|
2002.6.30.発行 vol.75 [ 偽悪のポーズ 号]
|
■■----------------------------------------------------------------
■■ [書評]のメルマガ 2002.6.30.発行
■■ vol.75
■■ mailmagazine of book reviews [偽悪のポーズ 号]
■■----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------
■トピックス
--------------------------------------------------------------------
■島田雅彦さんの詩集
作家の島田雅彦さんが、なんと詩集の新刊を出しました。
『島田雅彦詩集 自由人の祈り』(思潮社 1,500円)
非常に読みやすい詩で、後半にはエッセーも収録されており、ファンの方は
必携です。
■月曜社さんの第三段刊行
新進ながら注目の学術書を出すことで知られる出版社、月曜社さんの第三段
『友愛と敵対 絶対的なものの政治学』(アレクサンダー・ガルシア・デュ
ットマン 大竹弘二 清水一浩訳 2,200円)が出版されました。ぜひ店頭
で手に取ってみてください。
■ミラクル福田さん、お休みです
今回、ミラクルさん多忙のためお休みです。次回にぜひご期待ください。それと
号数のナンバリングを間違えておりました。前号が74、今号が75です。申し
訳ありませんでした。
--------------------------------------------------------------------
■「ヒキタクニオは物事の好き嫌いをはっきり持った作家である」/
石飛徳樹
--------------------------------------------------------------------
「ベリィ・タルト」
ヒキタクニオ著
文芸春秋
書店の友人に勧められて、初めてヒキタクニオを読んでみた。
これが、実に活きがよくて面白い。
この新作は、芸能界の裏側を描くアクション・エンターテインメント。
最初は、設定や文体が下品なように思えたが、
読み進むにつれて、それは作者の偽悪のポーズだということが分かってくる。
定石からいけば、決してハッピーエンドとは言えない幕切れなのに、
非常にさわやかな読後感を与えてくれる。
元ヤクザの関永は、アイドルから風俗嬢まで、4つのタレントマネジメント
会社を持っている。
それら1つのビルに入っており、階下に行くほど、「商品」の社会階層も下
がるという、分かりやすいが、下品で身も蓋もない構造になっている。
神宮外苑の花火大会の夜、関永は、野良猫のような少女リンに出会う。
彼女に原石のきらめきを見た関永は、
これまで培ったノウハウを駆使して、新しいタイプのアイドルとして売り出
そうとする。
リンは、才能に幸運が重なって、デビュー直後から大きくブレイクする。
しかし、そんなリンの魅力、暴力団系の大手プロダクションが見逃すはずも
なかった。
読んでみるとすぐ分かるのは、
ヒキタクニオは、どうやら物事の好き嫌いをはっきり持った人らしいという
ことだ。
もっと言えば、嫌いなものをはっきり持っている。
世間的な格好ばかりつけたがるキャリアウーマン。
初めに利潤率ありきの、堅実だが面白味のないビジネス。
イメージ宣伝が先行して中身のない商品と、それに騙される消費者。
ただの道具に過ぎないインターネットに使われているオヤジと、
インターネットに貴重な時間を捧げるモテない若者たち……。
ヒキタは、常識を嫌い、多数決を嫌う。
情報や環境に踊らされる人間を嫌う。
関永もリンも、オカマの美容師の仁も、関永の手下でクールな小松崎も、
みんな自分の頭で考える人間たちだ。
彼らは信頼し、尊敬し合っているが、それでも自分のことは自分で決める。
決して他人や社会のせいにしない。
そして何より、ヒキタは、文体の曖昧さを嫌う。
彼は、浮ついた形容詞で逃げることをしない。
リンの魅力を表現する時でさえ、数字を挙げて科学的な説明を施してみせる。
だから、どの場面も、イメージが極めて明瞭になっている。
他の作家に比べて、読者が思い抱く像にばらつきが少ないはずだ。
思想も文体も含め、ヒキタの魅力を一言で表すと、「潔い」ということにな
ろうか。
いや、そんな浮ついた形容詞を使うのはやめよう。
彼の態度を表す極めて適当な名詞があるのだ。
そう。それは「ハードボイルド」である。
全く新しいタイプの、しかし言葉の最も正しい意味を体現する「ハードボイ
ルド作家」の誕生を大いに喜びたい。
http://www.gozans.com/bk/?b=4163209107&s=shohyo
(こちらからお買い上げ頂けます↑)
(石飛徳樹 朝日新聞名古屋本社学芸部記者 39歳 年間読書量100
冊 好きなジャンル・文学)
---------------------------------------------------------------------
■学問は面白い問いかけを見付けたもの勝ち/守屋淳
---------------------------------------------------------------------
『エスニシティ・ジェンダーからみる日本の歴史』
黒田弘子・長野ひろ子編
吉川弘文館
3,200円
僕は三年ほど前まで大手の書店チェーンにいて、人文書売り場の責任者など
をしていましたが、その売り場に着任した時に前任者から引継ぎとしてまず
言われたのが、「いま、日本史はなかなか売りにくくなっているんですよね
ー」という言葉でした。
もちろん、戦国時代ものや幕末維新もの(特に新撰組)、さらに近現代もの
などは手堅く売れていましたが、いわゆる専門書の類で大きく売れるものが
昔に比べてなくなったというのが、その理由。専門書は値段も高いので、そ
ういうのが売れてくれないと、どうしても売れ行きは下降気味ってな具合に
なりがちでした。
むかし――特に七十年代や八十年代くらいまでは、要するにすべてを包括す
るような世界観(端的な例でいえば、マルクス主義的ナントカとつくような
奴。最近でいえば、司馬(遼太郎)史観というのもこの類)を提示した本が
出ていて、それが非常に売れていた、と。しかし、それが段々疑問視されて
きて力を失ってから、専門書が次第に売れて行かなくなった……
確かに、例えば司馬遼太郎さんの描く歴史は、「日本とは何か」「日本人と
は何か」という、とても大ぶりで読者を燃え立たせるようなテーマがあちら
こちらに埋め込んであって、非常に面白いわけです。しかし、それは同時
に、そこで示されたテーマが大きければ大きいほど、テーマから外れる例外
もうじゃうじゃ出て来てしまうのが現実世界、歴史観やテーマに心酔してい
るうちはいいけど、一端疑い出したらアラが結構見えてくるのは世の習いな
わけです。
アラが見えてきた末に、反動のように出てくるのが、とにかく細かい所をき
ちんとほじくって行きましょう、という研究態度。しかし、こちらの問題点
は、そんな細かい部分綿密に書かれても、ちっとも面白くないこと……。
「日本はこれからどうなるのか」とか書かれると血も燃え滾ってきたりしま
すが、「ナントカ島南西部に伝わるナントカ儀礼について」とか書かれても、
学術的価値はいかに高くても、一般人の血には火はつかないわけです。もち
ろん大ぶりな世界観と、細かいところの研究の両方がバランスよく存在して
いればよいのでしょうが、どうも日本史の単行本というジャンルに関して言
えば、振り子がどちらかに触れやすいようです。
そこで今回の本、ある意味で、大ぶりの世界観(エスニシティやジェンダー
といった切り口)と細かい部分をほじくる作業、両方にまたがることをやろ
うとして成功したり、失敗したりした本だと思います。まあ、研究者の方々
のアンソロジーなので、各人の技量の差が出て来てしまった部分が大きいよ
うですが……
成功の部類では、研究者ではない人間が読んでも面白いものに「女のオン
ブ・男のオンブ」(黒川弘子)という一篇があります。これは、狂言のなか
で男が女をオンブする場合と、逆の場合を抽出して、その意味合いを分析す
るというかなりユニークな切り口の話なのです。読んでいて、むかしTV番
組でやっていた「彼女あげ(ひょろひょろの彼氏が、ぽっちゃりの彼女を重
量挙げのように持ち上げるよう体を鍛えるというバラエティ)」を思いだし
ちゃいましたけど……
そして、この切り口、おそらく「ジェンダー」という概念がなかったら中々
出てこなかったかもしれないな、とも感じるわけです。大きな世界観(ジェ
ンダー)が面白い切り口(男女のオンブ)を生んだ格好な例なのでしょう。
もちろん反対に、こんな内容なら単行本という形ではなく、紀要か何かで書
いてればいいんじゃないの? とでもいいたくなるような蛸壺的かつ一般人
にはまったく面白くない切り口の篇も入っています。そう、研究者ばかりで
なく一般人も手に取る形態の単行本で出版するのなら、やはり他人を巻き込
む面白さをどこかに持っていて欲しいと思う――贅沢な願いかもしれません
が、そのジャンルの発展を考えれば当然必要になってくることだと思います。
学問とは結局「面白い問いかけを見つけたもの勝ち」なのかもしれません。
本書に収録された面白いもの、そうではないものを読み、その違いに思いを
馳せる時、著者は一体何を面白がって、何を謎としてこれを書いているのだ
ろうという感想が浮かんできます。ちょっと話が飛びますが、数学では、最
近解明されたことで有名になった「フェルマーの定理」のように、魅力的な
問いかけによってこそ、学問が活性化し、だからこそ問題を思い付いた者が
称賛されてきたとい歴史がありました。同じことは、おそらく他の多くの学
問ジャンルにも当てはまるのでしょう。
そして、この「面白い問いかけ」を今一番必要としているのは、日本史とい
うジャンルなのかもしれません。そして網野善彦センセイの著作が一人群を
抜いて売れる続ける理由も、恐らくはここにあります。
日本史の面白さと問題点、両方を考えさせられた一冊です。
http://www.gozans.com/bk/?b=4642077863&s=shohyo
(こちらからお買い上げ頂けます)
(守屋淳 36歳 ご隠居 年間読書量100冊《仕事で他にも少々》 好き
なジャンル 古典)
---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------
>ワールドカップも終っちゃいましたが、オリンピックと同じで審判の問題
がいろいろ取り沙汰去れちゃいましたねー
>はあはあ
>そこで、妙案があるんです
>う、なんか何が言いたいか段々予想がつくようになってきたぞ(笑)
>審判員をすべてアイボにして、コートの回り中にカメラを設置、でっかい
マザーコンピューターに接続して、どんなプレーも百八十度すべてから映し
て、審判しちゃうの。誤審なんてすべて払拭されること間違いなし。
>でも、やっぱり審判は人間がいいってことになるんでしょうね……
>そこが不思議なんですけど、審判はゲームの主役ではなく、選手がつくる
ゲームのための一つの道具に近いものだから、正確さを追求した方がいいよ
うに思うんですけどねー。へんな怨恨残らないと思うし。
>しかし、そのコンピューターハッキングして、自チームに有利なように細
工しちゃえば、やっぱり問題は起きるんじゃないんですか?
>むむむ、そこまでは考えなかった。あなた結構アクドイ発想しますね(笑)
>まあ、しかし誤審で負けたチームは泣くに泣けないですからねー。後で映
像とかで誤審がはっきりしたら、次の試合では不利な判定一個帳消しにでき
るカードもらえるとか、いいかもしれませんねー。
======================================================================
■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ 」(毎月10・20・月末発行)
■ 発行部数 2280部
■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会
■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・御質問はこちらまで enji1128@yahoo.co.jp
■ HPアドレスhttp://www.aguni.com/hon/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。
■ メールマガジンIDナンバー0000036518
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。
======================================================================
|