2001.12.11.発行 vol.55  [テロ発生から3カ月 号]

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■■ [書評]のメルマガ                           2001.12.11発行  
■■                                                     vol.55
■■     mailmagazine of book reviews   [ テロ発生から3カ月 号] 
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[CONTENTS]----------------------------------------------------------- 
★「もっと知りたい異文化の本(5)」内澤旬子
 →マンゴーが歯ブラシや催淫剤、殺虫剤に使えるなんて知ってました?
★「渡辺洋が選ぶこの一冊(3)」
 →映画化記念。キューバからの亡命作家が得た苦闘の先の明るさとは。
★「全著快読 山田稔を読む(9)」柳瀬徹
 →やっぱり野暮も理屈も抜きにして、山田稔の「文の芸」を味わいたい。
★「出版史のヨコ道(5)」南陀楼綾繁
 →ひょっとして絶版間近? いま読んでおきたいSF幼年時代の記録。
★「書評サイト探検隊(8)」グッドスピード
 →書評のサイト、本についてのサイトの辛口批評です。さて、今回は?
★「今月ハマったアート本」平林享子
 →すみません、著者のご都合により今回休載です。次回2月の予定です。

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 ■はじめに
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  今年もいよいよ終わりに近づきました。今回のメルマガはちょっと着手が遅
かったため、一日遅れでの発行です。考えてみれば、3カ月前の同じく11日
に、一日遅れでメルマガ発行の準備をしていたら、アメリカでの同時多発テロ
のニュースが飛び込んできたのでした。あれから、アフガニスタンでの戦闘が
あり、イスラエルとパレスチナの間での紛争も激しくなっています。それでも、
普通に仕事をし、夜には本を読んでいるというのが、アタリマエのようであり、
不思議なようでもあります。果たして来年は、いったいどんな状況下で、どん
な事件に直面しながら、本を読むことになるのでしょう。
                      (10日号編集・南陀楼綾繁)

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■もっと知りたい異文化の本  内澤旬子
(5)ネパール・インド編  植物の徹底利用法が判る本
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トゥリロク・チャンドラ・マジュプリア(西岡直樹訳)『ネパール・インドの
聖なる植物』八坂書房、1989年(初版)、1996年(新装版)
 
  植物好きに共通のナゾですが、植物の名前や利用法を覚えるとめちゃくちゃ
うれしいんです。ココナツ、タマリンド、パッションフルーツ、蓮、マンゴー
……と、指さして唱えては悦に入る。こども時代のママゴト魂が刺激されるの
か、収集本能が働くのか、摘んで刻んで食べたり、何かに使ったりしたくてた
まらなくなるわけです。

『ネパール・インドの聖なる植物』で取りあげている植物は、神様の化身など、
仏教やヒンドゥー教にゆかりのあるものばかり。植物学的な分類説明の他、現
地名や、神話での役割、生活での利用法、インド医学での薬効が書かれています。

 例えばマンゴー。ウルシ科の常緑高木。茂みには慈悲深く親切な霊が棲んで
いる。小枝はダートゥンと呼ばれ、供犠祭で燃やされ、また歯ブラシとしても
使う。木材を火葬の際に用いれば非常に神聖。葉は注連縄を作るのに用いる。
ああ、どんな匂いなんだろう。
 そして葉の乾燥粉末は下痢、糖尿、葉を焼いた灰はやけどの治療、樹皮は生
理不順、化膿した膿の排出、花は干して催淫剤や殺虫剤……以下略。えと、捨
てるところありません。すごいぞマンゴー。

 これまで黄色い実しか思い浮かばなかったマンゴーなのに、木全体が見えて
くるのはもちろん、マンゴーの葉を摘んで儀式に備える女性の姿や、葉っぱを
干してごーりごーりすり鉢で摺っているアーユルベーダの先生の姿までがむく
むくと浮かんでくる。

 それからシヴァ神くらいしか知らなかったヒンドゥーの神々ですが、植物を
基調にして語られる神話はとてもわかりやすく、結構すんなり頭に入ります。
植物学や薬効だけだとちょっと単調になりがちのテーマなのですが、人々の
慣習や神話もきっちり紹介しているので本当に厭きません。きっと訳文もいい
んだと思います。さすが植物本ばかり出している八坂書房。
 イラストがカラーだったらもっと良かったです。これを持ってインド・ネパ
ールを回ってみたいです。

『ネパール・インドの聖なる植物』2,472円
http://www.gozans.com/bk/?b=489694688x&s=shohyo 
(↑こちらからお買い上げ頂けます)

〈うちざわ・じゅんこ〉イラストルポライター。碧鱗堂製本主人。共著に『ア
ジア路地裏紀行』(下川裕治編、徳間文庫)、『東方見便録』(斉藤政喜文、文春
文庫)など。12月25日発売の『彷書月刊』1月号で、ソウルの古本屋さんに
ついて書きました。

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■渡辺洋が選ぶこの一冊
(3)キューバでアメリカで非妥協的な態度を貫いた作家の自伝
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レイナルド・アレナス(安藤哲行訳)『夜になるまえに』(原著1990年脱稿、
92年刊行)国書刊行会、1997年(初版)、2001年(新装版)

「いやあ、それにしても、映画化作品『夜になるまえに』の新聞広告の大きさ
にはびっくりしましたね」
「あれって結局、『ぴあ』のタイアップで全面広告になってたみたい。どうい
う精算になってるのかは分からないけど、とにかく地味なはずの作品の広告の
大きさに度肝を抜かれて封切とほぼ同時に観てしまいました」
「で、どうでした」
「ううん、どうかなあ。キューバから合州国に亡命してエイズで死んだレイナ
ルド・アレナスさん(1943-90)の自伝なんだけど、映画はキューバの歴史と彼
の人生の概略を辿るにはいいダイジェストだとしても、何かパンチが足りない
というか、カストロ独裁と戦った作家の映画を合州国で作るのは、作家本人の
苦闘に比べれば楽なことなんじゃないかなんて反感も感じました。それで『め
くるめく世界』(国書刊行会)からほぼ10年以上ぶりに、彼の作品を読まない
とと思ったんです」

「知らない人のために概略を記すと、アレナスさんは1943年キューバの寒村
に生まれ、カストロの革命には少年として参加するんですが、その独裁性を強
めていく姿勢に気持ちが離れていく。作家としてデビューしたものの国内で刊
行されたのは第1作だけで、それ以降の作品は極秘に国外に持ち出されて刊行
され、それが高く評価されることで、逆に国内ではきびしい監視下に置かれる
ことになり、青少年をかどわかした同性愛者というでっち上げで監獄にぶち込
まれる(約2年間)。自分は反革命分子だったという転向声明を書かされ〈出所〉。
のち、80年の腐敗分子の出国許可に乗じて許可証の名前を書き換えるなど、
当局の目をくぐって合州国に脱出。90年にエイズの末期症状の苦しみから自
殺しています」

「そうまとめてしまうと、結局いろいろこぼれてしまうんです。この本を読ん
ですごいなと思ったのは、アレナスさんのエネルギーというかね。それが翻訳
でもすごい勢いで伝わってくるということなんです。たとえば、キューバの同
性愛者たちとの関係ですが、街だろうと浜辺だろうと公園だろうと、〈いつで
もどこでもハッテン場〉というか、目が合ってちょっと言葉をかわしたあとは
もう関係を持っててという調子で、すごく熱いんですね。カストロ独裁のもと
では同性愛はご禁制だということや、ラテン系の男たちの暴力的な熱さからし
ばしばトラブルに巻き込まれるんですが、性愛の表現がいじけてない。彼が愛
する海についてのすばらしい記述のようにきらきらしてるんです。
もちろん同時に作家としても格闘しています。独裁下で亡命せずに頑張って
表現している先輩友人たちを敬愛し、隠していたタイプ原稿が当局に盗まれた
らまた一から書き直すといった頑張り。カストロ体制の御用作家として幻想的
な作品を書きながら、同時にキューバ文学の検閲官的な役割を果たしていたカ
ルペンティエールや、カストロ支持の文化大使とでもいった感のあるコロンビ
アのノーベル賞作家ガルシア=マルケスに対する反発は、ラテンアメリカの諸
問題を考える上での難しさを教えてくれました」

「亡命してから、ある講演で聴衆のやはり亡命したチリ人たちから糞味噌に言
われるというエピソードがありましたね」
「亡命したチリの人々から見れば、選挙によって選ばれた左派のアジェンデ大
統領が、合州国の援助を受けたピノチェトらのクーデターで殺されたという事
実は絶対許せないでしょうね。そこから独裁かもしれないが、一応〈左派〉の
カストロの悪口を言うとは何だという反発が起きる。こうしたねじれが合州国
のラテンアメリカ文学の研究者たちや出版社とアレナスさんとのあいだにも根
深く横たわっていて、アレナスさんは少ない仲間たちと付き合いながら、合州
国の市民権もとらずに非妥協的な姿勢で執筆を続けていったわけです」

「キューバ国内での作家たちの裏切りや密告や転向声明、当局のスパイになっ
て仲間を売ってやがて自分も滅んでいった人々や自分の主義主張に殉じて死ん
でいった、あるいは殺された作家たちの痛々しさが他者に伝わるってことは本
当に難しいんですね」
「そうした中で、アレナスさんがすごいなあと思うのは、すごく憂鬱だったろ
うけど、どこかで明るさを失ってないということ。廃屋になった修道院を見つ
けて、家具や板や煉瓦まで売れるものは全部こっそり持ち出して金に換えて食
いつなぎ、しまいには証拠隠滅のためにその修道院の建物を壊してしまった話
とか、すごい野性を感じます。もともと寒村の出で、おばあさんが自然に語り
かける自分自身の神秘的な世界を持っていた、その資質を受け継いで開花させ
たとでもいうような。ここから先は読んでもらうしかないんだけれども」
「ニューヨークに移り住んで、自由を感じることはできたけれども、同時にか
なりの幻滅も味わっていたようですね」
「このきらきらした原始の感性には、金の力で飾りつけた大都会はやっぱり輝
きと感じられなかったんじゃないかな。もちろん今の日本の市場向けの傾向と
対策で書かれている文学作品だって、出会ったとしてもまったく受け入れるこ
とができなかったでしょう。このかけ離れた距離をね、飛び越えていきたいです」

「アレナスさんの作品はこの自伝、前記の『めくるめく世界』のほか、『ハバ
ナへの旅』(現代企画室)が翻訳刊行されています。またデビュー作の『夜明
け前のセレスティーノ』も国書刊行会から翻訳出版が予告されています」

『夜になるまえに』2,000円(本体)
http://www.gozans.com/bk/?b=4336037795&s=shohyo 
(↑こちらからお買い上げ頂けます)

〈わたなべ・ひろし〉詩人・編集者。辞書とCD-ROM版辞書の作業に追われ、
今年は1冊も出さずに終わる見込み。他人からはゆっくり走っているように見
えるマラソンランナーのような日々。
http://www.catnet.ne.jp/f451/

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■全著快読 山田稔を読む  柳瀬徹
(9)自他の境が取っ払われた融通無碍の世界
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『ああ、そうかね』京都新聞社、1996年

 京都新聞夕刊に連載された短い文章を中心に編まれた本書の魅力は、たとえ
ば〈自他の境が取っ払われた融通無碍の世界で読者は寛がせてもらえる。どこ
にも力みが感ぜられず、読むうちにこちらの力みも揉みしだかれる〉とでもい
えばよいだろうか。

「文の芸」という一篇の中で著者が小沼丹を讃えたこの言葉は、そのまま本書
への讃辞とされるべきだろう。これ以外に、いかなる言葉を連ねてみても野暮
になるだけだ。ひたすら「文の芸」に心地よく身をゆだねながら、古都の住人
のみに与えられていた特権に嫉妬せずにはいられない。

 それでもみすぼらしい蛇足を付け加えるとするならば、著者の広津和郎への
憧憬と共感についてである。戦後最大の冤罪事件といわれた松川事件の被告た
ちを、長年にわたって忍耐強く支持し続けた作家。寛容な受け身の姿勢を保ち
続ける、いわば強靱な弱さとでもいうべき美徳をけっして手放さかった作家。

 その作家が自らの立つべき場所を静かに示した「散文芸術」という概念は、時
と場所を越えて、パリのアパルトマンの一室で息をひそめて言語的危機と格闘
していた若き書き手の、再生への拠り所となった。著者が二十代後半に愛読し
たという散文作家についての三篇「人生の側から」「本日出講」「作家の『徳』」
からは、もうひとりの散文作家が誕生した瞬間の産声が聞こえてくるような気
がする。

 広津和郎の『年月のあしあと』や、小沼丹の『懐中時計』『小さな手袋』な
どの傑作群は、幸いにして現在も講談社文芸文庫で読むことができる。また、
広津和郎への並々ならぬ敬慕の念が生み出した松原新一氏の力作評論『怠惰の
逆説』(講談社)を読めば、「人生の側」に書き手としての我が身をおくこと
の困難についに屈しなかった作家の「徳」が、今日に至っても山田稔を支えて
いるということがよくわかる。とはいっても、やっぱり野暮も理屈も抜きにし
て「文の芸」を味わいさえすれば、勿論それでよいのだけれど。

『ああ、そうかね』1,553円
http://www.gozans.com/bk/?b=4763804022&s=shohyo
(↑こちらからお買い上げ頂けます)

〈やなせ・とおる〉青山ブックセンター本店勤務。不器用さにかけては人後に
落ちない者にとって、12月はいちばん残酷な季節。ひたすらプレゼント用の
包装に追われる。今日もラッピン、明日もラッピン。この時期、小売業従事者
はほとんど皆「ラッパー」になる。

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■出版史のヨコ道  南陀楼綾繁
(5)かつてSF編集者は神であった
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福島正実『未踏の時代』早川書房、1971年

『SFマガジン』(早川書房)という雑誌があることは、(手に取ったことが
なくても)皆さんご存じでしょう。1959年の末に創刊された同誌は、40年
以上の歴史を持つ老舗のSF小説専門誌です。

 その『SFマガジン』をつくったのが、福島正実です。福島は早川書房の編
集者ですが、翻訳家であり、SF小説家としても活躍しました。本書は、福島
が日本SFの黎明期を振り返る回想録です。

『SFマガジン』にもSF小説を日本で出そうという動きは、もちろんありま
した。しかし、それらは海外の翻訳小説の単行本がほとんどで、営業的にも成
功したとは云い難かったようです。そんな状況で、月刊のSF小説誌を創刊し、
そこに海外の翻訳小説と並べて、日本作家によるSF小説を載せるということ
が、どんなに冒険であったか。かつて、前野良沢らが、西洋医学を伝えるため
に、日本語の医学用語を苦心してつくるところから始めるしかなかった、それ
と同じような苦闘が、日本SFの黎明期には行なわれていたのです。

 しかし、雑誌をイチからつくるということは、編集者にとって大変な苦労で
あると同時に、こんなにオモシロイ体験はないのです。僕も雑誌の編集者です
が、創刊から軌道に乗るまでの、ナチュラルハイが続くあの妙な感じは、なか
なかイイものです。
 企画提出、提携誌(『SFマガジン』は海外のSF雑誌と契約し、そこの小
説を翻訳掲載しています)の選択、翻訳者探し、SFを書いてくれそうな既存
の作家への打診、SFコンテストを設立し新人作家を見つけること、そして、
読者をいかにつかみ、増やしていくか……。

「それは、いま思い返しても、恐ろしく孤独な作業だった。ぼくは一人だった。
相談する相手は一人もいなかった。だれも相談に乗ってくれなかった、という
のではない。誰にも相談する気がこっちになかっただけのことである。ぼくは、
ぼく自身のSFについての考え方を、一人ぼっちのその作業の中で見きわめた
かった。誰の影響も受けたくなかった。誰の忠告も聞きたくなかった。」(p.21)

 創刊後の数年、『SFマガジン』は苦戦しますが、「SF」というコトバか
認知されるにつれて、確実に売り上げを伸ばし、星新一、小松左京、筒井康隆、
半村良らが、次々に作品を発表し、大阪万博の頃には「SFの時代」と云われ
るようにまでなります。福島は賭けに勝ったのです。この成功の物語は、ワク
ワクするほどオモシロイ。編集者は必読でしょう。

 ですが、光り輝く成功の裏には、影の部分があります。本書を読んでいくと、
SFの隆盛の一方で、福島自身が幸せでなくなっていくのがよく判ります。出
版産業の中にSFが一定の力を占めるようになり、作家の人気が高まり、いろ
んな世代の読者が出てくるにつれて、SFは、福島が一人ぼっちで夢想したよ
うな、そんな姿から少しずつ離れていくのです。もちろん、それは福島のエゴ
です。福島は作家に対して相当辛辣な編集者でしたし、彼のように狭い・厳密
な範囲でSFをとらえていたとしたら、僕たちが小学生や中学生の時に、角川
文庫で星や筒井を読みまくったような、爆発的な流行は生まれなかったと思い
ます。福島は先駆者であるゆえに、その流れに乗ることができなかったのです。
皮肉なことです。

 福島は70年代初頭に、『SFマガジン』の編集長を辞し、77年にガンで亡
くなります。『未踏の時代』は、闘病生活の中で書かれ、彼の死で未完に終わ
っています。その時代が決して過去のことになってない時期に書かれたこの本
は、触れれば血が出るような生々しさと切なさを持っています。私はかつて、
この本を夢中になって読み、ところどころで泣きそうになりました。編集とい
う仕事に携わるようになってからも、ときどき、この本を読み返します。

 かつてのブームが終わってから、SF小説はマイナーでマニアックなものに
なってしまいました。個々の作家は頑張っているのですが、SFというジャン
ルが読者に大きな影響を与えることは、近年はありませんでした。しかし最近、
『SFオンライン』(http://www.so-net.ne.jp/SF-Online/)が頑張っていた
り、日本SF新人賞や小松左京賞が創設され、有望な作家が出てきたりで、S
F周辺の動きが活発になってきました。福島が「未踏」のままに終えた「SF
の時代」は、これからはじまるのかもしれません。

 なお、『未踏の時代』で書かれずに終わった、福島正実の晩年については、
長年の友人であった翻訳家の宮田昇氏が、『戦後「翻訳」風雲録  翻訳者が
神々だった時代』(本の雑誌社)で詳しく書いています。戦後の翻訳出版がい
かに野蛮かつ熱気のなる世界だったかを伝える本です。ちなみに、福島につい
て書いた章のタイトルは「編集者が神であった時」です。

 今回は、「往来堂書店」サイト(http://www.ohraido.com/)連載の「コレを
売りたい!」第4回(2000.2.24)の原稿に加筆訂正して転載しました。本当
は別の本を取りあげようと思っていたのですが、たまたま書誌データベースを
検索していたところ、もう品切れになっていたと思いこんでいた『未踏の時代』
の1995年の増刷分が、まだ少し在庫があるようです。コレが品切れになると
当分手に入りにくいと思い、急遽、この本に変更した次第です。この機会を逃
さず、ぜひ買って読んでみてください。

『未踏の時代』1,942円
http://www.gozans.com/bk/?b=4152031387&s=shohyo 
(↑こちらからお買い上げ頂けます)

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■書評サイト探検隊  グッドスピード
 (8)元祖「遅筆堂」の独白
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「遅筆堂本舗ホームページ」
http://www.greensoft.co.jp/gr/uchip/

 サイトのサブタイトルに「書籍・音楽・物欲・独白」とあるように、本やCD
などの寸評や買い物リスト、極私的な批評などが公開されている個人サイト。
どんな人物がやっているのか情報が載っていないので、身元も年令もわからな
い。メールアドレスはあるものの、個人サイトなのに作り手、書き手の個人情
報がないのは、いくら面白いコンテンツであっても興味が半減してしまう。だ
ってどんな人物かがわからないと、どうしてこういうコンテンツを書いている
かといった文脈が理解しにくいからだ。その点は残念。

 じゃあ逆にコンテンツの中身からどういう人物が書いているのか推理してみ
よう。まず、最近の「書籍寸評」として挙がっているのは、黒田清の『震災と
人間』(三五館)や五十嵐敬喜、小川昭雄編『公共事業は止まるか』(岩波新書)、
天野礼子『いらない 公共事業にレッドカード』(集英社)などで、どうも社
会問題に関心がある人物だ。しかも公共事業に興味があるらしいこともわかる。
そこから考えるに、公務員かそれに近い立場にいる人ではないだろうか。年令
はそんなに若くない。40、50代か。

「ひとりごと」という雑記コーナーでは、「日本ゲートウェイ営業活動終了」
「まだまだNTT反省すべし」「日々雑感、春爛漫」「秋のG1レース10連戦予想」
「平成12年年賀状原稿」といったタイトルの文章を載せている。やはりおっ
さんだろう。これで20代とか30代とかいったら私は人間不信に陥る。

 それはともかく、「活字中毒者のハキダマリ」というページで核心に迫る記
述をみつけた。遠藤征広著『遅筆堂文庫物語』(日外教養選書)という井上ひ
さしの蔵書を基にした図書館「遅筆堂文庫」がテーマの本にふれた一文で、関
係者を通じて10年前から「遅筆堂」を名乗っているのは私であると井上ひさ
しに進言したそうだ。いやはや。世の中にはいろんな人がいるものだ。そんな
ことをするくらいなら、プロフィールを載せればいいのに。
 それにしても「遅筆堂」と名乗るほどこの人物は偉いのだろうか?

(1999年5月公開。現在までのアクセス数は13383)

〈ぐっど・すぴーど〉1968年生まれ。書評サイト探検隊隊長(自称)。「本」の
メルマガ(毎月5日号)で「一字千金の記」を連載中。偉くなんかないけれど
「偽遅筆堂」でも名乗ろうかと思案する今日この頃。

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■あとがき
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 昨日(12月10日)発売の『レモンクラブ』(日本出版社)での連載「活字
本でも読んでみっか?」で、まんだらけ出版の出した『戦後セクシー雑誌大全』
(『あかまつ』別冊)をベタホメした。ところが、同日発行の『噂の真相』の
出版ゴシップ欄を見ると、「売れ行き不振により『あかまつ』は1号で休刊、
編集長の赤田祐一氏は退社」とあるではないか。月刊誌の原稿はだいたい発行
の1カ月前に書くのだが、読者にはそんなコトはカンケーない。両方読んだヒ
トには、さぞや間抜けな書評者に見えたコトだろう。ちょうどいいタイミング
で書評を載せるのは、けっこう難しいのだ。では、執筆即発行が可能なメール
マガジンなら、どうか。来年の本メルマガは、新刊・休刊にかかわらず、「な
ぜいまこの本を取りあげるのか」を意識しながら、編集していきたい。(南)

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