2002.8.31.発行 vol.82 [ スペシャル合コン 号]

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■■ [書評]のメルマガ                            2002.8.31.発行  
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■■     mailmagazine of book reviews     [スペシャル合コン 号] 
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■コンテンツ&簡単な連載執筆者のご紹介
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■前回に引き続きまして、各連載にタイトルを新たにつけまして、編集部よ
り、執筆者の方の簡単なご紹介を付します。

★「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
新連載! 業界の方なら名前を聞けば多くの人が「ああ、あの人!」と合点
するで美人カリスマ書店員です。今回の初回の原稿も、かなりの傑作です。

★題名検討中/石飛徳樹
朝日新聞名古屋本社、学芸部に所属していましたが、9月より東京本社に
復帰します。その引越しなどがありまして今回お休みです。文学を始めとす
る活字系は勿論、映画やTVにも造詣が深く『キネマ旬報』や『レコレコ』
でも連載をされている人気の著者です。柔らかい物腰と、その裏に潜む強い
内面が天性の新聞記者を思わせる方です。

★「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
某人文系大手出版社の編集者です。昔は辣腕営業マンとして全国をまわり、
書店の女性店員あこがれの的でした。わたくしの書店員時代の部下だった
女子社員も、実はミラクルさんを狙っていたのを私は知っています。羨ま
しいのう(笑)

★「本の香りだけ」/守屋淳
某書店で、辞令式すっぽかすは応接室の絵を破くはの失敗を重ねたうえ退社、
現在は多摩丘陵でひっそり隠遁生活を送っています。メルマガ内で《独身者
の火を死守する会》を結成、勝手に総統を名乗っていますが、賛同してく
れるのはミラクル福田さんだけという侘しい人生を送っています、ハイ(笑)
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■「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
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書評のメルマガ読者の皆さん、初めまして。
今後出版予定の新刊のことなど、ゆるゆると書かせていただこうかと思って
おります。よろしくお願いします。

 今回の話は「ハリー・ポッター、平野啓一郎、そして村上春樹」です。
この3人の共通点がわかった人、わかったからって別にえらくないです。
それほどたいしたことじゃないので、先に説明してしまうと、
まもなく新刊が発売予定ってことと、
読者がうずうず待っている期待の新刊ということ、
そして、どれも上下本ってことなのです。
だからなんなんだよって思った人も多いでしょうけど、本屋の私にとっては
結構大事な問題なんですっ!
 売上増進が何よりも大好きな私(書店員の鏡?)は、この3人(2人は著者
で1人は主人公だけど)のことを考えると、すごく嬉しくてドキドキ、めっ
たにないチャンス、ああ、でもかなり不安なような…。
無理に例えるならば、超期待できるスペシャル合コンの予定が次々に入った
ような気分でしょうか。

『日蝕』で華々しくデビューした「神童」平野啓一郎氏の長編
「葬送」(新潮社)は8月30日、
村上春樹の久々の小説、しかも待ちに待った長編「海辺のカフカ」(新潮社)
は9月12日、
11月にまたもや映画公開、全国のファンがうずうず待っている
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」(静山社)は10月23日。
立て続けにやってくる売れ売れまちがいなしの新刊(平野氏については意
見はいろいろですね。少なくとも私はやる気だ。)、ばっちり部数は押さえ
ときたいって思うのが本屋の人情というもの。
でも上下本って、売上も倍だけど場所も倍とるのです。
「ハリポタ様」はもちろんのこと、平野啓一郎もかなりの厚さになること
が予想されるしなあ…。どっちかだけ切れそうになったりするのも辛い!
(ちなみに「ハリポタ様」は分売不可らしい。
在庫的にはさわやかだけど、なにか問題もおきそう。) 
よその本屋さんのことはよくわからないけど、バックヤードがめちゃめち
ゃ充実してるところって、特に都内にはそんなにないと思うんですよ。
9月から12月くらいにかけて、倉庫はすごいことになるはず。
(うちの近所の本屋さんは、既に数週間前から「ハリー・ポッター」と書
かれたトーハンさんの箱が、店内の通路に積みっぱなしに…。
新刊に合わせての既刊の確保を今からやっているんでしょうが、見るたび
になんだか泣きたい気持ちになりますね。)

 でもって、村上春樹です。
今回は新潮社さんもかなり力が入っている様子で、新潮文庫に思わせぶり
なチラシを挟みこんだり、力の入ったHPを立ち上げたり、
バウンドプルーフを配りまくったり…。
そのかいあってか、少なくとも私の周りでは期待と前評判の高さは近年で
も最高レベルです。「生きてて良かった」「私の読みたかった村上春樹はこ
の小説なの!」「ナカタさん(登場人物)ってすごくいいよね。」などな
ど…。
 私も運良くバウンドプルーフを手に入れました。(ちょっと自慢。)
一言だけ感想を言わせていただくと、
一篇の小説があって、それをたまたま手にした私が読んで、どうしようも
なくその物語にひきつけられた、という感じがします。
「村上春樹」と言う作家名の持つマジックも、前評判の高さも関係なかっ
たです。そして、そんな風に小説を読めたのって、
すごく幸せだなあ、と思いました。
 それではまた来月。

静山社 http://www.sayzansha.com/
新潮社 http://www.webshincho.com/
(荻原千尋 美人カリスマ書店員)
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■「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
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素敵な大人のできるまで

『NAGISA』 村上もとか 中公文庫コミック版 本体価格571円

 今年の夏は本当に暑い。そのせいか、周囲では、例年よりも亡くなった方
が多かった。暑さのせいだ。加えて、世間では物騒な事件ばかり。数年前ま
では10代の犯罪が問題になったが、いまは無職の20代から30代の犯罪が
多いようで、「温暖な国・日本、おだやかな日本人」というのは、もう遠い
昔のことのように思える。日本はろくでもない国になりつつある。

さてさて、今回取り上げる『NAGISA』は、まだ、いい時代であった
ころの日本(まあ、いろいろあったけど、おそらくいまよりは)を描いた作
品なのだが、こんな時代だからこそ、主人公の「西宮なぎさ」みたいに育つ
ことができたら、素敵だろうなぁ、と思えてならない。

ところは、日本の若(田舎)者なら、一度はあこがれる湘南海岸。物語は、
1964年に小学6年生のなぎさが、1972年に2度目の大学受験をするまでの
姿を追いかけている。
毎年(毎回)の物語では、それは同級生であったり、母親の店に訪れる客
であったり、ナンパをしてきた米兵であったりするけど、印象的な人との出
会いの中で、人の弱いところを見て、少しずつ「大人の理由」を知っていく。

もちろん、辛気臭い話ではなく、6年生で初めてのキスをして、15歳で「プ
カプカ(西岡恭蔵)」やって、17歳で「流行のシンナー」。まあ、たいした
悪さでもないが、やることはやる。荒んだ印象を与えないのは、明るく素直
に前向きだから。そして、年相応(もう死語か?)に背伸びをしているから
なんだろう。

「年相応」。

おそらく、なぎさにとても思い入れてしまうのは、『NAGISA』では、
マンガ特有のデフォルメに寄りかからず、等身大の(実際にいてもおかしく
はない)女の子の姿があるからだろう(こんなことを言うなんて、ずいぶん
年を取ったもんだ)。

 母親が運転するミゼットに乗って、初潮のおとずれに憂鬱な顔をして登場
したなぎさは、物語の最後、寒い冬の昼下がりに、コートの前も留めずに胸
を張って、踏み切りを越えて歩いていく。
 大人になること、自分であること、女であることを受けとめて歩き出すな
ぎさがホントに格好いい。

さて、モリヤ総統! まだ夏です。
湘南海岸に、いい姉ちゃんを探しに行きましょう!!

中央公論新社 http://www.chuko.co.jp/
(ミラクル福田 某人文系出版社編集 31歳 年間読書量80冊弱
好きなジャンル 文芸・芸能)
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■「本の香りだけ」/守屋淳
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『日本の競争戦略』マイケル・E・ポーター 竹内弘高共著 
榊原磨理子協力 ダイヤモンド社

マイケル・E・ポーターは、最年少でハーバードの教授になった記録を持つ、
ビジネス戦略界のカリスマ教授です。代表作としては『競争の戦略』(ダイ
ヤモンド社)がありますが、今回は不況にあえぐ日本の現状を分析した本書
を取り上げます。

紹介に入る前に、まず、ポーターのビジネス戦略の基本ポイントを御説明し
ましょう。実はこれ、戦略のバイブルといわれる『孫子』にかなり似ている
ところがあります。

『孫子』――この古典の最大のポイントは、ライバル複数状態における国益
確保という点です。わかりやすく言えば、バトルロワイヤルでどうやって勝
ち残るか、なのです。

バトルロワイヤルは、プロレスなどでリングにいっぺんに十人くらい上げて
同時に戦わせるという形式の試合です。こういった場合、ちょっと考えれば
わかりますが、自分が真っ先に戦うのはおバカの極み、なるべく戦わずに体
力を温存して、戦いつづけてヘロヘロになっているライバルを制圧するのが
もっとも理にかなった戦い方になります。孫子は基本的にこの原則にかなっ
た戦略を立てています。

ちなみに、西欧の戦略書のバイブルであるクラウゼヴィツの『戦争論』は、
孫子とはまったく違う状況設定をします。言うなれば狭いリングでナイフを
持った男二人が殺し合いをしている状況――まさに、決闘なのです。この場
合、当然孫子とは戦い方が変わり、ライバルの攻撃力を断固殲滅が至上命題
になってきます。

ポーターは指摘します。ビジネスにおいて、ライバルと値下げ合戦に明け暮
れたり、効率の良さだけを追求したコストダウンを繰り返す――つまり簡単
にマネをされるような戦いをしていてはダメだ、と。先程の例でいえば、ク
ラウゼビッツの決闘のような状況でしょうか。確かに血で血を洗うような決
闘をすれば体力やお金ばかり消耗しますし、勝ったとしても最後は自分もボ
ロボロ、万一スキをうかがっている第三者がいたら、もう抗う体力は残って
いなかったりします。

そして、日本企業は、ある意味でこのパターンにはまっているのではないか、
というのが本書の指摘なのです。なるほど、書店業界で考えてみても、出店
競争が始まるといえば、どこも後先考えない出店に血眼になり、御存知のよ
うに現在書店は廃業・倒産だらけという現状になっています。その後も、千
坪以上の書店が増えてきたとみれば右に習え、ローコストオペレーションが
成功したと聞けば右に習え、ネット書店が出たとなると右に習え、ただでさ
え少ない利益をお互いに食いつぶしているわけです。まさに戦略皆無の泥沼
の戦いがあるばかり、そして、似たような構図に日本の多くの企業が陥って
いる――例えば、半導体、家電など――と本書は指摘するのです。

では、打開策はあるのか。ポーターが挙げるのは、差別化やポジションニン
グを考えるというやり方です。簡単に説明すれば「これでなければ」と買い
手に思わせ、高いお金を払ってもいいと思わせるものを生み出す努力をしな
ければならないということです。また、自分の会社がどの顧客層をターゲッ
トにしているか――例えば、おハイソな人たちか、一般大衆か、書店だった
らマニアックな本の虫なのか、雑誌とコミックしか読まない人なのか、など
――を絞り込み、そこに特化したポジションニングをとって利益を上げてい
くべきだというのです。本書から引用すれば次のようになります。

《 日本企業は、どの顧客を自分の顧客として選び、どの顧客を競合他社に
譲るかに関して取捨選択することはほとんどない。つまり、「すべての人に
すべての物を」という発想が浸透してしまっているのである。しかし、どの
顧客のいかなるニーズに応えるかを取捨選択することこそが、戦略の本質で
あることを、日本企業のマネージャーは理解しなければならない》

孫子には、あまりにも有名な言葉――百回戦って百回勝ったとしても、最善
の策とはいえない。戦わないで敵を降伏させることこそが、最善の策なので
ある――という指摘があります。簡単に言えば、クラウゼヴィッツの前提と
した決闘のような状況で勝ったとしても、国益的には何も良いことがないと
いうことです。ビジネスでいえば、ライバルと大差ない商品で、値引きと
いった手法ばかりでライバルからシェアを奪うといった手法がかなり近いも
のになるでしょう。

しかし、確かにもっと賢いやり方で莫大な利益を上げているところは、たく
さんあります。端的な例では、ブランドもののファッションや鞄などかもし
れません。その会社のロゴがつくだけで、値段と利幅がグンと跳ねがるので
すから……。まさに戦わずに勝っている状態です。

売れない売れないとお嘆きの、出版・書店業界の方に特に読んで欲しい一冊
です。特に、売れている本があるとすぐに類似企画出しちゃう編集者、企画
書の読者層の欄に「サラリーマン一般」とか平気で書いちゃう編集者なんか
は、特に……(笑)

ダイヤモンド社 http://www.diamond.co.jp/index.shtml
(守屋淳 36歳 ご隠居 年間読書量100冊《仕事で他にも少々》 好き
なジャンル 古典) 
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■読者の方からの投稿です/青木忠司(ライター)
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「ジャズ喫茶に花束を」(村井康司著 河出書房新社 1800円) 

「楽器でジャズを楽しもう」(寺島靖国編著 河出書房新社 1600円)
 最近、ジャズ本が妙に元気だ!
音楽書、それもジャズとくれば、地味な印象が強かったのだが、、ここ数ヶ
月の間、ジャズにまつわる書籍が相次いで刊行されて、いま、書店の店頭を
賑やかしている。
 例えば「ジャズ喫茶に花束を」(村井康司著 河出書房新社 1800円)は、
いまでは、すっかり少なくなってしまったジャズ喫茶の中から、選りすぐり
の店を取材、一癖も二癖もある店主9人の話を聞き書きした一冊。
 一関の「ベイシー」、四谷の「いーぐる」、吉祥寺の「メグ」、そして、
高田馬場の「イントロ」など。いずれも歴戦のつわものばかりである。そん
な頑固で偏屈な9人のジャズへのこだわりは、いまでは懐かしささえ感じさせ
て、楽しくも、どこか哀愁を帯びて、読者をノスタルジーにいざなう。
 また、各店主が選んだ愛聴盤270枚も、ジャケット写真と寸評を併せて紹介
しているのも嬉しい。
 そして、最新刊「楽器でジャズを楽しもう」(寺島靖国編著 河出書房新
社 1600円)は、異色の一冊。
 これまでのジャズ本は、アルバム解説が中心の、カタログ的な本が大方で
あったのに対し、この本は、素人芸でもよい、とにかく、楽器でジャズをと
ことん遊んでしまおうと、高らかに宣言した本である。
 冒頭で「楽器を始めてジャズの聴き方が変わった。そう言ったのは「イン
トロ」の茂串さんです」と書かれているが、いちどリスナーからプレイヤー
に転進してしまうと、ジャズの世界観が一変してしまうらしい。
 本文は、トランペット、トロンボーン、サックス、ドラムなどに、とうと
う手を染めてしまったジャズ・フリークたちのエッセイを、楽器別に構成し
てあるが、この本を読み進めるにつれ、読者もいつのまにか、楽器店に足を
向けたくなるような説得力に満ちている。
 昔、寺山修司が「本を捨て町へ出よう」と言ったが、本書は「レコードを
捨て楽器店へ行こう」とジャズファンに呼びかけているかのようだ。

河出書房新社 http://www.kawade.co.jp/
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■あとがき
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>わたし、ハトに襲われたことがあるんです
>はあはあ
>駅のベンチに足組んで座っていたら、靴の先にニブイ衝撃があって、なん
だろうって見たら、ハトがガツガツと齧っていて……。
>平和の象徴であるハトに襲われるなんて、あなたの悪人ぶりがハトにもバ
レバレになったんじゃないんですか?
>うう、そうかも……(笑)。しかし、そんなハトが勝てないモノをこの間
発見したんです。
>なんですか、それ
>いや、ちっちゃいお子さんって、ハトの群れにまったく怯まず走って突っ
込んで行くんでよねー。もうハトが逃げる逃げる。お子さん最強って感じ。
>しかし、それってヒエラルキーで言えば、ちっちゃいお子さん≫ハト≫あ
なた、という構図ですよね。史上最弱の男ですね(笑)
>うう、確かに。せめてハトには負けないよう、体鍛えよっと(笑)
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