2002.10.14.発行 vol.87 [だんだん増える連載 号]

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■■ [書評]のメルマガ                        2002.10.14発行  
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■                                                vol.87
■■     mailmagazine of book reviews    [だんだん増える連載 号] 
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
 →本をめぐる情報+アルファの雑談です。今回はイベント情報多し。
★新連載「版元様の御殿拝見」塩山芳明
 →ついに始まった問題連載。下世話な興味で版元の建物を観察します。
★短期連載「オマエはホントに客なのか!?」高野ひろし
 →いまの新刊書店の客の態度って、およそホメられたもんじゃない。
★リレー連載「私のsome day本」大橋あかね
 →書き手がバトンタッチ。タルホっていかにも「some day本」ですね。
★「かねたくの読まずにホメる」金子拓
 →買ったときから、いや手にしたときから読書ははじまっているのです。
★「新刊書店の奥の院」荒木幸葉
 →売り場を飛び回りながら拾ったネタを大公開。書店のカバー編の続き。
*本文中の価格は、すべて税抜き(本体)価格です。

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■はじめに
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 今回からエロ漫画編集者の塩山芳明さんによる「版元様の御殿拝見」がは
じまります。コレは、裏口から見た出版社というか、色眼鏡で歩く東京散歩
というか……。「どこが書評のメルマガじゃ」と思われるでしょうが、毎月上
旬の一号目は、本に関連するコラムならなんでも載せるつもりでおります。
高野ひろしさんからは、書店の客への文句を書いてみたいとの申し出があり、
連載開始。「私のsome day本」は書き手交代で、今回から3回はキョーレツ
な芸術作品をつくっている大橋あかねさんに書いていただきます。
 こういったメンバーでお送りするこの号は、「本のメド」も含め、やたらと
濃いネタが多くなってしまったような……。ご感想をお聞かせください。
(編集・南陀楼綾繁)

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■読者の方からのアリガタイ感想
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 前号で、アンケートにお答えいただいた方のうち、先着20名さまに、「sumus」
フェア小冊子を差し上げますと、呼びかけたのですが、メールいただいたのは
お三方だけでした。でも、みなさん熱心に読んでいただいているようで、嬉し
いです。
 さて、今回もアンケート続行します。小冊子プレゼント付き。
1)「書評のメルマガ」でいちばんおもしろいコーナー・書き手(単発の文章で
も結構です)。
2)今後、どういう記事を載せてほしいか。
3)お名前(ペンネームでも可)、送り先住所。
以上を、400字以内でお書きになり、kawakami@honco.netまでメールをお送りく
ださい。

★にとべさんより
 今回の「メルマガ乗っ取り私物化宣伝号」、個人的思い入れたっぷりで、大
変楽しく読ませていただきました。最近のリアルな雑誌は、今回のメルマガの
様な個人的思い入れがほとんどなく面白い雑誌が皆無に等しく残念です。おそ
らく編集会議を重ねるごとにツマラナクなるのでしょう。
 そういう意味で「書評のメルマガ」は、自由な形と従来の形の二つを発行す
る新しい形態になってから、面白さが増したように思います。これからも、い
ろんな方の思い入れたっぷりのメルマガを待っています。
 私は、毎号「sumus」を林哲夫さんから送っていただき購読させてもらってい
ます。是非、「sumus」フェアをジュンク堂大阪本店あたりで開いてください。
楽しみにして、待っています。
「全著快読 山田稔を読む」は毎回楽しみにしていたので、連載が終了したの
は本当に残念です。この連載をまとめて本にする(編集工房ノアから……)予
定などはないのでしょうか? 連載の途中からしか読んでいないもので。
 山田稔さんを知ったのは最近で(平凡社ライブラリー『特別な一日』で知り
ました)新しい読者なんですが、山田さんの本を書店では見つけられず、編集
工房ノアまで直接著書を買いに行った事もあります。

★宮山昌治さんより
 「書評のメルマガ」でいちばんおもしろいのは、五月さんの「現代思想の最前
線」です。
 今後期待する記事としては、人文系出版社の企画を前もって教えていただけ
ると嬉しいです。たとえそれが企画倒れになっても興味があります。翻訳でこ
んなものが出るかもしれないとか、ほとんど実現不可能だがこんな企画がある
とか。筑摩書房などは実に宣伝が下手だと思います。今度出るフーコーの講義
集成にしても宣伝が足りない。どうでもいい売れ筋の本の宣伝はさかんにして
いますが、フーコーなら興味ある固定客が買うだけだから宣伝も適当でいいと
いう発想(と私には思える)はよくない。どうでもよい日本の研究者の論文集
なら宣伝してもしようがないが、フーコーならちょっと興味がある人間という
のはわりと多いものだ。
 戦前の円本時代の漱石全集の売り方など、なかなか見習うべきものがあるの
ではないか。今では通用しないが、専用棚を麗々しい言葉を連ねて売らんとす
る商魂には頭が下がる。棚はともかく、前宣伝というのは効果があると思う。

★高橋秀典さんより
 「書評のメルマガ」で一番面白いのは、やはり南陀楼さんです。特に「全点
報告この店で買った本」は、書店ガイドとしても、ちょっと変わった本の紹介
としても、いつも新鮮な発見があります。東京には時々行きますが、いつも参
考にしています。(ここまで書きましたが、これは「本のメルマガ」のコーナ
ーでした)
 最近始まった、「ホンのメド」は、上記の情報のみを抽出した内容で、情報
中毒(?)ぎみな私には大変ありがたいです。ご商売柄、こういった情報が集
まってくるとは思いますが、普通に暮らしていては目にすることの無いものば
かりですので、楽しみです。これからも、好奇心のガイドとして、南陀楼さん
のアンテナに引っかかったものはドンドン紹介して下さい。
 書評では、アクセスの畠中さんの取り上げる本が気になります。お店の関係
上でしょうか。普通の書店に並ばないような本が多いのがいいです。アート系
の平林さん、林さんの書評もしっかり読ませていただいております。

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■南陀楼綾繁のホンのメド 《情報編》
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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【イベント】
★本屋さんでお散歩〜「sumus」が選ぶ秋の文庫・新書100冊 開催中
(場所)リブロ池袋店・文芸書売場&青山店
http://www.libro.jp/
(期間)2002年10月8日(火)〜11月10日(日)

 準備期間3カ月、ついにはじまりました。おかげさまで、両店とも出足は好
調のようです。池袋店には、最新号の特集にちなみ、スクラップブックのパネ
ル展示もあります(マッチラベルは南陀楼の所蔵品)。また、岡崎武志さんも
初日に訪れ、その場でイラスト&サインをしていかれたとか。各自工夫をこら
したPOPにも注目。なお、小冊子は会期中に品切れが予想されますので、なる
べく早めにお出かけの上、ご入手ください。小冊子の表紙画像は以下に。↓
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/5180/

★復活! 大山緑陰シンポジウム
(場所)鳥取県西伯郡大山町総合福祉センター
(日時)10月27日(日)朝9時から5時

 1995年から99年まで鳥取県の大山で開催された「本の学校 大山緑陰シン
ポジウム」が、今年鳥取で開かれる「国民文化祭・出版文化展」の一環として
復活します。今回は、図書館・子どもと読書・出版流通・電子出版など、8つ
の分科会で構成します。
 第5分科会 出版「本のつくりかたはもっと自由になる!?」では、松村久
(マツノ書店)、沢辺均 (ポット出版)、足立亨 (平凡社)、北村礼明 (ボイジ
ャー)の4氏をパネリストに迎え、新しい本の作り方や出し方の可能性をリア
ルに論じていきます。司会は河上進(「本とコンピュータ」編集室)=南陀楼
綾繁です。まだまだ参加を受け付けていますので、どうぞよろしく。以下のサ
イトで申し込みできます。
http://www.town.daisen.tottori.jp/kokubunsai/symposium/

★古書日月堂プレゼンツ「絵葉書に見る1920〜30年代のパリと観光旅行」
(場所)渋谷LOGOSGALLERY(渋谷・パルコパート1 地下1階)
http://www.parco-art.com/logos/
(期間)2002年10月25日(金)〜11月11日(月)
10:00am〜9:00pm ※但し、最終日は5:00pmにて閉店 

 欧米諸国および日本の絵葉書約5000点を中心に、海外旅行記やパリ万博
関係の古書雑誌、観光案内など旅に関連する冊子やラベルを集めました。意外
な掘り出しモノが安く手に入るかも?
http://www2.odn.ne.jp/nichigetu-do/

★チャペック兄弟とチェコ・アヴァンギャルド展
(場所)神奈川県立近代美術館(鎌倉駅)
(期間)開催中〜11月24日(日)
 月曜日休館(ただし祝日と重なる場合、火曜日休館)

 チェコの代表的作家カレル・チャペックと、その兄で多くの本の装丁・挿し
絵などを手がけた画家ヨゼフ・チャペックの作品を中心に、1920年代から30
年代に掛けてのチェコの書籍・雑誌・絵画・写真などを集大成する。ヨゼフの
装丁本がずらっと並ぶコーナーに目が釘付け。見てるだけでシアワセな気分に
なる。300ページに及ぶ図録も充実。来年6月に和歌山県立近代美術館、7月
に印刷美術館に巡回するが、かなり展示構成が違うらしいので、コレを先に見
ておくことをオススメします。
11月3日(日)、10日(日)、17日(日)には関連講座も開かれます(申し込
み〆切は10月15日です)。申し込み方法は以下の「お知らせ」にあり。
http://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kinbi.htm

【近頃買った本】
★宮武外骨『随題随記随刊』(昭和7年、半狂堂)
「人面類似集」「異種日本人名辞書」「東洋自由新聞」「近世自殺者列伝」「風
俗壊乱雑誌」など10種のパンフレットを同時刊行したモノ。以前に復刻版を
編集したのだが、いつかは原本が欲しいと思っていた。「和洋会」の目録に、
K書店が4万円で出していたので、思い切って注文。受け取ってみると、函の
部分がややスレているのが気になったが、同じ目録でM書店は6万8千円付け
てるんだから、コレぐらいしょうがないか、と思って、ガラスケースを見たら、
そのM書店版『随題随記随刊』が並んでいた。その値段、ナンと4万円! 
K書店にあわせたのだろうが、ほかの店にあわせて値段を下げるというのは、
もともとの見識のなさをさらけだすみたいで、ちょっとみっともないんじゃな
いか? しかも、そっちの方が函の状態がイイ。いまさらM書店に注文しなお
すワケにもいかず、おとなしく買って帰ったけど。外骨の本は集めだすとキリ
がないのだが、あと一冊、12種の小雑誌が袋に入った『袋雑誌』はいつか欲し
いと思ってます。

【これから買う本】
★川島幸希『初版本講義』日本古書通信社
コレクターの対話形式で近代文学の初版本の希少価値や値段を論じる「日本古
書通信」連載が、10月に本になるという予告が9月号(15日発売)に載った。発
行部数は「もう少し部数を増した方が良いのではと、おすすめしたが、どうし
ても二百ということで、著者用が百部、小社で市販するのが百部」となったの
で、先着順で受け付けるとあった。ぜひ欲しいと思い、三日後に申し込んだら、
次のようなファクスが。「大変申し訳ないのですが、昨日(9/17)午前中で100
部を越えてしまい、ご希望に添えないことになってしまいました」。ナンとま
あ、予告後、二日目で完売してしまったワケだ。究極の小部数出版だなあ。こ
うなると、ぜひとも欲しくなる。古本で出回るのを気長に待つか。
http://www.kosho.co.jp/kotsu/

★『アジア新世紀』全8巻、岩波書店
11月8日刊行開始。ところが、現在配られているチラシを見ても、この講座
でナニがやりたいかが一向に伝わってこない。コピーは「抑圧と解放の世紀を
経て、いまつづられるアジアの新たな創世の物語」だし、各巻のタイトルは、
「空間」「歴史」「アイデンティティ」「幸福」「市場」「メディア」「パワー」
「構想」という具合。ナカに入るのは、どういう書き手のどんな論文なのか、
まったく記載なし。最近の岩波書店の講座って、こういう抽象的なテーマ設定
のものがすごく多い。いまさら大文字の「世界史」「日本文学」で勝負するの
はタイヘンだろうけど、だからといって、ワザと曖昧にしておいて幅広い客を
呼び込もうというのもなんだかなぁ。
http://www.iwanami.co.jp/

【これから読む本】
★森英二郎『絵本・版画の作り方』トムズボックス、800円
 先日、表参道のHBギャラリーで行われた森さんの個展で入手。森さんの柔
らかい線の木版画は、ちくま文庫の川本三郎の東京モノなどでおなじみだけど、
その絵でもって木版画の道具や作り方を解説している。個展ではこの本の原画
(多色刷り)が展示されていたけど、本の方はモノクロ。楽しくて役に立つハ
ンドブックです。一家に一冊、常備したい。
http://www.clipcraft.or.jp/tomsbox/

【その他】
★ブッククラブは定着するか?
 最近、オンライン書店bk1で本を買うと「ブッククラブ」の勧誘パンフが
入っている。これはベルテルスマン・グループが欧米を中心に展開している本
のカタログ通信販売。日本では「BMGファンハウス ブッククラブ」という
新会社を設立したようだ。3カ月に一度発行されるカタログの本はぜんぶ割引
価格で買える(最大20%オフ)というのだが、メンバーになると毎回一冊以
上注文しなければならない(注文がなかったら、どうも、ブッククラブ編集委
員が「特別推奨する本」を強制的に購入させられるらしい。このパンフの「洋
書50%オフ」リストの最初は、アメリカのカリスマ主婦マーサ・スチュワート
の『お家の整理整頓&魅せる収納法の写真集』。ほかにも、まったく欲しくな
い本が盛りだくさん。入会したはイイものの、毎月一冊選ぶのが苦行になった
りして。
http://www.bookclubjapan.com/

【南陀楼のお仕事】
★「サンパン」で小沢信男さんの聞き書き連載開始
 文学出版社EDIの小雑誌「サンパン」の第3期第3号ができました。今回も
加藤朝鳥、加能作次郎、水野仙子、島村利正などシブイ(というか、ほとんど
読まれてない)作家についての論考、エッセイが載っています。書き手には、
「書評のメルマガ」執筆者の林哲夫さん(「小野松二と作品社」)、柳瀬徹さん
(『神保町「書肆アクセス」半畳日記』書評)も登場。
新連載「聞き書き 作家・小沢信男一代記」は、今年75歳の作家・小沢信男
の生活、作品、出会った人たちなどについて聞いていくもので、聞き手は不肖・
南陀楼綾繁です。今回は銀座で育った少年時代について。小沢さん提供の図版
(小学校のときの絵とか)もいっぱい載ってます。独特の語り口をお楽しみく
ださい。なお、小沢さんといえば、埋もれた作家を紹介するEDI叢書の新刊
として、小沢信男編『松倉米吉・富田木歩・鶴彬』が出たばかり。短歌・俳句
・川柳から各一人というアンソロジー。小沢さんの解説、読み応えあります。
http://www.edi-net.com/

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■版元様の御殿拝見  塩山芳明
(1)現代書館 思想で建てた左翼ビル
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 筆者の仕事場は、JR飯田橋駅東口から九段方面に歩いて10分の飯田橋2丁
目。目白通リを歩くのが一番の近道だが、ある理由から途中で左折、裏道を。
路地裏趣味云々ではなく、要は潮出版の前を通りたくない。電車内の中吊り広
告だけでゲップなのに、同社ウインドウには、鶴見俊輔や鎌田慧の威光にガー
ドされた感じの、池田大作センセイの御写真満載の『潮』他の宣伝がテンコ盛
りだから(僕は普段愛情を込め、大作センセイを“エロフグちゃん”と呼んで
る)。少なくともエロフグちゃんの御尊顔は昼間、特に午前中は拝したかない
(帰りに前を通るのは平気)。

 1本裏の路地を使うと、毎日前を通らざるを得ないのが、現代書館。ちょっ
と前までは、神保町2丁目の写植屋風のボロ建物で、白いプレートの社名看板
出してたものなのに、いつの間にやら4階建ての自社ビル。左翼版元総崩れの
中、大した出世(我が漫画屋HPの与太連載、「日刊漫画屋無駄話」の中で、
版元を一言でおちょくるコーナ−が。同社は即決。“極左自社ビル残侠伝”
と。お粗末)。

 いかにも地元じゃ生協&住民運動してますって感じの、GTP数値の高そう
な40代前後のおじさんやおばさんが、ビル前の猫の額の様な庭で、返品や出
荷作業。石原慎太郎、三角寛の名前が目立つ。向かって左は製本屋さんのビル。
 右隣は、冨田均(作品社刊『東京私生活』などで知られる、都内必殺散歩人)
なら既に住所も居住者名も記憶してるだろう、古い木造屋。アベベ選手を彷佛
とさせるお爺さんが、車で魚の行商を。都心では需要が結構あるらしく、近所
のおばさんらも車を囲む。ただこの御宅には、いつも日本共産党のポスター
(またこれが似合う)。

 ただ両者、日頃仲良く談笑。近所付き合いは思想信条を超える?しかし、現
代書館の従業員同士は陰気。無駄口叩かず、黙々と仕事。人事管理が行き届い
てる?俺ならバイトも入社もしたくない。その前に、履歴書受け取ってもらえ
んか……。ビルの規模は、成功したエロ本屋さん、例えば東京三世社、笠倉出
版、平和出版と同水準。エログロでなく、思想で建てたのだから立派。左手で
敬礼!!

〈しおやま・よしあき〉エロ漫画編集者。編プロ「漫画屋」を率いる。著書
『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(一水社)。なお、この連載に関しての批
判・苦情・お叱りは筆者本人まで、どうぞ(ただし、謝るとは限りません)。
mangaya@air.linkclub.or.jp
http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

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■オマエはホントに客なのか!?  高野ひろし
(1)平積みの本の上に物を置くな!
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 「あっ!」って思わず叫んでしまいました。近くにいた人達がサッとこっち
を見て、さすがに恥ずかしかったです。
 ちょっと前のことなんですが、本屋の新刊コーナーで、僕の横をすり抜けた
女性の紙袋が平積みの本に接触して、スリルタワーの如き本の山の頂上付近が、
グググッと傾いたんです。あぁビックリした。あのまま隣の山に衝突して、バ
ラバラ崩れたらどうしよう……。

 まったく、本屋に来て、何でこうもイライラしなくちゃいけないんだ? 別
に店員でもないし、親戚友人知人の店でもないというのに、まるで落語・小言
幸兵衛に出てくる気難しいご隠居さんみたいに、文句ばかりが脳裏を横切るん
です。
 だいだい、あの平積みに紙袋を激突させた女性は、自分のバッグを本の上に
置いて、ページをめくってましたからね。平積みの本の上に物を置くな! 一
体、そのバッグを、これまでどこに置いて来たんだよぉ。メーカーの頭文字を
べたべた印刷した合皮の鞄、高いらしいじゃないの。だったら地べたには置か
ないかも知れない。でもあんた、バッグの下にあるのは、新品の商品なのよ。
八百屋さんの店先で、キャベツの上に置く?魚屋さんでさぁ、旨そうな近海物
のアジの上に、置く? 確かに屁理屈ですよ。でもね、キレイに並べた商品の
上に物を乗せないでしょ、常識として!

 その平積みタワーを平気で蹴散らす人もいれば、全てチェックして極上品の
一冊をゲットしようって人もいますねぇ。更に棚の下にある引き出しを勝手に
開けて、中には「他に在庫ある?」って店員さんまで呼びつける人ね。こうい
う人は、買っても開かないと思うなぁ。
 きっと僕みたいなのを「余計なお世話」っていうんですよ。「うるさい、ジ
ジイ!」ってなもんでしょうなぁ。あぁ、余計なお世話で思い出しましたけど
……。(続く)

〈たかの・ひろし〉ペンギン写真家。
【恒例ライブのお知らせ】
 ウクレレブラザースのライブは、相変わらず辰野金吾渾身の作・東京駅にて
粛々と決行されます。ご用とお急ぎのない方、当日東京駅周辺で時間をつぶさ
ねばならない方、一度ぐらい見ておかないと一生何を言われるか分からないと
いう危機感を抱いている方、是非ともおいで下さい。皆様のために新曲「品川
駅の唄」もご用意する所存でございます。
10月27日(日) 15:00-15:30
東京駅構内、八重洲口に向かって右側の、東海道新幹線乗降口の手前、「Break」
(レストランや書店等が入ったディラというスポットの一角です)。

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■私のsome day本  大橋あかね(ハラゴメカエル作家)
その1 我が人生に悔いなし。
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萩原幸子編『稲垣足穂全集』全13巻、筑摩書房、2000-2001年、各巻5400-
5500円

 私の人生には、悔いがありすぎる。はったりをかました後に「わ〜ん、また
嘘ついちゃったよ〜。」と半べそになることや、思いきったことをしたあげく
に「私が悪うございました。」と謝って逃げ帰ることが、しばしばある。そん
な時はつい、家に帰ってぬいぐるみと語らってしまう。

 一番悔いが残るのは、好きな作家を聞かれて答えた時である。まずもって、
自分が納得する答えを言えた試しがない。数を読んでいるのは都筑道夫だが、
文体が好きなのは久生十蘭だ。短編ならカフカにコリア。そして何より、『一
千一秒物語』で、息が止まる程衝撃を受けた、稲垣足穂。

 「好きな作家は、稲垣足穂です。」然るに、そう答えられる程、私は足穂を
読んでいない。何故と言って息が止まるような衝撃を受け続けると、体が持た
ないから。さらに、『一千一秒物語』の様なお伽話は大変好みであるが、足穂
作品のもう一つの柱とも言うべき、同性愛的美少年嗜好が苦手だから。

 大学時代、近代文学の授業で、好きな作家を挙げよと言われたので、足穂と
言った。次の瞬間、教授が嬉しそうに目を輝かせ、それを見た私は、その教授
にゲイの噂があったことを思い出した。慌てて、「足穂は、天文の方でお願い
します。」あの時の後悔を、私は一生忘れない。

 『稲垣足穂全集』は、そんな私が、いつか、足穂の作品の全部を愛せるよう
になった時のためのsome day本である。全十三巻を読破したその時こそ、私は胸
を張って、「好きな作家は、稲垣足穂です。」と言おう。そして、ぬいぐるみと
語り合うことなく、「我が人生に悔いなし。」と言ってみたいものだ。

〈おおはし・あかね〉お腹にお米の詰まったカエルのぬいぐるみ、『ハラゴメ
カエル』を年がら年中、鋭意制作中。語りかけるぬいぐるみが欲しい方におす
すめです。サイトとメルマガ『ハラゴメ日記』も、ほそぼそ運営中。
http://www.haragome.com/

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■かねたくの読まずにホメる
(3)饒舌な犯罪者たち
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永井良和『探偵の社会史1 尾行者たちの街角』世織書房、2000年5月、
2500円

 探偵という言葉がサ変動詞としてたんに「推測する」というほどの意味合い
で使われだしたのは明治の頃らしい。さらにそれが現在のように人のできれば
知られたくないプライベートな生活を穿鑿するような意味合いの言葉に変化し
たのは、どうやら明治末から大正にかけてのことのようだ。人の依頼を受けて
ある人物を「探偵する」ことを職業とする人間、すなわち「探偵」が生まれた
のはそのあとのことになる。

 松山巖氏が論じられたように(『乱歩と東京』ちくま学芸文庫)、都市人口
の増加にともなう人間関係の希薄化が、そうした不透明な関係を解き明かそ
うとする「分析的精神」を生み出したとすれば、その発動を職業とする探偵
もまたその所産ということになるのだろうか。この言葉の揺籃期と比べものに
ならないほど人間関係がより希薄化した現代では、それと反比例するかのよう
に、探偵という営為は「覗き」や「ストーカー」という犯罪にエスカレートし、
毎日聞き飽きるほどの件数の事件が報道されている。

 本書はこの探偵という行為が未成熟な段階の社会学的な考察というスタイル
をとっている。現代におけるストーカーや覗きなどの犯罪行為の発生論といえ
ようか。
本書でも取り上げられているが、「覗き」の代名詞といえば「出歯亀」だろう。
女湯覗きの常習犯池田亀太郎がこう呼ばれ、それが一般名詞化した(『日本国
語大辞典』第二版にも記載がある)。先日冨田均『続 聞書き・寄席末広亭』
(平凡社ライブラリー)を読んでいて驚いたのは、庶民の野次馬的関心を集め
た彼ら犯罪者は、刑期を終えて出所したあと、寄席の高座に上って一席話をし
たというのだ。同書に拠れば、出歯亀だけでなく、かの阿部定も高座に上った
という。

 そういえばかつては「説教強盗」という犯罪者もいた。出歯亀や阿部定の体
験談は話芸となり、現代ではドライに凶悪化するいっぽうの強盗にもかつては
説教というおまけがついた。妙な言い方だが、現代犯罪の社会学的分析よりは
まだ当時のそれのほうが彩りがあるような気がする。

〈かねこ・ひらく〉サイト「本読みの快楽」運営。本業は日本史研究者。なぜ
か最近笑芸関係の本にはまっています。末広亭、吉本、春団治、浪曲……。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~kinko/index1.htm

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■新刊書店の奥の院 荒木幸葉
(3)カバー折りの達人の教え
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 同僚に、カバー折りの達人がいます。お昼のテレビ番組での「◯◯の達人紹
介」といったヒマつぶし的コーナーに、2階から地面に垂らしたけん玉に成功
した人や、鼻の穴に500円玉をつっこんだ人たちと並んで出演したから、き
っとホンモノです。

 達人は、紙の束ひとつかみ40枚近くを、約2分間で折りあげます。無心で
ガーっと折っているときは、α波がでてるかもと云うてました。折りすぎで、
ひじを痛める「カバー痛」に悩むこともしばしば。達人いわく、「最初のひと
折りですべてが決まる。」

 では達人の教えにのっとって、カバー、折ってみましょう。お店によってや
り方はまちまちでしょうが、私の勤務先では、長方形の紙の天地を数センチず
つ折って、ブックカバーをつくっています。
 まず、カバー折りの必須アイテム「カバー棒」と「ノンスリップ」を用意し
ます。前者は折り目をつけるための棒で、かまぼこ板3枚分くらいの厚みがあ
ります。この棒が来る前は、単1電池のおしりでしごくようにしていたらしい。
定規や大きなクリップの先端をつかうところもあるようです。後者はゼリー状
のすべりどめです。これを両手の親指と人さし指に塗り込み、天地を折ってあ
る紙の束をしゃかしゃかとほぐしてゆきます。ほぐしては、棒で折り目をのば
し、またほぐしては……のくり返し。これらの作業をレジ業務の合間にこなし
ていきます。

 用紙の大きさは、文庫・新書、四六ハードカバー、もっと大きなハードカバ
ー(ハリーポッターなど)の3種類あり、さらに数種類のイレギュラーな判型
に折りわけています。判型ごとの「型」をとるには、出版社で配られる目録を
使っています。例えば、文庫サイズを折るときには、集英社や文春文庫目録が
ベストだそうです。ひとくちに文庫といっても、数ミリ単位の大きさのズレが
あり、すべての文庫の大きさに対応するのが、この2社のものというわけです。
そのほか、ハヤカワポケミスには、耽美小説のリーフ出版のものがよい、とか、
永年の試行錯誤によって、ちょっとしたオキテがあるようです。

 ところでここ最近、店の用度品担当者が、ハリーポッターの新刊発売にあわ
せて、はたしてカバーや袋を何枚発注したらよいのかと、泣いています。上下
巻2冊×数千冊?となると、達人の腕が何本あっても、追いつかなさそうだな
あ……。

〈あらき・さちよ〉警備員のおじさんにガムを、版元さんにカスピ海ヨーグル
トを、バイトの子に温泉卵(弁当の残り)をちょうだいする日々。おなかすい
てそうにみえる?

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