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2001.11.30.発行 vol.54 [ あいつ、怖えーよ 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2001.11.30.発行
■■ vol.54
■■ mailmagazine of book reviews [あいつ、怖えーよ号]
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■「恋愛は結果で測れない」をほうふつさせる負のエネルギー/石飛徳樹
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★★「あしたはうんと遠くへいこう」483871324X
角田光代著
マガジンハウス・1400円★★
本の帯のコピーに「角田光代はじめての恋愛小説」とあったので、ちょっ
と驚いた。
彼女の書くものはいつもラブストーリーだと思いこんでいたからだ。
言われてみれば、確かに男と女の物語はたくさんあって、一緒に住んだり
もしているが、そのほとんどが、恋愛というより、むしろ友情と呼ぶべき関
係である。
その関係性があまりに心地よさそうに思えたせいか、恋愛と勘違いしてい
ただけだった。
そう。角田光代が描く人間関係は妙に心地よくて、それが彼女の魅力にな
っている。
この「はじめて恋愛小説」もそうだ。あちこちに苦しいところもいっぱい
けれど、読んでいるとやっぱり心地よいのだ。
一人の女性の高校3年から32歳まで、西暦でいうと1985年から20
00年まで、15年にわたる恋愛生活を、節目節目にかかっていたロック音
楽とともにつづっていく。
高校の時は、片思いの男に「あいつ、怖えーよ」と気味悪がられる。東京
の大学に入ってあこがれのミュージシャンと同棲するものの、別の女に押し
出されて徐々に居場所がなくなっていく。大学5年の男と住んだ時には、ド
ラッグとフリーセックスにおぼれる。その後、4つ年下のフリーターと海沿
いの田舎町に引っ越すが、30代のさわやか系スポーツインストラクターと
二股をかける。ところが、そのインストラクターが数年後、ストーカーにな
って彼女を震え上がらせる。最後に海外旅行で知り合い、一緒に住み始めた
男は、ボランティア活動のために突然スリランカへ発ってしまう。
こう書くと、どこが心地いいんだと思うだろう。ろくな恋愛してないじゃ
ないか、と。
これは結果だけを書いているからロクでもないように見えるのだ。結果は
すべて悲惨だ。
しかし、ディテールには角田らしい浮遊感があって、とても心地よい。
出会った時の電撃的ショック、告白前のドキドキ感、同棲を始めた直後の
舞い上がり状態、恋人が初めて冷たい目で見た時のイヤーな予感……。
いいことも良くないこともすべてがいとおしく感じられる。
恋愛は結果ではない、ということを、これを読めば実感できる。
次々と相手を変えてきた主人公に対し、15年間ずっと妻子持ちの凡庸男
と不倫を続けてきた高校からの親友を配置してあるのもうまいなあと思う。
主人公の座標上の位置が、親友の存在でとてもよく分かるのだ。
もう一つ。特筆しておきたいのは、主人公の両親である。
父が母に一目惚れして駆け落ちし、主人公の生まれ育ったさびれた温泉町
に流れてきたらしい。
父は毎日働きづめで、派手な母と子供を食べさせている。
それを何十年と続けているのだ。
なにやらとてもいわくありげで、魅力的ではないか。
この両親にしてこの娘あり。
次は時代をさかのぼって、両親の若いころの物語も読ませてほしい。「ス
ターウォーズ」のように。
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(石飛徳樹 朝日新聞名古屋本社学芸部記者 39歳 年間読書量100
冊 好きなジャンル・文学)
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■いつかは僕も仙人になります!/ミラクル福田
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『仙人入門』 程聖龍 東京書籍 本体価格1400円 4487796229
「事実は小説より奇なり」とよくいうけれど、読み終わった後なのに、この
本に書かれていることが、「事実」なのか「小説」なのか、よくわからん。
だって、内容はどう考えても「小説」なのに、本の帯も、あとがきも、推
薦文も、はっきりと「小説じゃない」といっているのだから。でも、人がな
んとをいおうと、ぼくはここに書かれたことを「事実」として受け止めて生
きたい。
程先生は日本人ではただひとり、中国拳法の内家拳八卦掌の伝承者として、
世界中で指導を行っている人物だ。そして、程先生の半生をさまざまな修行
をとおして描いたのがこの本『仙人入門』。中国拳法にとどまらず、忍術、
仙術などの修行から、程先生がブルース・リーのように「頭で考えるな、肌
で掴め」を実践して、「武術とは何か」「強さとは何か」を問いつづける。
そんな程先生が、初めて修行を行うようになったのは小学生の時。甲賀流
忍術の師のもとで暮らし、忍術の修行を行うようになる。
でも、厳しい修行をつけてくれたのは師ではなく、兄弟子。しかも犬。学
校の雲梯の上を四足で走り、ブランコを漕いで宙に飛び上がりトンボをきっ
て着地する、木にも登る「忍者犬」なのである。しかも、修行でヘマなどす
れば、この兄弟子は後ろ足で立ってパンチをくらわし、弟弟子を笑う。恐る
べし忍者犬!
メシは兄弟子と同じ皿で、兄弟子が残してくれたものを食べ、寝るのも兄
弟子の小屋(犬小屋)で一緒だったという。
ここまでの紹介で、もう眉に唾をつけている人もいるかもしれない。でも、
まだ序の口。程先生は日本を離れ、中国にまでその修行の場を求めていく。
そこで仙人から直々に修行をつけてもらうのだ。すぐに眉に唾をつけてしま
った人は、読みつづければ顔中唾だらけだ。
なんだかおススメの本なのに、あげつらっているみたいだ。でも、内容が
奇妙で変わっているだけでなく、武術を通じて程先生が得られた(もしくは
まだまだ体得しつつある)「生き方」と「哲学」が紹介されている。
相原コージの傑作忍者漫画『ムジナ』(小学館)の主人公ムジナが、父の
ゴキブリから残されたのが「どんなことがあっても生き抜くんだ」という言
葉。さすがに程先生は、ゴキブリの言葉に言及してはいないが、先生の考え
る武術の究極の極意がこの言葉に表れている。スポーツとは違い、真剣勝負
の場が想定される武術の世界ではどんなことがあっても、生き抜くことが一
番大切で、そのための武術なのだ。
「生きていること」を全面的に肯定するのが武術であり、仙術なのだろう。
きっと。おそらく、これが心底納得できれば、広い意味で仙人という境地に
立てたといってよいのではないか。なんて修行もしていない大雑把な人間が
いってはいけないことなのかもしれないが。それにしても、仙人にあこがれ
つづけてきた身にとって(かれこれ11年になる)、なんとも嬉しい限りの本
が出版されていたものだ。この本との出会いをつくってくれた、千駄木の往
来堂書店に謝謝。そしてみなさんに紹介できたことにウキキッ。
追記、中国古典の伝奇ものをいろいろとあたってみたけれど、程先生の見
た仙人そのままの仙人が記されていた。なんかまたまた嬉しかった。
もしこの本を読んで気に入った人がいたら、フランスの中国学者アンリ・
マスペロの『道教』(平凡社ライブラリー 本体価格1500円)をおすすめし
たい。
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(ミラクル福田 某人文系出版社編集 31歳 年間読書量80冊弱
好きなジャンル 文芸・芸能)
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■竹ふで、尺八、物干し竿の煮物/守屋淳
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『素人包丁記』嵐山光三郎 講談社
世の中には、ストレスが溜まると、太っちゃうヒトと痩せちゃうヒトがいま
すが、これをお読みの方、どちらのタイプでしょうか?
まあ、世間的に言えば、絶対やせるタイプの方が見栄えがいいですね(笑)。
だって、苦労して、胃に穴があく思いをしてるのに、ブクブクになってしま
って、他人から「おう、血色いいじゃん」とか「お前太ったなー、苦労して
ないんだろう」なんて言われた日には、まさに泣きっ面に蜂、ストレスに追
い脂肪の悲劇になってしまうからです。
しかし、こうなってしまうのも、もともと「食べる」ということは何物にも
替え難いストレス解消の道具であり、快楽だという証しでもあります。
そこで本書、「食べる」という快楽を、金持ちの道楽でもなく、エラソーな
講釈でもなく、かといってB級グルメの類でもなく、それらを縦横無尽にか
いくぐって追求してみせた究極の食エッセーです。
例えば、冒頭のタケノコの話。幕末の日本人は、自分たちはタケノコ、西欧
人には青竹をゆでたのを出して、日本人は強いんだぞーという所を見せたと
いう逸話や、一番うまいタケノコ調理法は、竹やぶが火事になることだとか
いうオモロイ逸話のあと、いきなり物干し竿を圧力釜で茹でれば美味しいん
じゃないかというぶっ飛んだ発想になり、はては竹ふでを煮て三日めだとい
う話になる。この発想の飛翔具合、根底にある冷めた視点、もうたまりませ
ん。
そして、それが惚れ惚れするリズム感に満ちた文章で綴られているのですか
ら、活字を読む快楽はここにあり、と思わず呟きたくなるほどです。
ちなみに本書は講談社エッセー賞をとっているのですが、そこでの選評もめ
くるめく絶賛の嵐です。
井上ひさしさん
《料理にさほど興味もなく、鉛筆を削るときしか包丁を手にすることのない
私の如き懦夫をして、決然、厨房へ立たしめる、そういうおそるべき感化力
を持った快作である》
丸谷才一さん
《どうやらここには遊ぶことの名人が一人ゐて、彼は不思議に高い境地に達
していたため、こんなに閑雅な本ができたものらしい。いくら何でも褒めす
ぎぢやないかと疑う者は、ただちに駈足で書店へゆけ》
山口瞳さん
《断然他を圧す》
断然他を圧す――一生に一度くらいは他人に言われてみたいセリフです。
そして、実際にそう評された傑作がここにあります。
(現在、入手不可のようです。すみません、古書店を当たってみてください。
文庫にもなっているはずです)
(守屋淳 35歳 ご隠居 年間読書量100冊《仕事で他にも少々》 好き
なジャンル 古典)
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■あとがき
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>風邪とパソコン、両方のウィルスが流行ってますねー
>はあはあ
>うちなんか、ウィルスメールがもう20通くらい来てますよー
>それって、何か恨みかってるんじゃないんですか
>うう、心当たりがあり過ぎて否定できない。ホントのこと言うなープンプ
ン
>しかし、風邪とパソコンの違いって、パソコンの方はだいたいすぐに特効
薬(ワクチン)ができて、プログラムの脆弱性を補うなんたらかんたらがダ
ウンロードできるようになるのに、風邪のほうは二十一世紀になっても相変
わらず、手洗いとうがいに、対処飲んでで暖かくして寝ておけですもんねー
>ううん、そのうち人間の脆弱性を補うサイボーグ・ボディが買えるように
なるのかもしれませんねー。
>わたしゃ、脳みその脆弱性を補う奴が欲しい(笑)
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