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2002.6.20.発行 vol.74 [ 日本が負けたのは幻想だ 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2002.6.20.発行
■■ vol.74
■■ mailmagazine of book reviews [日本が負けたのは幻想だ 号]
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■トピックス
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■サイードの新刊が発売中です
人文書としては、驚くべきヒットとなった『戦争とプロパガンダ』の第二弾
ともいうべき『戦争とプロパガンダ 2 パレスチナは、いま』(エドワード・
W・サイード 中野真紀子訳 1200円)が好評発売中です。報復の応酬が止
まらないイスラエルとパレスチナですが、解決の糸口は果たして何処に……
■『ザ・シンプソンズ』DVDが発売されています。
アメリカの破壊的家族アニメ、『ザ・シンプソンズ』のDVDが発売になり
ました。
『ザ・シンプソンズ シーズン1 DVDコレクターズBOX』3枚組デジパック
\7,480
■畠中さんお休みです
畠中さんが、今号おやすみです。ファンの方、ゴメンナサイ。来月にご期待く
ださい。
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■サッカーも色褪せる、人間の生きざまの物語/小林圭司
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6月9日と14日は、サッカー日本代表がロシアとチュニジアを破った日として語
り継がれるのだろう。
それにしてもワールドカップの威力はすごい。
あれほど喧伝されていた外国人フーリガンによる騒ぎは日本国内では起きてい
ないが、ブルーのレプリカをまとった若者たちが街中に繰り出して暴走し、警
官隊と衝突してニュースになる。
僕自身がサッカー漬けなのはこの6月に限ったことではないただの日常なの
に、いつもなら苦々しく思う妻ですら、ワールドカップは別物のようで非難が
ましいことを言わない。
こんなどこに行ってもサッカーという状況は、望んでいたパラダイスのはずな
のだが、一方的・視野狭窄的で、かえって居心地悪く感じてしまう。
日本代表に関心がなければ非国民扱いだ。
本当に興味のない方はうんざりどころか怒っていることだろう。
だから、前出の2試合が行なわれた日に「翻訳文学ブックカフェ」というすば
らしいイベントが行なわれた快挙に、あらためて拍手を送りたい。
翻訳ものを手がける編集者の集まりによるこの催しは、在米の文芸評論家新元
良一氏をホストに、英米文学の翻訳家の中でも第一人者が対談や朗読を行なう
という、ファンにはたまらないものとなった。
9日は池袋のジュンク堂で若島正氏、14日は表参道の青山ブックセンターで柴
田元幸氏と、巨匠二人が招かれた。
若島氏はリチャード・パワーズの『ガラテイア2.2』、柴田氏はスチュワート
・ダイベックの『シカゴ育ち』を中心に取り上げた。
現在、この2冊を含め、新元氏が選んだ翻訳文学22冊によるブックフェアが、
青山ブックセンターで行なわれている。
翻訳ものファンにはおなじみの作品から、おやっと思わせる意外な作品まで
ヴァラエティに富んだ、見ているだけでもたのしいラインアップだ。
僕は読んだものも多いが、気にはなっていながら後まわしにしていたものもあ
り、読書ガイドとしても重宝している。
そのおかげで、本棚の片隅から救出された幸運な1冊が、
『グランドセントラル駅・冬』(リー・ストリンガー著 文藝春秋刊 本体2
190円)
だ。
ストリンガーはグラフィックデザイナーとして成功しながらも、ビジネスパー
トナーや肉親の相次ぐ死にダメージを受け、ドラッグ中毒になり、ついには
ホームレスとなる。
典型的な転落パターンだ。
この本はストリンガーがホームレスとなった約12年の間について書かれたも
のである。
しかし、そのことを不幸や不運や悲劇などと、恨み辛み混じりで描いているわ
けではない。
ホームレスであることは、その人がどんな人間なのかということとは関係ない
からだ。
例えば、地下鉄で換金するための空き缶拾いをしていたストリンガーは、ス
マートな黒いビジネス・スーツに身を包んだかつての上司と出会ってしまう。
「きみはほんとうに優秀だった」「あの頃を懐かしく思わないのかい?」とた
ずねられ、「あの頃は全然しあわせじゃなかった」と答えるストリンガー。
これだけではまるで強がっているだけのように聞こえるが、「わたしは彼が金
を恵んでくれたりしないことにほってする。とはいえ、もしも彼がそうしたと
したら、きっと受け取っていたことだろう」という達観したかのような一節に
救われる。
あるいは、おとり捜査でコカイン売買の現場で捕まってしまったストリンガー
は、釈放の条件として社会奉仕活動を命じられる。
働いても一銭にもならない奉仕活動では、真面目に汗水たらす者などなく、犯
罪者たちはできる限りなにもしないでいようとする。
しかし、なんとはなしに仕事に手をつけ始めたストリンガーに2人の男が手助
けをし、最後には互いに協力し全力で作業を遂行する。
「わたしたちは何人かの近所の子供たちの注目の的にもなった。大人たちが大
人にしかできないことをしている現場を目撃した時に、子供たちの誰もが無条
件で引きつけられてしまうように、彼らもまたうっとりとした様子でわたした
ちの仕事のはかどり具合を見守っていた。」
もちろん、ジャンキーのホームレス生活が常にそんなハートウォームな出来事
で飾られているはずはない。
だが、ストリンガーは厳しい現実の前でも決してユーモアを失わないし、人間
として真っ当にふるまうことを忘れない。
ホームレスが配布する新聞『ストリート・ニュース』の副編集長となったスト
リンガーは、読者からの質問に紙面で答えるコーナーを設けた。
あらゆる政策は本質的に欠陥を宿している、真の論点は人々の心であると説く
姿は、正しいおじさん的スタンスそのもので好ましい。
この本は18章の様々なスタイルで書かれた文章から構成されているのだが、
そこに通底しているのは、リベラルでありながらも行き過ぎたポリティカリィ
・コレクトを揶揄できるような、制度よりも人間そのものへの愛情に満ちた視
点であるように思う。
面白そうだと思ったからこそ購入していた本ではあったが、実際に読むことが
できたのは新元氏のリストのおかげだ。
青山ブックセンターでのイベントの際いただいた愛らしいパンフレットに新元
氏が言葉を寄せているのだが、巧みな翻訳術から繰り出された言葉の魔力たる
や、「ベッカムのキックも寄せつけないほどの」エネルギーを持つ、という。
ベッカムのモヒカンをマネしている若者がこのエネルギーに触れてくれること
を祈りたい。
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<小林圭司 出版社営業部員 33歳 好きなジャンル 翻訳小説・サッ
カー>
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■ああ、なんたる不潔/朝日山
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「わらの女」カトリーヌ・アルレー 創元推理文庫
中国・瀋陽の亡命者連行事件、亡命者家族はなんとか北朝鮮に返されずにすん
だ。私は日本総領事館の言い分も、中国政府の言い分にも興味はない。ただ、
二つ気になっていることがある。ひとつはあの家族の男どもが我先に大使館に
逃げ込み、女子どもが門の側で捕まったこと。もう一つは韓国のNGOの分析が
メディアで全くなされていないことだ。
亡命者の手助けをするNGOをなぜ分析する?簡単だ。彼らは日本政府が亡命者
に冷たいことなど調べる暇はなかったが、領事館の前にビデオを据え付けて一
部始終を撮影する暇はあった。彼らにとって日本の対応を見せる「絵」を撮る
ことの方が、亡命者の命より大切だったと考えるのは不自然だろうか?あの
NGOの目的は何か。今回の事件はNGOの日本政府に向けた謀略なのか。それとも
あの家族を犠牲にしてでも、日本政府の難民政策を変えたかったのか。
このどちらでもないとするなら、あのNGOはモノの優先順位をわきまえない、
アホでしかない。私が興味を持っているのは、日本領事館より、中国政府より、
撮影していたNGOの意図だ。
本当に悪い奴は、誰にも悪いとわかるようなことはしない。こいつらは人の善
意や正義感を刺激して、自分の悪さを正当であるかのように偽装する。我々は、
良いことをしていると誤解して、悪の片棒を担がされる。だからこそ、マキャ
ベリは天国に行きたけりゃ地獄への道を熟知しろと言ったのだ。単純な正義漢
ほど不潔なものはない。
そんな不潔さを描いた本というと、最近出たの本では野沢尚「砦なき者」が挙
げられる。「波線のマリス」の続編で、前作の主人公のキャスターを陥れた連
中が正体を現すと思って買ったのに、出てこないと思ったら、かわりにメディ
アを悪用してのし上がる化け物が出てくる。これはこれで面白い。でも、終わ
り方がちよっと不満だ。
そんなわけで、ここは古典を挙げておきたい。で、この小説は、我々の持つ善
意や良識をここごとくあざ笑う古典だ。アルレーはかつて悪女を描けば世界一
と呼ばれたミステリ作家で、この作品で世界的に有名になった。
主人公のヒルデガルデは、ある日大富豪の妻を求める新聞広告をみかけて応募
する。敗戦国ドイツで貧困にあえいでいたヒルデガルデは、たとえ相手がせむ
し男でも結婚したいと考えた。金さえあれば幸福になれると思ったのだ。
面接会場に行くと、大富豪の秘書コルフが面接官をやっていた。よく聞くと、
老い先短い大富豪リッチモンドが自分の意志で花嫁募集をしていたわけではな
かった。コルフが独自に自分の主人にくっつける女を欲しがっていた。なぜな
ら、コルフはリッチモンドの死後のことを心配していたからだ。
ケチで薄情なリッチモンドは、長年仕えてきた自分に遺産を残してはくれない
だろう。わたしは遺産のおこぼれにあずかりたい。あなたをリッチモンドと引
き合わせるから、うまく口説いて結婚しなさい。そのかわり、リッチモンドが
死んだら、遺産を分けてくれ。ついてはあなたに裏切られた場合の保険として
私の娘になってくれ。
ヒルデガルデは承知した。ヨットで世界中を旅するリッチモンドがたまたま寄
港したカンヌで、ヒルデガルデはリッチモンドのヨットに看護婦として乗り込
んだ。そして、リッチモンドを籠絡し、妻の座を勝ち取ることに成功した。し
かし、それこそが罠だった……
この作品の発表年は1956年。第二次大戦が終わって十年経ったころでドイツは
もちろん、ヨーロッパもまだ戦禍は癒えていない。単調な生活に価値を見いだ
す貧乏人的生活から脱することを望んだヒルデガルデの姿は、今の若い女(男
も同じかもしれない)の希望や夢と重なる。
このまま貧乏にまみれて歳をとりたくない。人生の勝負を賭ける時をじっと待
ち、あるとき、突如チャンスがやってきたら……たいていの人間はその運命に
賭けようとするだろう。そこに陥穽が待ち受けているとは思っても、自分だけ
は大丈夫だと考える……バブルで大損するのも、くだらない異性に安易に惚れ
て失敗するのもみんな同じだ。
そうした人間の弱さのみならず、誰もがもつ善意や良心をもてこにする連中は、
善人ヅラしていんだよなぁ。韓国NGOの正体は……ここを狙うジャーナリズム
が出てこないのが残念だ。
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(朝日山 烏書房付属小判鮫 37歳 好きなジャンル 何だろ?)
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■あとがき
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>最近、お酒が安いんですよ
>はあはあ
>うちの近所のスーパーでは、発泡酒が128円、サワー類はなんと118円
から128円の間で売ってるの
>そ、それって自販機で買う缶コーヒーより安いですね
>うう、そのスーパーでは外国のお高級なミネラルウォーターが150円くら
いで売ってますよ(TT)
>酒より水が高いって一体……
>それで、僕は発泡酒ならブロイ、サワーならハイリキが好きなんですが、な
ぜか両方とも店頭から消えちゃったんですよ。
>なんか、ベストセラーは読まんとか言う本好きな人のヒネクレタ感性が酒に
も出ている気がしますね(笑)
>うう、プンプン、本当のこと言うなー(笑)。しかし、ブロイの代わりに場
所をしめている同じメーカーの北海道生絞りの口に合わないこと。どうなって
いるんでしょう……
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