2002.9.20.発行 vol.85 [裏がいっぱい 号]

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■■ [書評]のメルマガ                             2002.9.20.発行  
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■■   mailmagazine of book reviews       [裏がいっぱい 号] 
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■コンテンツ
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★トピックス
→『夜と霧』が大変なことに!

★「こんな本をエイギョウしたい」/小林圭司
→スウェーデン人ジャーナリストから見た、サッカーと日本の姿とは?

★「どこでも読書」/オオウラウタコ
→レベッカ・ブラウン待望の新刊! 作家への愛がひしひしと感じられる
書評です

★「あなたはこの本をしっていますか?」/畠中理恵子
→多忙につき今回はお休みです。スミマセン

★「ベストセラーに背を向ける」/朝日山
→ソ連利権に揺れる三井物産と重なり合うような傑作小説の紹介です。
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■トピックス
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●『夜と霧』の新訳がでます!
ナチスのユダヤ人虐殺を扱った名著として、人文書でも異例のロングセラー
を続ける『夜と霧』の新訳が出版されます。訳者は、『ソフィーの世界』や
『世界がもし100人の村だったら』で名高い池田香代子さん。本体価格
1,500円で11月5日刊行の予定です。これは今年下半期最大の話題
になりそうです。
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■「こんな本をエイギョウしたい」/小林圭司
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今回よりこのコーナーはこんなタイトルで、営業マンの鋭い視点から話題の
本をバッサバッサと斬って斬って斬りまくります。
というのは大ウソで、そもそも前回編集人氏が書いてくださった著者紹介の
訂正から始めなければなりません。
私はそもそも辣腕でも人気でもないトホホな営業マンで、上で書いていらっ
しゃるオオウラさんや次号の荻原さんに下僕として扱われている存在です。
そんな日々の鬱憤を晴らすべく(?)好きな本だけを好きなように取り上げ
させていただきますので、みなさんどうぞ寛容にお付き合いください。

というわけで大好きなサッカーネタを。

世間がチャンピオンズ・リーグだのセリエA開幕だのと浮かれているときに
ワールドカップを振り返るなんて、なんだかとても間の悪いことをしていな
いか?と突っ込みたくなるタイミングで出た『サッカー批評』の最新号。
季刊誌だからこうなった訳ではなく、確信犯でこうしてしまう、しかも内容
はいつも通り誠実なのだから本当に頭が下がる。
ついでなんでワールドカップのことを思い返してみるのも悪くないなあ、と
考えていたところに出てきたのが、今回紹介させていただくこの本だ。

『日本発見』 ステラン・ダニエルソン著 アミューズブックス刊 
1500円

この何の本だかわかりにくいタイトルは書店泣かせである。
著者は外国人、富嶽三十六景をあしらった装丁、中には日本の風景写真多数、
Cコードといえば0095という批評・エッセイに広くつけられる番号なので助
けにならない。
で、旅行ガイドのところに置いてしまうお店が多いのも仕方ないのかもしれ
ない。
でもこれはサッカー本だ。
表紙をよーく見ると、フィーバーノヴァが3つも写ってるでしょ。
著者のステラン・ダニエルソンさんは自身もプロ選手としての経歴を持つス
ウェーデン人のジャーナリストで、同郷のスベン・ゴラン・エリクソン英ナ
ショナルチーム監督とも親しいというすごい人だ。
なのにワールドカップ期間中、日本に滞在してつづったこの日記では、ひた
すら人のいいおっちゃんである。
あまりに率直でこちらが恥ずかしくなる箇所多数だが、心あたたまる、とて
も感じのよいサッカー本だ。

ステランさんは初めグループリーグのみを取材するつもりで日本を訪れる。
だが、日本と日本人が大好きになり、結局1か月以上も滞在することになる。
日本人の礼儀正しさ、日本食のおいしさ、ホームステイ先の家族の親切さ、
大会運営のすばらしさをひたすら誉めまくってくれる。
この本のほとんどはそんな内容だ。
なんじゃいただの旅行記か、ガイドコーナーであってるじゃないかと思われ
そうだが、いやいやちゃんとサッカーの極めて常識的な考え方に基づいて、
いろいろ正しいことを言っている。
横浜国際が最低のサッカースタジアムだということとか、日本代表はスピー
ドと技術のある魅力的なチームだが、体力に問題があり精神的にもヤワで、
厳しい試合を勝ち抜いていくタフさに欠けることとか。
ワールドカップが終わってからJ2大宮−大分戦を見に行き、祭りの華やか
さのない日常のサッカーも、サッカーのピラミッドの重要なパートであると
いうことをちゃんと言ってくれているのが、某横浜地方の弱小J2チームを
応援している私としても大変うれしい。

新会長や新代表監督や安貞恒で浮かれっぱなしの日本サッカー界。
一方で強引な監督人事、技術委員会の御用機関化、U17アジアユースでの
グループリーグ敗退など、肝心なところで不安を感じさせることが多い。
スウェーデンというサッカー伝統国の気さくなおっちゃんのエッセイは、
サッカーをより楽しむため、サッカーをよりよいものにするためにどんな態
度でいればよいのかを、さりげなく教えてくれているのだった。

http://da.amuse.co.jp/

<小林圭司 出版社営業部員 33歳 好きなジャンル 翻訳小説とサッ
カーとカレー?>
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■「どこでも読書」/オオウラウタコ
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「私たちがやったこと」レベッカ・ブラウン/柴田元幸訳 マガジンハウス

よーやっと、レベッカ・ブラウンの新刊がでました。ウハー。

ほとんど雑誌・アンソロジーに初出がある(一編、訳しおろし?有りマス)
短編集ですが、どれも大災害にあったような気持ちにさせられた話ばかり。
それらが作者の名前の元に一冊の本になったのですから、この最強感たるや
ございません。

どれも「何で、アノコトをこんな風に書いちゃうんだろう?」と衝撃を受け
たのですが、私は特に「アニー」にノックダウンでした。
昨年「鳩よ!」に掲載されたのを読んだ時は電車で号泣し、その後思い出し
泣きもし、作者来日時なんて、書けもしない英文で手紙を書いたりしてね。
(↑あんなわけわからん物渡されるだもん、作家って大変だよ、って代物)

「アニー」、短編なんでスジを紹介するのも何なんですが、簡単にいうと
「くまのプーさん最後のページ」の成人女子版とでもいいましょうか?
登場人物はカウガール・アニーと私。(本当に二人出てきてるのかは確かめ
てくださいね)
かつての無垢の記憶を握りしめたまま、独立心を持って生きようとすること
についての痛みや何かを声高にでなく正確に提示している小説。

主題が「カウガール」ってのがまた酷くて、過去に聞いた、読んだアメリカ
の西に関するやるせなさに満ちた知識(わかりやすい所では「ホテル・カル
フォルニア」とでも言っておきましょうか?)が襲ってくるしくみになって
います。

などと説明するだけでいろいろ損なわれそうで不安。
よくある話と思わずに読んでくださいませ。

今回は初回入荷数では物足りなかったので、即追加。
売場に出した次の日にコレを書いてるので、売れ行きはまだ不明。
ですが、前回の「体の贈り物」(”エイズ患者のホームケア・ワーカーを主
人公とした連作短編集”といった通りのいい骨格があった)と違ってレベッ
カ好き以外がどこまで買ってくれるのか不安。

とはいえ、この本を売るのを生業としてる、と言える私は幸せッス。

http://www.magazine.co.jp/

(オオウラウタコ 超美人妻書店員 年間読書量50冊? スキなジャンル
小説とか)
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■「ベストセラーに背を向ける」/朝日山
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なぜ今、三井物産なの?
「ロシア黙示録」熊谷独 文藝春秋

日本ハム、東京電力など、企業モラルを問われる不祥事が続出している。中
でもひどい言われ方をしているのは三井物産だろう。たたがと言ったら語弊
があるが、政府関係者へのわいろなど日本では日常茶飯事。毎年のように市
長やら知事やらと、カネを渡した大企業の社員が捕まっている状態なのに、
なぜ三井物産だけがアエラに「潰れる」かのように書かれるのか、理解に苦
しむ。

企業存亡の危機にあるというなら、三井物産より日本ハムの方がよほど危な
かったはず。なのになぜ、三井物産だけがああいう言われ方をするのか、私
は非常に興味がある。そんなころ合いに、タイミング良く出されたこの小説、
真実の手がかりを探りたい人にはぜひとも勧めたい。

著者の熊谷独は、東芝機械のココム違反事件をモチーフにしたサントリーミ
ステリー大賞受賞作「最後の逃亡者」でデビュー。ソ連の暗さ、救いのなさ
を、これでもか、これでもかと圧倒的な迫力で描ききり、小説読みの度肝を
抜いた。特に凄みがあったのは細部描写で、当時のサントリーミステリー大
賞審査員、夏樹静子は「KGB本部や軍事工場内部等々がディーテイルまで調
べつくした自信に裏打ちされたような文章」と評した。

いやいや、違うんです、夏樹さん。この人は、「ような」じゃなくて、実際
にソ連の軍事工場でココム違反の機械を据え付けてきた人なんです。ついで
に言うと、ココム委員会にこの件を告発した張本人でもあったのです。

長年ロシア貿易に従事し、その裏表を熟知している人が、ぜひとも書きたい
が、そのまま書けば自分どころか周囲にも危険が及ぶため、小説と言う形式
を選択して書かれたのです。それも、おそらく、いざというときのために、
KGBが調べても絶対に見つけられない人物に、自分が殺されるときのための
手はずを依頼しての執筆です。小説を書く前、ココム事件の総括として彼か
書いた「モスクワよ、さらば」は、少なくともそうやって書かれたのです。

命がけのデビュー作が、いきなり直木賞候補になったのも、むべなるかな。
しかし「最後の逃亡者」の後、三作の作品が出ているが、やはり怖くなった
のだろうか、あるいは脱力したのか。ロシアと関係のない「瀬戸内少年物語」
を除く、彼のロシアもの二作はボルテージが落ち、商業的にも決して成功は
しなかった。しかし、熊谷独は死んではいませんでした。再び我々を瞠目さ
せる作品を書き上げる助走に入ったようです。それがわかるのが、これ。し
かも時期が時期だけに、タイミングが良すぎる。

今を描くプロローグの後、主な舞台はブレジネフが書記長だった60年代の
モスクワに移る。四十年前の日本人商社マンは、どこもウクライナホテルで
自炊していたとか、ソ連の米にはいつも石や泥が混じっていて、米を食べた
きゃ研ぐ前にごみ取りをしなければならなかったとか、当時のロシア駐在商
社マンがどんな生活をしていたのか詳しく描かれる。

ソ連流アメとムチの実態も描かれる。赴任してくる新任の思想調査を露骨に
やって、自分たちの思うように動かせる人間しか入れない。それでも送り込
んでくれば駐在事務所の設置許可の更新が下りないなど、とにかく自分たち
の思いのままになる会社や人間だけを重用し、儲けさせる。

彼らが要求するのは、ココムに違反する禁制品の輸入だ。商社は、日本政府
などにばれないように輸出しないと、おいしい仕事にありつけないどころか、
強制的な撤退すらさせられる。そんな中、「真面目に」禁制品を輸出する商
談を済ませた主人公坂本に、ソ連貿易公団の担当者セロフとグズネツォフは、
実際の値引き額15%を10%で契約したことにして、五パーセント分をドイツ
に持ちだして自分たちに渡せという。

外国での工作資金になる裏金を作れというのか?いやな仕事だと思いながら
も、坂本は彼らの言う通りに24万ドルを用意してドイツで受け渡しをするが、
坂本らへのキックバックだと言ってグズネツォフは4万ドルを置いていった。
まさか着服するわけにもいかないから、4万ドルをもって坂本はソ連に戻ろ
うとするが、やばいカネだと思って隠していたのが災いして、モスクワ空港
税関で捕まってしまう。

さて、困った……裏がいっぱいある国だけに、へたに正直に事情を説明する
と、後でどんな目に遭うかわからない。それで否認していると、どうやらグ
ズネツォフがカネを持ち逃げして亡命したらしい。するとオレは亡命幇助の
罪になるのか。これは外貨持ち込み違反程度の罪ではないぞ。西側と違って
弁護士も呼べなければ、会社との連絡もつけられない。これは下手をすると
日本に帰れない。どうする……

まじめな商社マンが、この苦境をどうやって切り抜けるかが読みどころだが、
この作品に「最後の逃亡者」にあった壮絶なアクションは一切ない。血わき
肉躍るようなところも全くない。あるのは、ただソ連という国がどんな国な
のか、淡々と描いているだけだ。しかし、それでも読ませていくのは、この
作家が昔から持っている細部描写の的確さと、やはり自分で体験した者にし
か書けない、ある種の感情が投影されているからだと思う。外国の作家で言
えば、ル・カレに多少似てきていると思うが、気のせいかな?

だからというわけでもないだろうが、クライマックスは暗い。癒しを求める
人には勧められない。しかし、三井物産のみならず、共産圏と取引している
商社は、多かれ少なかれ、ここで描かれているような仕事をしてきた。もち
ろん日本だけでなく、外国の商社も同罪だ。そうした事実に対する価値判断
はひとまず横に置く。

なぜ今、三井物産の事件だけが表面化したのか。部外者の私には全くわから
ないが、何か裏があるような気がしてならない。なぜそう思うのかは、この
小説を読んでもらえればわかる。もちろん、私の見方が正しいという保証は
ないのだけど……

http://www.bunshun.co.jp/

(朝日山 烏書房付属小判鮫 37歳 好きなジャンル 何だろ?)
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■あとがき
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>最近、フィットネスクラブに通っているんです
>おやまあ、見るからに軟弱そうな文系タイプなのにどうしちゃったんです
か?
>いや、腰痛がひどいんで、体でも鍛えてみようかと思いまして……。プー
ルで泳いでいるだけなんですが、なかなか気持ち良いですよー
>あ、もしかして、水着のおねーちゃんとか期待して行ってるんじゃないで
しょうね(笑)
>う、ばれたか(笑)。しかし、僕が行っているのって昼間の会員で、予想
はしてたんですが、じっちゃん・ばっちゃん・おばちゃんの大群がいるだけ
なんです、シクシク。でも、筋肉もりもりのじいちゃんとかいて、これから
の老人はパワフルだなーと思いました
>確かに団塊の世代もそろそろ五十半ばを超えるし、これから日本は脂ぎっ
た超パワフル老人天国になるかもしれませんね。軟弱な若者とか、カツアゲ
とかされちゃいそう(笑)
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