。
他に働き場のない外国人労働者を続々と送り込み、離職率はほぼ100パー
セント。
そのことすら、組合の結成を防げると歓迎し、労災の存在を巧妙に隠蔽する
管理職。
それでも「US産の牛肉には狂牛病の心配がないから、『安全』に食べられ
ます」と言えるだろうか。

そして、これをアメリカでの出来事にすぎない、と言ってすますことはでき
ないだろう。
著者は終章で、このシステムを変えることは可能だという。
ファストフード業界は、テレビCMでわかるとおり、イメージ戦略を重用視
する。
消費者が正しく抗議し、正しく圧力を行使すれば、業界は変わらざるを得な
い。
ファストフード業界に納入する食肉加工業者や冷凍フライドポテト業者など
も変わらざるを得なくなる。
しかし、人間性を阻害し続ける労働環境と、それを維持する構造は、変える
ことができるのだろうか。
このことを考えると、どうにも楽観的にはなれず、これから自分自身がファ
ストフードとどのように関わっていくべきか、再考せずにはいられない。
http://www.gozans.com/bk/?b=479421071x&s=shohyo 
(こちらからお買い上げ頂けます)
<小林圭司 出版社営業部員 33歳 年間読書量50冊 好きなジャンル
 翻訳小説・サッカー ファストフードは最近は週2食くらい>
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■『貸本夏冬堂』畠中理恵子
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 『貸本夏冬堂』小野滋子著

 岡山の町にある貸本屋、夏冬堂を舞台に、
その町で暮らす人たち、その町で暮らした事のある人たちの
日常を細やかなやさしい視線で綴る連作。
8編の小品から成る。

 思いでの店というのは誰にでもあるのだろうか。
その昔、自分が幼い頃に過ごした時間を
突然取り戻せる、そんな存在。
本書の中の貸本屋、夏冬堂はまさにそんな場所だ。
懐かしいという感情は、何故こんなにも切なく愛しい気持ちを
湧きおこしてくれるのか。
子供の頃は、決して幸福なだけではない。
もどかしさや失望、恥ずかしさがつきまとう。
でも、それら全てが自分なのだ、と素直に受け入れられる時の
人のやさしさを
本書は描いていると思う。

 「夏冬」と書いて「かとう」と読む。
加藤さんという女性が離婚を期に命名したちょっとしゃれた店名だ。
「夏休みと冬休みが、貸本屋にとって一番のかきいれ時だから」
と、以前の表記の方ががいい、と客に言われた女主人の「おばさん」は
照れたからか言う。
「心機一転といってね」と。
夏冬堂は、本当に普通の町の貸本屋だ。
雑誌と漫画が中心。
たまに借りられる小説も
本当に普通。
通でも粋でもない。
本を読む、活字やら漫画やらを読んで時間を過ごす事が
何より幸福なことだった時代の貸本屋さんだ。
おばさんは、気さくなでも気配りのある人柄で
小学生、中学生から、もっと大人になった難しい世代、
あるいは、
勤人や主婦、年配の人まで
だれからも愛され、話しをされる。
日常のしがらみのない場所で
悩みごとをおばさんに話し
自分の中の何かを見つめに
夏冬堂に人たちはやってくるのだ。
幼い頃、そこで過ごした夫婦。
友人。
新しくきた住人。
別れ。
行き交う人たちの小さな感情。
本当に、なんて事のないあれこれ、
でも問題を抱えている。
みんな懸命に自分を探りながら生きていこうとしている、
真剣な姿勢。

 本当に、どこが、といえない。
何が特別おこるでもない
悪い人が出てこない、
いいひとばっかりの、ある意味で退屈な小説かもしれない。
でも、いいなあ。
寒くなってちょっと疲れている時なんかに
何度も読んでみたくなる。
そんな作品集。

『貸本夏冬堂』
小野滋子著
編集工房ノア刊
四六判/386頁/本体2000円+税100円
2001年7月15日
(すみません、こちらの本はこちらのシステムでは手配できないようです)
<畠中理恵子 書肆アクセス店長 神保町の看板娘、じゃなくて看板奥様>
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■『惜しい、もう一息』朝日山
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「韓国・中国『歴史教科書』を徹底批判する」勝岡寛次 小学館

ふだん、マスコミをバカだアホだとこき下ろす朝日山でも、マスコミを褒め
ることもある。AERA緊急増刊、新「世界戦争が始まった」の処方箋欄
「怨念根絶にはイスラエル解体しかない」は、思わず拍手!読む前はクズ左
翼にありがちな極論かと思ったが、予測は大外れ。バルフォア宣言やシオニ
ズム運動からきちんと書いてあるじゃないの。論旨には個人的に多少反論も
あるが、押さえるべきことをちゃんと押さえた上での主張だから、アホボケ
なんて言いません。

昨年あたりから大騒ぎしている歴史教科書問題。どーせかつての「『侵略』
か『進出』か」みたいなことだろうと思って、朝日山は関連本一切読んでも
買ってもいませんでした。ちよっとだけ立ち読みした何刷も刷ったあとの「
ゴーマニズム宣言」に、全世界に衝撃を与え、のちのアジア・アフリカの独
立運動に大きな影響を与えたのが日清戦争と書いてあったくらいだから、ま
あ読むだけ無駄かと(笑)

それを今回買ってみたのは、「『侵略』か『進出』か」論争をしているとき
に、他国の教科書は、こういった問題をどう記述しているのかを知りたくて
、当時その筋の本を探したのにみつからなかったから。たとえばイギリスの
教科書は大英帝国が中国に"invade"したと書いてあるのか、それとも"advan
ce"か、"extend"と書いてあるのか……

イギリスの教科書は、"invade"と書いているから中国は文句をつけないんだ
ろうか?もし、"invade"と書いてあるなら、仕方がない、謝ろう。でも"ext
end"みたいな表現だったら「なんで日本にだけ文句言うんじゃ、コラ!」と
思っていたわけです。そんな疑問にやっと答えてくれそうな本です。買わな
いわけにはいきません。

で、タイトル通り韓国と中国の教科書を引用しての批判のオンパレードです
。両国とも教科書は「国定」で、一種類しかなく、日本のように何種類もな
いので、ターゲットは明確。最初の攻撃対象は韓国の国史教科書、こいつの
前書きには、

「記録としての歴史は、今日の生き方を照らしてくれる鏡であり、明日を見
通す窓だと言える。したがって歴史の記述は、過去が暗いからとかくしたり
、ないことをあると誇張してはいけない。歴史の記述は、かたよることなく
厳格でなければならない」

と書いてあるのに、なんだこいつは?元寇には数行、しかも自分たちは元に
出兵を強要されて責任がないかのように書き、秀吉の朝鮮出兵は数ページに
わたって、いかに日本は悪いことをしたか書き連ねている。立派な前書きは
何のつもりだ!

という感じで、いかに韓国・中国の歴史教科書が偏向しているかを、これで
もか、これでもかと書き連ねていきます。最後の方に、というより資料編が
わりと分厚いので実際は最後に、この本が書かれたきっかけとなったSAP
IOのインタビュー記事が載っています。ここでは、著者の勝岡センセ、韓
国人、中国人学者相手に善戦して一歩も引かず、むしろ押し返している印象
があるが、はっきり言って小林よしのりよりだいぶマシだが、学者としては
弱いですね。対談相手くらいのレベルなら、朝日山が出ていけばコテンパン
にしてやるのに(笑)

ま、それはそれとして、文意に文句はないものの、「新しい歴史教科書を作
る会」のメンバーの書いた本だけあって、オイオイ、そこまで言うかといっ
た行き過ぎた感情的発言も目立つ。が、それでも著者本人が言うように、今
後の論争の「たたき台」とするには十分に資格があると言えるでしょう。

しかし、読後、個人的には少々ムッとしましたね。いえ、この本にじゃなく
て、この本で引用されている本の数々にです。恥をさらしますが、朝日山は
こんなに教科書本が出ていたとは知らなかった……でも韓国・中国関連だけ
なんですよね。

小学館並びに、「新しい歴史教科書を作る会」さま。みなさん、目のつけ所
はいいんですよ。確かにクズ左翼の自虐史観はいただけない。これに対抗す
る史観が必要なのはわかる。しかし、自虐史観論者と同じレベルやってどう
すんのさ。そこが見えているから、批判される部分もあるんだよ……。

韓国、中国が文句を言うから、カウンターとしてこうした本が出てくるのは
わかる。しかし、それだけじゃダメなんです。「侵略」か「進出」かなんて
議論では、どうせ水掛け論にしかならない。そんなのじゃなくて、他の国で
は、こうした問題の記述をどうしているのか、問題になっているのか。問題
になっているなら、どうしているか。問題になっていないなら、どうして東
アジアだけ問題になるのか……それが将来にために必要な研究でしょう。

もう一ランク上を見よ。それができていないから、批判もされるんだと教科
書問題にかかわる両方の人たちに言いたい気分です。
http://www.gozans.com/bk/?b=4094023763&s=shohyo 
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(朝日山 烏書房付属小判鮫 37歳 好きなジャンル 何だろ?)
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■あとがき
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>今回はウンチクを少々
>はあはあ
>ソニーのブラウン管のトリニトロンって、画面を横に横断して二本、目を
こらすとトリニトロン線っていう影が見えるんですよ。
>へー、他のにはそんなのないのにねー
>でも、それが重要らしいの。普通のブラウン管って、板にたくさん穴をあ
けて、そこに画像の光を通す仕組みらしいんだけど、このやり方だと、板が
熱を持ってしまって、段々板が膨張して画面のピントがずれてくるんだって
>へー、じゃあ普通のTVって、時間が経つとピンぼけしてくるんだ
>そうそう。でもトリニトロンは、簾みたいのを上下に通して、その隙間に
光を通すからピンぼけが少ないんだって。でも簾は固定しないといけないか
ら、横に二本、トリニトロン線っていう固定する為の奴が見えちゃうらしい
>うーん、それって、あっち立てればこっち立たずなんですねー。なんか、
現実の社会の写し絵みたい(笑)
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