2002.9.30.発行 vol.86 [心の奥をかきむしる 号]

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■■ [書評]のメルマガ                            2002.9.30.発行  
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■コンテンツ
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★トピックス

★「極私的読書日記」/石飛徳樹
→日本のノンフィクションを変革した沢木耕太郎氏の魅力を取り上げます。

★「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
→井上章一氏の出世作、『つくられた桂離宮神話』を取り上げます。

★「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
→男も女もモテてモテて困っちゃうの、モテ本の研究! 今回も超傑作です。

★「本の香りだけ」/守屋淳
→コミックでこそわかる政治の姿、いやらしさ、権謀術数とは。

★読者の方からの投稿
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■トピックス
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●「芸術村で詩を語ろう」のイベント
今年の11月2日(土)3日(日)4日(月)の三日間、秋吉台国際芸術村
と思潮社の共催で、『芸術村で詩を語ろう』というイベントが秋吉台で開催
されます。谷川俊太郎、吉増剛造、大岡信、荒川洋治、入沢康夫など、日本
の代表的な詩人が総結集します。セミナー参加料2万円、宿泊・食事代1万
7千円(二泊三日)。
お問い合わせ、お申し込み―思潮社<芸術村で詩を語ろう>係
TEL03−3267−8141
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■「極私的読書日記」/石飛徳樹
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「沢木耕太郎ノンフィクション」第1巻「激しく倒れよ」
沢木耕太郎著
文芸春秋・1905円

「沢木耕太郎の文体に似ているものは……」

 沢木耕太郎は日本のノンフィクションの文体を変えた。
 いや、文体を生み出したという方が正確だろう。
 彼が22歳でデビューした1970年以前、日本人はどんなノンフィク
ションを読んでいたのだろう。
 現在、私たちが読んでいるノンフィクション、特にスポーツノンフィク
ションと呼ばれる分野は、ほとんどすべての文章といってよいくらい、彼の
文体を踏襲している。
 彼の文体に反発を感じる気骨あるライターが新しい独自の文体で書こうと
することはある。しかし、沢木文体の引力から脱け出せた人間は、寡聞にし
てまだ知らない。
 このほど文芸春秋から刊行が始まった「沢木耕太郎ノンフィクション」全
9巻の第1巻を読んで、今更ながらそんな感慨に捕らわれた。

 全9巻は、スポーツ(短編、長編)、人物(短編、長編)、社会(短編、
長編)、紀行(短編、長編)、観戦記と分けられており、それぞれ、沢木自
身が選んだ作品が収められている。
 その中には、「深夜特急」や「一瞬の夏」といった代表作から、ジャンボ
尾崎について書かれた「儀式」などの単行本未収録作品までが入っている。
 各巻の中では年代順に並べられており、テーマやアプローチの仕方の変化
などを知ることが出来る。
 また、作品1本ずつに、現代の沢木が当時を振り返って、執筆の動機や経
緯などをコメントしている。

 いま発売中の第1巻はスポーツ(短編)。
 「激しく倒れよ」と題されている。
 競馬のイシノヒカル、ボクシングの輪島功一、大場政夫、マラソンの円谷
幸吉、プロ野球の榎本喜八(と思われるEという人物)らが被写体になって
いる。
 沢木耕太郎という名前が最も君臨しているジャンルである。
 「number」などの雑誌は沢木が登場しなければ存在さえしなかった
だろうし、新聞のスポーツ面にも、沢木節が蔓延しているのがひと目で分か
る。

 私は冒頭で、「沢木は文体を生み出した」と書いたが、今回読み直してみ
て、彼に先行する文章のなかでただ一つ、よく似ているなあと気づいたもの
がある。
 それは、アメリカのハードボイルド小説である。
 もしかすると、もう誰かが指摘しているかもしれないが、沢木のポキポキ
した硬質な文体は、ほかに手本が見あたらない。
 しかもそれは、ハードオンリーのハメットではなく、どちらかというと、
ハードのなかにウエットな部分が垣間見えるチャンドラーに近いように思え
る。

 チャンドラーの最大の特徴は、人のさりげない仕草行動や趣味嗜好の描写
のなかに、人生の機微をさりげなく織り込むことである。
 沢木の文体もそこが大きな魅力になっている。
 例えば、長嶋茂雄の陰で消えていった巨人の難波昭二郎について書かれた
「三人の三塁手」の中の一節。
 難波には「プロとして大事な何かが欠けていた」と指摘し、それが大成し
なかった原因であると冷徹に分析してみせた後、こう締めくくる。
 「しかし、それは、大事な何かを持っていたということと同じなのだ、プ
ロスポーツ以外の世界で生きるための……」
 こういう文章を読まされた時、私たちは心の奥をかきむしられたようにし
びれが走るのだ。

文藝春秋 http://www.bunshun.co.jp/

(石飛徳樹 朝日新聞名古屋本社学芸部記者 39歳 年間読書量100
冊 好きなジャンル・文学)
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■「面白すぎて、♪どうにも止まらねぇ!」/ミラクル福田
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「日本の美をめぐる謎解きエンターテイメント」

『つくられた桂離宮神話』 井上章一 講談社学術文庫 本体価格860円

 つい先日(といっても5月頃)、リニューアルされた朝日選書の第1弾と
して、井上章一の『パンツが見える。』が刊行された。

「どうして男はパンツが見えるとうれしくて、女はパンツを見られると恥ず
かしいのか」ということを真面目に考えた妙な本だ。井上章一の研究対象は
幅広く、法隆寺から桂離宮から霊柩車やラブホテル、そして二宮金次郎の銅
像からパンツまで。井上章一がアンテナでどんなものをキャッチするのか、
目が離せない。その出世作が『つくられた桂離宮神話』だ。

簡単に「桂離宮」を説明すると、
桂離宮は、京都駅の西、桂川を超えて4キロほど進んだところにある宮殿。
17世紀のはじめに、豊臣秀吉の猶子となった親王により別荘として造営され
たが、明治の中頃に離宮として宮内庁の管轄となった。「日本の美の典型」、
「美術・建築の精華」といわれ、この素晴らしさがわからないと、「日本の
美を理解できない人」と見なされてしまう、らしい。

 この桂離宮へ、若き日の井上先生は、美的感動への期待に胸をふくらませ
て訪れた。が、まったく感動はなかった。美しいといわれているものを見て、
美を感じられない自分。その自分にがっかりしてしまったという。
 しかし、ここからが井上先生のすごいところで、どうして感激できなかっ
たのか? そもそも、桂離宮はいつから日本美を代表する建物になったのか、
追究を始める。井上版「わからないという方法」だ。

そもそも桂離宮が「日本の美の象徴」になったのは、昭和の初期に来日し
たドイツ人建築家ブルーノ・タウトが、桂離宮を称えたことから。タウトは、
東照宮のコテコテの装飾を嫌って、数寄屋造りの簡素さを絶賛した。
しかし、この絶賛した言葉が、おそらくタウトも思いもよらない方向に動
き始める。建築界の勢力争いに巻き込まれて、さらには高揚するナショナリ
ズムにもあおられて、いつのまにか「桂離宮=日本の美の象徴」のお墨付き
の言葉となってしまうのだ。

井上先生は、どのように「桂離宮神話」がつくられていったか、ひとつひ
とつの事実を提示しながら、薄皮をはぐように、要因を一枚ずつ丹念にはい
でいく。「どこでこんなに文献を探したのだろう」と思えるほど膨大な数の
文献の、細部にわたった引用は、門外漢でもうならざるを得ない。「探偵!
ナイトスクープ」の岡部まりと西田敏行に、探偵に任命するようにお願いし
たいくらいだ。学術的な内容なのに、充分エンターテイメントであるところ
がすごい。

 この本が刊行されてからの後日談(文庫版あとがき)がまた、「桂離宮神
話」が現代にまで、どれだけ深く根ざしているかを改めて実感させるものと
なっている。なんと、この『つくられた桂離宮神話』は、建築学会から黙殺
され、井上先生も、学会を退会してしまうのだ。

 なんとも、「まえがき」から「あとがき」にいたるまで、面白くないとこ
ろがひとつもない、珍しい研究書だ。

http://www.bookclub.kodansha.co.jp/

(ミラクル福田 某人文系出版社編集 31歳 年間読書量80冊弱
好きなジャンル 文芸・芸能)
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■「あんな新刊こんな新刊」/荻原千尋
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皆さんこんにちは。
今月の本屋は「海辺のカフカ」のことで大忙し。
お客様だって上下本購入後は、小説に対する読書意欲もそがれているはず。
他のジャンルでガンガン売れる物はないかしら?ということで、
今月私が販売努力して見たのは、
「愛させる技術」(デイビッド・コープランド/ロン・ルイス著 小学館プ
ロダクション刊)なのでございます。
この本はタイトルの通り、女性のための恋愛マニュアル。
昨年同じ版元から出版され、じゃんじゃん重版がかかった
殿方用のモテマニュアル、「モテる技術」(著者、版元は上に同じ。この露
骨なタイトルがたまらないっす。)の第2弾です。 
私は、このいわゆる「モテ本」というジャンルが意外なまでに大好き。
なんといってもロングセラーが多いし、
品揃えと展開の仕方しだいでかなり売行きのいい棚になるから、
ついつい気合が入ってしまうのです。

女性のためのモテ本は、それこそ毎月のように出版されていますよね。
でも男のためのモテ本は、「ゴトー式ナンパの赤本」だとか、
「ホストの実戦心理術」だとか、「完全ヒモマニュアル」だとか、
プロの方がその職業体験からお書きになったものや、読んでいるところを人
に見られたらまずい感じのもの(知り合いの男が持っているのを見たら、ま
ちがいなくネタにしてやりますね、私なら)が多くて、
今一つ堅気の男性には手に取りにくい面があったと思います。
 ところがこの「モテる技術」、黒地に白抜き文字のそっけない装丁といい、
著者の「カリスマ・デーティングコーチ」(笑)というわけのわからない
肩書きといい、限りなくビジネス書ちっく。
万一買っているところを知り合いに目撃されたって笑ってごまかせそう。
出会いから勝負デート、別れまでを具体的かつ懇切丁寧に指導。
バタ臭い表現もこんな本を読んでまでモテたい自分のミジメさを軽減してく
れるはず。
まあ、とにかく一度目次だけでも目を通していただきたいですわ。

 そして「愛させる技術」です。うーん、でもさ、女のためのモテ本は、
とにかく激戦だもの。「モテる技術」と同じようには売れないよなあ、
とチラシを見たときには思った私ですが、目次部分を見てガゼンやる気にな
りました。
・ 服装メッセージの四大ポイント
・ 自信のある女性になれない4つの言いわけ
・ 声をかけるときの3ステップ
・ 毎日男性と出会える場所ベスト5
(1位は本屋ですって。それは嘘でしょー!)
なんて具体的なのかしら? これなら私も明日からモテモテかも!

 今まで出版されてきたモテ本って、
「美しいプロポーションを保ちましょう」だとか、「彼に不満を言ってはダ
メ」だとか、「エレガンスを身につけて」だとか…、
できれば苦労しないんだよっっ!って怒鳴りたくなることがやたら書いてあ
るのが本当にむかつく。
さらにうざったい本では、「相手を思いやる気持ち」だとか、「心の美しさ」
だとか…、かなり萎えますね。役に立たない事この上ない。それでも売れる
から本屋にとっては素敵なんだけど。
モテ本界の女王様的存在の「ルールズ」(kkベストセラーズ)は、
そういうつまんない精神論を極力排除した所に新しさがあったんだけど、
? 男子のことは追っちゃダメ。タカビーなくらいでちょうどいいの。
? 結局は女らしいふるまいの女子が勝利を収めるのよ。
結局はこの二つに焦点が絞られていているんですよね。
そんなことできるわけない…。モテるためには人格をかえろってことか?
その点、「愛させる技術」には、「モテる技術」同様の懇切丁寧さに加え、
デートの場所の選び方からラブレターの書き方、振られた時の対処法まで、
本当に実行できそうなことがいっぱい書いてある。
「非現実的なアドバイスはしない」ってはっきり書いてあるのも頼れる感じ。
恋愛本にありがちな「甘やかな感じ」「素敵な感じ」が全くなく、
とにかく努力!努力あるのみ!というスタンスなのです。

それにしてもこの本、何かに似ている、と思ったら…、
「机の上の整理術」の本。構成や帯の文句がそっくり。
読むのは簡単だけど、実行するのはすごく大変ってことも、
同じなんだろうな…、きっと。

それではまた来月。

(荻原千尋 美人カリスマ書店員 カレーが大好きという噂)
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■「本の香りだけ」/守屋淳
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『票田のトラクター 五輪見参』ケニー鍋島・作 前川つかさ・画 小学館

「ナショナリズムに熱狂する人と、そこから儲けを引き出す人」

かなり昔、この書評で『票田のトラクター』『新・票田のトラクター』とい
う二つのコミックを取り上げましたが、今回は、その続編となるシリーズを
ご紹介します。

このシリーズは、もともと小沢一郎に擬せられた主人公が活躍する姿を描い
たものです。作者が小沢一郎に近いジャーナリストであるため、やや、主人
公が格好良すぎるキライがありましたが(笑)、今では有名になった「公共
事業のばら撒き→土建業者による集票」といった構図や、一億円を誰にも怪
しまれずに持ち運ぶ方法、政界のさまざまな権謀術数といった迫真の描写が
時々の政局とともに描かれていて、とても見事なものでした。

そして、本シリーズ。前作の最後で主人公が病気引退してしまったため、今
回からその秘書だった筒井五輪が代議士となり主人公として話を引っ張りま
す(やはりある部分、小沢一郎に擬せられていることに変わりはありません)

今回の読み所も、やはり時局にともなった政界の権謀術数の数々。現首相や
現閣僚に擬せられた人物が続々登場し、さもありなんと思わせる政治の裏側
をこれでもかという筆致で描いていきます。

その中で、ある外交施政について思わずウーンとうなった指摘があったので
ご紹介しましょう。

ときは同時多発テロの直後。主人公の筒井五輪は、意気投合した財務省官僚
に対してこんな問いかけを発します。
《アメリカは、日本から戦費を吸い上げる気なんだろう?》
財務官僚は、特命を受けてニュヨーク・ウォール街の動向調査から帰ってき
た所でした。彼はこう答えます。
《当然でしょう。だから、こっちはそこを逆手にとるにはどうするかを探る。
それがボクの任務です。》
《わるい、オレ、まだよくわかんねー。》
すると、筒井五輪の秘書が官僚の真意を察して、こう口をはさむのでず。
《つまり、アメリカの戦争をとことん利用して、日本が戦争特需を得るには
どうするかという……》
《そう!!》
《危ねー賭けだぜ、そりゃ。日本が特需を得たい。アメリカにそう感づかせ
ないために自衛隊艦船の派遣だの、新法だのと、無理をやってるわけか?》
《ということになりますか。》

テロ後の小泉首相や政府の行動には、いろいろな論評がなされましたが、こ
の会話はもっとも説得力のあるものの一つに感じます。戦争とは良くも悪く
も関係する国家の国益の道具(例え当事国でなかろうと)である側面があり、
この会話は見事にその本質を突いているからです。

現在のアメリカは、戦争への過剰な熱狂にとらわれている面があります。だ
からこそ、それを「うまく利用してやろう」と狙う第三者が出て来てもおか
しくないのです。ある対象に熱中している人――例えばマニアやオタクと呼
ばれる人は、金に糸目をつけないため、格好の商売の対象になりやすいのと、
ちょっと似た構図になるかもしれません。「誰でもいいからぶん殴ってや
る」と町を徘徊するジャイアンの後ろで、傷薬売りさばいているスネオとも
言えるかもしれませんが(笑)。もちろん、ことが戦争である限り、非常に
危い道なのは言うまでもありませんが……

他にも、読ませどころが満載の本コミック、ぜひ。

小学館 http://www.shogakukan.co.jp/

(守屋淳 36歳 ご隠居にして独身者の火を死守する会総統 好きなジャン
ル 古典) 
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■読者の方からの投稿です/青木忠司(ライター)
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「書評はまったくむずかしい」 赤坂憲雄著 五柳書院 2500円

 本書は、、「東北学へ 1ー3」(作品社)、「柳田国男の発生 三部作」
(小学館)、「東西/南北考」(岩波書店)などの著作で、民俗学の新しい
パースペクティブを拓いてきた著者が書いた、書評の集大成である。
 取り上げられた本は、「忘れられた日本人」(宮本常一)、「異形の王権」
(網野善彦)、「神々の精神史(小松和彦)」などのほか、朝日新聞の1997
年から1999年にかけての書評が収められている。
 もちろん、著者の専門領域の書籍が多いが、それだけに、ひとつひとつの
本に誠実に向き合った、的確な論考になっており、これだけで、日本の民俗
学の現在がわかるほど充実した内容になっている。
 ところが、著者は、本書の冒頭のエッセイで、「書評は批評の場ではない」
と言い放っている。書評についての、政治的、経済的側面、つまり、出版
ジャーナリズムは、暗黙のうちに、その本の商品価値が高まることばかりを
期待しており、そこに、批評性など必要がないというのが著者の意見なので
ある。
 しかし、果たしてすべての日本のジャーナリズムが、そこまで腐敗してい
るだろうか?
 その答えは、著者自身が書いた、本書に収められた書評を読めば、おのず
と了解できる。
 著者は、書評を書く際に、扱われる本のエッセンスを読者に伝えようと苦
吟し、疑義を呈するときは、決して、ただ、ネガティブな文脈を綴るのでは
なく、その本の美点も指摘しているのである。
 そこに「批評性」がないとは、思えないし、むしろ、非常に良心的な書評
者の姿を見ることができるのである。
 しかし、どちらにせよ、「書評に批評性はない」という意見は、書評者に
とっては、耳に痛いことは事実であり、これからの書評の在り方を考える意
味でも、非常に刺激的な論考となっている。

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