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2002.9.10.発行 vol.83 [ 私物化宣伝 号]
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■■ [書評]のメルマガ 2002.9.10発行
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■ vol.83
■■ mailmagazine of book reviews [私物化宣伝 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
→本をめぐる情報+アルファの雑談です。今回は「sumus」関係の特集です。
★ゲスト書評『新潮文庫全作品目録1914〜2000』 吉田勝栄
→若き文庫書誌研究家が、老舗文庫のデータベースを分析する。
★新連載「かねたくの読まずにホメる」金子拓
→買ったときから、いや手にしたときから読書ははじまっているのです。
★新連載「新刊書店の奥の院」荒木幸葉
→売り場を飛び回りながら拾ったネタを大公開。今回は「カバー」について。
★リレー連載「私のsome day本」夷蔵
→本棚の隅っこで読まれないまま待機しているあの本を「some day本」と呼ぶ。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。
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■はじめに
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いま、10月8日から開催される「sumus」フェアのために、小冊子を編集
しています。わずか20ページなのですが、校正したり書誌データをチェック
したりで、毎日もうタイヘン。本業の雑誌が一段落したばかりなのにナンでこ
んな……。しかし、誰が悪いのでもありません。フェアの話が持ち込まれたと
きに、「どうせだったら、一冊ずつにコメントつけて、書き下ろしで日記書い
てもらって、そこまでやるんだったらデザインもきちんとやって、ついでに印
刷製本も……」と、どんどんエスカレートして云ったのは、かくいう私自身な
のであります。こんなにリキ入れてつくった冊子をタダであげちゃおうとは、
まったく太っ腹。「書評のメルマガ」読者各位に置かれましては、期間中に一
度は足を運び、小冊子を手にしてください。ついでに、文庫の一冊もお買い上
げいただければアリガタイ次第です。詳しくは、↓に直行せよ。
(編集・南陀楼綾繁)
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■南陀楼綾繁のホンのメド 《情報編》
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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本を買ったり読んだり、それについて書いたりしていると、きちんとした文
章にするまでもないけれど、どこかで紹介しておきたいというネタが結構たま
るモノです。この欄では、個人的に気になっている本を中心とした情報を紹介
し、そこにラフなコメントをつけていきます。いわば、備忘録(ネタ帖)を公
開してしまおうという試みです。この中のいくつかは、もうすでに旬を過ぎた
ネタだったり、ネタ以前のカスだったり、するかもしれないですが、またいく
つかは、少数の読者のお役に立つ情報かもしれません。
もちろん、一人でネタを拾うのには、限界があります。南陀楼が喜びそうな
本やイベントの情報をお寄せください。それをぼくなりに料理して、この場に
お出しするツモリであります。
【今号のピックアップ】「sumus」(スムース)イベント&最新号のお知らせ
★本屋さんでお散歩〜「sumus」が選ぶ秋の文庫・新書100冊
(場所)リブロ池袋店・文芸書売場&青山店
http://www.libro.jp/
(期間)2002年10月8日(火)〜11月10日(日)
書物同人誌「sumus」は、おかげさまで9月末発売号を持ちまして、第10号に
到達します。これを勝手に記念いたしまして、10月にリブロ・ブックス池袋店お
よび外苑前店で、『「sumus」(スムース)が選ぶ秋の文庫・新書100冊』なるフェ
アを開催します。今回のフェアでは、同人7人が食欲の秋、読書の秋にちなみ、
「食の本」「本の本」そして各自好みのジャンルをそれぞれ五冊ずつ選び、コ
メントを加えました。また、最近の「古本日記」を各自が書いています。会場
では、これらをまとめた小冊子(A5判・20p)を無料頒布するとともに、オス
スメの本に手書きPOPをたくさん立てています。
さらに、できたての「sumus」10号(特集・スクラップブックの時代)や残
部僅少のバックナンバー、山本善行氏の新刊『古本泣き笑い日記』(青弓社)を
はじめ、同人の著作・ミニコミも販売します。ぜひ、一度足をお運びください。
★「書評のメルマガ」読者のみの特典
以下のアンケートにお答えいただいた方のうち、先着20名さまに、今回の
「sumus」フェア小冊子を差し上げます。奮ってメールください。ただし、期間
中にリブロ池袋店&青山店に行けない(地方在住、忙しいなど)方に限ります。
行けるヒトはなるべく現場でゲットしてくださいな。
1)「書評のメルマガ」でいちばんおもしろいコーナー・書き手(単発の文章で
も結構です)。
2)今後、どういう記事を載せてほしいか。
以上を、400字以内でお書きになり、kawakami@honco.netまでメールをお送りくだ
さい。(発送は10月上旬になります)
★「sumus」最新号、9月末発売!
ついに第10号を迎えた今号の特集は「スクラップブックの時代」。扉野良人さ
んが全体のリードを書き、ゲストの稲村徹元さんが「切抜帖趣味―〈作る〉から
〈見る〉へ」を寄稿。また、『貼雑年譜』復刻版を実現させた東京創元社の戸
川安宣さんと原本修復の脇敦子さんに念入りに話を伺っています。その他「本
からブックへ―検印紙の旅」(生田誠)「『いかもの趣味』と『からす会蒐集
貼込帖』」(南陀楼綾繁)、「昭和44〜昭和52、落語関係スクラップ」(岡崎武志)、
「柳瀬正夢『漫画新東京』」(林哲夫)など、好きモノにはたまらない記事が満載
です。
9月30日発行 定価600円 送料200円
リブロでのフェアのほか、書肆アクセス、タコシェ、三月書房(京都)、海文
堂書店(神戸)、古書日月堂などで購入できます。サイトでの通販も受け付けます。
「sumus」ホームページ
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/5180/
【これから買う本】
★国書刊行会がスゴイ
ここ数年、センスのいい編集者&営業が入ったのか、1980年代に『世界幻想
文学大系』などを出していた頃のノリを取り戻したように、好企画を連発してい
ます。
まず、発売中の金子隆一監修『NIPPON』復刻版(第1期)は、名取洋之助、
亀倉雄策、土門拳、山名文夫らが参加した全編欧文組の戦前期対外宣伝誌を完
全復刻。95,000円。以降、第2期、第3期を続刊予定。
次に、種村季弘監修、日下三蔵・横山茂雄編の『日影丈吉全集』全8巻+別
巻1。異色のミステリー作家にして戦後最高の幻想文学作家の全集が、ついに
刊行開始。第1巻(長編小説?)は9月刊。各巻9,500円。
さらに、好企画『野坂昭如コレクション』全3巻に続き、長編・エッセイを
復刊する『野坂昭如リターンズ』全4巻がスタンバイ。10月刊の第1巻では、
「真夜中のマリア・てろてろ 」が入ります。各巻3,000円。
そしてもう一冊。生誕100年を記念してこの秋、さまざまなイベントが行な
われる詩人・北園克衛。その極度に洗練されたグラフィック・ワークを集成し
た写真=詩集『カバンの中の月夜 北園克衛の造形詩』(金澤一志・監修/
堀江敏幸・序文)が10月刊。予価3,600円。
というワケで、この秋は国書刊行会に注目。
http://www.kokusho.co.jp/
★新装版「現代文学の発見」 9月刊行開始
學藝書林が1967〜69年に発行した、日本文学のアンソロジー。全16巻・別
巻1。「最初の衝撃」「黒いユーモア」など各巻のタイトルが刺激的だった。新
装版は、活字を大きくし、新月報をつける(旧月報も付録につく)。旧版は古本
屋で一冊ずつ買ったものだが、この際、じっくり付き合ってみようか。
【ウェブ】
★宮武外骨スレッド
ナンでもありの「2ちゃんねる」だが、たまたまこんなスレッドを発見。ぼ
くが昔編集した復刻版や、外骨の親交のあった池田文痴菴のことも書き込みさ
れていた。何人かはどーも知り合いみたいだなあ。自分の名前が出てこなくて
ヨカッタ(心臓に悪いから)。
http://book.2ch.net/test/read.cgi/books/1021051409/
【豆知識】
★森山大道 宇多田ヒカルを撮る
宇多田ヒカルのアルバム『DEEP RIVER』のポスター(新宿の風景を撮った
やつ)は、森山大道の写真だって知ってました? え? とっくに知ってる?
ぼくは最近知ったもんで……。と、このネタを書こうとしたら、宇多田ヒカル
結婚のニュースが、15歳年上っていうからどんなオヤジかと思えば、オレよ
り一歳下じゃんよぉ。(書いてて悲しい)
【南陀楼綾繁の近頃のお仕事】
★「東京人」10月号 特集「神田神保町の歩き方PART2」(都市出版) 857円
逢坂剛、沼田元毅、中野翠、坪内祐三、車谷長吉、クラフト・エヴィング商
会といった錚々たるメンツに混じって、なぜか南陀楼&内澤旬子(イラスト)
が、吾八書房、呂古書房、日本古書通信社など神保町の「豆本人」たちを取材
しております。じつは、商業誌で夫婦一緒にコンビを組むのはコレがはじめて。
http://www.toshishuppan.co.jp/
★「古本共和国」 9月中発行
毎年1回発行される早稲田青空古本祭の記念連合目録ですが、今回は趣向を変
えて、自分の理想の古本屋とその目録を作成せよ、というテーマ。松本八郎・林
哲夫両氏の肝煎りにより、一癖もふた癖もあるメンバーが集まっています。南陀
楼は「スクラップブック専門店」の目録をつくりました。ウェブでは先行して、
各自のコラムを掲載しています。入手方法もココにあり。
http://www.w-furuhon.net/
★「クイックジャパン」44号(太田出版)
冒頭のコラム欄「クイックジャーナル」(だっけ?)に、「タウン誌の元祖
『新宿プレイマップ』」を書きました。1969年に創刊され、「ぴあ」創刊の直
前に消えた雑誌の元編集長にインタビュー! 1pしかもらえなかったのが残
念なほと、いろんな発見がありました(どっかで、『新宿プレイマップ』をめ
ぐるサブカルチャー人脈について書いてみたい)。
http://quickjapan.hoops.ne.jp/
★川崎ゆきお『秘蔵版・猟奇玉手箱』幻堂出版、1万2000円
マンガ家生活30年を記念して、明石の幻堂が放つ、川崎ゆきおのボックスセ
ット。「川崎ゆきお全集7 真猟奇王・大阪ダンジョン」、「少年少女世界猟奇名
作選『2001年猟奇への旅』、「ガリ出版幻堂謹製・ガリ版復刻オフ印刷版『少
年少女猟奇の友』」、「VHSビデオ『新実録猟奇娘・オクトパスよ永遠に』
『走れ!ロマンよ・実録猟奇娘』」、データCD「川崎ゆきお漫画ライブラリ」、
「雑音楽CD『驚異の猟奇ミュウジック』、「豆本」2冊、「猟奇ステッカー
8枚セット」、「缶バッジ」、「猟奇王カルタ」、「川崎ゆきお直筆サイン色紙」
と、その数全部で15点! 南陀楼はこの中の『2001年猟奇への旅』で、
川崎さんの文章についてワリと長い文章を書かせてもらいました。
以下に、写真あり。
http://homepage2.nifty.com/hon-karasu/ryoki-tamatebako.htm
★藤本和也『ふらふらふらり』第二部、600円
恥ずかしくもせつない青春マンガの傑作。南陀楼綾繁が初めて「解説」とゆ
ーものを書かせてもらいました。藤本和也と赤瀬川原平の類縁性を論じようと
して、肩に力入りすぎの約4000字。なお、本書は中野・タコシェの7月の売上
げベストに入ったとか。解説のおかげではまったくないと思われます。往来堂
書店にも置いてます。
http://www.mochiya.nu/mb/
★まぼろしチャンネル
東京歩き&買い物日記「帝都逍遙蕩尽日録」は、一カ月に二回ぐらい更新中。
ほかの連載に比べてちょい地味なのか、ヒット率が低いので、組織票でなんと
か上位に食い込みたい。ご協力を。
http://www.maboroshi-ch.com/
★「ACCU」(ユネスコアジア文化センター)
なんと英文に翻訳されたミニコミ論"'Mini-comi': The Spread and
Diversity of Publishing" by Ayashige Nandaro
この日本語訳がPDF形式で読める、はずなんだけど。
http://www.accu.or.jp/appreb/
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■ゲスト書評 『新潮文庫全作品目録1914〜2000』 吉田勝栄
CD-ROM付の新潮文庫データベースはどこまで使えるのか
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新潮社編『新潮文庫全作品目録1914〜2000』新潮社、2002年7月30日刊、
本体6000円
新潮文庫解説目録の萌芽は,第一期新潮文庫(大正3年9月18日発刊、大
正6年6月10日終刊、全43冊)の巻末広告にみることができる。33字×2行
程度の短文で既刊・近刊本を簡潔に紹介したもので、たとえば、ゴーチエ作;
久米正雄訳『クレオパトラの一夜』の紹介文は、以下にみるとおり。
そは妖魔の如く美しき女王の恋、燦爛として孔雀の翅の如く、熱烈熱帯の
陽の如き恋の物語也。文章の艶麗と空想の霊怪を以て鳴る作者の最傑作。
昭和8年4月発刊の第三期新潮文庫(全495冊(注1))の第1回刊行本には、
巻末広告及び新聞広告に著作ごとの宣伝文が付されていた(石川弘義、尾崎秀
樹著『新聞広告の歴史』217頁参照)が、この試みは続かなかった。私の知る
限り、戦前の文庫本で解説付き目録を発行したのは岩波文庫(昭和6年〔昭和
5年11月現在〕から昭和14年、当初は『岩波文庫目録』後に『岩波文庫分類
総目録』、戦後刊行を再開した昭和27年3月現在の『岩波文庫解説目録』から、
「解説目録」という名称を用い始める。)、改造文庫(昭和14年及び昭和15年
の『改造文庫総目録』)のみで、新潮文庫は解説付き目録を発行しなかった。
昭和22年7月に刊行を開始した現行の新潮文庫(第四期)の解説目録は、昭
和28年6月現在の『新潮文庫解説目録』(注2)が嚆矢で、その後少なくとも昭
和30年2月、同年6月、昭和31年3月、の各現在のものが発行されている。当
時の内容紹介は、38字×5行程度を目安にしていた。
昭和32年9月現在の解説目録から内容紹介は38字×4行程度を目安にするよ
うになり、1981年版まで踏襲したが、1982年版からは25字×3行程度に半減し
た(現在は23字×3行程度)。
本書の基本構成は、第一期から第三期の各期別刊行記録(初期新潮文庫目録
編)、第四期の著作別内容紹介(第四期新潮文庫全解説編)、書名索引・執筆者
書誌総合索引(索引・書誌編)である。周知のとおり、新潮社には『新潮社
一〇〇年図書総目録』という高い水準の出版目録が存在しており、内容紹介を
眼目とする本書は、刊行順目録(刊行年月日等の書誌データの一部及び刊行史
年表を含む)の機能を図書総目録に委ねている(たとえば、本書のみでは第四
期の分冊本は刊行開始月までしか分からない。)が、他方、図書総目録では省略
が多い短編作品名を原則として全て収録している。したがって、新潮文庫の書
誌としては、図書総目録と本書の両者を備えて、相互に補う必要がある(なお、
図書総目録の収録期間後に刊行された新潮ピコ文庫は、本書でも採録されてい
ない。)。
内容紹介は、44字×4行程度(約175字)。現行の解説目録に基づくもので
はなく、新潮文庫のジャケット(裏表紙部分)に印刷されている内容紹介と38
字×4行時代の解説目録がベースになっているが、後者については、字数を調
整する観点から加筆がなされており、そのまま転載したものではない。
執筆者書誌総合索引はよく工夫されており、職人仕事の確かさを感じさせる
が、第三期に関する限り、書誌としての精度に瑕瑾がみられる。私の乏しい蔵
書に依拠する限りにおいても、以下の具体例を指摘できる。メリメ著;布施延
雄訳『カルメン』には、ホフマンの「ヴェニスの花嫁」が収録されているが、
本書ではその記述を欠く。また、ベラスコ著;北村喜八訳『お蝶夫人』には、ジ
ヤネット・マアクス「郭公」、ユージン・オニール「十字のあるところ」、ジョ
ン・ミリントン・シング「海へ乗りゆく者」、ゲオルク・カイゼル「クラウデ
ィウス」、アルトゥル・シュニッツレル「緑の鸚鵡」が併収されているが、本
書では全てベラスコの作であるかのように記述している。アンドレ・ジイド著;
堀口大學訳『贋金つくりの日記』には、当初「文学と倫理」が付されていたが、
昭和13年6月20日17版では削除されている(頁数も118頁に減少)ところ、
本書では、このような経緯はごくごく一部しか押さえられていない。
書誌という観点からは、『岩波文庫解説総目録』や『ハヤカワ・ミステリ総
解説目録』にならって、外国作品については、原題や原書発行年を付記してほ
しい。第三期以降の叢書番号や、第四期の整理番号についても、採録を望みたい。
付録のCD-ROM版では、ジャケットの写真が収録されており、新潮文庫の多様
な魅力を伝える試みとして、高く評価できる。もっとも、複数のデザインが存
在する書目でも1種類のみに限定するとの編集方針は疑問。たとえば、石原慎
太郎自装本には全く興味を覚えなくとも、池田満寿夫装の『太陽の季節』を欲
する読者は確実に存在するであろう。また、ジャケットに関する責任表示を検
索できない点や、(岡崎武志さんのいう「絵羽カバー」について)裏表紙部分の
画像を欠く点(注3)などは、CD-ROMの特性を生かし切っていないように思
える。
本稿では、新潮文庫の豊穣な実りは本書に収められた限度に尽きるものでは
ないという観点から、本書の刊行をよろこびつつも、さらに改訂増補する余地
がある点をも指摘した。本書のヨリ一層の充実に多少なりとも資する点があれ
ば幸いである。
注1:第三期新潮文庫は、第495編まで刊行されたが、第11編『現代世界文
学概観』は、千葉亀雄著(昭和8年刊)と春山行夫著(昭和16年刊)の2種が
ある。なお、第297編のモオパツサン著;廣津和郎訳『娼婦の娘』は、実際の
刊行を認めるに足りる証拠がないので、いわゆる幽霊本と判断し、刊行冊数から
除外した。他方、本書(及び図書総目録)の遺漏本として、第491編の荻原井
泉水著『新選井泉水句集』(昭和18年12月刊、国立国会図書館蔵)を補った。
注2:『文庫本雑学ノート』121頁に書影が掲載されている。私の手許にも3冊
あり、うち2冊には、裏表紙に小売書店のゴム印(麻布六本木角誠志堂本店と
杉並共榮堂)が押してある。本書所収の「『新潮文庫』出版史」(紀田順一郎)
で、昭和32年版を最初の解説目録としているのは誤り。
注3:口絵では、「背と後面まで使った一枚絵」のジャケットの例が示されて
いる。
(よしだ・かつえい) 改造文庫(『ニッポン文庫大全』)、近代文庫(『ARE』
7号)、山本文庫(同誌10号)の目録を作成。そのほか、書誌、出版史を中
心に、若干の書評(『sumus』2号等)と文章を執筆。
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■かねたくの読まずにホメる 金子拓
(2)青土社の小説、エトランジェの小説
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多和田葉子『容疑者の夜行列車』青土社、2002年7月、1600円
私は多和田葉子の作品をまったく読んだことがない。情けないことにどんな
作風の小説家なのかも知らない。よく訪問する読書サイト複数でときおりお名
前を目にすることからすれば、おそらく自分の好みから大きくかけ離れている
作風ではないだろう。その程度の認識でしかない。にもかかわらず本書を購入
し、期待しているのは次の二点の理由による。
第一は版元が青土社であること。青土社は申すまでもなく『ユリイカ』『現代
思想』の二誌に代表される出版社である。同社の単行本はだいたいこれらの雑
誌に連載されていたものが多い。すなわち、詩、エッセイ、文芸評論、現代思
想関係の本を出している出版社というイメージである。
そのなかで、たとえば『ユリイカ』にまれに小説も連載され、それらが単行本
にまとめられる場合がある。元来が詩の雑誌であり、特集をメインにして連載
も評論などが多いことを考えれば、そこに小説が連載されているという時点
で、その小説は編集部によって精選された作者による入魂の作品という匂いを
濃厚に漂わせている。最近でいえば堀江敏幸の『おぱらばん』がその代表であ
ろうか。
第二に、このところ個人的に“エトランジェ物”といったジャンルの文学作品
が気になっていること。“エトランジェ物”とは私が勝手に名づけたジャンル
だが、外国に滞在(あるいは旅行)した日本人による生活体験、また、異国で
味わう違和感といったものを主に小説で表現している作品のことを指す。前述
の堀江氏の一連の作品をはじめ、最近では藤田宜永の『巴里からの遺言』(文
春文庫)・『壁画修復師』(新潮文庫)などが印象に残る。先駆的作品は荷風
の『ふらんす物語』『あめりか物語』だろう。
しかも本書は堀江・藤田両氏が舞台に選んだフランスだけでなく、中欧・東
欧、さらに中央アジアも舞台になっている。本書は買った時点で私の“エトラ
ンジェ物”コレクションのリスト入りしているのだった。
〈かねこ・ひらく〉サイト「本読みの快楽」で、読書日記「読前読後」のほか
「東京物欲見物欲日録」「極私的東京本集成」などを書きつづっている。掲示
板では、本に関するディープな情報交換が行われている。本業は日本史研究者。
最近読みたい本が多すぎて供給過多になり、頭の中がパニック状態になってい
ます。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~kinko/index1.htm
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■新刊書店の奥の奥 荒木幸葉
(2)書店のカバーはナンのためにあるの?
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書店員になるまで、なんでブックカバーをかけるのか、わかりませんでした。
だって、ほとんどの本は色とりどりの表紙でおおわれていて、さらにそのうえ
に、となると、二重に本をくるむことになるから。本を読むときは、もさもさ
するのがイヤで、帯も表紙も全部はぎとってしまうので、そう思っていたのか
もしれません。
ところが実際、店頭にでてみると、お客さんの大半が、「カバーをかけて下さ
い」とおっしゃる。特に、ハヤカワのポケミスにかけるのは、衝撃でした。ビ
ニールのカバー、ついてるのに。恐いのは、ハーレクイーンの発売日。10冊以
上まとめ買いされる方が多く、「全部カバーおねがいね」などと金歯のおばち
ゃんにすごまれると、ただでさえかけにくいペーパーバック状の薄い表紙を前
に、もたついてしまう。サラリーマンのおじさんが、『沈まぬ太陽』や『右脳
トレーニング〜』にサンドイッチして、『女薫の旅 激情たぎる』なんてのを持
ってきたら、カバーの有無を聞くような野暮なことはせず、黙ってチャッチャ
とみんなかけてしまう、などなど。
カバーが必要な理由としては、おもに1)本を汚れやキズなどから守り、大
切によみたい、2)人に見られると恥ずかしい、の二つが考えられるけれど、
表紙の手ざわりも関係あるのでは、とひそかにおもっています。例えば、文春
文庫や岩波文庫といった、表紙に光沢があり、コーティングされている本は、
長時間持っていると、体温がじんわり伝わって、手の油や汗でぬるっとするこ
とないですか? 書店のカバーの紙は、ザラザラしているものが多いので、そ
んな”しっとり”を吸いとる、油とり紙のような役割もしている気がします。
そのほか、”俺流カバー術”をカウンターで御指導くださる方も、ときどきあ
らわれます。カバーの折り返し部分をセロテープで直角にとめてくれと、自ら
テープカッターに手を伸ばし、びしばし四隅を貼っていく人、折り返しの袋状
になったところに、本体を差し込んでゆく人、切り込みをいれて小細工するか
ら、糊とハサミを、という人など、さまざまです。
ところで、私の担当フロアで扱うカバーのサイズは、大きくわけて、文庫、新
書、ハードカバーの3つなのだけれど、その隙間をぬうような大きさのもの
(ライブラリー、耽美ノベルスなど)を含めると、あわせて8種類あります。
瞬時にこれらの大きさを判別し、それぞれにかけるのも大変だけれど、8種
類のカバーを数ミリ単位で折りわけるのもワザが、ということで、そのあたり
の実践編はまたこんど。
〈あらき ゆきよ〉書店員。じつは、カバー折り作業のレベルはバイト以下。
年に数回しか折っているところ、見たことないと、周囲よりブーイングの嵐。
かけるのは、すきなんだけどな。
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■私のsome day本 夷蔵(『彷書月刊』編集部)
その3 本当に好きな作家の本を完読できない理由とは?
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牧逸馬『浴槽の花嫁』現代教養文庫(社会思想社)、1975年
好きな作家の作品を、すべて読んでしまうことって、恐くないですか。恐く
ないですよねえ。面白い面白いと読んで、気づくとたいがい読んでしまってい
る。え、この人の本、もうないの、どうしよう。そんなことが二、三度あって、
いつのまにやら僕は、本当に好きな作家の本は、まだすべての本を読んでいな
い状態でも、アンパイとして一冊、未読のままとっておく習性がついてしまっ
た。しかも、全作品を明確に把握しないままだ。ああ、バカバカしい。そして
恥ずかしい。
この愚行は、1)読み切れていないので、その作家について語れない。2)残
している作品がそれほど面白くないかもしれない。3)未発表作品が発見される
かもしれない(発見しようという気概があればいいのだが)。など、さまざま
なバカ要素を含み、未熟者ををますます小さくしているのだが、悲しくもやめ
られない。
牧逸馬はご存知、本名・長谷川海太郎、谷譲次、林不忘のペンネームでそれ
ぞれの仕事をしている作家。僕は、林不忘名義「寛永相合傘」という短編から
入り、ずいずいと読み進み、『猶太人ジュス』など訳書にも触れてみて、手元に
残る未読本は、とうとうこのメジャーな表題作の文庫一冊になってしまった。こ
の中にも、読んでしまったものが入っているし、図書館には未読本がまだある
ようだが「いつか間違って読んじゃうかもしれない」と、封印してある。ホン
ト、バカ。
太く短く生きようとする人が多い業界なので、僕も「長生きしようなんざ、
思ってないっすよ」と、いちおう啖呵をきっているが、小さい僕は小さく生き
て「ケツの青いじじい」になるのも面白いかな、とも思っていて、老後の楽し
みにはうってつけか。長いスパンの「炎天下→風呂上がりのビール」といった
ところでしょうか。もはやsome day本というより「はやにえ」本。濡れちゃっ
たり、燃えちゃったり、ボケちゃったり、死んじゃったり、明日のことはわから
ないのに。えいっと読んでしまえばいいのだが、何年も寝かせておくと意地も
出てきて、「関東のひとつ残し」に似てくるのでした。東北人なのに。
以上、三回も、こんなバカにおつきあいいただき、ありがとうございました。
〈夷蔵〉1970年生まれ。父親の転勤について東北地方を転々、大学時から東
京に住み着く。肉体労働して中国をぶらつくのに飽きたころ、編プロに入社。
その後、古書情報誌『彷書月刊』に拾ってもらう。古本道修業中。楽しい。
http://www3.tky.3web.ne.jp/~honnoumi/
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■あとがき
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今回の「南陀楼綾繁のホンのメド」は、自分が関わった企画に偏ってしまい
ました。いまはメディアの喚起力が弱まっていて、たとえば雑誌にイベントの
告知が載ったとしても、動員にはあまり結びつかないのがアタリマエになりつ
つあります(新聞書評も同じ)。となれば、ナンとしても成功させたい企画に
ついては、多少うるさくともしつこく告知するしかない。というワケで、しつ
こく「sumus」フェアを宣伝させてもらいました。私物化御免。みなさんのア
ンケートもお待ちしております。 (南)
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