2002.7.31.発行 vol.78  [さかさ望遠鏡 号]

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■■ [書評]のメルマガ                            2002.7.31.発行  
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■トピックス
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■8月より発行形態が変わります。
以前に南陀楼さんの方からも告知がありましたが、8月より当メルマガは、
【毎月前半】編集担当:南陀楼綾繁 1日から15日までに2回発行
【毎月後半】編集担当:守屋淳   16日から31日までに2回発行
 場合によっては、二日連続あるいは同じ日に2号発行もあり得るという形に
なります。
また、それに伴いまして、後半発行の号にお二人の強力新人が登場します。
まず、二十日(ごろ発行)号が
●オオウラウタコ 「どこでも読書」
そして、月末(ごろ発行)号が
●荻原千尋 「あんな新刊こんな新刊(仮)」
お二人とも、もちろんペンネームですが、本名を聞けば業界では知らぬもの
のない、カリスマ美人書店員です。請うご期待!

■盛田隆二さんの新刊
もと、ぴあの辣腕編集長にして、今は作家に華麗な変身をとげられた盛田隆二
さんの最新刊が発売になりました。書店で見かけたら、ぜひ手にとってみてく
ださい。
『おいしい水』盛田隆二 光文社 1700円

■石飛さんお休みです
今回、石飛さんお休みです。申し訳ありません。その変わりに、以前にも登場
した謎の執筆者、阿呆怪奈さんが登場です。
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■「書生」は遠くなりにけり/ミラクル福田
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『田中角栄邸書生日記』 片岡憲男 日経BP企画 本体価格1500円

 『田中角栄邸書生日記』、なんて魅力的なタイトルなんだろう。
日本の最後のカリスマ総理大臣であり、国際的な政治汚職で監獄にもぶち込ま
れた代議士の姿を、屋敷の内側から見ていた人が書いた本なのだ。しかも、角
栄の娘は、現政権の立役者であり、自身の汚職問題で話題騒然の田中真紀子。
ひっかからない方が不思議だと思うのだが。

 でも、個人的には、それ以外のことにも惹かれていた。「書生」という言葉
だ。百科事典には、「学問をする者,とくに若者を総称してほぼ明治期まで用
いられた言葉。また,他家に住み込んで家事を手伝いつつ学ぶ学生のことをさ
す場合もある」とある。人物のイメージは、久世光彦の演出する向田邦子ドラ
マに出てきそうな、古風で快活な青年。服装は、袴履きか学生服。礼儀正しい
大人たちと、恥じらいが歩いているような女性たちに囲まれて……。

 このタイトルを見たときに、まず思ったのは、「おれも角栄邸の書生になり
たかった」だが、実際はどうだたのだろう?

 朝は5時か5時半には起床して掃き掃除。7時ころからやってくるお客さん
の下足番や、お茶汲みやお使い。角栄氏が留守のときには比較的暇になるが、
夜は夜で電話番などをしなければならないというもの。学校以外の時間は、基
本的に拘束されてしまう。給料は、大卒初任給の8掛けくらいもらえるのだが、
今の学生でこれに耐えられる人がどれくらいいるやら。2章まで読んで、前言
撤回だ!

 ぐだぐだと書いてしまったが、この本の本当に面白いところは、まったく別
のところにある。一番、大きいのは「ロッキード事件」について。
 田中角栄逮捕の時に、検察が屋敷に現れたときの角栄の姿は? 取調べにか
りだされた書生は何を聞かれたのか? 保釈された後の角栄はどんな様子だっ
たのか? マスコミの対応は? 小佐野、榎本はどんな人なのか? などなど、
興味深い話ばかり。警察に取り調べられるところでは、なぜか赤瀬川原平が、
お札偽造で川崎警察署にひっぱられたときの話を思い起こしてしまった。

 さらには、田中真紀子の姿も、<思い出の「田中真紀子さん>という章を設
けて書かれている。現在の彼女の姿と比べてみても面白いかもしれない。

 この「書生」という言葉も、東大で、本科生を〈学生〉、予科生を〈生徒〉
と呼ぶようになってから、使われなくなり、今ではもう死語だ。なんだか、書
生という言葉とともに、私があこがれる古きよき時代というのも失われてしま
ったように思えてならない。
 まあ、「書生」とは、実際に経験するよりも、望遠鏡をさかさにして見てる
方が、よいものなのかもしれません。

日経BP http://www.nikkeibp.co.jp/
(ミラクル福田 某人文系出版社編集 31歳 年間読書量80冊弱
好きなジャンル 文芸・芸能)
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■臆面もない『おちんちん』に騙された!/阿呆怪奈
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「バイブを買いに」夏石玲子 角川文庫

えっちな本を買うのは恥ずかしい。本屋さんは知らぬ顔をしてくれるが、絶対
見てるわなぁ。みなさん思いは同じのようで、結構その手の本がネット書店で
売れているらしい(^o^;)

そんなことを教えてくれたのは某メルマガの独身者の火を死守する会総統だ。
総統の御言によれば、ES-booksで買うときにも本屋は箱のまま渡すからスケベ
を買うのに最適だとか。え?総統は論語やビジネス書しかES-booksで買ってい
ない?ま、そういうことにしておきましょう。
逆らうとこわいから\(^o^)/

e-h0nも確か箱に入って来るはずだと、スケベを買った私がバカだった。まじ
めなe-hon加盟店は、商品に間違いがないか確かめるために開封するのだ。
「これでいいですね」とこっそり見せてくれたのが救いだが、答える私の声は
震えていた。顔も相当にほてっていただろう(笑)

で、この本を買うのにも勇気が要った。だってタイトルを見たら引くぜ、オイ。
しかも裏表紙の売り文句が「おちんちんは本当にわかりやすい。わたしのこと
を思って、わたしとしたいと思って大きくなっているおちんちんは、いつだっ
て私の胸を打つ」なんて書いてあるんだぜ。しかーし、スケベ心に逆らえない
のが男の悲しい性だ。

読み進めていくと、この作者は苦労して書いたと思うが、結果はなかなか狡猾
な構成になったようだ。本の題名になったユーモラスな「バイブを買いに」の
次に多少シリアスな「やっとお別れ」を持ってくる。大笑いする「ばかおんな
 ばかおとこ」の次にこんな女に惚れられたいと思う「心から」を持ってきて
、「ママ」で母娘を考えさせて「虫の女」からの三部作になだれ込む。

堕胎にいたる逡巡。次第に募る後悔。男のいいようにされていた女が自分との
戦いに転じて次の子どもを産もうとする再生の過程。底流に流れるものの美し
さは、文庫判あとがきにある女性の支持が厚いと思わせるエピソードの内容を、
男のわいにもすんなり納得させるものがある。

スケベ心で気を引いて、軽い文体を維持しながら最後は重いテーマに真っ向か
ら挑む。読者のおちんちんは中盤でしぼみ、あそこは乾くが、それで損したと
は思わせない。

この短編集の初出が、リトルモアだったのにも驚いた。個人的にはあんなタイ
プの雑誌は好きではない。あんな実験的な要素の多い雑誌は、保守的なスケベ
とは体質が合わないと思っていた。ぱっと見で食わず嫌いしちゃいけないね。
今度金髪ヤンキーねーちゃんと一発やってみっか……誰も信用してないな(笑)

独身者の火を死守する会のメンバーは今のところ総統一人らしいが、隠れメン
バーはそれなりにいるはずだ。そんな人にこそぜひ勧めたい。安いピンサロの
十分の一の値段でこれだけ楽しめるならお買い得ですぜ、だんなぁ〜〜。

角川書店 http://www.kadokawa.co.jp/
<阿呆怪奈 スケベ本評論家 女性店員がいるとエロ本を買えなくなる小心者
の1024歳>
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■何が弱いって、自分との闘いほど……/守屋淳
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『ジャック・ニクラウス 自伝』ジャック・ニクラウス ケン・バウデン
菊谷匡祐 飛鳥新社

企業の経営者ってゴルフが好きな人が多いですよね。さすがに不景気が続いて
若干下火になってきていますが、ゴルフ焼けした顔をテカテカさせながら、
「接待で俺も辛いんだよなー」とか言いつつ、いそいそとゴルフ場に向かう人
ってまだまだ多いと思います。

で、なんでゴルフがそんなに人気があるのか? いろいろ要因はあると思いま
すが、僕が一つきがついたのは、ゴルフってどのスポーツよりも「企業経営」
に似ているところがあるんです。

まず、ライバルは多数いるんだけど、結局は自分との闘いになるということ。
企業にしろゴルフにしろ、ライバルよりも遥かによい商品なりスコアなりを出
してしまえば、相手はどうすることもできないわけです。

そして同時に、自分がいかに頑張ったところで、ライバルがそれ以上のスコア
や商品などを出してしまえば、自分は負けるしかないという点。自分がよいス
コアを残せばそれなりの結果が間違いなく得られるけど、100%一番になれ
るとは言えないわけです。

そんなゴルフにおいて不世出の記録を残したジャック・ニクラウスの自伝が本
書です。とてつもなく分厚い本ですが、ゴルフでも企業でも成功したい人には
思わず膝を叩きたくなる名言の宝庫です。例えば――

《一九五九年の夏、プロと一緒にまわってすぐに覚えた大事なポイントは、ト
ラブルに陥ったときは?ヒーロー?・ショットに挑むことをやめるということ
だった》
《よく言われることだが、メジャー大会では健闘しながら勝ちを逃してしまう
選手が多い。私が数々の優勝を重ねてこられたのは、他の挑戦者が熱くなりす
ぎて脱落してしまうところを、堅実にプレーし続けることができたからだと言
われている》

ヒーローショットとは一発逆転を狙うショットのこと。こういう手は、特に緊
迫した場面ではほとんど失敗してしまうものらしいのです。忍耐強く堅実な手
を打ちつづけられる者こそ、最後の勝者になるわけです。ちょっと、逆の例に
なりますが、今、出版界で倒産しているところは案外バブル期に土地とかに手
を出しちゃったとかいう話を聞いたりもします。熱くならない――これは、良
いときにせよ悪いときにせよ、とても難しいことなのかもしれません。

《成功しその成功を維持し続けるのに不可欠なあらゆる資質の中で、必ず最重
要視されるのが欲望である。欲が大きければ大きいほど、仕事の能力、犠牲を
払う意欲、勝ちたいという意思、戦いに対する熱意は大きくなる。欲が弱まれ
ば、その他の資質もすべて必ず衰えていくものである。言うまでもなく、この
場合の問題点は、成功と欲は互いに逆比例に作用するということである》

つまり、勝つためにはハングリー精神が必要なんだけど、実際に勝ってしまう
と、それはどうしても衰えてしまうわけです。そこで不世出の選手というのは、
必ずハングリー精神をかきたたせ続ける方策を持っている部分があるらしいの
です。

ゴルフ好きの方、自分との闘いに弱い方(あ、まさに筆者自身だ《笑》)には
ぜひお薦めの一冊です。

飛鳥新社 http://www.asukashinsha.co.jp/
(守屋淳 36歳 ご隠居 年間読書量100冊《仕事で他にも少々》 好き
なジャンル 古典) 
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■あとがき
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>なんか、最近、伝統的な道徳教育を復活するとかしないとかで、議論がある
ようですね
>はあはあ
>しかし、僕みたいに中国古典勉強しているものからすると、ちょっと不思議
に思うところがあるんです。
>と、いいますと?
>日本の道徳観って儒教的なものが根源になっている部分が大きいんですが、
でも、日本ってそれが歪んで輸入されているんです。つまり、孟子という古典
には易姓革命――まあ、上に立つ者がアホだったら取って変わってOKみたいな
思想があるんですが、日本はそれをわざと輸入しなかった経緯があるんです。
>ああ、それはヤバそうですもんね。天皇性とのからみもあるでしょうし……
>しかし、伝統的な道徳教育復活するんなら、そういう歪みも直して欲しいです
ね。利権まみれ、下半身スキャンダルまみれの政府や官僚は、もう即革命(笑)
制度的に自分たちだけ楽して老いようとする団塊以上の人も、即革命(笑)
>うう、なんかすごい道徳復活劇になりそう……
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